Swoop Witches   作:Arc penguin

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第三話

 二階の捜索は完了した。結果は奥から二つ目の部屋、205号室にウィッチと思われる人間がいたこと。三階に逃げられたこと。一人が負傷したが作戦の続行は可能。

 シアニドとクロリドのリーダー、エリザとエイミーが205号室の前に集まった。

 

「どうする?エリザ。」

 

「どうするったって…三階を制圧するしかないじゃない。」

 

「奴ら、絶対に待ち構えてるわよ?」

 

「…手榴弾の使用を許可する。各自、注意するように。」

 

 三階に向かう階段をシアニドのエリザが先頭になって登る。死角を互いにカバーしながら少しずつ、少しずつ。

 階段を登りきったところにベットが転がされている。その奥には本棚などが壁に届くまで詰められている。

 

「参ったな…バリケードだ。ミラーを取ってくれ。」

 

 そう言うと後ろに位置しているヴィンセントがエリザの背中にあるミラーを横に引き抜いて手渡した。エリザがL40をスリングに委託して、受け取ったミラーの柄を伸ばしてベットの上にゆっくりと差し出した。ミラーの角度を調整して廊下の置くまで覗く。常夜灯が誰もいない廊下を照らしている。反対側を覗く。誰もいない。今度はミラーを下向きにしてベットと本棚とその周りを確認した。トラップは見当たらない。

 

 「進むぞ。私がベットに上がって床に降りたらすぐに続け。」

 

 ベットの上に脚を伸ばして登りきってから本棚に足を掛け、床に降りる。その間、L40もきっちりと廊下の奥を睨んでいる。そしてL40は見逃さなかった。廊下の奥の扉の一つが空いて、そこから手鏡を上部に括り付けたSTENと手だけが飛び出してきたのを。

 

Incoming(敵襲)!」

 

 火線が交差した。投射するエネルギー量はセミオート射撃のみのL40とフルオート射撃が可能なSTENとではあるが、L40の方が優勢である。しかし両者には圧倒的な被弾面積の差があった。エリザがほぼ全身を晒しているのに対してSTENを撃つ人間は手だけ。

 その不利をエリザはシールドでひっくり返す。ウィッチに与えられた楯、これまでに幾度となく人間を護ってきた楯だ。

 途中で弾倉を交換する時間を除いて弾幕は止まない。L40から片手を離して左腰にあるポーチから手榴弾を取り出す。屋内での近距離戦のために開発された小型手榴弾のピンをナイフのシースに引っ掛けて抜く。そのままレバーも飛ばして数秒数えてから、地面に転がすように放り投げる。

 相手もそれに気づいて射撃を中断、ドアを閉めたようだ。小さいな爆発だが、人が十分に死ねるだけの破片が撒き散らされた。エリザのシールドもそれらを受け止めてバチバチと音を立てる。

 

「上がってこい!」

 

 エリザの指示に呼応して後続がベットを乗り越えて上がってきた。全員が漏れなくL40を射線が被らないように前方を指向している。

 

「進むぞっ!」

 

 先頭がシールドを張ったまま、後続はそのシールドからできるだけはみ出ないように続いた。そのままドアの一つ目の扉を通り過ぎた。二つも通り過ぎようとした。列の二人目が吹き飛んだ。扉も丸々吹き飛んでいった。

 

「痛えな、クソッ!…チクショウ」

 

 壁を背にして座り込んだまま、L40の20発入り弾倉が空になるまで指を往復させる。弾丸がひたすらに虚空を切る。そしてフラッシュライトのスイッチを押して扉の無くなった部屋を照らす。そこには10代後半の少女がいた。まだ幼げな顔にはバンダナが巻かれていた。簡易な迷彩を施された戦闘服に見を包み、片手にはオラーシャ製自動小銃AK-47を握っている。それに照準を合わせて引き金を引く。その瞬間、フラッシュライトの光と青白い光が混じり合う。シールドだ。弾倉のバネが伸びきるまで引き金を引き続けた。

 

「…害虫め。」

 

 それに呼応して部屋から間隔の短い重い銃声が響く。

 胴体に当たった数発は何とか防弾ベストやその上に貼り付けられたマガジンなどが食い止めたが、防御されていない部位に容赦なく弾丸が襲いかかった。膝の皿を食い破り、指を潰し、首を掻き切る。

 

「大丈夫か!」

 

 三人目が助けに入る。もう遅いことはわかっていたが、部屋の中に射撃を加えつつ、壁にもたれて動かなくなった男の襟首を掴んで引きずった。後方にハンドサインを出して道を開けさせる。その二人の穴を埋めるように後の二人が前に出る。

 

 扉が丸々無くなってすっきりとした入口から中に向かって二つの銃口が向けられた。光源が無いため、フラッシュライトで中を照らす。二人の目に一瞬、キラリと光を反射するものが映った。

 

 「痛っ!」

 

 何かが顔に、右頬あたりに刺さった。痛みはさほど強くない。そしてそこから部屋の奥に向かって糸が伸びている。引き抜こうとして腕を動かそうとしたときには、既に体が動かなかった。それと同時に青白い光が糸を伝って来る。

 

 バコンッ!という音がした。風船を針で突いたような、それよりも大きくて嫌な音。横目で音のした方向を確認する。さっきまで、ほんのコンマ秒前までいつもどおりだった男がいなかった。脳という制御装置を失ってただ前に倒れるのみだった。

 

「う、うわっ…うわぁぁ!」

 

 短い悲鳴を上げつつもまだ冷静さを保っていた彼は、弾倉を交換、さらに撃ち続ける。そこで後に掩護を要請する。すぐに次の隊員が横に付く。頭が弾けた死体に驚いた様子だったが、すぐに警戒を始める。

 

「Cover me!」

 

 そう言ってずけずけと部屋に踏み入る。さっきの「何か」は奥から飛んできた。廊下の奥、リビングにいるはずだ。

 視界の奥の方で何が宙を舞った。サプレッサーで抑制された銃声が室内に数度響く。

 

「そこかぁぁぁ!」

 

 歩く速度を上げた瞬間、足元がもたついた。いや、何かに引っ掛かっている。

 

「何っ!ワイヤーか!」

 

 こういうとき、ワイヤーの先に繋がっているのは手榴弾のピンと相場は決まっている。極めて簡単で効果的なトラップだ。

 

「む…。」

 

 しかし彼の足元のワイヤーは一向に手榴弾のピンを抜こうとしない。訓練でもワイヤートラップにおいて、どのくらいの力を加えればピンが抜けるか、ということは何度も行っているし、実戦でもワイヤートラップに引っ掛かってピンを抜いてしまったこともある。それらの経験からすると、今回のもとっくにピンが抜けていてもおかしくない。勿論、手榴弾の種類やピンが抜けにくくなっているという可能性の捨てきれない。

 彼が数秒の逡巡を巡られていると突然、部屋が明るくなった。電灯のスイッチが入れられたのではない。足元が一瞬、猛烈に発光した。

 体が勝手に前に倒れる。制御が効かない。右足を一歩前に出して踏ん張る。それでもまだ倒れ続ける。

 

 「何だっ!クソッ!」

 

 何とか顔が地面と衝突する前に腕で体を支えることができた。後にいる隊員が小さな悲鳴を上げた。

 

 「…お前、脚が…右足が…。」

 

 「は?どういうこと…」

 

 気づいた。自分の右脚が脛から下が無くなっていることを。下を向いて手をついたままの姿勢なので傷口の状態はよくわからない。一度、地面から手を離してから、姿勢を変えて床に座る。

 その横から後続の隊員がスタングレネードを放った。その場にいた隊員が皆、耳と目を塞ぐ。その直後に3人がリビングに押入る。どこを探しても誰もいない。窓が割れて、風がカーテンを仰ぐのみだった。

 

「逃げられたか…。」




今回は雑になってしまった部分が多いと思いますが、僕自身のモチベーションを保つために急ぎ足で作りました。ご了承ください。そのうちに修整したりすると思います。
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