激エロ架空競走馬伝説【イッテンコウセイ】   作:蒼井魚

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イッテンコウセイのワイドショー

「はじまりました情報番組「ミンネ屋」今回のゲストは競馬界の方々に勢ぞろいしてもらいました」

 

 お昼に放送される情報バラエティーミンネ屋ではイッテンコウセイ号が全面的に取り上げられることになった。そして招集されたのは競馬界で非常に有名な面々、その表情は非常に冷たいとも表現できる。

 

「まずはじめに、西○牧場を経営しておりますニシノオーナー」

「よろしくお願いします」

 

 セイウンスカイ、ニシノフラワーの馬主として有名なニシノオーナーが静かに会釈をする、

 

「次にテ○エム牧場を経営しておりますタケゾノオーナー」

「よろしくお願いします」

 

 テイエムオペラオーの馬主として有名なタケゾノオーナーが静かに会釈をする、

 

「シンボリルドルフ、オグリキャップなどに騎乗し多くの名レースを演出したオカベ元騎手」

「よろしくお願いします」

 

 伝説的ジョッキー、オカベ元騎手は静かに会釈する。

 

「そして最後に競馬評論家の南慈英野球さんです」

「よろしゅうな!」

 

 一応、競馬評論家と呼ばれている南慈英。

 この情報番組でどのような討論が繰り広げられるのか――!?

 

「まず最初に競馬というのに詳しくない人間からするとイッテンコウセイ号という競走馬はどんな馬なんですかね?」

 

 メインMCが競馬界の大御所達に質問を投げつける。

 静かに南慈英が手を上げた。

 

「まず、イッテンコウセイ号は日本競馬では三頭目の無敗の三冠馬なんやけど、無敗の三冠馬の中では群を抜いて成績というか、伝説を作っとるねん! 二歳からデビューして朝日杯を勝って、クラシック三冠、はたまた史上初の三歳馬による宝塚記念覇者。もうこれ以上の活躍をしている時点で名馬ですわ」

「そうなんですね」

 

 ゲストの全員が静かに頷いてイッテンコウセイの伝説的な成績を認める。

 ミンネさんが用意されたフリップの一部を剥ぎ取り二歳チャンピオンから無敗の三冠馬は史上初の快挙という文字が現れる。

 ミンネさんが騎手目線の評価が欲しいとオカベさんに感想を尋ねる。

 

「競馬の歴史は長いですが、日本競馬でここまでの成績を残しているのは彼だけです」

「そう言いますと?」

「イッテンコウセイ号は基本的に大逃げという作戦で戦う競走馬であり、実は逃げという作戦は非常に勝ちにくい戦法でもあるのです。でも、殆どのレースで彼は抜群のタイミングで相手が迫るタイミングで末脚を使う。これはどんな距離にも当てはまりますが……まず、騎手を経験した身から言わせてもらうと非常に常識破りと表現できますね」

「聞いていますとサイレンススズカという競走馬を連想してしまいますね」

 

 競馬関係者がヤレヤレという表情で額の汗をハンカチで拭う。

 競馬をあまり知らない人間の視線ではサイレンススズカの再来としか思われていないのだ。

 ニシノオーナーが静かに手を挙げる。

 

「イッテンコウセイ号は他の逃げ馬とは毛色が違ってきます。自分も逃げ馬を所有していましたので断言できますが、イッテンコウセイ号は逃げ馬とは真逆の性格をしていますね」

「というと?」

「イッテンコウセイ号は非常に気性が穏やかで、とても社交的な性格をしています。逃げ馬というのは非常に臆病な性格で他馬に囲まれるのが嫌で逃げているんですよね、サイレンススズカもそれに該当します」

「なら、逃げ馬とは真逆の性格をしているのに逃げ馬をしていると?」

「ええ、臆病な気性難とも言えるのが逃げ馬の特徴でもあります。すべての逃げ馬とは言いませんが、殆どの逃げ馬はそういう性格だと思います」

 

 ゲスト客員が静かに頷いた。

 ミンネさんは少し不思議そうな表情で次のフリップを剥がす。

 

【三歳馬初の宝塚制覇】

 

「宝塚記念ではあの有名なタケさんが騎乗していましたが、皆様は宝塚記念を勝った理由はタケさんにあると思いますか?」

 

 競馬関係者が何いってんだこいつ? という表情で呆れている。

 そして客員に渡されているボードにタケの騎乗についての率直な意見を書き記す、

 

南慈英 「ゴミ」

ニシノ 「変える必要性がまったくなかった」

タケゾノ「グリーンライトに管理主義者を乗せるのはダメ」

オカベ 「ジョッキーとして安全策を取り過ぎている」

 

 日本を代表とするジョッキーをここまで酷評される姿が全国区で放映されるのは稀だ。

 ミンネさんを筆頭にテレビ関係者がこの評価に頭を抱える。

 

「あの、えっと? どういう風にダメなんですかね?」

「まず最初にイッテンコウセイ号の血統なんですが、お父さんが平成三強の中で一番のステイヤーと評されるスーパークリーク号の息子なんですよね。スーパークリーク号と言えば無尽蔵のスタミナと切れる脚があることで有名な競走馬です。それの息子が宝塚記念程度の距離を先行で走る理由が見当たりません」

「そうなってくると、タケ騎手が行った先行策というのは間違えだと?」

「ええ、あの場面はどう考えても自由に大逃げをさせるべきです。イッテンコウセイ号はグリーンライトという、とても珍しいタイプの競走馬ですから。本当に鞍上はスパートのタイミングだけを指示すればいいのです。現にイッテンコウセイ号の主戦騎手である福山騎手は自由に走らせて、ここで全力を出さないと負けるよというタイミングでしか鞭を使いません。これがグリーンライト、自由に走らせて結果を残す競走馬です」

 

 タケゾノオーナーがグリーンライトであるイッテンコウセイ号には的確なスパートのタイミングだけを指示する騎手が一番であり、それはタケ騎手ではなく福山騎手であると熱弁する。

 イッテンコウセイはどこまで行っても青信号、自由に走らせてスパートのタイミングだけを指示するのが一番勝ちやすい戦術だと表現する。

 ミンネさんが苦い表情をしながら、次を剥がす。

 

【他の無敗の三冠馬との違い】

 

「皆様は史上三頭目の無敗の三冠馬に関してはどのような意見を?」

 

 オカベさんが静かに手を挙げる。

 

「自分はシンボリルドルフ号に乗っていましたから断言できますが……真逆です。すべてが真逆です」

「と言いますと?」

「イッテンコウセイ号は競走馬としての才能だけではなく、非常に努力家の一面があります。それにこれと言った弱点もなく、他馬と同じスピード感で走らせてしまってはスパートのタイミングを見失うリスクがあります。競走馬の多くが先行か差しで走りますが、これは競走馬がスパートの時に全力を出すための布石、つまりはスタミナを出来る限り温存したいし、させたいという考えです。ですが、イッテンコウセイ号はその部分が少し薄く、とりあえず前を走っていれば一番になれるという風な走りです」

「なら、他の無敗の三冠馬に比べると少し劣るように聞こえるのですが?」

 

 ミンネさん以外全員が頭を抱える。

 

「いえ、イッテンコウセイ号は先程も言っていますように、非常にスタミナにあふれ、調教……人間でいう練習に真面目です。鞭が入れば全力という指示に絶対に従います。ですから他の無敗の三冠馬に比べると危ない場面に遭遇しないですし、鞍上もキッチリとしたタイミングで指示を出します。現に福山騎手がイッテンコウセイ号にスパート以外の指示を出していないのが証拠です。福山騎手は気性が穏やかな競走馬の鞍上では抜群の連対率を誇っていますし、元騎手の私でさえ福山騎手の鞭は神がかっていると表現できます。経験を積めば素晴らしい騎手になると思っていました。ですが、私と同じように運命の出会いを果たしたのかもしれませんね」

「そうなんですね……ここでCMです」

 

 CMに入ったミンネ屋は殺伐とした雰囲気に包まれる。

 競馬関係者は少し訝しげな表情で水分補給をしたり、ミンネさんのイッテンコウセイの悪い部分を探そうとしている姿に少しだけ違和感を感じる。

 イッテンコウセイの悪口を言いたいのであれば〇〇系の馬主を連れてくればいいものを……。

 

「CMあけましてまだまだイッテンコウセイ号の快挙の謎に迫っていきます!」

 

 さっきまで暗い表情だったミンネさんが明るい表情を取り戻し、次の進行に入っていく。

 

「次の話題は無敗の三冠馬で一番強いのはどれか? 競馬関係者に赤裸々してもらいます!」

 

 またボードを渡されたので静かに三頭しかいない無敗の三冠馬を嫌々ながらに書き記していく。

 

南慈英 「100% イッテンコウセイ号」

ニシノ 「三頭が争ったら絶対にイッテンコウセイ号」

タケゾノ「完成度が違う、イッテンコウセイ号」

オカベ 「悔しいけどイッテンコウセイ号」

 

 四人は揃ってイッテンコウセイが史上最強の無敗の三冠馬であると書いた。

 この場にいるテレビ関係者は三つ巴の言い争いになることを期待していたのか、困惑した表情を浮かべている。

 長い間 競馬というものに携わるならわかる。強い競走馬の格付けなんて……。

 

「ニシノさんから興味深い意見が出ていますね。これはどういう意味なんですか?」

「そうですね、距離は……ダービーの芝2400mだと仮定しましょうか? イッテンコウセイ号が逃げ、シンボリルドルフ号が先行か差し、ディープインパクト号が追い込みでレースを進めるとします。この場合、絶対に他二頭は届きません。イッテンコウセイ号はその二頭と同レベルの末脚を持っています。ですから、必然的に最終直線で前を走っているイッテンコウセイ号が勝ちますよ」

「ですが、逃げ馬は末脚が弱いと聞いたことがあるのですが……」

「いえ、確かにイッテンコウセイ号は逃げ馬ですが、最後に発揮させる末脚は逃げでも圧倒的と表現できます。彼は先行と追い込みで走ったことがありますが、ライバルと言えるオルフェーヴルに末脚勝負で勝っています。オルフェーヴルの末脚は歴代の三冠馬達以上の可能性を秘めていますが、それ以上にイッテンコウセイ号の末脚はどんな走り方をしても一貫して力強いものです。それに付け加えて鞍上福山騎手の鞭のタイミングが重なればどんな競走馬も彼より早くゴールすることは難しいでしょうね」

 

 ゲスト全員がニシノオーナーの言葉に頷く。

 歴代の名馬達を知っているのであればイッテンコウセイの異常さは気持ち悪いのではなく、美しいと表現できる。それに他の無敗の三冠馬に比べると強力なライバルが存在するイッテンコウセイに軍配が上がるのは当たり前だ。

 言うならばBNW世代で三冠馬になっているようなものだ。

 

「では、次にイッテンコウセイ号のライバルであるオルフェーヴル号について聞いていきましょう」

 

 次はライバルの説明をしなければならないのかと溜息をグッと堪える。

 南慈英が静かに手を上げた。

 

「まず、オルフェーヴル号は確かに凄い馬や、やけどイッテンコウセイ号とかち合えば……いや、これはどの競走馬にも言えることなんやけど! イッテンコウセイ号の走りを確実に捕らえる程の経験がまだ無いねん! 鞍上との折り合いも付かずに古馬を跳ね除けとるイッテンコウセイ号は下手すると数百年に一度の名馬や、今すぐに種牡馬入りしろって声も少なくない」

「では、オルフェーヴル号はイッテンコウセイ号に勝てる可能性は低いと?」

「ああ、確かにオルフェーヴル号も三冠馬クラスの実力を持っとるけど戦法がどうやっても追い込みや! イッテンコウセイ号は逃げでも追い込み馬並みの末脚を持っとる。やから後方から吹っ飛んできても距離の差で負けてまう。もし、イッテンコウセイ号の末脚が並みの競走馬なら今頃は三冠馬は逆やろうな」

 

 競馬関係者が静かに頷き、テレビ関係者が顔を真っ青にする。

 実はミンネ屋、毒舌が売りのワイドショーなのだ。

 それでも司会担当のミンネさんは必死に次の話題を出そうとフリップを剥がす。

 

【有馬記念のブロック】

 

 競馬関係者が露骨に嫌な顔をする。特にタケゾノオーナーは本当に苦虫を噛み潰したような表情。

 テレビ関係者はこの話題で息を吹き返す! 毒舌が売りのワイドショー復活!!

 

「今回の有馬記念、猛烈なブロックをされたイッテンコウセイ号についてどう思われますか?」

 

 またボードを出されたので静かに書き込む。

 

南慈英 「何見せとんねん!? こんなん競馬やない!!」

ニシノ 「理解したくない」

タケゾノ「昔を思い出す」

オカベ 「競馬はフェアプレーが一番だと思いたい」

 

 四人の感想にテレビ関係者が息を吹き返す! これは負けると思っていたという言葉が聞こえるかもしれない!!

 

「では最初にタケゾノさんに意見をもらいましょう」

「……正直、昔を思い出すから話したくも無いですがね。確かにイッテンコウセイ号を馬群に呑み込ませるのは一種の戦法ではあります。ですが、ここまで露骨にやられると現在の競馬に不信感を強く抱いてしまいますね」

「露骨とは?」

「いえ、確かにスタートが苦手な競走馬なら出遅れをカバーする為に鞭を入れることはあります。ですが、どう考えても出遅れていない競走馬に鞭打って大逃げの体制に入ったイッテンコウセイ号をブロックするなんてありえません。ダービー、菊花賞と黒い影はチラついていましたが、有馬記念で眼前に現れたというのが自分の感想です」

 

 陽気な競馬評論家として有名な南慈英もこの件に関しては嫌な顔しかしていない。

 元騎手であるオカベさんもこの徹底的なイッテンコウセイ潰しには競馬業界の深い闇を感じている。ここまで露骨なブロックはテイエムオペラオー以来、強い競走馬をぶつけて倒せばいいものを……。

 

「なら、今回のブロックは何ら問題も無いと?」

「いや、違うねん! 確かにルール的には全然問題ないで? やけど、これが意図して行われたのが問題なんや! どう考えても逃げの体制に入ろうとしたイッテンコウセイ号を馬群に呑ませるちゅー意図しかないねん!? 今までのイッテンコウセイ号は馬群に囲まれる競馬はしたことないから悪い顔した人間が自発的にやったとしか思えへん! それにG1レースやで!!」

「うーん、では、騎手目線からオカベさんはどう思われますか?」

「有馬記念は日本有数の競走馬が集う祭典です。つまりは日本中の強い競走馬達が集まるわけですよね。ですから必然的にクラシック路線を走りきったイッテンコウセイ号は年上の競走馬とのレースをしなくてはなりません。言わせてもらうなら、イッテンコウセイ号より有利な立場の競走馬が集まるわけですよ。そんな場所でこんなレースをされてはファンや競馬関係者は違和感を覚えます。競走馬だって馬主だって、なんなら騎手だって冠が欲しいわけですから……」

「では、イッテンコウセイ号の一着は奇跡に近いものだと」

「「「「違います。アレはイッテンコウセイ号が他馬より優れた存在だから出来た芸術的勝利です」」」」

 

 

 

【居酒屋】

 

 ビールを片手に番組に出たことを後悔する四人、正直な話適当な競馬好き芸人にでも任せておけばよかったと後悔が先行する。もう少し快挙を祝う場所かと思えば、どうにかイッテンコウセイの弱点やら痛い場所を探ろうとされて苛立ちが見え隠れする。

 

「本当に……オペラオーの時みたいだ……」

「タケゾノさんも被害者ですからね……オペラオーと重なるのもわかります……」

「ワイ、テレビに出れて嬉しゅう思っとったのが間違いやったわ……」

「自分は元々騎手ですからね……近いことは経験していますが……」

 

 四人は日本競馬を震え上がらせるイッテンコウセイの活躍に胸踊らせているというのに、テレビ関係者からの評判はドラマが無い、横綱相撲だと批判されている。だが、競馬関係者から見れば逸材中の逸材、誰もがこんな競走馬を所有したいというそんな競走馬だ。

 

「でも、メジロはんがニコニコと共同経営してくれてるから安心やな! 解散するって聞いた時はメジロ伝説も終わりかいな……そんな思っとったけど、メジロさんの管理なら種牡馬になっても安心やで!!」

「ニコニコ? だったかな、そこが競馬業界のシガラミに囚われない柔軟な会社で助かるよ……でも、宝塚記念はいただけないなぁ……」

「最近は間隔が伸びて挑戦しやすいのも原因ですけど、無敗の二冠馬を突っ込むのはどうかと思いますね」

「まあ、それだけ競馬を知らない会社ってことでしょうね」

 

 四人で二度目の乾杯をした時に気付く、

 隣の席でワインを一気飲みしている……レジェンドジョッキーの姿が……。

 

「た、タケくん?」

「うぅ……コウセイに乗りたいよぉ……」

「な、なんや……?」

「やね……奪えたと思ったのにぃ……」

「「「「重症だ……」」」」

 

 飲み会ではなくタケ騎手を慰める会がはじまってしまった……。




 ウッス! 感想で世間からの評判を書いて♡ なんて言われたから徹夜で書いたっす!!

 実はこの後に掲示板を貼り付けようと思ったけど、思ってたより筆が進んで掲示板は別にするっす!!

 オチも完璧に用意したぜぇw

 評価する時は「ナス料理」だよぉ♪

 ヨーグルトと麦茶と読者様の感想がオレの養分だぜ!

(徹夜したので気絶します チーン)

 あと、アンケートの結果がダブルスコアで種牡馬まで突っ走れ……たまげたなぁ……。

 次のアンケート考えなくちゃ!?

敗北について

  • 出来る限り早く負けて♡
  • 最高にカッコイイ負け方して♡
  • 生涯無敗! それしか認めん!!
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