ダックスフンドの首輪   作:転音

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第五話

 

第1特別戦闘航空大隊(SJB1)「フリューゲル」

役職   名前          階級 原隊 撃墜数 固有魔法

大隊長  フランツィスカ・ゴッツ 大尉 JG26 42機  弾丸加速

第一中隊長メラニー・G・クライン 中尉 JG52 27機  通信

     ハンナ・フィリップ   中尉 JG54 31機  念力

     アンネリース・ハックル 軍曹 JG77 19機  透視・遠距離視

     ヨハナ・キルシュナー  少尉 JG51 23機  重力軽減

etc.

 

 

 うーん。書類を見て思わず唸った。何というか、超豪華メンバーである。固有魔法のオンパレード、所属する全員が撃墜数二桁以上・・・とんでもない精鋭部隊だ。

 

 ただ、精鋭である一方で普通の大隊に比べて人数が少ない。一般的な戦闘航空団をもとに考えれば、1個中隊に所属するウィッチの数は12名。中隊が3つ集まってできる航空隊が36名。そして航空隊が3つ集まって108名である。

 

 中隊より上の大隊というからには、私は航空隊相当の36名のウィッチが所属するのだろうと思っていたのだが・・・何とびっくりたったの12名しかいない。これでは実質中隊ではないか・・・と思う一方、中隊長なんてやったことが無い私が突然中隊長を任せられる意味も分かった。だって1つの中隊に4人しかいないのだから。

 

 

 そんなこんなでご紹介しよう!わが中隊のメンバーを・・・誰に紹介するのかは分からないが

 

ハンナ・フィリップ中尉 原隊のJG31では第4飛行中隊の中隊長をやってて撃墜数も私より多い。なんでこの人が中隊長じゃないんですか?通信魔法?そうですか・・・

 

アンネリース・ハックル軍曹 もともとは固有魔法を生かしてスオムスやオラーシャなどの降雪地帯なんかで戦っていたすごい人。原隊は今アルプスで戦っているらしい。ウィッチになってから雪が降るところが嫌いになったとのこと。

 

ヨハナ・キルシュナー少尉 少尉とは思えないくらいの撃墜数だが、どうやら上官への態度の悪さと被撃墜数の多さが理由らしい。ストライカーユニットって高いからな・・・

 

 

 以上まじめなフィリップ中尉、内向的なハックル軍曹、問題児のキルシュナー少尉がこの中隊のメンバーである。そして今は私の通信魔法を使いこなすための訓練・・・に向けた説明をしている。

 

「私の通信魔法はうまく使えば瞬時に全員に指示を出し、また皆さんからの報告も素早く全員に共有することが出来ます」

 

「ただその一方でしっかりと訓練を積まなければ、突然脳内に送り付けられた情報に混乱してしまって・・・かえってみなさんを危険にさらすことにもなりかねない危険なものです。そのため、訓練によって通信魔法に慣れ、使い方をしっかりと身に着ける必要があります」

 

「なるほど・・・それで、どのような訓練を?」

「まずは実力を見たいから・・・そうだなぁ、私とキルシュナー少尉。フィリップ中尉とハックル軍曹でロッテを組んで、演習をしよう」

 

「了解しました。宜しくお願いします」

「お、お手柔らかにお願いします・・・」

 

あっちの二人は、まあ何とかなるだろう。問題は・・・

 

「俺の機動についてこれんの?あんた」

「あっはは・・・大丈夫だと思うよ」

 

 さて俺っ子のキルシュナー少尉だが、彼女の戦い方の特徴は重力軽減の固有魔法を使った普通実現不可能な機動である。ドッグファイトを好むタイプであることも相まって、原隊では彼女についていけるウィッチが上官含めて誰もいなかった。それが反抗的な態度につながったようだが・・・

 

 私の場合は話が別。訓練学校にいた時からシュトゥルムで無茶苦茶な機動をするエーリカに振り回されてきたのだ。ただ重力を軽減するだけならついていくのは容易い・・・と思われる。

 

 バルクホルンほど規律にこだわるつもりはないが、命令には従ってもらわないと困るのでここは実力・・・という名の慣れで一定の信頼を稼ぐとしよう。

 

 

「キルシュナー少尉は好きに動いていいよ。私が合わせる」

「へえ・・・いったな?なら遠慮なく!!」

 

 そう言うが早いか、全速力で相手に突っ込んでいくキルシュナー少尉。・・・直線に飛んでるうちはどんな感じか分からないな。相手のフィリップ中尉は念力を利用した重武装による圧倒的な弾幕が強力なウィッチなので、それをどれだけかわせるか、撃墜までできるのか注目するとしよう。

 

 ハックル軍曹がいるので間違いなくこちらの行動はばれている。どこから攻撃してくる・・・?

 

「っ!」

 

 瞬間、戦場の勘が強烈に反応しとっさに右へよけると、上空からフィリップ中尉が現れた。

 

「あっぶな・・・」

「かわしますか・・・さすがですね」

「褒めていただけて光栄です」

 

 軽口を叩けど余裕はない。二つのMG42S・・・つまり重機関銃で張られる弾幕はすさまじい。上をとられてるのもよろしくない。

 バルクホルンと会ってなかったら間違いなくかわせなかっただろう。

 

 キルシュナー少尉はおそらくハックル軍曹に足止めを食らうだろうし・・・助けは期待できない。自分一人で何とかするしかない。それに

 

「こっちばかり動かされるのは納得いかないなぁ!」

 

 重機関銃といえどずっと撃ちっぱなしというわけにはいかない。銃撃の途切れたすきをついてすぐさま狙いを定める。当然中尉も回避するが、偏差射撃は得意技、相手が重武装ならなおさら外す気はしなかった。

 

 

 

 結局、演習はフィリップ中尉を撃墜し、2人がかりでハックル軍曹を倒すことで私たちの勝ちで終わった。いやはや、危うく少尉と軍曹の力をみそびれるところだったが、大体は分かったし良しとしよう。

 

 少尉との連携も大丈夫そうだった。風で無理やり進路を変えるシュトゥルムとは少し勝手が違ったが、それでも何とかなる範疇だった。大見得切った手前ついていけなかったら恥さらしにもほどがあるので、後でほっと一息ついたのは内緒である。

 

*****

 

 訓練が始まって数日、フィリップ中尉からお買い物に行きませんか?、と誘われた。

 

「何か欲しいものがあるの?」

「そうじゃないですけど・・・休めるときに休んでおくのは、訓練と同じくらい大事なことですし」

「いや~堅物かと思ったら案外話が分かるな~お前~!俺は賛成!」

「わ、私はどちらでも・・・」

 

「まあ確かに。張りつめっぱなしもよくないか・・・申請してくる。3日後くらいになると思うけど」

「ありがとうございます」

 

「よっしゃ!どこに行こうかな~」

「本屋さんとか・・・」

「お前本が好きなのか?あんなの何が面白いのか俺にはさっぱりだ」

「す、すみません」

「別に悪きゃねえけどよ。酒でも飲んでた方がよっぽどいい気分になれるぜ?」

「黙認されてるとはいえ、ほどほどにしてくださいね」

「ちぇっ、やっぱりお前堅物じゃないか」

「別にやめろと言ってるわけじゃ」

 

「はいはいそこまで」

 

 なんだかヒートアップしてきたのでパンパンと手を叩いて注目を集める。

 

「楽しみなのはわかるけど、今日はまだ訓練。しっかり集中してやるように」

「は~い」

「切り替え!」

「了解しました!」

 

 

 うんうん。キルシュナー少尉もなんだかんだ良い子な気がする。問題児ではあるが、子供っぽいだけで不良って感じではない。言うことも聞くし、他の子との相性も悪くなさそうだ。

 

 

 というわけでやってきた久しぶりの休日。もとはといえば田舎者の私はさすが帝都というべきベルリンの街並みに圧倒されていた。きれいだし、人が多いし、食べ物もおいしいし・・・ちょっと高いけど。とにかく歩いてるだけで楽しかった。

 

 そんな様子は当然ほかのメンバーにもばれていたようで・・・

 

「中隊長、結構子供っぽいところもあるんですね」

「な~。意外だったぜ」

「・・・からかわないで」

「あの、その・・・かわいらしかったですよ?」

「恥ずかしい・・・」

 

 隊長らしくしっかりしようという私の心掛けが灰燼に帰した一日でもあった。

 

 そんな楽しい日の最後、私たちは偶然通りがかった装飾店に来ていた。

 

「すごい・・・キレイです」

「彫りが細かいなぁ・・・どうやってこんなの作ってるんだろ?」

「鷹の形したなんかないかなぁ・・・」

「っ!?・・・高いです」

 

 フィリップ中尉のもらした言葉に、全員が思わず値段を確認する。

 

「うへぇ」

「これは・・・」

「いくらウィッチが高給取りでも買えないね・・・」

 

 残念だけど、とあきらめかけたその時、会話を聞いていたのだろう店主のおじいさんが手招きしているのが見えた。

 

「なんですか?」

「いや、何かアクセサリーが欲しいならこれはどうかと思ってね」

 

そう言って見せてくれたのは、羽のモチーフがついたネックレスだった。

 

「かわいい」

「鷹の翼じゃないけど、いいなこれ」

「私たちの隊の名前にもピッタリですね」

「おいくらですか?」

 

「これは・・・そうだね、6マルクだ」

 

「まあ、買えるか。どうする?」

「どうせなら、お揃いで付けたいです」

「私はいいとおもいます」

「俺も賛成。せっかくだし、使う予定もないからなぁ」

 

「じゃあ、これを4つください」

「かしこまりました」

 

 老紳士は頭を下げた。

 

「そういえば、ネックレスってなんか意味があるんじゃなかったっけ」

「へ~そうなのか。そういうのってなんにでもあるよな~」

「確か・・・翼や羽のモチーフは幸運とか上昇、飛躍の意味があるらしいですよ」

「よく知ってますね、ハックル軍曹・・・さすが、本をよく読むだけはあります」

「きょ、恐縮です」

 

 

 夕焼けに照らされた奇麗な街並み。楽しい時の終わりというのはいつだってさみしくなるものだ。朝よりも少なくなった口数と、山ほど増えた思い出を抱えて、私たちは帰路につくのであった。

 

*****

1940年 5月 ベルリン東約60㎞ オーデル・ナイセ防衛線

 

(・・・見えました。前方、距離3000)

(了解、作戦通り行く)

(((了解)))

 

 4人編隊で飛んでいたところからキルシュナーとフィリップが先行し、私とハックルは高度を上げる。

 

 そしてまずキルシュナーが突っ込み、その機動力でネウロイの攻撃を集め、すかさずフィリップの弾幕、私とハックルの狙撃で核を見つけ・・・破壊。

 

 相性抜群のトップエースたちが通信魔法によって完璧な連携をとったら、これほどの戦力になるのか。自分たちでやったこととはいえ、あまりにも簡単にネウロイを落としてしまった事実に思わず震えるほどだ。

 

 ただ、感動している時間はない。ここは最前線、ネウロイがひっきりなしに飛んでくる。

 

(・・・北北西 距離2000)

(了解、次は狙撃を試す)

(了解、敵をひきつけます)

 

 ハックルと銃を取り換え、構える。

 

(もう少し右・・・3、2、1、今です)

 

 ドン!と合図とぴったりのタイミングで放たれた弾丸は・・・

 

(命中・・・ネウロイの損壊は軽微です)

(技術的にできても銃が悪いか。基地から連絡が入った。ロッテを変える、キルシュナーはハックルと)

((了解))

(フィリップは私についてきて)

(了解)

 

 遠近でバランスの取れているだけでなく、私がどちらもこなせることもあって戦場で取れる選択肢が多いのも、この中隊のいいところだ。本当に、エーリカとマルセイユには頭が上がらないな。

 

 

 この日は特に問題もなく、順調な滑り出しだったといえるだろう。さすがに、私たち大隊だけでなく、もともと東部戦線に配置されていた航空団もいるわけで、ウィッチの数が潤沢なのが影響しているのだろう。

 

 ネウロイの数が思ったより少ないこと、自分たちの実力の高さが相まってキルシュナー少尉は調子に乗っていた。

 

「思ったより余裕だったな・・・ネウロイってあんなに弱かったか?」

「まあ・・・一人で戦うよりは」

「油断や慢心はよくないですよ。命にかかわりますから」

「その通り・・・ということで、キルシュナー少尉はフィリップ中尉に訓練をつけてもらうように」

 

「え~こないだまで訓練漬けだったんだから少しくらい」

「了解しました。さあ少尉、その慢心叩き潰して見せます」

「・・・こわい」

 

 助けて~という断末魔とともに連れていかれるキルシュナー少尉。元気があって大変よろしい。ハックル軍曹も、家族に手紙を書くと言って、部屋へと戻っていった。

 

 ふむ。手紙か・・・私も作戦に余裕がある今のうちに出しておこうかな。いつ届くかも微妙だし、早めのほうがいいだろう。

 

 最近、南部の黒い悪魔として有名になり始めた同期を頭に浮かべ、私は久しぶりに手紙を書いた。普段書類仕事をするときは重く感じるペンが、この時は全く気にならなかった。

 

*****

 

「ハルトマン、クラインから手紙だ」

「メラニーから?・・・ふ~ん」

「元気でやってるみたいだな」

「そうだね・・・返事したほうがいいかな」

「早い方がいいぞ、いつ届くかわからん」

「はいはい」

 

 

・・・だが、このエーリカの返事はメラニーへ届くことはなかった。6月にはネウロイはエルベ川に到達、そして・・・ベルリンに、ネウロイの巣が現れたからだった。




 ここすきとかもちゃんと見ております。まあ、やってくれる人そんなに多くないのであまり反映もできないのですが・・・それはそれとして、ちゃんと見た結果エーリカとの絡みはやっぱ好きなんだな・・・と思ったけど

 申し訳ない。ちょっとの間はエーリカお休みです。

 ここからは地獄成分多めでお送りいたします。あと、独自要素、解釈、設定なども増えると思われます。ご了承の上読み進めていただきますと。

 残虐な描写が真価を発揮するときが来たのだよ・・・曇らせもあるかも?


 話は変わりますが、一度ランキングに入ってからすごいですね・・・おかげでモチベが大量です。ありがとうございます。

2022/9/17 21:26 加筆
2022/9/21 5:59 誤字修正
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