【天界・競走馬日本支部】
「……クリークの奴、どうにも外界を気にしているようだな」
オグリキャップが無限人参を噛じりながら最近こちらにやってきたスーパークリークのことを眺めている。その隣に同じく芦毛のタマモクロスが静かにやってくる。
「なんや、最後に種付けした子供がG1荒らし回ってるらしいで」
「それはすごいな……最後の一粒種というやつか……?」
「クリークの子供は結構悲しい成績やったからな!」
「タマ……それは私にも効く……」
「ワイもや……」
芦毛の二頭は天界の澄み切った大空を仰ぐ。
そこにもう一頭芦毛の馬がやってくる。
「俺にも無限人参くれよ」
「マックかいな、おまえもこっち側やろ」
「なんだよ……俺は孫がヤバイ活躍してるからいいんだよ……」
「おまえなぁ……ワイ達はサンデーの血の入ってないG1馬の話しをしとるんや!」
タマモクロスが顔を揺らして呑気に散歩している青鹿毛の一頭に視線を向けさせる。
『お父さん、ダートの走り方教えて』
『4つの足を動かす。それだけ』
『もっと詳しく教えてよ! 砂の僕とか言われてる子がいるから怖いんだよ!!』
「いや、アレは性格はブサイクだけど根は良い奴だから」
「ホンマにおまんら……」
オグリキャップが静かに外界を覗いているスーパークリークの隣に立つ。
「おお、これは凄いな……これだけの逃げをして……」
「オグリか……ああ、俺の最後の息子だ……」
「ん? まて、この子はアレのような性格ではないようだが……」
父親と戯れているサイレンススズカを見る。
「いや、この子は差される恐怖感を楽しんでいるみたいだ」
「それは……凄いな……」
「俺もそう思う」
外界で先輩競走馬をヒイヒイ言わせている息子を神妙な表情で眺めるスーパークリーク。
「あ? なんだお前達が外界を見るなんて珍しいな……おお、こいつもオレの孫か?」
「いや、俺の息子だ。この品のある顔を見ればわかるだろ」
「喧嘩売ってんのかゴラ!? ダート行こうぜ」
「クリーク、代わりに遊んでくる」
「ま、まてよ!? ちょっとまてよ!! オグリは反則だろうが!!」
「ありがとうオグリ」
オグリに連れて行かれるサンデーサイレンス、明日はどっちだ?
お父さんを奪われて退屈になったサイレンススズカがスーパークリークの隣に立つ。
「……凄い逃げ」
「ああ、うちの息子は逃げ専なんだ」
「……会いたい」
「ん? どうしたんだスズカくん」
「いや、凄く汚い逃げ方してるから……スマートファルコンくんにも逃げの美学を教えに行ったら威嚇されて……」
実は逃げ馬の元に現れては助言して帰っていく逃げマイスターのサイレンススズカは気の抜けた逃げをしているイッテンコウセイの逃げに説教をしたいらしい。
「ふむ、なら私と同じようにレース中に助言してやればいい。凄く喜ぶぞ」
「次のレースはどこなんですか?」
「宝塚記念らしい」
「……マジすか? そういえば屋根は誰なんですか、これだけ勝ってるならタケちゃんなんですかね」
「いや、二年目の新人らしい」
「えぇ……普通ならタケちゃん乗ってるでしょ……」
「相性いいみたいだからな、無理やり変える必要もないだろ。タケちゃんすっごく乗りたがってるが」
「これで一度も乗れなかった渡米しそう(笑)」
【人生オンライン(サラブレッド・スタート)】
続きだぜ!
あれ? なんか挨拶の前に物語が展開されてるような気がするけど気にしないぜ!
そういえば今日はジャニ系調教師、厩務員さんがソワソワしててなんだがオレまで不安になってくるぜ!!
「あ! タケさんはじめまして!!」
「いやいや、そんな改まった挨拶はいらないよ」
「いえ! レジェンドのタケさんを無視なんてできませんよ!!」
うーん、誰だろうこのおじさん? 全然ジャニ系じゃないし、本当に人が良さそうなおじさんって感じ……もしかしてオレみたいな超淫乱競走馬は気性難に認定されてるから調教師さん厩務員さんにプラスしてお世話係も必要なのかな(笑)
それにしてもオレに向けてくる視線が熱いぜ! オレ、この人に何かしちゃったのかな? もしかして良血をガン掘りし過ぎて馬券とかいうの外しまくっちゃったのかな? やっぱりオレって罪づくりなりねぇ。
「宝塚記念はこのイッテンコウセイ号に乗せてもらいますからね」
「え!? コウセイは気性が穏やかで福山くんとも折り合いがついていますし……」
「直談判したんですよ、クリークの最後の産駒……クリークは僕の恩師のような存在ですから」
ウッソだろおまえ!? え、オレの大好きなジャニ系を通り越して福○雅治系イケメンの騎手さんの代わりにこのおじさんを乗せないといけないのかよ(涙)
オレ、イケメンに囲まれて淫乱になっていく競走馬なのにそりゃねーぜ!!
でも、オレって馬だから人間に意見とかできないし……あーあ、やっぱりオレってば人間のペットでしかないんだなってネムネムの顔で白け気味。
「ああ、クリークそっくりだ……」
おじさんがオレのことをナデナデしてくれてるけど、お父さんの名前を連呼してるってことはお父さんと知り合いなのかな? 調教師、厩務員さん達に比べると倍くらい大人だからお父さんに乗ったことがあるのかなぁ?
そんなこんなで調教開始、でも、今日乗ってるのはみんながタケさんって呼んでるおじさんだ!
うーん、なんなりね? 背中に乗せても重さを全然感じないっていうのかなぁー? 乗るのが上手いって言うのかなー?
「ああ! イクッ!?」
今日も今日とて先輩競走馬が絶頂しながら後退、次の先輩が補充される。
でもね、徹底的にオレを、徹底的にいつもの走りさせてくれない。
別に追い抜こうとしてるわけじゃないのに口の棒を少しだけ引かれてスピードを落とすように指示される。
なんなんだよー(涙)
オレって超淫乱競走馬だから幼い時に併せ馬の練習でスピード落とす必要がない距離感掴んでるから何もしなくていいなりねぇ……。
「レジェンドの走りが見れるから来てみたけど……」
「ああ、凄く走りにくそうだ」
「コウセイはグリーンライトだから屋根はタイミングだけ指示すればいいのに」
「福山くんはムチのタイミングが絶妙ですからね……大丈夫かな……」
オレはいつもより早いタイミングで人参スタミナが尽きてダウン。
背中に乗せて思ったけどこのタケっておじさんはSじゃなくてハードSだぜ! だってさ、オレのことを無理やり疲れる走り方で走らせてくるし、「本番は先行策で行くからな」なんてオレの逃げを否定してくる。
やられたぜ! このおじさんはただのおじさんじゃなくてお父さんと同じ走り方を強要してくるプロ級マニアだ!
どうすりゃいいんだよー! 次のレースは年上の競走馬がいっぱい出てくるし、超淫乱競走馬の正しい使い方してくれねぇと一番になれねぇよ!!
本当におじさん……いや! ハードS紳士を背中に乗せて勝てるのかよぉ!!
「コウセイは無敗を維持できるよな?」
ウッス!
こんな感じで安請け合いしてるけど、ハードS紳士の騎乗で勝てるかどうかわからないなりねぇ。
そんな感じでやけ食いしようと思ったら現れたのはあの福○雅治系の超イケメン騎手さん!?
「コウセイ……すまない、俺に実績がないから……」
ああ、騎手さん……オレのデカマラが騎手さんに反応して膨張してしまう! オレと一緒にいっぱい良血をガン掘りしてきた相棒は片手に真っ赤なリンゴを握っている。
「コウセイ……タケさんは日本最強の騎手だ……」
騎手さんがリンゴを差し出してくれるが、それを拒絶する。
これを食べちゃったら騎手さんが永遠にオレの背中に乗ってくれないから!? なんてことはなくて、隣に牝馬さんがいるから独り占めできないんだよぉ!!
「はは! こんな時もレディーファースト発動だな」
ウッス! 自分はなんでも牝馬優先っす!!
「福山さん!! 不味いことが起こりました!?」
「え? どうしたんですか」
「コウセイが宝塚記念の次にジャパンダートダービーに出走しないといけなくなりました!?」
「ダートダービーって……コウセイはクラシック路線の真っ最中ですよ!? この時期にダートを走らせるなんて……」
「そ、それで……タケさんは他の馬に乗るので……」
マジかよ!? オレと騎手さんのタック復活のチャンス? やったぜ!!
騎手さんの会話を聞くとオレの所有者のニ○ニコ本社が競馬のことチャランポランだから交流重視賞競争に出す中央の馬の候補が足りないと言われてオレを出しますって宣言しちゃったらしい! でも、これが幸いしたぜ!
オレは芝でしか走ったことがないから砂で走って一番になったら騎手さんの評価が鰻登りだ!!
宝塚記念も気は抜かないけど、ダートダービーはもっと気を抜かないぜ!!
【宝塚記念】
ハードS紳士の激ヤバトレーニグをどうにか耐えきってやってきた宝塚記念。
パドックで競争相手のガタイをガタイでチェック! 今日は先輩も混じったレース、オレよりテクを磨いた相手だ! でも、異常に気づく……。
同い年が居ないぜ!?
いつも同い年と走ってきたのに今日は皐月賞、ダービーでガタライズした馬がいない!? やべーよ、オレ同い年としか走ったことねぇぜ!!
「あら、カワイイ子が来てるじゃない」
「う、ウッス!」
「わたしはブエナビスタ、君は?」
「ウッス! 自分はイッテンコウセイって言います!!」
やっべー! 超美人な黒鹿毛のお姉さんが優しくオレのことを見てくる!?
すっごいムチムチでプリンプリンなガタイから濃厚な牝馬フェロモンが漂ってくる。やべーよ!? オレ、牝馬とのレースなんてはじめてだ!!
隣の馬房の牝馬さんもすげー綺麗だけど、このお姉さんもスゲー綺麗で激エロ! オレの心を乱してくるとか超S(セクシー)だよな!
「なんだ? クラシック走ってる糞餓鬼が来てるのか……」
「う、うっす」
「先輩だぞゴラ! もっと敬意はらえ!!」
「ウッス!」
やべーよ! 気性難のジャニ系栗毛くんによく似たガタイの破壊神みたいな先輩まで!?
オレ、こんなレースどうすりゃいいんだよー!?
でも、その時だった!
「ジャーニーくん、この子はクラシック路線からの挑戦者だ。古馬が集まりやすいこのレースに挑んでくる勇気は素晴らしいものじゃないか」
「チッ、ボスしてるからって優等生しやがって……」
「君、見ない顔だね? 美浦の方から来たのかな」
「ウッス! 自分イッテンコウセイって言います!!」
「元気なのはいいことだ。自分はトーセンジョーダン、レースの世界では上下関係はない。自分の実力を発揮するんだよ」
「ウッス! ありがとうございます」
やべーよ!? こんな超カッコイイジャニ系競走馬さんが栗東にはいるのかよ!! ズリーゼ!!
でも、トーセンジョーダンさんの言葉で気分が楽になった。
「君、ダービーに勝ったって本当かい? 実は僕もダービーに勝っているんだ。後輩だね」
「ウッス!」
黒鹿毛のジャニ系お兄さん競走馬がニカッと笑ってダービーのことを話してくる。
やっぱり凄いなぁ、お兄さんやお姉さん達が集まるこのレースは奥深い。
先輩達の話を聞いていたらいつの間にかゲートイン、このゲートの薄暗さはいいな! でも、先輩達は声一つあげないで静かに開くのを待っているのをガタイで分析、やっぱり同い年の競走馬は子供だぜ! あ、それだとオレも子供になっちゃうね(笑)
集中力を限界まで高めて静かにその時を待つ――開いた! と、同時に少しだけ口の棒を引かれて減速してしまう!?
「今日は先行策だって言っただろ」
ハードS紳士は怒りに震えた口調で言葉のピンタをしてくる!?
なんなんだよー!?
スタートは早かったけど、他のロケットスタート勢に比べたら出遅れ気味に感じられる。そのまま先頭の景色を見せてもらえず馬群に呑まれないギリギリのラインで走らされる。
――その時だった。
『逃げの美学を忘れたのかい!?』
そこに居たのは栗毛ジャニ系の逃げ馬だった!?
『タケちゃん!? 僕と一緒に走った時を忘れたのか!!』
「貴方は誰ですか?」
『そんなことはいい!! 早く先頭に立つんだ!!』
「う、ウッス!」
栗毛ジャニ系逃げ馬さんの言葉を聞いて先頭に立つために足の回転を上げる。するとハードS紳士は口の中の棒を引っ張ってどうにか押さえつけようとしてくる!
でも! オレの戦いはずっと逃げだった!! オレは良血が必死にオレのケツマンを掘ろうとする姿に絶頂するプロ級マニアなんだよぉ!!
プツンと頭の中の糸が切れたのかオレは福○雅治系イケメン騎手さんとの思い出が走馬灯、そしてあの美しい戦いの記憶の中で本来の自分、その走りをする……筈だった……。
「駄目だ! おまえもスズカみたいになってしまう!?」
『タケちゃん!?』
「僕はもう……名馬を失いたくない……!」
『タケちゃん! そんなことをしても無意味だよ!!』
流石に呼吸するのも難しいくらい棒を引っ張られてスピードがダウン……。
お父さん、
お母さん、
お爺ちゃん、
オレ……どうしたらいい……?
オレの闘志は消えかけていた。
でも、オレの走馬灯に現れたのはあの――お父さん。
『なに? コウセイ、騎手が気持ちよく走らせてくれない。逆に考えるんだ――知るかボケ!! って考えるんだ』
オレは呼吸のことなんて忘れて徹底的にオレを、徹底的にいじめて加速する。
そして後方からやってくるのはあの超セクシーなお姉さん! いいぜ!! こんなハードS紳士の指示なんて聞いてたらオレ壊れちゃうぜ!!
「届いて!! 届けー!!」
「俺が勝つんだ!!!」
後ろから声が聞こえるけどそれでも走る。そして意識が戻った時には大量の水シャワーで冷却されていた。
その後も酸欠で死にそうな体を気絶寸前で動かしていたから写真撮影されたのか、されてないのかわかんねぇ……。
でも、次のダートダービーで勝てばこのハードS紳士から開放される。
続くぜ!
【次回予告】
ハードS紳士の騎乗は本当に地獄みだいだったぜ! でも、今オレの背中に乗ってくれるのは「あの」騎手さん!
ダートの走り方はお母さんから教わってるぜ! それに今回は怖い先輩はいない。
いいぜ! オレは超淫乱競走馬、淫乱だからどんな場所でも戦えるぜ!!
次回【超淫乱競走馬の宅急便】
なんだろう、次回予告が本編な気がするぜ!
【この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。】
敗北について
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出来る限り早く負けて♡
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最高にカッコイイ負け方して♡
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生涯無敗! それしか認めん!!