ダックスフンドの首輪   作:転音

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大変お待たせいたしました。バースデーの話をバースデーに投稿しない作者です。

活動報告では載せましたが、英雄の素質③を改訂しました。
メラニーの勲章についての軽い変更と、宮藤との話し合いがより違和感なくすっと読めるようになっていると思います。
是非読んでいただけると嬉しいです。

お気に入り登録!評価!感想もぜひぜひお願いいたします!ほんとにモチベになりますので。お気に入り1人増減するごとに一喜一憂しておりますので!


番外② 戦場のバースデー

1941年4月 包囲下のベルリン

 

「あっ」

 

 と、私は思わず声を漏らした。

 

 シュパンダウ要塞に拠点を移してからおよそ一か月、火砲の設置場所、人員配置などの最適化を行ったことや、士気が回復してきていることなどにより、ネウロイに対してある程度安定的な防衛を行えている。そんな日のことだった。

 

 もともと戦闘時の指揮以外にあまりやれることが無いので、そうそうに手持無沙汰になった私は、みんなの集まっている談話室に行った。日当たりのよく、暖かい席はすでにキルシュナー少尉に占拠されていたため、ハックル軍曹が座っているソファーに行こうとしたところで、ふと視界に壁掛けのカレンダーが入ってきた。

 

 このカレンダーはたまたま町で拾ったもので、最初のうちは5月という遠い目標を見せつけてくる悪魔みたいなやつだったのだが、最近は「もう少しだよ!」と教えてくれる天使のように思われている。だから私も

 

(この防衛線を続けなくてはいけない5月まで、あと一か月か…)

 

 等と考えた。そしてふと気づいたのだ。

 

(あれ、そういえば私の誕生日って)

 

「あっ」

 

 その声を聴いて、本を読んでいたハックル軍曹とコーヒーブレイクを楽しんでいたフィリップ中尉がこちらを見た。

 

「どうしたんです?そんなところに立って」

「いや、ちょっと…思い出したことが…」

「思い出したこと、ですか?」

「いや~その…」

 

 冷静に考えて、この状況で個人の誕生日を祝うというのも難しい。わざわざ伝えても、皆を困らせるだけだろう。

 

「なんでもない」

「えぇ?ほんとですか?」

「隠し事は良くないです」

「ほんとほんと。相談しないとやばいことなら隠さないって」

 

「まあ、隊長は確かにそうですね」

「でも、気になります」

 

 ハックル軍曹め…最初に会った時からずいぶん図々しくなって…

 ごまかし続けても不和の元。絶対に秘密にしたいというわけでもなし。おとなしく話すことにしよう。

 

「いや、実は私の誕生日がさ。11日なんだよね。今月の」

「え!?そうだったんですか?もっと早く…はやく…?」

「早く言われても…どうしようも…」

「・・・・・」

「・・・・・」

 

 ずーん、と。とたんに空気が重くなる。

 

「い、いや!ほら!こんな状態だし、みんなの誕生日も特別何かしてたりもしないし、気にしない気にしない!」

「いえ、その。お心遣いをくみ取れず申し訳ないです…」

「なにかしてほしいことでもあったら言ってください!ほ、ほら!マッサージとかならできますし!(じゅるり)」

「あ、ありがとう…?」

 

 なぜか目を輝かせ、手をわきわきさせているフィリップ中尉。怖い。身の危険を感じた私は、話題転換にいそしむのだった。

 

――――――

sideキルシュナー少尉

 

「ということで!お誕生日作戦です!」

 

 何を言っているのだろうか。この副隊長。

 

「おー!(ぱちぱち)」

 

 なんで乗り気なんだろうか。この本の虫。

 

「…何がどうなってお誕生日作戦なんだ?」

「隊長の誕生日が近いので、お祝いしたいなと」

「へーなるほど!そりゃあいい考えだ!」

 

 私は思わず皮肉っぽく叫んだ。この何もかもが足りない、明日をも知れぬ身で誕生日祝いなんてどうやるんだ。フィリップは当然私の考えを予想していたようで、具体的な方策を持っているようだった。

 

「私たちは日ごろから食料確保や武器弾薬の補給のために、近隣の元軍事拠点やベルリンの町で物資の回収をしているじゃないですか」

「その時にパーティーの準備もするって?そんなことがばれたら、喜ぶよりもまず叱られるぞ」

 

 これまでに多くの犠牲が出たこの戦いを経て、隊長はかなり神経質になっている。誰一人死なせないよう、少々やりすぎではないかと思うほど安全に気を配り、やむを得ない場合を除いては危険行為は全面的に禁じ、対策を講じている。

 

 今のところは、それで問題が起きているわけではない。ないが、危険を避けるあまり補給作戦で回収できる資源量が少なくなり効率が下がるなど、将来問題になりえる種が生まれていた。

 というかそれよりも心配なのは隊長の精神面である。隊長より年下の私が言うのもなんだが、あの人はまだ12歳なのだ。ウィッチになってからも1年ちょっとしかたっていない。それなのにこんな状況で指揮を執っているのだから、精神的な負担は計り知れない。

 

「隊長に余計な心労をかけるべきじゃないんじゃないか?」

「そこについても大丈夫です!隊長からの命令に反することの無い範囲で準備を進めますので!」

「…どうやって?」

「補給作戦では食料などの必需品の回収が最優先ではありますが、本などの娯楽品や酒などの嗜好品の回収も許されてますから。そういうものをちまちま集めて、ためておけばいいのです」

 

 ふむ。許可が下りていて、必需品の回収に影響が出ないのであれば問題はない。だがそうなると…

 

「回収できる量はとんでもなく少なくなるぞ?そもそも嗜好品なんかはそう滅多に見つかるもんでもないし」

「もちろん、私たち(ウィッチ)だけでは無理です。なので守備隊の方々とも協力して集めます」

 

 いや、そう簡単には言うが、苦労して集めた貴重な嗜好品を提供してくれるのだろうか?一瞬頭をよぎった考えは。

 

「協力って…してくれるか?…してくれるか」

「するでしょう」

「してくれると思います」

「そうだな。するな。あいつらなら。絶対するわ」

 

 刹那のうちに消え去った。隊長大好きなあいつらのことだ。絶対協力する。むしろ張り切りすぎて手綱を握るのが大変なくらいだろうと、簡単に想像がついた。

 

 実際…

 

「隊長の誕生日が近いんですよ」

「「「祝いたい!」」」

「~という感じで協力を…」

「「「了解!」」」

 

 こんな具合にとんとん拍子に決まった。

 

「というわけで!GS作戦開始です!」

「「「おー!!」」」

 

――――――

sideメラニー

 

 なんだか少し様子がおかしい。いや、少しどころかかなりおかしい。見るからに普段とは様子が違う。なんというか…楽しそう?ワクワクしてる?浮ついたような空気が部隊内に蔓延している。

 最初の一人に気づいたときにはとうとう精神が壊れた隊員が現れたのかと思ったが、気をつけてよく観察すると部隊のほぼ全員がそんな様子なので、流石にその可能性は薄い…と思う。

 

 これまで4か月間のあいだ部隊を覆っていた憂鬱な、重苦しい空気感が消えて、プラスの感情が増えたのはいいことではある。あるのだが、特別目立ったきっかけもなく急激に変化するのはおかしい。要因を調べようにも、流石に顔を見るだけで心を読むようなことはできない。ならば直接触れようとしても、見事にかわされてしまう。こちらとしても無理に隠し事を暴くようなことはしたくないし、信頼関係にも響くので、強引にというわけにはいかない。

 

 残り1か月を切ったことが士気高揚につながっているのだろうか?あるいはなにか新しい娯楽でも生み出したりしたのか?もしかしたら、むしろ、みんなが変化したのではなく、私の頭がおかしくなったのではないだろうか?

 一つ目は要因である可能性は高いかもしれない。二つ目はないだろう。私に知らせない理由がない。この期に及んでみんなが命令違反や危険行為をするとはとても思えない。三つ目はむしろ一番可能性が高い気すらする。だが三つ目であると、私が一人で判断するのは厳しい。

 

 部隊のほぼ全員が様子がおかしい中、数人は以前と変わらない人たちもいる。例えばフィリップ中尉やハックル軍曹だ。ほかのみんなのような浮ついた様子はない。だがその数人もまた、直接触れようとすると逃げる。

 

 いったい何が起きているのか。触れさせてくれないということは私の魔法を警戒してのこと。つまり私に隠したいことがあるということになる。普段の私は魔法を使ったとしてもむやみやたらに心を覗いて秘密を暴いたりはしてない。私の側に警戒されるような落ち度はなかったはずだ。

 ないとは思うが、もしこのまま魔法を使わせてくれなかったら、ネウロイとの戦闘時に影響が出てしまう。

 

 まずはフィリップ中尉に話を聞こう。それでだめなら…強引ではあるが、無理やりにでも暴くしかない。どのみち、私が悩んでいたところでわかるものでもないだろう。私はフィリップ中尉を呼び出した。

 

「…なるほど。振り返ってみれば確かに、最近は部隊の空気感が緩んでいるような感じはしますね」

 

 とりあえず、フィリップ中尉に対しても違和感を感じていることは伏せ。単純に相談と情報集めのていで話を聞くことにした。

 

「なにか心当たりは?」

「一応、最近は守備隊の隊員たちがトランプなどで遊んでいるのを見かけますが…」

「トランプ?」

「はい。大きな声では言えませんが、何やら賭け事のうわさも…補給作戦で嗜好品を持ち帰れたのではないでしょうか?」

「なるほど、賭け事に嗜好品か…」

 

 反応に不自然なところはなく、嘘をついているようにも見えない。フィリップ中尉の情報を信じるならば、確かに賭け事というあまり健全とは言えない行為を上官であり、子供でもある私に隠そうとするのは自然に思える。娯楽が出来、嗜好品もあるとなれば部隊内の空気が良くなるもの納得だ。

 

 守備隊の面々についてはひとまずそれでいいとして、残るはウィッチたちの様子についてだ。

 

「ウィッチーズ隊のみんなについては?」

「守備隊の空気が明るくなったのに影響を受けているのではないでしょうか。明確にそうと言い切れるわけではありませんが、もともとウィッチたちはみんな、他人の笑顔のために頑張れる…そういう子たちですし、いい影響を受けている可能性は高いと思います」

 

 こちらも一定の納得感がある返答だ。だが隠し事がないならば私に触られるのを避けるというのも良く分からない。その点をフィリップ中尉に伝えると。

 

「隊長。それは少し気にしすぎではないでしょうか?みんな年ごろの女の子ですし、隊長に“さわさわ”されるのが嫌になる事もあるでしょう」

「そんな変な触り方してないよ!?」

 

 その言い方だと完全にセクハラおやじじゃないか。いや、客観的に見たらそうなのか?普段から手袋をつけている上司(わたし)がわざわざそれを外して手を握ってくる……。なんか、普通にいやかもしれん。つーかいやだわ。仲が良い同性であることを加味しても絶妙な気持ち悪さを感じるわ。

 

 セクハラじみたことをしていたと突き付けられた私は、これは嫌がられても仕方がないなと納得し、フィリップ中尉に謝罪と感謝をするのだった。

 

――――――

sideキルシュナー

 

 何かフィリップが隊長に呼び出された。これ、ばれただろ絶対……私も人のことを言えるほど演技がうまいわけではないが、ここ最近は以前とは比べ物にならないほど、空気感が変わっている。精神感応の魔法も持つ隊長が異変に気付かないわけがない。

 だがフィリップは何食わぬ顔で戻って来て、堂々と「ばれなかった」といった。コイツどうやってごまかしたんだよ。

 

 まあ、今回はごまかせたが隊長は明確に違和感を感じている様子とのことで、なるべく早くサプライズを行うことになった。因みに最初から誕生日に行うのは諦めている。いくらなんでも時間が足りないからだ。隊長が気付くのがもっと早かったら、「もしかして私の誕生日か…?」と感づかれていた可能性もあるので、当日に祝えないのは無念だが、サプライズがうまくいきやすいということで良しとした。

 

 

 隊長にばれかけていることと、最低限以上必要なものは集まっているというフィリップの意見で、急ではあるものの、明日、隊長の誕生日パーティーを行うことになるのだった。

 

―――――――

 

 フィリップがメラニーへ「部隊の空気が変わった理由が分かった」と、要塞内で一番広い一室へメラニーを誘った。

 

 ハックルの魔法で部屋に近づいてくるメラニーのことを見て。扉が開いたその瞬間!

 

「「「「「誕生日!おめでとうございます!!」」」」」

 「えっ?」

 

 大きくそろった掛け声と同時に、紙吹雪が舞う。

 口をあんぐりと開けて固まったメラニーを、キルシュナーとハックルが会場中央へと手を引く。

 

「えっ?な、なにこれ?」

「申し訳ございません。気にしなくていいというせっかくの心遣いでしたが、どうしても祝いたかったので」

「い、祝いたかったって…」

「隊長はいつも、頑張ってますから…お返しを」

「部隊全員の全会一致で決まったことだぞ!愛されてるね~?たーいちょ」

 

 ハックルは真剣に。キルシュナーは茶化すように言う。主役のメラニーはいまだに開いた口が塞がらないようで、口をパクパクとさせている。

 

「誕生日ですから、プレゼントもありますよ!」

 

 フィリップが指さした先の机には、布に隠されていくつかのふくらみが見える。

 

「もちろん、ごちそうもあるぜ。まあ、ここではごちそうな程度だけど」

 

 そのほかの机にも、珍しく肉や魚も並ぶ豪華な食事が並んでいる。

 

「い、いやいやいやいやいや!」

「嫌ですか…?」

「嫌じゃないけど!うれしいけど!みんなが必死に集めてきたんでしょ!?受け取れないよ!」

 

 メラニーの言葉に守備隊の一人が返す。

 

「なにぃ!受け取れないだと!それなら…燃やす!」

「なんで!?」

 

「隊長、あきらめてください」

 

 フィリップは優しくいった。

 

「みんな隊長が大好きで、こうして準備したんですから」

「っ!!?」

 

 再び目を見開いて、口をパクパクさせながら一度周りを見渡して。

 

 眼のふちに涙をにじませながら、満面の笑みで言った。

 

「ありがとう!」





 いろいろと考えたのですが、2期編は新しく別の小説として投稿しようかと考えております。
 理由はいくつかありますが、まず一つは「ダックスフンドの首輪」はもともと1期だけで終わりだったことです。続きを書くのに不満があったりするわけではなく、ここから先は本来の構想にないところに入ってくるので、しっかり分けたいな。と感じているのです。「ダックスフンドの首輪」というタイトルも、1期だけというつもりで考えた物語に付けたタイトルですしね。
 あと一つは、個人的に番外が本編の流れをぶった切って入ってくるのが嫌です。
 本編読んでるときはまとめて、続けて本編読みたいんです。自分が読者の時はそう思ってます。なので2期以降の構想を練る間のつなぎとして投稿しているもろもろを、自分が投稿したくせに「邪魔だな」と感じているんです。
 別の小説として投稿したら結局本編を続けて読めなくなってしまうのですが、一応キリのいいところで終わってますから、まだ我慢できます。


 別の小説として、投稿した際には本作のあらすじのところや、活動報告などで紹介しますので、チェックお願いします。


 それから質問です。設定資料とかってみなさん興味ありますか?年表とか、SW世界の各国についてとか。フリューゲルや501のみんなの能力設定とか、いろいろとあるのですが。毎度おなじみアンケート、活動報告などにご意見ください。

2023/3/10 13:04 誤字修正
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