人妻シンボリルドルフNTR概念先進技術実証機   作:おお友よそのカップリングではないのだ…

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第4話

「どうして、君がここに?」

 

熱で湿ったシーツの上。

汗ばんだ私は、眼前の後輩くんへとそう言った。

…というより唸ったという表現が適切かもしれない。

とはいえ何とかその言葉をひねり出した事は確かだった。

 

「ルドルフさんが体調不良でお休みになったと聞いたので、てっきり自分を避けたのかと…。でも具合が悪いのは本当だったんですね。」

 

気まずそうに答える彼。

成る程。

あんな事があって仕事を休んだ物だから、本当に私が体調不良なのかとその目で確認しにきたという事か。

だとしたら。

 

「…殆どストーカーじゃないか。」

 

「すみません。…自覚はあります。」

 

ストーカー。

そう言うとかれは目に見えて委縮する。

どうやら自覚はあるらしい。

 

「というか、君、仕事は?そもそも、どうやってここへ入った?」

 

状況を少し飲み込み始めた私の脳に次々と疑問が浮かび上がる。

現在午後三時は普通に勤務時間であるし、部外者である彼がどうやってこの家に侵入したのか?

疑問は尽きない。

 

「急ぎの仕事は全て終わらせてきました。それで、今は外回りしている事になっています。…鍵はポストを開けたらあって。ダイヤルの番号は旦那さんの誕生日ですよね?最初、ルドルフさんの誕生日を試したんですが違ったので、旦那さんのを試したら…。」

 

私が問いただすと素直に経緯を説明し始める。

 

 

───シリウス、ところで鍵はどうしたんだ?

 

───あぁ、朝アンタの旦那から預かってな。どうすれば良い?

 

───では、ポストにでも入れておいてくれ。

 

………

 

───ルドルフさん、やけに今日は速く帰りますね?

 

───うん、今日はトレーナー君の誕生日なんだ。ささやかながらお祝いでもしようと思ってね。久しぶりに定時で失礼させてもらうよ。

 

頭の中でさっきシリウスと交えた会話と、去年職場で後輩君へと話した思い出が同時に再生された。

…色々と偶然が重なって、彼はこの家に侵入できたらしい。

 

「とりあえず後でポストの番号は変えておく事にするよ。」

 

「…すみません。」

 

再び委縮する後輩君。

 

そんな顔をするなら最初からするな。

 

と怒る気力もこの熱のせいで湧いてはこなかった。

というより驚きも怒りも通り越してもはや、呆れの境地。

どこまでバ鹿なのだろうか、彼は?

 

「で?君はもし私が仮病を使っていたらどうするつもりだったんだ?」

 

「…解りません。」

 

「は?」

 

「解りません。ただ、ルドルフさん。貴女が休んだと…そう聞いた瞬間。貴女を一目見ようと体が動いていました。」

 

「理性的とは言い難いな。」

 

熱のせいではなく、頭が痛くなる。

 

「見ての通り、この有り様でね。残念ながら客人の相手はできやしない。どうかお願いだから、このまま帰ってはくれないだろうか?」

 

「でも、ルドルフさん。凄い熱だ。」

 

彼は枕元においてあった体温計。

その液晶に表示された数値を見たらしく、そう反応する。

 

「何か僕にできる事などありませんか?」

 

そして、いつも同僚の異性から評判の良い優しい声音でそう囁いた。

 

「そんな事…」

 

ない。

と言いかけて私は彼から注がれる視線に気づいた。

熱意に満ちた彼の視線。

この視線には見覚えがある。

…トレーナー君だ。

彼は少しだけ…特に私の事になると頑固になる癖がある。

そんな時の彼の目に今の後輩くんの視線はとても似ていた。

全くどうしてそこまで君達は似ているんだ。

 

親戚だったりするのだろうか?

 

心の中でそう思う。

ありえないとは知っているが。

でも、彼は帰れと言って引かないだろう。

もしそこで引くような人間ならばそもそも訪ねてはこない筈。

だとしたら、何か適当な事でもさせないと満足して引き返さないかもしれない。

 

だったら…。

 

「じゃあ、悪いが着替えを持ってきてはくれないか?そこのクローゼットに寝間着が入っている。そしたら直ぐに帰ってくれ。」

 

…と私はごく簡単な内容を彼へと伝えた。

数時間前にシリウスに取り替えて貰ったとはいえ、また寝間着が汗でびしょ濡れになっていたのは事実だし、直ぐ側のタンスから着替えを取り出すのも億劫になっていたからである。

 

「はいっ!直ぐに!」

 

後輩君は私からの指令を受けると、いつも職場でする元気の良い返事でクローゼットの方へと手を伸ばす。

ガラリ。

引き戸式の一体化されたクローゼットが開かれた。

 

「…どこにありますか?」

 

「そこの小さいタンスの一番上の引き出しだ。」

 

場所を尋ねる後輩君に私はそう返答する。

クローゼットの中に入れてある小さめのプラスチック製のタンス。

その一番上に私とトレーナー君の寝間着は収納されているのだ。

 

「解りました。」

 

後輩君の手がタンスの方へ伸びたその時。

 

「…どうしたんだい?」

 

彼の動きは不意に停止した。

 

「…これって」

 

彼の視線の先。

その真っ直ぐな延長線上に私が身に纏い、かつて芝を制覇した緑衣。

現役後は袖を通す事も少なくなった緑衣が保存用の半透明なカバーに包まれて吊るされていたのだ。

 

「…はやく着替えを取ってくれるとありがたいんだがな。」

 

固まった彼を急かすように催促する私。

何故だろう。

ソレを一刻も速く彼から遠ざけたいとそう思ってしまった。

そうしないと何か…取り返しのつかない事になるのが直感的に解ったから…。

 

「すみません、ルドルフさん。」

 

彼はそう言って無機質なプラスチックの引き出しを引き、中から着替えの寝間着を取り出した。

そして、名残惜しそうにクローゼットを閉めると、こちらへと差し出す。

 

「着替えるから出ていってくれると嬉しいな。」

 

私に寝間着を渡した後、暫く固まった彼に退出を促した。

 

「えっあぁ…すみません!」

 

本日何度目か解らない謝罪の言葉。

直ぐに反応し寝室から出ていくが、その気配を扉越しに感じる。

この家から出ていってくれと言ったつもりだったのだが…その真意が伝わっていなかった様だ。

 

…怒るのも、呆れるのも通り越して最早何も感じない。

 

「はぁ…」

 

私はそうため息を一つ吐き、彼から受け取った寝間着に着替え始める。

少し前にシリウスに取り替えて貰ったのにもう汗で濡れていた。

 

「失礼します。」

 

私が着替え終わると見計らった様に後輩君は再び寝室へと侵入してきた。

覗いていていた…様子は見えなかったので扉を一枚を隔てて衣擦れの音が聞こえなくなるのをまっていたのだろう。

 

それはそれでどうかと思うが…。

 

そんな私の心を知らない彼は、私が脱ぎ捨てた寝間着を回収し寝室を後にしようとする。

 

「洗濯機にいれてきます。」

 

「まだここにいるつもりかい?」

 

「…旦那さんが戻るまで…駄目ですか?」

 

もし、彼が帰ってしまったら私はまたあの酷い孤独を味わう事になるのだろうか?

 

一瞬そんな自分勝手な考えが脳裏に過ぎった。

 

 

「旦那さんの代替品で構いません。もし僕が本当に若い頃の貴女のトレーナーさんに似ているのなら、彼が返ってくるまでルドルフさんの看病をさせてもらえませんか?」

 

真顔で既婚者の女性に彼はそう言う。

特別に秀でている訳ではないが、整った顔、真っ直ぐな視線、そして熱意ある表情。

その顔はやっぱり若い頃の彼にそっくりだった。

 

…もし彼が若い頃のトレーナー君に性格まで似ているのならテコでも動かないのは自明の理。

 

もとより、この家に入ってきた時点で何を言っても既に手遅れ。

今の私にとれる選択肢などありはしない。

 

「オススメはしないよ…。」

 

再び熱の上がってきた体。

そう返すだけで精一杯なのだから。

 

「これ、漢方薬です。」

 

「うん、ありがとう。」

 

そして何より、彼がいる事で安心感を覚えてしまう私がそこにはいた。

───

 

「ハァ…ハァ…」

 

「ルドルフさん、大丈夫ですか!?」

 

あれから数十分。

私の体調は目に見えて悪化していた。

ピピッ…と脇に挟んだ体温計が音を立てる。

 

「凄い熱だ…。」

 

それを取り上げた後輩くんが表示を見せてくれたが、熱は39℃を超えている。

しかし、それをどこか他人事に感じてしまう。

それくらい今の自分は判断力が低下していた。

 

「ルドルフさん、熱冷ましですっ!」

 

「あぁっ…、うん…」

 

後輩くんから渡されるがままに市販薬の解熱剤を口に含む。

その時、勢い余って錠剤を噛み砕いてしまう。

瞬く間に不快な味が口に広がるが、直ぐに後輩くんから差し出されたミネラルウォーターで流し込む。

 

…苦い。

 

思わず顔を顰めてしまう。

 

「ルドルフさん氷枕か何か用意してきます。」

 

顔を歪めた私をみた後輩くんが、何か用意しようと枕元の椅子から立ち上がった時だった。

 

「…ってくれ。」

 

「ルドルフさん…?」

 

私の腕は反射的に移動しようとする後輩くんの服の裾を掴んでいた。

 

「…まってくれ。トレーナー君。ルナを…ルナを一人にしないで…」

 

その時、私は自分で何を言ったのかは覚えていない。

 

「解りました、ルドルフさ…、いや、解ったよルナ?」

 

只、眠りに落ちる意識の中で大切な人の声が聞こえた気がした。

 

───

 

「…ルフ?」

 

「んん…?」

 

「ルドルフ?」

 

「…トレーナー君?」

 

「あぁ、おはようルドルフ。って言っても今は夜だけど。」

 

トレーナー君の言葉に釣られる様に時計を見ると時刻は午後七時半。

どうやら、彼の帰宅する今この時まで薬が効いて眠ってしまったようである。

 

「熱は…落ち着いたみたいだな。」

 

私の額に手を当てて安心した顔になるトレーナー君。

確かに眠りに落ちる前の高熱は今現在感じる事はなかった。

そして私はハッと気づく。

 

「…っ!そっそうだ!トレーナー君!鍵は!?」

 

今、彼が何のトラブルもなく帰宅しこの寝室まで入ってきたという事は既に後輩くんはいない筈。

彼が私の寝ている間に出ていったとして、鍵がどうなっているのかが気になった。

 

「…鍵?あぁ、シリウスに預けた鍵ならちゃんと郵便受けに入ってたよ。シリウスにキミの熱の事を話したら面倒見てやるって言ってわざわざトレセン学園まで来て鍵を取りにきてくれたんだ。」

 

「…あぁ、そうだったのか。彼女には大変助けられたよ。」

 

彼の返答に私は胸を撫で降ろす。

 

「なぁ、トレーナー君。他に変わった所などなかっただろうか?」

 

「変わったところ?特に無いとは思うけど何で?」

 

「いや、特に意味は無いんだが…何もないならそれでいいんだ。」

 

トレーナー君の素振りからどうやら後輩くんがこの家にいた痕跡の類は無いようだ。

卑怯だがそれに安心してしまう。

 

「まぁ、ルドルフとりあえず着替えよう。洗濯機に何枚か寝間着があったけど、また凄い汗だ。シーツはもう洗濯できないから布団乾燥機をかけるぞ。乾くまで夕飯にしよう。滋養のあるものを買ってきたんだ。」

 

「ありがとう、トレーナー君。」

 

もしかしたら、後輩君が来てたというのは私の罪悪感が夢になって現れた物で本当は来ていなかったのではないだろうか

そんな都合の良過ぎる考えまでが浮かんで来る。

 

「乾燥機はクローゼットの中だったよな?」

 

そう言ってトレーナー君はガラリとクローゼットを開けた。

 

「あぁ、そうだよ。」

 

「えーとっ、確かこっちの方にしまってあって…あれ?」

 

唐突に、乾燥機を探すトレーナー君の動きが止まる。

 

「どうしたんだい、トレーナー君?」

 

「いや、えーと…もしかして留守中、勝負服着た?」

 

「え?」

 

クローゼットの中で吊るされた緑衣。

いつだったか、クリーニング店で手入れをしてもらって以来ずっと包装用のビニールカバーに入れられていた筈の勝負服。

それが、彼のいなかったという都合の良すぎる解釈を吹き飛ばす様に、むき出しの状態で懸けられていた。

 

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