ONEPIECE FILM N.G.   作:悠々―ゆうゆう―

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滅びた王国

 エレジアで最も人気の有ったコンサートホール。真昼の陽光降り注ぐその舞台上で、ウタから彼女がライブで一体何を行うのか聞かされたゴードンは眉根を寄せる。

 

「……観客を全員、“夢の世界”に?」

「そう!」

 

 ライブで歌う楽曲の振り付けを実際に踊りながら確認してウタは説明を続ける。

 

「マイクと拡声器は問題無いけどそれだけじゃ地味だし……観てくれるファンの皆だってきっとそんなに楽しめないでしょ? 折角の初ライブなんだし派手に行かないと!」

 

 振り付けの楽曲は『ウタカタララバイ』。このライブを構想した時、ウタは自分これまで感じてきた不安・焦燥・後悔・夢・覚悟・強さを伝えたい物(メッセージ)として作り上げた“不退転”の歌。

 

「今回のライブで足りない人員、演出、食べ物や小道具なんかの全部。私の()()()()()()で補完する」

 

 全てを泡のように儚く美しい幻想へ……『ウタカタララバイ』は癒やしを熱狂的な歌唱で表現した異端の子守唄。この歌もまた世界に向けて発信され人気を博し、歌姫ウタの代表曲の一つとなっている。

 

「……エレジアは丁度今、霧が濃く立ちこめる時期に入ってる。それを利用してライブ当日ここに来てくれたファンの皆を私の世界に招く。そうすれば現実でのエレジア……ライブ会場の状態は気にしなくて良くなる」

 

 レッスンと言えどもウタは手を抜かない。流れる汗が腕の振りやステップに合わせて散って光を放つ。気付いて欲しい、でも気付かないで―――自分自身でも持て余しそうな想いを込めた歌を彼女はその声と踊りによって表現する。

 鬼気迫る……そう表するに相応しいウタの姿にゴードンの背筋には冷たい物が走っていく。

 この身の震えが彼女に悟られないよう、ゴードンはウタに気掛かりになったことを聞く。

 

「……だがしかしウタ。その方法では君の体力が保たない」

「大丈夫だよゴードン! 私に考えがあるから!」

 

 ウタは満面の笑みをゴードンに見せる。屈託の無い笑顔、そう見える。だが―――

 

「……まさかとは思うがウタ……」

 

 ウタの言う考えに嫌な予感がしたゴードンは深く問い詰めようとする。そんな彼にウタは待ったを掛けて答える。

 

「だから本当に大丈夫だって!!! 私はファンの皆と()()()新時代を迎えるんだから!!!」

「……そうか」

 

 力強く生きると断言したウタにゴードンは自らの危惧は思い過ごしかと、一応は納得させる。

 

(……だからと言って目を離すわけにはいかない)

 

 ゴードンはこのエレジアを統治してきた者として、音楽を愛する者として、そして何よりも……歌を愛する一人の少女の為に、自分がこれから何が出来るのかを考える。

 

「……私も、応援しているよ。ウタ」

「ありがとうゴードン!!! ライブが始まったらゴードンもしっかり観ててよね!!!」

「ああ……勿論だとも」

 

 もしウタが“あの計画”を本当に実行するのであれば。

 

(この情けなくちっぽけな私の命を賭してでも……彼女を止めなければならない)

 

 そうしてウタとゴードン、互いに胸の内を明かさぬまま決意を強めていた―――その時だった。

 

 森で鳥の群れが羽ばたき、獣が鳴き声を上げる、海からは海獣の咆吼が響く。

 

 島の空気が張り詰めた物に変わったのをウタとゴードンは確かに感じ取った。

 

「……? 島が騒がしい?」

「……誰か来たのかもしれない」

「誰か来たって、ライブはまだ二週間も先なんだよ? いくら私のファンでもそんなに早く来るわけ

 ないじゃん」

「少し見てくるよ。ウタはこのままレッスンを続けていると良い」

「私も一緒に」

「大丈夫。何か問題があれば電伝虫で連絡を入れる。だからウタはここで待っていなさい」

「……わかったよゴードン」

 

 ゆっくりと頼りない歩調で歩くゴードン。その背にウタは静かに声を掛ける。

 

「気を付けてね?」

「……ああ。行ってくるよ」

 

 ウタの幼い頃から変わっていない優しさにゴードンは微笑みながら、外の様子を確認する為にコンサートホールから出て行くのであった。

 

 

 

 

 サニー号の船首に乗っていたルフィは陸地が近付くやいなや勢いよく飛び出した。

 

「いっちばんのり~~~!!! やっほ~い!!!」

 

 着地、そして両腕を大きく突き上げ叫ぶ。

 

「着いたぞ!!! 音楽のナマコ、エレジア!!!」

「都っ!!? どんな言い間違いだお前!!?」

 

 ルフィのボケに突っ込むウソップ。ちなみにロビンはルフィの発言でとんでもない海鼠(なまこ)モンスターを想像していたが口に出していないので誰からも突っ込まれることは無かった。

 

「……しっかしまあ……何と言うか……」

 

 ウソップは不安げに辺りを見渡す。

 

()()でライブをする……んだよな?」

「そう。だけどこっちは市街地の有る本島だから、ライブが開催されるのはあっちの水道橋で繋がった島の方ね」

 

 ウソップの認識を訂正したナミだが彼女の表情も大差は無かった。

 そんな二人の後ろでフランキーがお得意のポーズをキメながら言う。

 

「ん~~っ……スゥ~パァアア~~ッ!!! 寂れてんじゃねえかこの島ぁああ~~!!?」

 

 寂れている。そう表された音楽の都(エレジア)の風景。

 建築物はその名残を見せるだけで半壊した物が殆ど。例え形が残っていようと植物に侵食され緑と一体化しながら風化している。

 はっきり言って到底人が住んでいるような雰囲気では無かった。

 

「本当に国か? ひとっこ一人いねえじゃねえか」

「音楽の都……と呼ぶより死者の都と呼ぶ方がしっくりきますね。……私の故郷だったりします?」

「ぎゃあああお化けぇえええ!!? ……ってブルックだぁああああ!!?」

 

 ゾロとブルックも訝しげに島の様子を伺うがやはりそこには活気と呼べる物が欠片も無い。チョッパーはブルックのボケの所為で錯乱していた。

 音楽の都なのに聞こえてくる物といえば風にざわめく枝葉の音であったり鳥獣のいななき程度。そのギャップに不気味な物を感じる麦わらの一味。だが驚いていない者も何人か居た。

 

「やっぱり滅んだままのようね」

 

 ロビンがそう呟くとジンベエがそれに同意するように頷く。

 

「ああ。やはり“あの事件”以降、この地に新たな国が興ることは無かったようじゃな」

「おいジンベエそりゃどういう意味だ?」

 

 サンジが聞き返すとジンベエは一度ルフィへと視線を向ける。新しい島に上陸してテンションが上がっている彼にこちらの声は聞こえていない、そう判断したジンベエはサンジに詳しく話すことにした。

 

「……今から12年前のことじゃ。とある海賊団が一つの国を滅ぼすという大事件を起こした」

「12年前? ……確かにおれがガキの頃そんな話しがあったような……」

 

 当時のことを思い返すサンジ。丁度その頃はゼフが創った海上レストラン“バラティエ”で下積みをしていた。その時にゼフが事件に関して何か言及していたと記憶している。

 

「うむ。その事件が起こった国こそ此処(ここ)、音楽の都エレジアじゃった。この事件によって国と共に国民のほぼ総てが亡くなった」

「……ひどい話だな。レディも子供も見境無くかよ」

「ああそうじゃな。……そしてその事件を引き起こした海賊団の悪名は世界へ轟くことになり……遂には“四皇”と呼ばれる存在にまで成った」

「四皇? ……お、おい待てそいつァ……」

 

 ジンベエがこの話しをする前に見せたルフィに気を使うような姿、それによってサンジはその海賊団がいったい何者なのか思い至る。そしてそれを肯定するようにジンベエがその名を口にする。

 

「赤髪海賊団大頭、赤髪のシャンクスじゃ」

 

 思い掛けない人物の名にこの話を聞いていた仲間達は騒然とする。

 

「い、今の話は本当? ロビン」

「ええ。当時は新聞でも大々的に報道されていたから印象に残っているわ。国一つ落ちた大事件だったから」

 

 ナミの言葉に答えていたロビンにウソップが必死な形相で駆け寄る。

 

「おいおいマジかよそれ!!? だってそれが本当なら事件には親父も……っ!!?」

「……落ち着いてウソップ」

「ぬお!?」

 

 ハナハナの実の能力によってウソップの肩から腕を生やして彼の目を掌で覆う。

 

「報道の内容は()()だったけれど……真偽の程は定かでは無いの」

 

 視界を塞いで仲間を強制的に落ち着かせたロビンは続きを話す。

 

「エレジアを襲った悲劇、生き残ったのは僅か二人。一人は名を伏せられているけど……もう一人の生き残りは国王だったゴードン。彼は『赤髪のシャンクスがやった』と言った以外詳細は何も語らず口を噤んだの。それを当時担当していた記者が『事件のトラウマで話すことも出来なくなった』と想像で勝手に書き連ねていたけれど……私からすれば判断材料が少なすぎて信憑性に欠けるわ」

「お、おう。そうか……」

 

 説明を受けたウソップは「もう落ち着いたからこれ外してくんねェ!!?」とロビンの生やした腕を引っ張る。ロビンは素直にその腕を消してやると目を伏せる。彼女にはもう一つだけ、心の隅に引っ掛かっていたことが在った。

 

「ゴードンは事件の主犯は赤髪海賊団であると言ってはいたけど……此処は()()エレジアだから……私は何かまだ表には出されていない真実が在ると思っているわ」

 

 そう言ったロビンの脳裏に思い起こされる故郷の記憶。この国と同じように今は滅んでしまった“オハラ”で学んだ外国の歴史。

 遙か昔、音楽の都で起きたお伽話のような悲劇の一説。それは闇に葬られた“古代兵器と同等”に(おそ)れられ秘匿された禁忌の記録。

 

(現物でも在れば良いのだけれど……いえ、無い方が良いと言うべきかしら)

 

 あのエレジアが滅んだ事件にはそれが絡んでいるとロビンは見ている……が、それも今の段階では想像の域を出ず当時の新聞と同じで信憑性が無い。

 ロビンは朽ち果てたエレジアを眺める。その光景は自身の故郷に重なることもあって僅かな寂寥感を覚えさせた。

 

「……どちらにせよ過去の話しじゃ。わしらはこれからのことをしよう」

 

 ここで話しが一区切り着いたと判断したジンベエは碇を下ろす準備を始める。

 

「オウ!! それもそうだな!! おれらの船長も待ち侘びちまってることだし!」

 

 暗くなりかけてきた空気を吹き飛ばすようにフランキーはジンベエに同意すると自分も準備を手伝い始める。

 ゾロはルフィに続くように柵へと脚を掛けて陸地に目を向ける。

 

「確かにおれたちはルフィの知り合いに会いに来たんだ。事件の真相なんか後回しで良いだろ」

 

 あまりにもあっさりした言いようにナミ、ウソップ、チョッパーはじとっとした目を向ける。

 

「なんかって何よなんかって!」「冷血漢!」「剣士バカ!」

「あーうるせえうるせえ」

 

 煩わしそうに3人の言葉を無視するゾロ。

 

「冷血マリモマン」

「ぁああンッ!!? ……いい度胸だな()()()

「はァあああン!!? 手前(てめ)ェそれはもう決闘だろうが!!?」

「やんのかボケコラ!!?」

 

 ゾロとサンジが「うおりゃァあああ!!」と戦い始めたので他の仲間は二人を無視(スルー)し上陸の段取りを進めていくのであった。

 

「―――ふー……さて、と」

 

 一人早くエレジアの地を踏んだルフィは一頻(ひとしき)りはしゃいで満足したのか麦わら帽子を被り直して一息吐く。

 

「ししし!」

 

 そうして彼は丘の方に目を向けてニッと笑うのであった。

 

「……誰か見てんなァ」

 

 

 

 

 丘の上から海岸を双眼鏡越しに見ていたゴードンは緊張で身動きが取れなくなった。

 

 

「まさか気付いた? ここまでどれだけ距離があると……」

 

 双眼鏡を覗けばそこには確かに一人の年若い男が丘の方へ、ゴードンが潜んでいる方へ顔を向けていた。

 

「……いや偶然だ、そうに違いな……っ!!!」

 

 偶然だと思った。しかしそれは間違いだった。

 笑った。

 男はゴードンの方を真っ直ぐ見て笑ったのだ。

 

「ッ!!?」

 

 ゴードンは急いでその場から逃げ出す。

 

(まずい!!! あの船の旗、間違い無く彼らは海賊!!! 一刻も早くウタに知らさねばっ!!!)

 

 海賊の目的がわからない以上下手に関わるのは得策では無い。ゴードンはこの緊急事態をウタに伝えるため急いでコンサートホールへ向かい走る。

 

(あの海賊が()()のように気の良い海賊である保証は一つも無い。……大々的にライブの宣伝を行ってからのこれだ、十中八九目的は彼女(ウタ)のはず!!!)

 

 世界的歌姫にまで至ったウタの存在は言い換えれば幾らでも大金を運んでくる()()。海賊の目的が悪しき物であれば彼女を狙わない手は無いのだ。

 

「今度こそッ!! 守らねば……ッ!! あの子を!!!」

 

 ゴードンは走る。力の限り、出せる速さで。

 

「そんなに急いでどうしたんだ? おっさん」

「海賊が来てるからだ!!!」

 

 何をわかりきったことをと答える。

 

「海賊が来るとなんかヤバいのか?」

「略奪が目的だった場合、あの子の身が危険だからだ!!!」

 

 彼にとって我が身よりウタの方が大事なのだ。

 

「それだったら大丈夫だぞおっさん」

「そんな楽観的に!!! ……ってさっきから私は誰と話して―――」

 

 ゴードンはそこでようやく自分の隣を走る男をはっきり見た。

 そこでようやくルフィは悪戯が成功したように無邪気に笑うのである。

 

「ししし! よっ!!」

「ぬわぁああああああああ!!? 海賊いつの間に!!?」

「デコのおっさん面白ェな~」

 

 派手なリアクションで丘を転がり落ちていくゴードンをルフィは走って追い掛ける。

 

「ぐぐぐ……」

「大丈夫かデコのおっさん」

「あ、ああ……大丈夫だ。ありがとう」

 

 起き上がるのに苦労していたゴードンに手を貸して立ち上がらせたルフィは「あっはっはっはっは!!!」と笑う。

 

「いやー、わりーわりー。怪我ねえかデコのおっさん?」

「怪我は無い……あと私はデコのおっさんではなくゴードンという」

「そうなのか? よろしくなデコのおっさん!!」

「…………」

 

 ゴードンは何とも言えない表情になった。しかし気を取り直す。聞かなければならないことが在るからだ。

 

「……君は、いったい?」

「ああ、おれはルフィ! モンキー・D・ルフィ! よろしくなデコっさん」

「略された!!? ……って“ルフィ”?」

 

 それは聞き覚えの在る名前。ウタが過去の大切だった思い出を語る時によく出ていた名前。 

 

「もしかすると……君は……」

 

 ゴードンの目の前でルフィは麦わら帽子を被り直す。

 見覚えの在る麦わら帽子。12年前の記憶を掘り起こすそれを被った男、ルフィは屈託無い笑顔でゴードンに尋ねた。

 

「なあ、ウタは元気か!!? また会うのスッゲー楽しみにしてたんだおれ!!!」

「…………」

 

 あれだけ緊張していた筈の体から力が抜ける。

 

「そうか。そうだったのか……」

 

 ゴードンはふっと微笑むとルフィに手を差し出した。

 

「……いらっしゃい。ルフィ君。私は君の来訪を歓迎する。……ウタもきっと喜ぶ」

「おう! おれの仲間もいっしょによろしくなー!! デっさん!!」

「……もはや私の原形が無いな」

 

 握手したルフィの手はまるで陽だまりのように暖かかった。

 

 

 

 

 その直ぐ後、仲間と合流したルフィは……案の定お叱りを受けていた。

 

「な~に先走ってみんな置いて行ってんのよあんたは!!?」

「ルフィお前超有名人になった自覚あんのかオイ!!?」

「あっはっはっはっは!! まあまあ、いい~じゃねぇ~か過ぎたことは~!」

 

 ナミとウソップに詰め寄られても全然堪えていないルフィ。そんな自分達の船長の楽観的な振る舞いに二人は逆に頭を痛めた。

 

「の、能天気すぎる……」

「諦めようナミ。四皇になってもこいつの中身はなんも変わってねェ」

「……そういうあんたこそ五億になっても相変わらず初めての島には尻込みしてたわね? “ゴッド”・ウソップ」

「ぅおおおおお~~ッ!!? やめろやめろ!!? どこで賞金稼ぎがおれ様の首を狙ってるかわかんねェんだぞ!!?」

「……ウソップの長鼻君を切り落としたら別人扱い出来ないかしら?」

「ロビン手前(てめ)ェ急に何おそろしいこと言ってやがる!!?」

 

 話しの矛先が変わったのを見てルフィはしめしめと二人から離れる。そんな彼に近付くのは大量の荷物を担いだサンジだった。

 

「ほらルフィ忘れもんだ。弁当渡すのも待たずに行きやがって」

「うっほ~~!! ありがとうサンジ!!!」

 

 サンジは一人一人のためにメニューを変えて作ったスペシャル弁当の一つをルフィに手渡す。

 

「それじゃあ、いただきます」

「早ェよ!!? 弁当食う前に先ずはそっちの人をおれらに紹介しろ!!?」

 

 サンジはルフィの頬を抓りながらぽつねんと佇むゴードンを指差す。

 

「ああー、この人デッさんていうんだ」

「なるほど、でっさん」

「ゴードンだ」

「違うじゃねえか!!?」

 

 ルフィの適当さに突っ込むサンジ。そうしている間にゾロやジンベエなどもゴードンとの顔合わせのために歩み寄る。ゾロはそこでゴードンの体が土埃にまみれているのを知る。

 

「うちの船長が迷惑掛けたみてえだな。大丈夫だったか?」

「いや、私が勝手に慌てたのが悪かったんだ。ありがとう」

 

 ジンベエはゾロとはまた別に気付いたことを聞く。

 

「間違いで無ければ、その名はエレジアを治めていた国王のものじゃったと記憶しておるが?」

「……ああ。いかにも。私はかつてこの国を治めていた者だ」

 

 そう言うとゴードンは遠く見える街並みに顔を向けると寂しげに目を伏せる。

 

「……国を失った今ではただのゴードンだがね」

「ふむ。すまん。少々配慮に欠けていた」

「いや構わない。あれからもう10年も経つ。心の整理は……ついているとも」

 

 最後の言葉にはどこか拭いきれない何かを感じさせたがジンベエはそれに敢えて触れることも無いと話題を変える。

 

「急な訪問ですまんかった。なにぶんルフィが(くだん)の歌姫に会いたいと言ってきかんのでな」

 

 ジンベエがそう言うと仲間達はルフィを次々になじっていく。

 

「あれでも一応おれ達の船長だから従ってるけどな」「基本バカで強情だし」「非常識」「単細胞よね」「無鉄砲」「食いしん坊」「ゴム人間」「まてよゴム人間は罵倒じゃねえ」

「お前らボロクソに言ってくんなー」

 

 流石のルフィもこれには呆気に取られる。それはちょっと間の抜けた姿。海賊団を束ねる船長の姿にはとても見えない。

 ただそれは……種族の垣根さえも越えた彼らの気安さ、親しさにも見えた。

 

「……良い仲間のようだね」

 

 彼らなら今のウタに会わせても大丈夫だと、ゴードンはそう思えた。一部、人とは思えないような者(ロボット、トナカイ、骨)も居たが些細な問題だろう。

 

「君達をウタの下へ案内しよう。きっと彼女も歓迎してくれ―――」

 

 そうしてゴードンがルフィ達をウタの居る場所まで案内しようと足を踏み出した時だった。

 

 ドン!! ドン!! ドーン!!

 

「なっ、なんだ!?」

 

 突如として鳴り響いた砲撃の音に足を止めることになった。

 

「何だ何だァ~~!!? 見えるかウソップ!!?」

「ちょっと待て急かすなチョッパー!? 今見てる!!」

 

 脚をスペペペペーンと叩いてくるチョッパーに急かされながらウソップはゴーグルを付けて音の出所、自分達が来た所とは別の海岸線へと視線を向けた。

 

「あ、ありゃー……海賊だァ!!? どこぞの海賊が大砲で街を撃ってきやがった!!」

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