ダックスフンドの首輪   作:転音

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誤字報告、ありがとうございます。
特にあらすじは盲点でした・・・助かりました。


第四話

 

 基地に警報が鳴り響く。間髪入れずにバルクホルン中尉が指示を飛ばした。

 

 

「出撃だ!」

「・・・またですか。最近多いですね」

「文句を言っても仕方がない。早く準備しろ」

「すみません」

 

ストライカーを履き、簡単に銃の点検を行う。もう出撃までの流れも慣れたものだ。ここ最近はこれまでにも増して出撃頻度が上がっている。噂では占領された東部カールスラントやオストマルクで新たなネウロイの巣が出来ているとのことなので、その影響だろうか。

 

 

「数は分からない、でしたっけ?」

「ああ、哨戒していた戦闘機は撃墜。偵察隊も、数まで確認する余裕がなかったそうだ」

「地上部隊は大丈夫なんですか?」

「地上型は攻撃してきていないらしい」

「それは・・・はぐれですかね」

「さあな。通常より小型とのことだ。各員、しっかり狙って撃つように」

「「「了解」」」

 

 しっかり狙って、というものの自分も飛びながら高速で飛行する小型のネウロイ相手に正確に射撃するのはかなり難しいと言わざるを得ない。ただまあ、緊張してもしょうがないしスコアを稼ぐチャンスとでも考えよう。それより、地上への攻撃がないというのが不気味だ。対空射撃を期待できるという点では都合がいいが・・・やはりネウロイには知能がないのだろうな。

 

 少し飛ぶと、遠くに赤黒い光の集合が見えた。

 

「敵ネウロイ発見・・・うわぁ、虫じゃん気持ち悪い」

「予想よりも多いな・・・ベッケル隊とキューレ隊は左、ブラウン隊は右だ!」

「「「了解」」」

「囲まれるなよ!クライン少尉援護しろ。私たちは正面だ」

 

 言い残してバルクホルン中尉はネウロイに向かって飛んでいく。私は高度を上げ、射撃を開始した。

 

「1、2,3,4・・・こりゃ数うちゃ当たるってよりも、数いりゃ当たるって感じだ」

 

 だが当たりはするが援護として有効ではない。狙った敵にあたってるわけではないからだ。こんな時、マルセイユがうらやましくなるが・・・どれ、やってみるか。

 訓練学校での感覚共有とこっちに来てからのアイツの戦い方を思い出し、再び銃撃を開始。すると・・・

 

「やるな!クライン!」

「それほどでも!」

 

 一度ネウロイから距離をとろうとしていたバルクホルン中尉の進路上のネウロイをうまく排除することに成功・・・したのだが、さっきまで中尉に向かっていたネウロイがこっちにも来るようになった。

 

「っ!こっちきた!」

「ついてこい!」

「はい!」

 

 上下左右に動き、回転し、回避しながら離脱を試みる。

 

「ベッケル隊は落とされた!ブラウン隊とキューレ隊は弾切れだ!私たちも基地に帰還する!」

「そんな!?地上部隊はどうなるんです!」

「戦闘機がこっちに来ている!」

 

「戦闘機じゃっ!?バルクホルン中尉!でかいのが現れました!」

「なんだと!?」

 

 雲の中からさらなる絶望が現れた。まずい、小型だけでも戦闘機じゃ手に余るのにあれは・・・だがあれを放置していたら地上部隊が壊滅してしまう。そうなればネウロイが防衛線を抜けてカールスラント領に入ってくることだろう。

 

「中尉!戦いましょうあれはまずいです!」

「分かっている!!だが弾もないのに私たちだけで戦うなんて無理だ!全速力で基地に戻るぞ」

「そんな・・・」

「急げ!!」

 

 悪あがきとして後ろ向きに飛行しながら撃ってみるが効いていない。さっきまでと違ってあの大きさだとコアを探す必要がある。今の私たちにそんな余力がないのは明白だった。・・・?様子がおかしい?撃ったのに反撃してこない。それに地上部隊へも攻撃している様子がない。

 

「なんなんだ・・・あのネウロイは」

「確かに攻撃の様子がないな・・・地上を攻撃するならもっと高度を下げっ・・・まさか!?」

「バルクホルン中尉?」

 

 突然、中尉の顔色が変わった。あのネウロイに心当たりがあるのだろうか?

 

「聞こえているか!司令!ネウロイの目的は前線への攻撃じゃない!あのまま行けば・・・ミュンヘンだ!」

 

*****

 

 基地に戻ったはいいものの再出撃は時間がかかりすぎるために断念。私たちと入れ替わりで出撃した戦闘機隊は全滅。別のウィッチたちが迎撃を試みたものの・・・小型ネウロイの群れに守られた大型のネウロイを撃墜することはできず、ミュンヘンは火の海となった。

 

 あと一連のネウロイによる攻撃が終わった後、ボニン司令に司令室に呼び出された。内容は・・・そう。今日の出撃で撃墜数が10を超えたので、中尉へ昇進となったこと。その祝いとして休暇をとったらどうだろうとのことだった。

 

 気遣いもあったのだろう。ありがたかったが辞退した。この付近の町からは避難でお店なんかもやってないし、家族に会うのも一苦労だからだ。

 

 ミュンヘンでは逃げ遅れた人々が大勢犠牲になった。避難のための列車があることも相まって多くの民間人が集まっていたのがまずかった。また、ネウロイの瘴気の影響で復興がいつになるかも不明。前線への補給の拠点でもあったため、物資の輸送に影響が出ている。

 

 足りないのは物資だけでなく人もで、特にウィッチは不足が激しかった。徴兵制が始まるんじゃないかという噂もあるが・・・どうなんだろうか。十代の少女をろくに訓練もせず前線に送り出す、それがどんな結果をもたらすかは火を見るよりも明らかだ。でも、数が足りなくなれば・・・

 

「だめだな。悪いことばっかり浮かんできちゃう。早く寝ないとなのに」

 

 

 夜風にでもあたりに行こうか。いつものように歌でも歌いながら。「記憶」にある異世界の歌は、戦場では数少ない私の娯楽だ。気分転換やストレス解消のためにたびたび歌っている。もちろんばれない様に。

 

 月明かりに照らされた、静かで気持ちがいい森の中・・・基地からちょっと距離があって、抜け出すのに難儀するが、落ち着けるしばれにくいのでよく来るお気に入りの場所だ。

 

「~♪~♪」

 

 「記憶」の中の曲なので当然扶桑語である。誰にも内容は分からないだろうが・・・ところどころブリタニア語が混じっていたりもするし、言葉遣いが扶桑と違ったりするかもしれないので、いつも誰にも聞かれないように注意を払っていた。今日も歌う前に周囲を確認した、のだが・・・

 

 私が歌い終わると、木陰からハルトマンが手を叩きながら出てきた。

 

「お~うまいね。そんなに歌えるならもっと早く聞かせてくれればよかったのに」

「フラウ?なんで」

「いや~夜中に基地から抜け出すのをたまたま窓から・・・そんなことより」

 

 ハルトマンは言葉を切って、歩いてこっちに近づいてきて・・・近づいて・・・

 

「ちょ、ちょっとフラウ近いんだけど?」

「何か悩んでるの?」

 

 お互いの息が当たるくらいまで近づいて、ハルトマンは言った。透き通ったきれいな瞳と目が合った。まるで心の中を見透かされているようだった。

 

「え?」

「勘なんだけどね。なんか変だな~って」

「わ、私からしたらフラウのほうが変だけど?」

「私はクルピンスキーさんに息抜きの仕方を教えてもらって・・・」

「絶対それだけじゃないでしょ。噂は聞いてるわよ」

 

 別の中隊に所属していることもあって、実は普段はそれほど会うことが出来ていなかった私とハルトマン。最初は特に何もなかったのだが、時間がたつにつれて・・・問題児っぷりが聞こえてきた。

 

 寝坊はする。訓練から逃げる。上官への態度が悪いなどなど・・・最後の一つに関しては心当たりがないでもないが、少なくとも訓練学校にいたときは寝坊したり訓練をさぼったりするようなことはなかった。十中八九、そのクルピンスキーとかいうやつに悪いことを吹き込まれたのだろう。

 

「私のことはいいんだよ。・・・メラニー。空襲のことを気にしてるの?それとも撃墜された仲間のこと?」

「っ!?・・・別に」

 

「メラニーは優しいから、気にするのもわかるけど・・・」

「・・・ありがとう。分かってる。私にできることはしたって。みんなを守れるわけじゃないって」

「うん」

 

「でも・・・でも、やっぱりつらい。守るための力なのに、私は守れなかった・・・!」

「うん」

 

「必死に努力したのに・・・!こうならないために頑張ったのに・・・!わ、わた・・・わたし・・・」

「・・・うん」

 

 私は、ハルトマンの胸の中で泣いた。

 

 

 

「恥ずかしい・・・」

 

 ひとしきり泣いて落ち着いた私は、恥ずかしくて死にそうだった。あんなに泣いたのいつぶりだ?もしかしたら初めてかもしれない。顔を覆って悶えている私に、エーリカが追い打ちをかける。

 

「気にしなくていいと思うよ。かわいかったし」

「からかうな!私のほうが年上だぞ!」

「1週間しか変わんないじゃないか」

「8日だ!」

「・・・変わらないだろ」

「うるさい!」

 

 

 

「でも、まあ、ありがとう」

「・・・どういたしまして」

 

 恥ずかしいが、まあ普段から顔を合わせるわけでもないし泣いて多少マシになったのは事実。しっかり感謝はしておこう。

 

 数日後、死傷者の増加に伴い第3飛行隊の第7~9までの飛行中隊が解体され、残った第1~6の飛行中隊に割り振られた。うちに来たのはエーリカだった。私は顔を覆った。マルセイユは歓喜した。バルクホルンは頭を抱えた。

 

*****

1940年 3月

 

 年が明けてもネウロイの勢いはとどまるところを知らなかった。オラーシャでは南部戦線のドニエプルラインが突破され、現在はじりじりとウクライナ地域で撤退戦を強いられている。北部でも首都のサンクトペテルブルクが陥落した。

 

 オラーシャのさらに北、スオムスへも攻撃が始まったが、こちらはなんと驚いたことに善戦している。去年12月には大型ネウロイを世界で初めて撃墜。さらに1月にはスラッセンが奪われるも、1か月後にこの地域を奪還。人類初のネウロイへの反攻作戦が成功した。

 

 

 カールスラントは当初、記憶でいうところのポーランド領内にあるヴァイクセル川にて防衛線を構築していたのだが、これが突破された。これより後退するとなるとオーデル川まで下がる必要があるが、そこまで行くともうベルリンが目と鼻の先。東部戦線では地獄の防衛戦が行われていた。

 

 

 南部の私たちも、トランシルバニアのオストマルク軍が撤退戦を開始したことでネウロイのこちら側への攻撃が強まり、以前より防衛が厳しくなった。ウィッチは魔法力が切れれば飛べないので、制空権はもはや相手に取られてるのが普通。ネウロイに知能があったらとっくに突破されてるだろうな。

 

 

 だからこそ、この命令は理解できない。

 

「今、何とおっしゃいましたか?ボニン司令」

「5月に実施される小ビフレスト作戦。これを成功させるため、JG52からもウィッチを派遣する」

 

「無茶です!ここがどういう状態かわかっているでしょう!?今はウィッチ一人だって惜しい!」

「もちろんわかっている。だが、この地域は比較的避難が進んでおり、仮に防衛線が破られても被害が少なく済む」

「前線の兵士たちは・・・戦友たちはどうなるんです!?市民の避難も、まだ終わったわけじゃ」

「もう決まったことだ!」

 

 叫ぶような言葉に、息が詰まった。司令も私と同じなのだ・・・すべて分かったうえで、命令に従っている。

 

「・・・了解しました」

「JG52からは、君を派遣する。上は通信魔法の有用性を買っているようだ」

「通信魔法に関しては、訓練を行ってからのほうがよろしいかと思いますが」

「織り込み済みだ。今月末にベルリンへ移動、そこで結成する第1特別戦闘航空大隊の第1中隊長が君だ」

「は?」

「1か月で訓練しろ」

 

「はあ、無茶苦茶ですね」

「戦争だからな」

 

 

 話は終わり、退室しようとした私にボニン司令が声をかけた。

 

「別れはしっかりしておいた方がいい。・・・次会えるとは限らん」

「・・・お元気で、ボニン大尉」

「ああ、君もなクライン中尉・・・すまなかった」

 

 

 謝罪は聞こえないふりをした。

 

 

「というわけで、お別れだ。フラウ、バルクホルン」

「えー!」

「・・・仕方がない。が」

 

「ここも、多分ベルリンも。これからどんどん厳しくなる。もう会えるか、分からない」

「そんなこと言わないで!」

「エーリカ落ち着け」

 

「だが、そうだな。そんなことを言うなクライン。・・・必ず、生きてまた会おう」

「・・・そうだね。うん、約束」

「破ったらお墓に酒かけるぞ~」

「ちょ、やめてよ!あれ苦いしくさいし嫌いなんだから」

「え~おいしいじゃん」

「エーリカ?あなた飲んだことあるの?」

 

「ほう・・・説明、してもらおうじゃないか。エーリカ・ハルトマン少尉?」

「あ・・・て、てへ?」

 

 てへ、じゃない!とバルクホルンが雷を落とすと、どこかへ逃げ出すエーリカ。最後までにぎやかで、しんみりしなくてよかった。バルクホルンは大体反応がわかりやすいが、エーリカは・・・最近は以前にもまして反応が読めないところがある。

 

 そうだ、一度エーリカをこんなにしたクルピンスキーとやらにお礼しに行こう。そんなことを考えてたら

 

「そうだメラニー」

「うひゃぁ!?ふ、フラウ?え?なんで?今出て行ったばっかじゃ」

「後で格納庫に来て」

「う、うん。分かったけどどうして?」

「やりたいことがあるんだ~」

 

「ハルトマン!ここにいたか!それからクライン、お前もお前でどうして味を知ってるんだ!」

「え!?そ、それは・・・」

 

 「記憶」で・・・なんて言えるはずはなく。私たちは十分にわたる鬼ごっこの末、お説教を受けるのだった。

 

*****

 

「言われた通り来たけど・・・やりたいことって?」

 

ストライカーユニットの格納庫に行くと、後ろ手に何かを隠したエーリカがいた。

 

「ふっふっふ~じゃん!」

「黒いペンキ?」

「これでストライカーを塗ってさ。目印にしよう」

「さすがにこことベルリンじゃ・・・」

 

「そうじゃなくて。私たちももう結構有名になったからさ。おそろいの塗装で戦ってれば、手紙が出せなくても噂が届くと思うんだよ」

「・・・私がそんなに活躍できるか分からないけど。いいよ。やろうか」

 

 二人でペンキを使って、ストライカーの端を黒く塗った。ただ、私もエーリカも絵心に恵まれなかったらしく、ただ塗っただけなのになかなか色むらがひどかった。そんなこと気にならないくらいうれしかったけど。

 

 

 生きてまた会おう。その約束を守る決意を胸に、私はベルリンへ向かった。

 




オリジナル要素

特別戦闘航空大隊

 小ビフレスト作戦のため、すでに避難が完了しているバイエルンやザクセンなどからウィッチを引き抜き、臨時に編成された大隊。
カールスラント各地からエースと呼ばれる選りすぐりのウィッチが集結した最強の大隊でもある。その強さたるや大隊の撃墜数アベレージが20を超えるほど。

 一応言っておくが、501は化け物の集まりなので比べてはいけない。あとまだ開戦から1年たってないくらいなので1期とは状況が違う。

 また、昼戦担当の戦闘航空大隊のほか、爆撃担当、夜戦担当でそれぞれ特別航空大隊が編成されている。


 メラニーが歌っていた歌はダウナーウィッチ 作曲:廉。基地への帰り道でエーリカに歌について聞かれて困り果て、秘密だと言い張った。
 もちろんエーリカは扶桑語の部分は分からなかったが、ブリタニア語については・・・

*****

 なんか盛大にUAやら評価やら伸びててびびっております。これは期待にこたえたい、ですが次回の投稿はおそらく土曜日ではないかな~と。もしかしたら金曜にできるかも。まあ、早く上げれるように頑張ります。

ほどほどにおまちください。
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