ONEPIECE FILM N.G.   作:悠々―ゆうゆう―

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破滅の二重奏

 この窮地に於いて頼もしい増援。しかし見れば見る程にこの3名の繋がりがわからない。

 

「どうして貴方達がここに?」

 

 ロビンが口に出した疑問はもっともだった。それにローは難しい顔で返す。

 

「各々に事情は有るが……まあ簡単に言えば」

 

 言葉を引き継ぐようにバルトロメオは元気良く答える。

 

「ウタ様のライブに来る途中で女帝様に拾われたんだっぺ~~!!!」

「拾われた」

 

 余計わからなくなった。ただバルトロメオの服装には“UTA”のロゴがプリントされ背中には“愛羅武勇(アイラブユー)”の文字……何処からどう見ても『わたしは歌姫のファンです』と言った装い。

 

「ニワトリくんはわかるけど……ローも歌姫のファンなの?」

「違う。おれは―――」

 

 ローは自分の後ろを指し示す。そこに姿を見せるのは彼の仲間の一人。

 

「ベポの付き添いだ」

「すいません……」

 

 バルトロメオ以上に奇抜な格好をした白熊のミンク族、ベポが背中に絡繰り式“UTA”応援扇を広げて頭を下げる。ライトアップ機能と賑やかな音楽も搭載されており視覚的にも聴覚的にもうるさかった。

 ロー本人はウタのファンでは無いがベポはそうである為共に参加。バルトロメオは言わずもがな。

 

「じゃあ貴女は?」

「ふん! 決まっておろう!」

 

 ハンコックは髪を掻き上げる。そんな仕草すら人の目を惹き付けててやまない(あで)やかな彼女は偉そうにロビンを指差しながら答える。

 

「ライブに参加する為じゃ!!!」

 

 意外や意外。ロビンは予想していなかった答えに驚き目を見張る。あの噂に名高い“海賊女帝”が一歌手のファンなどと考えられなかったのだ。

 

「ウタのファンだったの?」

「あんな小娘になぞ興味など無いわ!!!」

「えー……?」

 

 ファンじゃ無かった。もう訳がわからなかった。

 ―――そんな“姉”の様子を見ていた妹2人、サンダーソニアとマリーゴールドが笑みを浮かべながらやって来た。

 

「姉様に私達がお願いしたのよ」

「歌姫のライブに行きたいと」

「……ふん。その通りじゃ。わらわは可愛い妹達の願いを聞いてここにやって来たまで!」

 

 凜々しい表情のハンコック。しかし眠るルフィに目を向けて相好を崩す。

 

「べ、別にルフィに会いたいから妹達の言に乗ったわけでは無いのだからな!?♡ そこは勘違いするで無いぞ!?♡」

「…………」

 

 すごくわかり易い。そう思ったロビンだったが彼女は賢いので口に出すことは無かった。

 それもそうだ。元七武海で高額な懸賞金を付けられている大物海賊が一人の男に会いたいという理由だけで易々と動けば……その影響が何処まで波及するかなど予想出来ないのだから。

 

(……まあうちの船長も幼馴染みに会うという理由だけで航路を決めたわけだけど)

 

 この海で名を馳せた者は少なからず我が道を征く気質が在るということか。ロビンは一人納得する。

 

「……でもやっぱり貴女があの2人を船に乗せて来たのだけは想像が付かないわ」

 

 九蛇の民からなる九蛇海賊団が男を乗せてやって来るなど誰も思わないだろう。そこまでの経緯が気になると云う物。

 

「そこまで知りたいと言うのであれば教えてやろう。わらわ達がここまで来た経緯を」

 

 ハンコックはローとバルトロメオにトットムジカへの警戒を自然と押し付けながらルフィを膝枕しつつしつつ当時の出来事を語り始めた。

 

 

 

 

 あれは2ヶ月近く前のこと。麦わらの一味に一本の電伝虫が掛かってきたことから始まる。

 ジリリリリと受信を知らせる電伝虫。

 

「おう、誰だ!」

 

 一番手近に居たルフィが受話器を取った。そうした電話相手と云えば―――

 

『ル、ルフィ……!♡ ひ、久し振りじゃの♡』

「お前ハンコックか! ひっさしぶりだなァ~!」

 

 自然と話し始めるルフィと電伝虫の相手があの“海賊女帝”と知って驚く仲間達。シャボンディ諸島で再集結した後にアマゾン・リリーに居たことをルフィから聞いていたがこうして直接連絡を取ってくるとは思ってもいなかったのだ。

 

「どうした? なんかあったのか?」

 

 そんな仲間達とは正反対にちっとも気負ってない友達感覚で用件を尋ねるルフィ。そんな彼にハンコックはまごつきながら口を開く。

 

『じ、実はそなたにお願いが在って……』

「ん? 何だ?」

『わらわを……その……』

 

 会話するだけでドキドキしているのかハンコックは深呼吸を挟むと、勇気を振り絞るようにそのお願いを言葉にする。

 

『……わらわ達“九蛇海賊団”をそなたの“大船団”に入れては貰えぬか?』

 

 その願いとは九蛇海賊団を麦わら傘下に入れて欲しいと云う物であった。

 

「「「「ええええェ~~~~ッッ!!?」」」」

 

 その驚きの内容に声を上げる仲間達。

 

「えー? お前も入んのか? ヤダなー」

「「「「ええええェ~~~~ッッ!!?」」」」

 

 渋い顔で嫌だと言うルフィにもっと驚く仲間達。

 

『そ、そんな……っ!? ……はぁ……』

『姉様!!? しっかりして!!』

 

 電伝虫越しにハンコックが倒れた音が聞こえその心配をする彼女の妹の声がした。どうやら断られるとは思っていなかったらしい。

 ショックで意識を朦朧とさせるハンコック。そんな彼女にルフィは笑顔を浮かべて伝える。

 

「だってお前らとはもう友達じゃねェか! いちいちそんなのに入る必要なんかねェよ!」

 

 朦朧としていた意識にズドンと突き刺さる愛しき人の言葉。

 

『ッ!!! ル、ルフィ!♡ 入る必要が無いとはつまり……! わらわ達は既に同胞(はらから)だったと云うことじゃな!!!』

「え? そうは言ってねェ」

『これが……嫁入り……!!!♡』

 

 幸福の頂きに立っているハンコックにルフィのツッコミは聞こえて無かった。

 

『で、では……♡ わらわと“九蛇海賊団”を今後とも末永くよろしく頼むぞルフィ♡』

「なーんであいつらもお前も押し掛けてくんだろうーなー?」

 

 傘下だの子分だの窮屈で堅苦しいだけだろうと思うルフィだが、もうハンコックの中では九蛇海賊団は麦わら大船団に入ったという認識になってしまった。だからもう純粋に友達がこれからも宜しくと言った風に受け取る事にしたのであった。

 

 

 

 

 そうして九蛇海賊団は無事に麦わら大船団の一員になれた……しかしハンコックには未だとても大事な目的が在った。それは―――

 

「……はぁ……ルフィに会いたい」

 

 やはり本人に一目会いたいと云う物だった。

 電伝虫での連絡を取った最後にハンコックは大船団に入った流れで一度合流でもしようかと企んでいたのだが、ルフィは「じゃあおれ達これからエレジアに行くから! お前らも元気でな!」とあっさり通話を切ってしまったのだ。まごついてた所為で本命の願いを切り出せずに終わったハンコックはショックで落ち込んだ。

 

「…………」

 

 そんな可哀想な姉を見かねて妹のサンダーソニアとマリーゴールドは一計を講じることにした。

 

「ねえねえ、姉様。ちょっと良い?」

「……何じゃ。言うてみよ」

 

 普段よりしおらしいハンコック。ルフィと話した直後は大体こうである。そんな彼女に妹は“トーンダイヤル”を取り出して言う。

 

「日取りは少し先だけど、エレジアで歌姫のライブが有るの」

「わたし達の話しというのはそれに行きたいという物なの姉様」

 

 行きたいなー行きたいなー、ライブに行きたいなーとサンダーソニアとマリーゴールドは二人でハンコックにおねだりする。そんな妹達にハンコックは眉根を寄せて「ライブじゃと?」と言う。

 

「わらわは歌姫になど興味無いが―――」

「ほら姉様。ルフィだってエレジアに行くようだし」

「ッ!!?」

「ライブ行く次いでに久し振りに顔合わせ出来るんじゃないかしら?」

「……な、なるほど! そうか! その手が!」

 

 ハンコックはまるで天恵でも得たと言うように晴れ晴れとした表情で船頭に立つ。

 

「聞けお前達!!! わらわ達はこれより進路をエレジアに向ける!!!」

 

 その言葉に異を唱える者は誰も居ない。だって電伝虫のやり取り全員聞いてたから。

 

「人生余興も必要であろう!!! よってわらわ達は歌姫のライブに参加する!!! さあ行け遊蛇(ユダ)よ!!! 凪の海(カームベルト)を突っ切り最短で駆け抜けるが良い!!!」

 

 その類い希なる美貌を更に喜色で輝かせるハンコックを九蛇海賊団の面々は微笑ましく見守りその号令に従うのであった。

 

 ―――そうして意気揚々とエレジアに向かって出発した直後。

 

「蛇姫様!!! 大変です!!!」

 

 海を監視していた仲間の一人が慌てながらハンコックに駆け寄ってくる。ハンコックはサロメに身を預けてゆったり座りながら対応する。

 

「そんなに慌ててどうした」

「む、向こうに!? その……ル……!!」

「る?」

 

 そうして見えた物を見えたまま報告する。

 

「“ルフィの船”が!!!」

「何じゃと!!?」

 

 予想外の報告にハンコックは立ち上がる。麦わらの一味が居るのはこことは違う海域、よってルフィの船が発見されるなど有り得ない。

 

「一体どういうことじゃ!? もっと詳しく報告せぬか!!!」

「え、えっと……ルフィの船としか言いようが無く……」

「ええい! 要領を得ん! わらわが直接確認するどの方角じゃ!!」

 

 ハンコックは仲間が見たそれを自身も甲板の縁に立って瞳に映す。

 

「な!? ……なん……じゃと……!?」

 

 そうしてハンコックの目に入ったのは紛れも無く―――

 

「……ルフィの船じゃ」

 

 あのモンキー・D・ルフィを船首に象った“ルフィの船”。

 帆に描かれた文字はBARTO CLUB……つまり彼女達が目にした船とは“ゴーイングルフィセンパイ号”であり、それに乗船するはバルトロメオ率いる海賊団“バルトクラブ”だったのだ。

 

 

 

 

「……海は広いべー、良い天気だべー」

 

 バルトロメオは陽気な空にほのぼのしながら隣りに居る人物に目を向ける。

 

「お前もそう思うべ、トラファルガー」

「知らん」

「相変わらずスカした奴だべ。そっちの白熊君と足して2で割りゃ丁度良いんじゃねェべか?」

「アチョー!」

 

 ゴーイングルフィセンパイ号にはローとベポも乗船していた。ライブを盛り上げる為の踊りをバルトクラブの面々にチェックしてもらうベポを指差すバルトロメオだが、当のローは取り合うことはせず座って聞き流していた。

 

「まったく折角乗せてやったのにノリの悪いやつだべ」

「おれは頼んだ覚えは無い」

 

 実際、ローがこの船に厄介になっているのはベポが発端だ。

 歌姫ウタの熱心なファンであるベポ。しかし他の仲間にわざわざライブまで観に行こうと思う熱心な者は居らず、仕方無くローが彼の付き添いとして二人でエレジアに向かっていたのだ。

 その道中偶然出会ったのがバルトクラブ。二人に声を掛けたバルトロメオの格好が何故かウタのファン装束だったのでベポが大いに反応、熱心なファン同士で通じる物が在ったのか歌姫について長々と語り合った後に「目的地が同じなら一緒に行くべ!!!」「アイアイ!!!」と意気投合。この状況に至る。

 

 あくまで付き添いであるローはベポとバルトロメオの熱意に付いて行けず船の上では距離を置くようにしていた。

 

「……それより航海士が居ねェ船だと? イかれてんのか」

 

 ただ相乗りしてからこの船の異常さを身を以て味わうことになってしまい心労が溜まりっぱなしのローは長い溜息を吐く。そんな風に一人落ち着いて海を眺めていたからだろう、彼が()()にいち早く気付けたのは。

 

「……!!! おいテメェら!!! やべェ船が近付いてくるぞ!!!」

 

 そう言いながらローは自分が今乗ってる船も違う意味でヤバイ船だったなと思ったが脳の奥へと蹴り込んだ。

 ゴーイングルフィセンパイ号に近付いて来たのは―――海王類さえ避ける毒蛇“遊蛇”に牽かれた船、九蛇海賊団の海賊船だった。

 

 

 

 

 ハンコックから話しを聞いたロビンは成る程と呟き締め括る。

 

「……そうして貴女は見つけたトラ男君とニワトリ君と白熊君を船に乗せたのね」

「そうじゃ。中々に見所の在る船に乗っておったからな。ルフィの子分を名乗るに相応しい素晴らしい船じゃった」

「いや~そう褒められると照れるべ~♡」

「……あれを褒める女帝屋も照れるテメェもおかしいだろ」

 

 ローはハンコックに船に乗せられてからの航海を思い出して……思い出して……

 

「やっぱ思い出したくねェ……何が楽しくて麦わら屋の話しを延々と聞かされなきゃならねェんだ」

 

 この数十日、ずっとルフィの話かウタの話かで埋め尽くされていた日々にローは本当にげんなりしていた。船内に大きく引き延ばされたルフィの写真が貼ってあったのを見つけた時は幻覚でも見ているんじゃないかと思った程だ。

 そんな経緯でエレジアに辿り着いたハンコックと九蛇海賊団、ローとベポ、バルトロメオ達。遊蛇のお陰で凪の海を突っ切る最短ルートのお陰で随分と早く目的地に着いた。そこまでは良かったのだが―――

 

「だがまさかあの歌姫がこんなヤバイ奴だったとはな。―――“切断(アンピュテート)”!!!」

 

 鞘を投げ捨て振り抜く妖刀“鬼哭”。その一振りによって直線上“ROOM”内に存在する音符戦士の全てが切断されて消滅する。

 

「本当にどうなってるんだべェ~!!? どうしてウタ様があんな怪物従えて暴れてるんだっぺかァー!!?」

 

 トットムジカの広範囲攻撃を“バリア”によって弾くバルトロメオは状況を知らず勢いで参戦した物だから半分パニック。しかし仕事はしっかり果たすのだから頼りになる。

 

「相手が誰であろうと関係無い!!! ルフィに仇為す物は全てわらわの敵じゃ!!!」

 

 見下し過ぎて逆に見上げているお馴染みのポーズでウタを指差すハンコック。ルフィを膝枕している状態で器用なものである。そして相手が何者であろうとハンコックのスタンスはぶれない。

 

「ウタはルフィの幼馴染みだから出来れば話し合いで解決したいのだけれど」

「幼馴染みじゃと羨ましい小娘め!!? そこから下りきて話し合いに応じよ!!!」

 

 ルフィを膝から下ろすとハンコックはウタに対して「さっさと下りて来ぬか!!!」と怒鳴り散らす。スタンスはぶれて無いが変わり身は早かった。さっきまで暴力で解決する気満々だった。

 

「…………」

 

 ウタはそうして集まった彼女達を見下ろす。左手に空いた穴から流れ落ちる液体で指先がぬめるのが不快だった。

 

「ルフィ……友達がたくさん出来たんだね」

 

 瞳に赤い輝きが灯る。それはトットムジカの目と同じ、視界に映る全てを焼き尽くすような赤い輝き。

 

「でも海賊の友達なんだね……皆を苦しめる、悪い海賊……!」

 

 トットムジカから湧き出す魔力が膨れ上がり周囲の空間が震えて悲鳴のような甲高い音を発する。

 

「なんかヤベェ!!? 今のウタ様うまく言えねェけどすげーヤベェべ!!?」

「見りゃわかる!!! “ROOM”―――」

 

 ローは直ぐにウタを結界内に収めて能力を行使しようとする、が。

 

「―――ッ!!? 動かせねェだと!? どうなってやがる!!!」

 

 しかしそれが不発したことにローは困惑する。

 “オペオペの実”の力は特定条件下では万能とも言うべき能力。それでも確かに能力の通じにくい相手が居たのも事実だが、ウタはそのような手合いとは違う。

 

「覇気じゃねェ! 能力が()()()()()!?」

 

 手応えがまるで無いのだ。過去“ROOM”で動かせなかったビッグマムやカイドウは過剰な覇気による抵抗で動かせなかったのだがウタの場合は何故か抵抗が全く無い……そこに何も居ないかのように。

 

「トラ男君。私のハナハナの力も今の彼女には通じないの。咲かせられない」

 

 ローの感じたその不可解な感覚は既にロビンも感じていた物。トットムジカから仲間を連れて逃げる途中に幾度かウタを拘束する目的で手を咲かせようとしたのだが―――

 

「……おそらく、今のウタは“存在が不安定”なのよ。その所為で私達の能力が空振りする」

「何だそれは。わかるように説明しろニコ屋」

「それは―――」

 

 ロビンはローに“魔王トットムジカ”について説明する。この現実世界と空想である“ウタワールド”を股に掛けて顕現する恐怖の存在、その異常性と攻略法を。

 

「―――つまり私はトットムジカによってウタの肉体にも何かしらの影響が及んでいると考えてるの」

「二つの世界を繋げる魔王……確かにそんな物を呼び出した本人に何の影響も無いなんてのもおかしな話しだからな」

「物理的な攻撃はトットムジカや兵士で防いでいるから実体はちゃんと在るみたいだけど……」

「……ちっ! 能力で直接狙おうとすると不具合が起きるってか! 面倒な!」

 

 ハナハナとオペオペ。過程は違うが“対象を認識して影響を及ぼす能力”という点では似ている。それが両方ともウタを対象にすると正常に機能しなくなる。2つの能力はそこに居る筈のウタを“居ない”と判断している。無い物にハナハナは咲かせられないし、オペオペは無い物を改造出来ない。

 ローは想像以上に厄介な状況だと理解して苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

「ふん! 何ということは無い!」

 

 しかしハンコックはそんな状況でも驕る姿勢を崩さない。

 

「あのデカ物が夢と現実の両方で叩かねばならない存在であるならば!! 夢に囚われたルフィ達と攻撃のタイミングが合うまで攻め続けるだけのこと!!! そなた達もルフィの友人なら気合いを見せてみよ!!!」

「友達じゃねェ!!?」

「と、友達だなんてそんな……照れるべ」

 

 ハンコックに言われるまでも無くローは“ROOM”による効果が直接通じないなら別の切り口で攻めようと考えていた。

 

「こいつらの守りは任せるぞ人喰い屋とニコ屋」

 

 ローは能力を鬼哭に付与する。それは音符戦士の集団を一振りで両断した時と同種の力。こうして物理的に直接攻撃すれば先程のような擦り抜けは発生しない。

 

「おれと女帝屋が攻める。ホネ屋とロボ屋も動けるようになったら加勢しろ」

 

 ローとハンコックが前線に並び、その後ろに仲間のベポ、サンダーソニアとマリーゴールドが控える。

 

「わらわの足を引っ張るなよ」

「誰に物言ってやがる」

 

 トットムジカが召喚した音符戦士が彼等に向かって進攻する。それに一切臆さないローとハンコックは各々の力を存分に振るう。ただの戦士は“ROOM”の影響を受けて一瞬の内にバラバラにされ、投げキッスで生成されたハートの矢の雨によって石化して落ちる。大軍が溶けるように消えていく。

 今は剥奪されたが互いに“七武海”に数えられていた大海賊。その圧倒的な力によって戦況を一気に引っ繰り返す。

 

「やっぱ強ェべトラファルガー!!! そのまま魔王も倒すべー!!!」

 

 快進撃にテンションを上げるバルトロメオ……その直後だった。

 

「ッ!!?」

 

 魔王の腕が振るわれた。

 ローもハンコックもそれに対抗しようとしたが余りにも呆気無く叩き飛ばされた。砲弾のような勢いで吹き飛んだ二人が建物に突っ込む。瓦礫が崩れ落ちる音が響き土埃が舞い上がる。

 

「……だ!!? だだだだ、大丈夫だべか二人ともー!!?」

 

 叫ぶバルトロメオ。強烈な攻撃を受けた二人が無事なのか確認しに行きたいがこの場には眠る者達と傷付いた者達が居る。守りの要である彼は軽々に動くわけにはいかないのだ。

 だが心配は杞憂だったようで二人は直ぐに瓦礫から飛び出してくる。

 

「なんだ無事だったべか」

「無事なもんかクソがっ!!!」

「ルフィの前でわらわは無様な姿を……ッ!!! 許さぬぞ魔王めェ!!!」

 

 怒りで表情を険しくするローとハンコックは戦線に復帰するなり果敢にトットムジカを攻め立てる。その諦めない姿にウタは表情を僅かに顰める。

 

「……だから無駄だって……!」

 

 トットムジカから湧き上がる力が小さな粒子となって無差別に振り撒かれる。それはまるで星の瞬きの如く輝き―――

 

「言ってるでしょッ!!!」

 

 爆発。これまで口から発射していた怪光線をまるで爆弾の如くバラ撒いたその攻撃は周囲を紅蓮に染める。ウタの内側で荒れ狂う激情を形にした光景がエレジアに作られる。

 

 燃え盛るエレジアの街。

 

「ぐッ!? ううゥ……!」

 

 忘れたくとも忘れられない悪夢の記憶。それに苛まれながらもウタは魔王の圧倒的な力を用いて全てを破壊していく。

 目に映る光景が遠ざかるような錯覚に陥る。膝から下の力が抜けそうになって体がふらつく。それは睡魔による症状だがウタは左手を握り締めることで痛みによる意識の覚醒を促す。

 

「駄目……ッ! 寝るな……もっと沢山の人にわたしの声が届くまで……!」

 

 爆炎を引き裂いて突撃してくる()を睨み付ける。

 

「邪魔を……!!! しないでェええええーーッ!!!」

 

 拒絶の叫び。常ならただの声だったそれがトットムジカの影響で異質の力を帯びる。空間を歪ませて波及する音がローとハンコックを通過する。物理的なダメージは無く問題無く素通り出来た二人だが―――

 

「な、んじゃと……これ……は……!?」

「ッ!!?」

 

 意識が飛びそうになる。力が抜けた所為で突撃の勢いが急速に落ちた。

 

「いけない!!? その声を聴いては駄目!!?」

 

 ロビンの警告はしかし遅かった。既に()()を聴いてしまったローとハンコックが落下を始めている。それはトットムジカにとって格好の獲物、魔王の爪が高く振り上げられる。

 

「二人が危ない!!!」

「……私にお任せを!!!」

 

 幾何かの休息のお陰で動けるようになったブルックが駆け出す。取り出したヴァイオリンの弦に刃を這わせ掻き鳴らされるは騒快(そうかい)なる音楽。

 

「“パーティーミュージック”!!!」

 

 ウタが発した音とブルックの音がぶつかり合う。そうして弾けて飛び散った音を掻い潜るようにしてブルックは2人の元へと跳び上がる。周囲には夥しい数の音符戦士。

 

「“キントーティアス”―――!!!」

 

 閃く高速剣。ブルックは擦れ違う音符戦士達をバラバラに斬り捨てて疾駆、そして眼前には振り下ろされようとする魔王の爪。

 

「“幻想曲(ファンタジア)”!!!」

 

 真っ向勝負。危機に陥ったローとハンコックを救う為にブルックが選んだのは力技。

 

「ぐぅううう!!?」

 

 だがブルックの剣はゾロの剛剣とは違い身のこなしや緩急によって発揮される柔剣。はっきり言って力押しには不向きでありトットムジカの攻撃も1秒さえ持ち堪えられない。

 しかし今はそんな僅かな時間が欲しかったのだ。

 

「ありがとうブルック!!!」

 

 ロビンの体、ローとハンコックの体から咲き伸ばされた連なる腕が掴み合う。

 

「引っ張るべェーー!!!」

「姉様ァーー!!!」

 

 その光景はまるで綱引き。ロビンの能力によって繋がれた2人を集まった全員で一気に引き寄せる。そうしてトットムジカの攻撃圏内から退避したことを確認したブルックは爪の勢いを受け入れて後方へと吹き飛びながら退く。

 

「うおおおい、トラファルガー!!? こんな時に寝るんじゃねェべ!!?」

「……う、うるせェ……耳元で騒ぐんじゃねェ」

「不覚……わらわとしたことが何度も……!」

 

 救出されたローとハンコックは見るからに眠そうな様子を見せていた。あれだけ体に漲らせていた覇気が精彩を欠き弱々しくなっている。戦闘中だと云うのに有り得ない光景。

 

「あの子は歌で人を眠らせることが出来る!! 迂闊に聴いては彼女の術中に嵌まってしまう!!」

「歌じゃと!? 先のいったいどこに歌など在った!?」

 

 ハンコックとローが聴いたのは叫びのみ。それなのに眠らされそうになったのはどういう意味だと眠気を頭を振って追い出しながら聞く。

 そこに後方まで吹き飛ばされていたブルックが戻ってきて説明をする。

 

「“がなり”……シャウトとも言う物が歌には有ります。怒りや悲鳴、熱狂などのメッセージを言葉で無く声音で表現する技法ですが」

「能力の応用! 面倒な力を持ってやがる!」

 

 敵対したウタウタの能力の危険性を身に沁みて実感したローは拳で胸を叩いて気合いを入れ直す。

 ハンコックとローの覇気が再び肉体に満ちる。眠気は完全に飛んだようだが2人のウタへの警戒度は一層増す。

 

「ある程度は覇気で防げるが続けて聴くほど抵抗が難しくなるぞ!」

「ウタ様のウタは自然と耳を傾けたくなるべー……って、ソレってかなり凶悪じゃねェべか!?」

 

 四皇の一角を崩した実力者であるローや強さによって七武海の称号を得たハンコックレベルの覇気でさえ崩すウタの能力。まるで無敵のようにさえ思えるが―――

 

「でもおかしい。彼女のウタウタは体力の消耗が激しかった筈。それなのに何故?」

 

 何故ここに来て“眠らせる力”を解禁してきたのか。それがロビンには解せなかった。

 

「……うー、イテテ……悪ィなちと気絶してた」

「フランキー! 大丈夫なの?」

「ああ、スーパー復活だぜ。仲間が戦ってるってのにいつまでも眠ってるわけにはいかねェからな」

 

 そんな時に傷付いていたフランキーが目を覚ました。彼は身を起こすとウタの方へ目を向ける。

 

「トットムジカ。一国を滅ぼしたってのもフカシじゃねェ、なんちゅう暴れん坊だ―――」

 

 フランキーはそこで言葉を詰まらせ「……何だありゃ?」と自分が見た物が信じられないような言葉を漏らす。

 

「どうしたロボ屋。何があった」

「トラ男!? ……いやおれの見間違いかもしれねェが……」

 

 気を失っている間に何人も助っ人に来ていたのを知ったフランキーは驚くが、それは後回しにして今目にした異変……ウタを指差して伝える。

 

「歌姫のあの“左手”……ありゃいったいどういうことだ?」

 

 初め誰もフランキーの言うそれが何の事かわからなかった。ウタの左手と言えばナイフによって出来た刺し傷を引き裂いたアームカバーで止血している状態だ。今になってそれを指摘するような理由など無い筈だと首を傾げ―――

 

「……え? あれは!」

「あまり……良い変化とは思えませんね」

 

 ロビンとブルックも気付く。ただ気付いたは良いがその異変が何を意味するのかまではわからない。

 

「何が起こっているんだ!?」

 

 ゴードンさえ知らないウタの身に起きた異変、それは―――

 

「『……壊す』」

 

 左手を覆う黒い靄。旋風に巻かれるように指先から腕へと駆け上がるそれは末端からじわじわとウタの姿を変化させていた。

 

「『……壊す、全て』」

 

 瞳に灯る赤い輝き、そして……“黒い装束に変化した左手”。傷口を上から締め上げるような、真っ赤な薔薇の意匠が施されたそれが靄の下から現れる。 じわり、じわりと。彼女の身を黒く染めていく。

 

「『わたしの邪魔をするもの……全部……全部ッ!!!』」

 

 エレジアに響く魔王の嗤い声。

 

「『―――あ……ア……Ah……あああアアアAh―――!!!』」

 

 叫喚。それは地の底から震え上がらせるような声。

 絶叫の如きウタの声がトットムジカの嗤い声を塗り潰す程の大きさで放たれた。その音波はさながら津波や土石流のような勢いで周囲に拡散していく。

 

「ッ!!! 耳栓を!!!」

 

 誰の発言だったかは関係無い。フランキーは理由を聞くこともせず迅速に耳栓をこの場に居る全員に行き渡るよう投げ渡す。ウタの声の危険性を十分承知していた彼等は一も二も無くそれを耳に嵌める。

 

「『―――あ……ア……Ah……あああアアアAh―――!!!』」

 

 直後に全身に浴びる歌姫の叫び声。耳栓をしたので眠らされることは無いと誰もが思った―――

 

「……なっ……!?」

「そんな」

 

 意識が遠のいた。有り得ない。音は確かに防いだ筈なのにどうして? 黒く塗り潰されそうになる意識を必死に繋ぎ止めながら彼等はそう考える。考えて考えて……気付いた。

 響く音が空気を大地を震わす。“人の身”を震わす。

 

「“伝導”!!? まさかそんな人の声で、こんな外で……!!?」

 

 オーケストラがホールで楽器を鳴り響かせる時、聴衆は腹の底にまで音が響くような感覚を覚える。それは閉じられた空間で反響した大音量が人体まで震わせることによって起きる現象。

 

 音とは耳だけで聴くに非ず。

 

 魂を揺さぶる声を持つ歌姫。そんな彼女が本気で歌えば人体を震わせ音を“体感”させるのだ。

 全員がこの状況を打開しようとウタを目指して足掻くが……魔王はそれを嘲笑うように鍵盤の四肢を振るってねじ伏せる。

 ウタの力が増す程にトットムジカの力が増し、トットムジカの力が増す程にウタの力が増す。それは一人の能力者が振るうには大き過ぎる力。これだけの戦力が集まって尚、彼女に触れられる位置にさえ至れない。

 

「“バリアボール”―――!!!」

「“ROOM”―――!!!」

 

 だから彼等は攻める事を諦める。この状況を乗り切るには守りに回るしか無いと決断する。

 

「“サウンド”!!!」

「“(カーム)”!!!」

 

 二重に発生した力場が全員を包み込む。

 

「くっ!!?」

 

 今にも眠ってしまいそうな意識を無理矢理起こしながらローとバルトロメオはウタの音波から身を守る。慣れていない、想定していなかった能力の使い方によって身動きは取れず、その姿はさながら嵐が過ぎ去るのをただ耐えるだけの哀れな鼠に見える。

 

 ローよりも前に出てバリアを張ったバルトロメオに向かってトットムジカの攻撃が集中する。“バリバリの実”の能力で作ったバリアは全ての攻撃を防ぐ。

 だがそれにも例外は有る。

 

「耐えられるか人喰い屋!!?」

「キツイべ!!? 相手の攻撃がデカ過ぎて地面ごと吹っ飛ばされそうだべェ~!!?」

 

 一撃ごとにバルトロメオ達の居る位置が地面ごと僅かに後ろへと動く。バリアがどれだけ堅牢でもそれ以外はそうもいかないのだ。更には罅まで入り始めたバリアを見てローは状況の悪さに舌打ちする。

 

(クソ!!! やはりまだ広範囲に掛けるのは無理が在ったか!!!)

 

 ローの“(カーム)”……又の名を“お前の影響で出る音は全て消えるの術”は本来オペオペの実の覚醒によって行使される“R・ROOM(リ・ルーム)”によって個人に対してのみ効果を十全に発揮する。そしてバルトロメオの“バリアボール・サウンド”も本来はバリア内部の音を外部に漏らさない、対象を閉じ込める為の技。

 つまり現在どちらの効果も不完全な状態で使っていることになる。その所為で“(カーム)”は音を遮断し切れず“バリア”は強度が不足し、しかも能力者本人以外に対しては効力が著しく弱まっている。

 ローとバルトロメオ以外の全員は既に意識を手放してしまっていた。つまりそれは二人の意識が閉ざされた時―――

 

「死んでも寝るなよ人喰い屋ァ!!!」

「うるせェトラファルガー!!? そんなのおれァ百も承知だべ!!! つか寝たら死ぬべこの状況ォーー!!?」

 

 圧倒的窮地。今、この場に居る全員の命が2人の双肩に重くのし掛かっていた。

 

 

 

 

 配信開始から2時間が経過。深夜を越えたと云うのにそれを見ようと電伝虫の前に集まる人々は加速度的に増えていく。それはライブに参加しようとエレジアに向かう船だけに留まらず世界の島々で起きていた。

 無論それはCP―0から報告を受けた五老星も知る事態。

 

「海軍とCP(サイファーポール)はまだエレジアに到着せんのか!?」

「そもそもライブ当日に間に合うだけ御の字だったのだ……! それがまさかこんなッ!」

 

 音声を切った電伝虫の映像を前にして事態の深刻さを再認識する五老星。その現状を補足するように報告に出向いたCP―0所属のロブ・ルッチが口を開く。

 

「……科学班からの報告が正しければ現在、この配信を見ているのは世界の人口の4割に届くそうです」

「4割だと!!? 何時だと思っている!!」

「今尚その割合は上昇中……一時間後には5割を超える見解のようです」

「5割の人間が消えてみろ! 社会秩序は崩壊し、世界は未曾有の混沌を迎えることになるぞ!!!」

 

 血を分けた家族、近所の友人、職場の同僚、行き付けの店屋……もし自身の周囲からそこに住む半数以上の人々が一夜にして消えたなら―――世界はこれまでの生活を維持出来なくなるのは目に見えていた。

 

「……今は信じる他あるまい」

 

 五老星の1人は青褪めながらもそう言う。

 

「本隊は間に合わずとも、一部の先行した彼等が間に合うことを」

「大将2人に“セラフィム”か」

 

 祈るように拳を握り締めて声を絞り出す。

 

「……世界の均衡は決して崩されてはならんのだ」

 

 世界の命運を分ける一夜。それを見届けるべく五老星はただじっと画面を視界に収めるのであった。

 

 

 

 

 ルフィは突然“ウタワールド”に現れた者達を見て驚く。

 

「―――ハンコック!? それにトラ男のところの白熊! 何でここに居んだ!?」

 

 ハンコックとその妹達、そしてベポ。そんな予想外の顔触れが居る理由を同じくウタワールドに囚われたロビン達が説明する。

 

「彼女達はライブに参加する目的でここに来たの。……あとごめんなさいルフィ。結局私達も眠らされてしまった」

「現実じゃあトラ男とロメオが頑張ってスーパー堪えてくれてる筈だ!!!」

「外を任されたと云うのに面目次第もございません」

 

 自分達の力が及ばず申し訳無いと表情を曇らせる3人にルフィは「気にすんな!!」と力強く言葉を掛ける。

 

「まだ何も終わっちゃいねェ!!! おれ達が踏ん張るのはここからだ!!!」

 

 “ギア(フォース)・スネークマン”に変化、攻撃力は多少下がるが手数と速度を増した技で音符戦士を叩き落としたルフィは鋭い目をウタへと向ける。

 

「もう少し!!! あと少しで()()掴めそうな気がすんだ!!!」

 

 ルフィの言葉にウソップは声を上げる。

 

「だから何かって何だよルフィ!!?」

「知らねェ!!!」

「うおおいッ!!? だからそれじゃあお前の何を手伝えば良いかわからねェって言ってるだろ!!?」

 

 雰囲気的に状況を打開する為の()()なのは確実。しかし当の本人でさえそれが何なのか把握出来ておらず仲間達は結局延々とトットムジカや音符戦士と戦闘を続けるばかり。ゾロは幾度となく魔王とぶつかり合ったボロボロの姿で咆える。

 

「何かわかりそうならさっさと捻り出せ!!!」

「んぎぎぎぎ~……!!」

 

 ルフィも必死だ。ゾロだけで無く仲間全員が長い戦いでボロボロになっている。余裕は未だ在るとは言えあまり悠長に考えてはいられないのだ。

 

「ル、ルフィ! わらわにも何か手伝えることは無いか!? 此処でそなたの役に立てなくては己が許せぬ!!!」

 

 触れた物を石化させる蹴りによって音符戦士を砕きながらハンコックがルフィの隣りに並ぶ。

 

「いやー? 来てくれただけで嬉しいけど?」

「はう♡!? い、いやしかしそれではわらわの立つ瀬が無く……♡」

「そうは言ってもなァ~」

 

 首を傾げるルフィは直後、ハンコック共々トットムジカの薙ぎ払いによって「うわああ!!?」と吹き飛ばされる。既に瓦礫の山と化している場所に突っ込んだ2人は直ぐに抜け出して体勢を整える。

 

「……忌々しい!!! こちらの攻撃は効かぬのにあちらはバカスカと!!!」

「あれ? ハンコックお前今の避けられたよな? 何で一緒に吹っ飛んできてんだ?」

 

 それは位置的な問題。ルフィは避けられないタイミングだったがハンコックがぎりぎり避けられた位置だった。それなのに何故か一緒に吹き飛ばされたことにルフィは不思議に思う。

 

「む? いやわらわも避けようと思ったのじゃが……実は直前に“これ”を見つけてしまって……」

 

 ハンコックはそう言うと攻撃を受ける直前に“助けた”それを片手で掴んだままルフィの目の前に吊り下げる。

 

「……は? ……ええええェ!!?」

「ただの犬猫なら無視したんじゃが……」

 

 それを見たルフィは目が飛び出さんばかりに驚く。ハンコックが助けたものとは―――

 

「“サ~ニ~”!!」

 

 デフォルメされた可愛い獅子の顔で鳴く小さな二足歩行の珍獣。

 

「サニー!!? お前サニー号かァ!!?」

 

 チョッパーの人獣形態ような姿になった“サウザンドサニー号”がそこに居た。

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