Swoop Witches   作:Arc penguin

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第二話

 Donaghadee(ドナガディー)の町に向かう独自のカスタマイズを施されたFV1612「Humber Pig」装甲車の車列。そのうちの一台の後部昇降口にはスプレーで「E123」と描かれていた。意味はともかく、黒字に黄色なのでとても目立つということで、当初は隊のメンバーから顰蹙を買ったが次第に受け入れられていった。その「E123」の中では各車に向かって通信が行われていた。

 

「各員へ告ぐ。既に知ってると思うが…A小隊が倉庫を、我B小隊が市街地にある拠点を叩く。『Easy as one,two,three』だ。各員の健闘を祈る。」

 

 無線のスイッチをオフにしてから今一度装備を確認した。着心地は良くないが、信頼性の高いリベリオン製のM1955、軍から貰ったMk.Ⅳヘルメット、L1A1を極限まで短縮して取り回しを良くしたL40、ホルスターに潜るカールスラント製のHk P9。他にも予備の弾倉や各種手榴弾が満載だ。

 

 Humber Pigが速度を緩め、やがて停止した。後部の昇降口からぞろぞろと降りてくる完全武装の隊員。7人のグループが5つ。寝静まった町に侵入した。目標のアパートを取り囲んだ5つのグループが事前にきっちりと合わされた時計の秒針が長針に重なった。

 

「こちらシアニド、一階に侵入成功。」

 

 アルファチーム「cyanide(シアニド)」の先頭はEliza Marsh(エリザ・マーシュ)、その後ろにVincent Richardson(ヴィンセント・リチャードソン)が続いた。

 音を立てないようにそっと裏口のドアを開けると共有スペースにおいてあるソファーに男が二人、横の椅子に男が一人。エリザが静かにL40の照準をソファーの男達に合わせる。後ろに控えるヴィンセントは椅子に座る男だ。エリザは引き金を4回、ヴィンセントが2回引いた。サプレッサーで抑えられた銃声と共に3人の男が前向きに崩れ落ちる。素早くソファーと椅子の前に回って男達の頭にもう一発ずつ撃ち込む。

 

 「一階の脅威は全て排除…?いや、もう一人いるみたい。」

 

 ビールのジョッキが3つと泡を吹く炭酸飲料の缶が1つ。階段を登ったのであれば、踊り場の窓を外から監視しているデルタチー厶「fluoride(フルオリド)」から連絡があるはずだ。諜報活動による事前情報通りの間取りのうち、共有スペースは制圧した。あとは正面玄関から入って廊下の右側にある部屋だ。二つある。

 まず一つ目。じっとりとした不快感が覆い被さる中、一瞬も気を緩めずにクリアリングが行われていく。玄関、廊下、リビング、キッチン、トイレ、バスルーム、クローゼットの中まで隅々を一つ一つ検めていった。

 この部屋には残りの一人がいないことを確認して安堵する。一階にある部屋は残り一つ。一つ目と同様にして玄関、廊下、リビングとクリアリングを済ませる。キッチンに差し掛かった。キッチンを少しずつ射線に収めていく。ようやく最後の「パイを切り取る」とき、視界の中にある塊が急に大きくなった。

 

「うわぁぁぁ!」

 

 悲鳴とも雄叫びともつかない声を上げて男がナイフ、といっても調理用のどの家庭にもあるもの、を突き出してくる。L40の引き金を引いて一発が腹に命中するも止まらない。L40から手を離してをスリングに委託する。空いた左手でナイフを左側にいなし、右手で腰に装着した鞘からナイフを逆手に抜いた。男はいなされて空を切った手を切りかかる動きに切り替える。ナイフの切っ先がエリザに届く前に、エリザの右手に収まるナイフが男の喉笛に届いた。男がナイフを落とし、首を抑えて前方に倒れてくるのを体を開いて避ける。フローリング材を赤く染めつつある男の体が、気管や肺に入った血液を出そうと必死に咳き込むが、次第にそれも弱々しくなっていった。

 

「…ガキか。」

 

 そう言ってから後ろに控えていたヴィンセントが10代後半と思われるまだ少年の面影のある顔に銃弾を2発目撃ち込んだ。酷く歪んだ顔を蹴ってエリザの方に向き直る。

 

「怪我はないか、Eliza(エリザ)。」

 

「えぇ。」

 

 残りの箇所のクリアリングを終えると共有スペースに集まった。そこにチャーリーチーム「chloride(クロリド)」も合流する。

 

「一階の脅威は全て排除した。」

 

「了解。では…打ち合わせどおり二階以降は我々が先頭に立つ。」

 

 黒基調の装備の列が互いの死角をカバーしながら階段を少しずつ、少しずつ上がっていく。階段を上がりきった先の廊下に差し掛かった。先頭にいる隊員がミラーを取り出して左右の確認をする。薄暗い廊下が広がるのみ。事前情報によると二階の部屋は5部屋。まずはシアニドが一番手前、クロリドが一番奥の部屋のクリアリングを行う。

 クロリドの隊員が一つ、また一つとドアの前をすり抜ける。一番奥から一つ手前のドアの前をクロリドの最後尾の隊員が通り過ぎると同時にドアが爆砕した。最後尾の隊員が反射的に後ろにのけぞり、壁に体をぶつける。

 その他のクロリドの隊員がその部屋になだれ込んだ。ライトが錯綜して外からの明かりしかない部屋の所々を照らしていった。早いクリアリングで確実に部屋を手前から潰していく。リビングに踏み込む。。一番大きな窓の手前に人影を認めた。その人影を中心にしてクロリドの隊員が扇状に位置する。7.62mm弾の一斉射。

 部屋に入ったクロリドの隊員達は引き金に掛かる指を引く直前、薄暗い部屋が青白色の光に包まれるのを見た。

 薬莢を脱ぎ捨て、音を置き去りにした弾丸が空気をかき分けて進む。人間の体に当たれば容易く肉を抉り、壁であればよほど頑丈でなければ、鉄筋にでも当たらなければ、大抵の壁を貫く。そんな弾丸が貫通することをその「壁」は拒んだ。そうして運動エネルギーを使い切った弾丸が順番にポトリポトリと床に落ちるたびに、小気味よい金属音を立てる。

 さらなる追撃は既にピンを抜かれ、煙幕を焚き始めたスモークグレネードによって遮られた。

 人影が窓を破って外に飛び出す。Amy Fisher(エイミー・フィッシャー)がそれを追って窓から身を乗り出す。下を見る。道路に散らばるガラスばかりだ。体と首を捻って上を見る。スニーカーを履いた脚がまさに真上の部屋の窓から中に入るところだった。

 

「クソっ、上か!」

 

 咄嗟に撃つも、綺麗に足の間を銃弾が抜けていく。

 

「上に逃げられた。おい、Claude(クロード)は無事か。」

 

先程のドアの爆発に巻き込まれたClaude Lowe(クロード・ロウ)をエイミーが気遣った。

 

「あぁ、何とか。クソッ…顔と手に針みたいなのが刺さってやがる。痛ぇな…。」

 

「どれ、見せてみろ。」

 

 クロードの顔の右頬あたりに黒い線が走っていた。よく見てみると木片もあれば、彼が言う針のようなものもある。腕も同様だ。そのうちの一本にエイミーが手を伸ばして引き抜いた。

 

「いてっ!」

 

「ふむ…針のようだが…錆びてる?」

 

「そういえばドアを爆発させた爆発物の痕跡が無いですね。匂いもしないし、それらしき残留物もない。」

 

Jessica Porter(ジェシカ・ポーター)

 

「ならどうやって?」

 

「わからないです…ですが、可能性があるとしたら…。」

 

 その場にいた全員が顔をしかめる。15年間、我々の仲間の多くがそれに斃れた。

 

「やってらんないぜ。」

 




ちょっと間隔が空きましたが、第二話です。やっとウィッチがまともに出てきましたね。勘の良い方はお気づきかもしれませんが、ネウロイは出てきません。ひたすらにウィッチとその他の人間の話です。
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