ダックスフンドの首輪   作:転音

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第1特別戦闘航空大隊の略称をSJB1としました。


第六話

 

1940年 6月

 

「本作戦は、ベルリン上空に突如出現したネウロイの巣の破壊を目標として行うものである・・・ね」

「巣の破壊・・・可能なんでしょうか?」

「さあ?不確定要素が多すぎて、作戦や計画と呼ぶのもためらうような代物だし、この紙切れ」

「・・・全方位から大火力で攻撃。SJB1・・・私たちが内部に突入、破壊するですか」

 

「破壊って言ったって、どうすりゃ壊れんだあんなもん」

「分かんない」

「出てくるネウロイを突破できるんですか?」

「分かんない」

「その、大型が現れたりしたら・・・」

「司令部曰く、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応せよ、とのことよ」

 

「かっ!やってらんねえな」

「でもやるしかない。まだベルリン近郊から避難が済んでない以上は、これ以上ネウロイ相手に後退を続けるわけにいかないんだから」

 

 

 5月に発動した小ビフレスト作戦は、当初予定通りに進んでいた。カールスラント軍は歴史上類を見ないほど大量のウィッチを投入し、甚大な被害を出しつつも制空権を拮抗以上に持ち込んだ。3月以降、ずるずると後退していた前線を止め、防衛線を維持することが出来ていたのである。まさに命を使って数秒の時間を稼ぐようなやり方で。

 

 しかしその拮抗は突如として崩れた。6月5日、帝都ベルリン上空に何の前触れもなく黒い雲がとぐろを巻き、中からネウロイが現れたのだ。ネウロイの巣である。

 

 前線の部隊は東西から攻めてくるネウロイによって、損耗率90%という数字をたたき出し文字通り全滅。駐屯していた陸上部隊以外守備隊がいないベルリンに、参謀本部は可能な限りのウィッチを動員し、死守命令を発動。多くの軍人、民間人を犠牲にベルリンの陥落を防いでいた。

 

 この状況を変えるため、参謀本部はネウロイの巣の破壊作戦を立案、防衛線をエルベ川へ下げベルリンに陸空戦力を結集。

 

 

(これだけウィッチが集まると壮観ですね)

(ナイトウィッチから訓練兵まで無理やり動員してかき集めた戦力だからね)

 

 今回の作戦のためにカールスラントはおよそ200名のウィッチを集めた。1つの都市の上空に、200である。それはそのまま、この作戦の重要性を物語ると同時に、失敗したときは取り返しがつかないことも意味する。

 

(改めて確認するよ。私たちの役割は一点突破、他の隊が巣から出てきたネウロイをひきつけている間に、内部へ入って破壊する。・・・それから撃墜者の救助は禁止。地上部隊に任せること)

(((了解))))

 

 ウィッチが空で取り囲み、地上では所狭しと砲が並ぶ。

 史上最大規模の空戦は、そうして幕を上げた。

 

 

 まず始まったのは地上に並んだ対空砲や高射砲による攻撃である。空を埋め尽くさんばかりに砲弾が飛び、ネウロイの巣に命中するとなかからぞろぞろと小型、中型の虫や鳥、飛行機などを模したネウロイが飛び出してくる。

 

 飛び出したネウロイは攻撃中の地上部隊に向かって降下していくが・・・ここでウィッチたちによる攻撃が始まる。一度は下に降りて行ったネウロイが、標的をウィッチに変えてまた上昇・・・この無駄な動きをしている間に、奴らはずいぶんと数を減らすことになった。

 

(行くよ!)

(((了解!)))

 

 その隙を逃さず、私たちが一気に巣までの距離を詰める。

 

(雑魚にかまわず巣まで一直線だよ!)

(数が多い!)

(戦闘は最低限ですが・・・これでは難しいですね)

 

 減ったとはいえまだまだ数は多く、周りを見ればきれいに取り囲んでいた陣形は崩れ、敵味方入り混じる乱戦に変貌していた。

 

(・・・仕方ない)

「司令部へこちらフリューゲル第一中隊、当初の作戦実行は困難と判断、強行偵察の許可を求めます」

「・・・やむを得ないか、許可する。」

「ありがとうございます」

 

(帰りの分だけ残して全力で突破、巣の内部をしらべる)

(((了解!)))

 

 進路上のネウロイをなぎ倒しながら、確実に巣に近づいていく。

 

(隊長右っ!)

 

 フィリップからの通信で何とかビームをかわし、お返しとばかりに回転しながら銃弾を浴びせる。

 

(助かった!)

(どういたしまして)

 

 通信魔法のいいところの一つ、お互いがお互いの死角を補うことで全方位からの攻撃を察知できる。これを身に着けるのは相当大変だったし、訓練では情報をさばききれずに撃墜されたりもしたが・・・何とか実戦に間に合わせた。おかげで私たちの中隊はまだ被撃墜0である。

 

 そんな伝家の宝刀もフル活用しつつ、ついに

 

(隊長、巣の真下です)

(了解、中は見える?どうなってる?)

(それが・・・ただ雲が渦を巻いてるようにしか。心臓部と言えそうなものは何も・・・)

(フィリップはハックルと位置を交代、ハックル!透視で中を見てみろ)

((了解))

 

(中心、高度およそ・・・6000m、ネウロイのものによく似たコアのようなものがあります)

(それがコアか!そこまで行けると思う?)

(・・・コアがあるところまでらせん状に雲の道があります。私たちだけでは)

(了解、護衛を頼む)

 

「司令部へフリューゲル第一中隊より!巣の中心高度6000m付近にネウロイのものによく似たコアと思われる赤い水晶体を発見!」

「よくやった!攻撃はできるか?」

「近づく必要がありますが、我々だけでは無理です」

 

「了解した。・・・全軍に次ぐ、巣のコアの位置が判明した。雲の中心高度6000mだ!最大火力を叩きこめ!!」

 

 司令部からの指示に従い、私はハックルと共にコアへの狙撃を行った。

 しかして戦いは第二幕へ突入した。私たちはパンドラの箱を開けてしまったのだ。

 

 

 

 私たちの放った弾丸は正確にコアに当たった。以前動いている目標相手に命中させたのだから、これくらいはできる。コアの破壊には及ばなかったことも含めて想定内。何らかの反撃が来るであろうことも想定内。

 

(けど!ここまでとは聞いてない!)

 

 弾丸を放ってから数秒後、まず初めにハックル軍曹からくる!という念話が来た。

 

 その数秒後には、大して距離をとることもできずに、私たちはネウロイの波に飲み込まれた。

 例えるならば、トト〇でまっく〇く〇すけが壁の裂け目から出てきた時のような、とにかく猛烈な暴風雨のようにネウロイが出てきたのだ。

 

 その数や勢いは第一波をはるかに上回るほどで、瞬く間に私たちはネウロイの大群のど真ん中に取り残されてしまった。

 

(帰してくれる気配は、ないですね)

(いや~はっは・・・これはちょっと)

(・・・お父さんお母さん、ごめんなさい)

 

(あきらめちゃダメ!これだけいたら、私たちが死ぬだけじゃすまないよ!)

 

 思わず漏れてきた諦念を一喝し、打開策を探る。地上も攻撃を受けており対空砲などの援護は期待できない。

 

 空中はもっと地獄だ。そこらじゅうで黒煙が上がり、甲高い悲鳴が聞こえてくる。中隊や小隊どころか、2機一組のロッテの形すら保っておらず、軍隊としては完全に終わっている。

 

 

 どうしようも・・・いや、私の魔法をフルに使えば

 

 精神感応を最大レベルに引き上げれば、一切のずれもない完璧な意思疎通が可能になり、視界や聴覚などの共有も行える。しっかり使いこなすことが出来ればネウロイの攻撃なんてまず当たらないだろうし、もしかしたらこの状況から抜け出すこともできるかもしれない。

 

 だがそれは魔法を最大限生かせたらの場合だ。訓練もせずに実戦でいきなりやるようなことではないのは素人でもわかるだろう。だって四人で共有したら、自分の感じているすべての感覚がいきなり4倍になるようなものだ。情報をさばききれないし、混乱したり発狂したりする可能性もある。

 

 

 やはり危険だ!だが方法がほかにあるわけではない。そんな私の苦悩が伝わったのか、みんなが口々に声をかけてくれる。

 

「大丈夫だ。何か案があるんだろ?任せとけって、何せ俺たちはトップエースだ。天才中の天才なんだぜ?」

「隊長、あなたのことは信頼しています。私たちのことをよく考えてくれる仲間想いな良い人だと」

「指示してくれたら・・・頑張るから」

 

「・・・分かった。いい?みんな、これから起こることを怖がらないで、冷静を保ってね・・・わかったら、私の手を触って」

 

 三人はためらわずに手を取った。

 

*****

とあるモブウィッチ Side

 

 一緒に飛んでいた子が落とされ、必死に逃げ回る事しかできずに・・・それさえも苦しくなって。死が刻々と近づいていた中、突如周囲にいたネウロイが砕け散った。

 

 ・・・何が起こったのか?訳が分からなかった。私の周りだけじゃなく、やけにネウロイの数が少なくなっている場所がそこら中にあった。

 

 その空白地帯を追っていくと・・・いた!

 

 まるで一つの生き物のような完璧な連携で飛ぶ4人のウィッチ。間違いない!あの人たちが私を助けてくれたのだろう。

 

 背中に目でもついてるのか、常に最小限の動きでネウロイの攻撃をかわし、それぞれが的確にお互いをカバーしあい、無駄撃ちをすることもなく・・・まさに理想形ともいうべき連携で流れるように次々とネウロイを撃ち落としていく。

 

 あまりの美しさに数秒の間見とれて・・・慌てて、戦場であることを思い出し、急いで基地へと撤退するのであった。

 

 それにしても、あんな部隊いただろうか?あんなに強いんなら噂の一つぐらい聞こえてきてもおかしくないと思うけど・・・

 

*****

 

 カールスラント軍の総力をかけたネウロイの巣の破壊は失敗に終わり、結局はさらに被害を増大させる結果となった。集められた陸空戦力のほとんどが軍における全滅レベル・・・つまり3割以上の戦力を喪失、素早い再編成により帝都の陥落や前線の崩壊こそ防げたものの、今後の作戦継続に大きな影響が残る結果となった。

 

 SJB1においても、被害は甚大だった。第2中隊は一人を残して壊滅。第3中隊も1人が死亡、1人が墜落によるけがで後方へ・・・責任を問われて大隊長のフランツィスカ・ゴッツ大尉は原隊へ送り返された。

 

 かわりに第1中隊長であり、今回の作戦で大きな戦果を挙げた「北部の黒い悪魔」こと、メラニー・G・クライン中尉が、大尉へと昇進の上、大隊長兼第1中隊長へ任命された。

 

 エースがあつまるエリート部隊であるだけに補充は難航し、第2中隊と第3中隊を合併したうえで何とか残り1人の人員を確保。しかしやはり数が必要なことは多く、制空権をとるというよりは局地的な戦闘に投入されることが多くなった。

 

 

「黒い悪魔って・・・私には恐れ多いなぁ」

「か、かっこいい・・・と思いますけど」

「うれしいけどね?南部の黒い悪魔とは原隊で一緒で・・・私、空の上ではあの子に勝てたことないよ」

「大隊長より強いんですか。すごい人もいるんですね」

「そんなことないよ、私が所属してる中隊の中隊長なんかも、私よりすごいよ?」

「へぇっておいおい。お前よりすごい奴が二人もいるってどんな部隊だ。うちよりよっぽどエリート部隊だろ」

 

「確かに。言われてみればやたら強い人が多かったような・・・ロスマン曹長のおかげかもね」

「曹長?」

「教えるのがうまい人がいるんだ。黒い悪魔・・・エーリカも、ロスマン曹長に教わってたんだよ」

「それは・・・ぜひ一度お会いしたいですね」

「そうだねぇ」

 

 あの時、みんなが私の手をつかんですぐ魔法出力を上げた。といってもいきなり上げすぎると危ないので、徐々にレベルを上げていき、慣らしながらといった感じだったが。

 

 通信魔法としての訓練で情報処理能力なんかを磨いていたことが功を奏し、何とか精神感応にも適応。その後は驚異的な連携力でネウロイの包囲から抜け出し、友軍の救援に当たった。

 

 間違いなくたった4人の小隊にしては破格クラスの200機撃墜を成し遂げ・・・誰が撃墜したのかあいまいな戦果に関しては3人に譲られる形で私のものに。結果として通算撃墜数が100の大台を超え、北部の黒い悪魔としてずいぶん有名になった。あと、私たちの中隊も「サイレントウィッチーズ」として名をはせることとなった。なんでも無言かつ何の動作もせずに完璧な連携をとることが由来だとか。

 

 

 精神感応については、帰ってきた後ちゃんと説明した。命令違反かつ機密を知ってしまったことに怒りたいが、助けられたばっかりに何も言えずに微妙な顔をするフィリップ大尉、かっけー!と純粋に目を光らせるキルシュナー中尉、無言で聞かなかったことにするハックル曹長と、三者三様の反応だったが、ひとまず受け入れてもらった。

 

 心を読まれるなんてふつう嫌だと思うのだが・・・私の魔法を使う前提で訓練を行うことになったりと、受け入れてもらえて安心した。それと同時にこの信頼を裏切らないようにしなくては、とより一層強くなることを決意した。

 

 




 確実に戦況が悪化していくスタイル。対空砲とか機関銃とか出てきますが、使用兵器などについては、細かく名前なんかを出すつもりはないです。一応、当時の武器を調べてスペックがおかしくなりすぎないようにはしていますが・・・ある程度はふわっとした感じで認識してもらえれば。


 RtBとか見ればベルリン防衛の描写をもっと細かくできたり、ネタを入れられたりするんでしょうけど・・・もともとストライクウィッチーズ第12話までで終わりの予定の話ですので、多少他と矛盾があったりしても許してつかぁさい。調べるの大変なんじゃ・・・

2022/9/18 6:14 誤字修正
2022/9/21 6:00 誤字修正
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