大惨事スーパーロボット大戦α 作:猫者
銃口を向けるアサイラム姫が苦し気に笑った。
その先の男性、レイレガリア・ヴァース・レイヴァースもまた、笑った。
「可愛げのある姫であったと思ったが、いつ女王となったのだ?」
「地球で、あの日。あの地獄を生き抜いたからでしょうか……。
だから、おじい様。あの人の様に……平和の為に犠牲になると誓った。
私も全てを捨てる覚悟を持ったのです。味方すらも、故郷すらも」
どこか凍える様な寒さを感じる引き金をアセイラム姫は―――
■■■■■
「おい、おい……大丈夫か?」
「ん、あぁ……大丈夫だ。疲労が取れなくて寝てたらしい。
気にしてくれてありがとうな。えーと……あの艦長に張り付かれてた」
「テンカワ、テンカワアキト。
コックだ……まぁ、パイロットもやってるけど……ほら、起きろよ」
ありがとう、といってアキトの手をとって起き上がる。
あまり長く寝てなければよいいのだけどと思いながら眠気を飛ばすために眼がしらにぎゅっと力を入れた。
「てんかわあきと……あまのがわに明るい人、でいいのか?
えーと、天河 明人(てんかわ あきと)」
「あ、あぁ! そうそう! 他の人にもわかりやすいように
今じゃカナ表記が基本だから、なんか自分の呼ばれるとくすぐったいな……はっ」
ちょっと、恥ずかしそうに頭をかきながら笑うアキト。
優柔不断だなんだの結構言われてたらしいが素直に良い奴だと思った。
「あと、2、30分ぐらいらしいぜ。
綾波ちゃん、クルツさん、クワトロさん、ガイは一応。機体で待機してる。
まだ第二種状態で警戒しておけってぐらいなんだけど仕事熱心だよな……
ほら、豚汁。お前は少しでも栄養取っておいたほうがいいぜ。顔色がさ」
「……ん、そんなわるいか。わかった。貰っておくよ、さんきゅ」
そういって受け取ると、アキトが暗い顔をしているのに気づく。
「今は少し復興してるけど、アルドノアの到着が遅れてさっきの街……まぁ、俺が暮らしてた所なんだけどあそこに正体不明の敵がさ……
ほんの半年前まではあそこにいたんだぜ、俺。でもなぜか地球にいてさ」
「潜在的ESP……アキトはテレポータって奴だったのか?」
「って可能性があるらしい。色々調べられたな。でもその時も視線がなぁ
この手の模様。IFSっていうナノマシンで直感的に動かせる。
火星で最近、開発されたものなんだけどこのせいでヴァース、ヴァースってさ
肩身が狭かったよ。俺としちゃ、火星人のつもりなんだけど……」
まぁ、火星人ってヴァース帝国とかわらないかもしれないけどさ。
「俺の街の人は地球人と、ヴァース帝国と色んな人がいたけどさ。
早く和平が叶うといいね、とか言っててさ。みんな……
あ、ちょっと会ってきたんだ! やっぱ皆、そうだった。嬉しかったな」
へへ、ちょっと喋りすぎた。緊張してるんだ。
といって鼻をこする。シンはわからなくもないと思った。
自分も新兵時代はそうだった気がする。
「アセイラム姫、話し合えるといいな。
でも、さっきちょっと様子が変だったな。何が、っていうとなんだけど」
「変……?」
ふと、先ほどのイメージが頭をかすめる。
ただの悪夢だと思っていたが不安が湧いてくる。
「あぁ、IFSって実害はないんだけどちょっと副作用がな。少し怒りやすくなるとか、近くで強い電子機器。ECSみたいなの使われるとぴりっとする……」
「……アキト、機体に急いでくれ」
「きゅ、急になんだよ」
「戦いがあるかもしれない。
でも止められる可能性もある……お前のおかげだ!
あと、ありがとう。これうまかった!」
シンは豚汁を飲み干し、水筒を返すとブリッジに走っていく。
息をきらせてたどり着くと、いなほ、スレインが地形から考えられる戦闘時の逃げ場所の進路などを話していた。
アセイラム姫は、椅子に座り。正面から視界を動かさない。
「シン……どうしたの?」
「何!? この人がアセイラム様を助けてくれた!? すまない、ありがとう!」
「その感謝は後で受ける! ……失礼!」
そういうと、シンはアセイラム姫の顔に手を押し付ける。
「なっ!? ホログラム!?」
「……エデルリッゾだな。
本当のアセイラム姫はどうした」
「…………」
硬く口を結んだまま言葉を発さない。
今にも吐き出しそうな思いを押し込めるように。
「皇帝を……殺しにいったんだな。
自分が女王となり、すべてを止めるために」
「!? どうしてそれを」
「……俺を連れて向こうでひそかに入れ替わるつもりだったか……
確かに目撃者がいて、姫が傍にいればだれも疑わない……くそ。いなほ、ライブレードを! ザーツバルムをつれて……」
世界が揺れる。
「あ、危ない!」
エデルリッゾが咄嗟に立ち上がりシンの腰を抱きしめて椅子に押し付ける。
転倒こそ避けたがまだ幼いエデルリッゾにはそれが限界だった。
だが、それで完全にホログラムが解かれてしまう。
(まだバーストプラーナのダメージがあるのか。くそ、回復に数日かかる……ダメだ、高速飛行形態になんか、とても……)
「急がないと……急がないといけないんだ……」
「シン。急げば間に合う?」
「やってみなくちゃ、わかんねぇーーーーー!!
でも俺はやらないまま後悔なんでごめんだ。
いちかばちかだ……途中で堕ちるかもしれないが変形して……」
「なら、行こう……スレイン、協力してほしい
思い付きでつくったものだから操縦手が2人いる」
「いなほ、スレイプニールの代わりに搬入したあれか?」
「ダイダリオーンを出す。今のシンをライブレードに乗らせるわけにはいかない」
■■■■■■
「レイレガリア・ヴァース・レイヴァース、陛下。
侍女、エデルリッゾ 。ここに帰還いたしました」
「警備からはなんの連絡も受けていないが
ふっ、まぁ、おぬしにとっては此処は庭。どうとでもなるか
そもそも、戦争になり警備を減らしているのもある。ともかく無事で何より」
笑顔でそういうと、エデルリッゾ はありがとうございます。とそれに返答した。
レイレガリアをそれを見て何かを考えるように瞼を閉じる。
そして、何かを決心したかのように力を入れて立ち上がると口を開いた。
「だが、腹芸をもう少し教え込むべきだったと感じている。
エデルリッゾ はそんな雄々しく、わしの前には立てんよ。
そうであろう。我が姫、アセイラム・ヴァース・アリューシア 」
「……確かに、そうですね。
やはり無理がありました。あそこを抜けてくるまではよかったのですが」
そういってホログラムを解除するアセイラム姫。
「お久しぶりです、おじい様」とドレスの端をつまみ会釈をした。
「なぜ、そのまま来なかった?」
「大罪を犯すなら私でいい、といったあの子を納得させるためです。
バレれば明かすつもりでしたし、おじい様なら気づくと思っていました」
「そうか、そういうことか……して、なぜわざわざ戻った。
反逆者は内にある。もしかするとわしが命令したかもしれん」
なぜ戻った、戻るべきでなかったといわれているようで
少し、アセイラム姫は瞳を揺らした。だがすぐにそれを振り払うかのように
凛々しい笑顔を浮かべ、―――懐から銃を取り出した。
「それは……貴方を殺すためです。ヴァース皇帝」
銃口を向けるアサイラム姫が苦し気に笑った。
その先の男性、レイレガリア・ヴァース・レイヴァースもまた、笑った。
「可愛げのある姫であったと思ったが、いつ女王となったのだ?」
「地球で、あの日。あの地獄を生き抜いたからでしょうか……。
だから、おじい様。あの人の様に……平和の為に犠牲になると誓った。
私も全てを捨てる覚悟を持ったのです。味方すらも、故郷すらも」
「すでに戦う事をやめた軌道騎士もいる」
「戦いをやめずエアロゲイターやジオンと協力するものも必ず出ます。
だからこそ、私は王位を奪い。私の復活を宣言する。
その上で……反逆者ザーツバルムの揚陸城のドライブを停止します」
アルドアドライブを停止できるのは王家に連なるもののみ。
レイレガリア・ヴァース・レイヴァースの直系のみが持つ君主の権限。
「アルドノアは彼らの権利の象徴でもある。奪われたくないものは従います」
「そのやり方は遺恨を残し、畏敬を奪う」
「畏敬……? 戦いを止められず、多くのものを死に追いやったこの国が」
その言葉はとても低く、冷たかった。
アセイラム姫が心の奥底に押し込めていた、辛さと痛みそのものであるかのように。
「エアロゲイター、宇宙怪獣……さらに現れた謎の異星人。
あの星が戦う力を喪うことは人類が滅びるのも明白。
団結せねばならぬ時にそれを断ち切ったのはヴァース帝国……最悪の国。償わねばなりません」
王死すことで、苦痛を味わうことで。そして、いつか滅びることで……。
「さようなら……おじいさま」
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
宮殿に轟音が響き、天井が砕けた。
2人は何が落下した、と思い天井を見上げる。だが、それは厳密には違う”衝突したのだ”
天井から覗く、鳥の様な顔が開き。”運搬物”をワイヤーで下ろす。
それは、だいぶ辛そうに地に降り立った。
「やめろ、セイラム・ヴァース・アリューシア。
それはお前のやり方じゃぁないだろ……」
■■■■■■
「シン、さん……」
「……そうか、お主がこの子を助けたのだな。地球人か?」
彼女の動揺からそれを察したように、レイレガリアはシンを見つめた。
「あぁ、地球生まれ地球育ち。からのコロニーに引っ越しとか色々あるけど」
「ややこしいな。まぁ、いい。感謝をしている……ありがとう。
そして、すまなかった。この騒乱、止められぬのはこの身の老いと力の無さ
そのうえで頼みたい……止めないで欲しい」
祖父の意外な反応に目を見開くアセイラム。
レイレガリアは少し待て、と手をそちらに向けると再び話を始めた。
「姫を失った心労があったとしても生存を嘯き内部を切り崩し権威を得ようとする。
その言を信じてしまったのはこの私だ。私なのだ。ならば、古き王は廃されるべき」
「ダメだ」
「この子は覚悟もある」
「ダメだ」
「なぜかね。好いた女の手を汚したくないか?」
「違う、この場の結果は俺にとってとても大事な事だ。
うまく言えないかもしれない。でも言うよ、俺は」
アセイラム姫に向かい合う。
「バレるとは……思っていませんでした」
「喋ればボロが出る。だから黙って座らせておくとは考えたな。
皆には喉が痛いから薬を飲んで黙ってるって言ったって聞いたぞ」
「なかなか、簡単だけど良い作戦かと」
涙目でいたずらが成功した子供のように笑う。
しかし、すぐに目つきをかえた。覚悟の顔だった。
「私は覚悟をしました。
身を切り、永き憎悪に身を浸しても……人類のために平和を作ります」
「ずいぶん感情的な行動だな。いなほに馬鹿にされる。
スレインは泣くかもしれない。エデルリッゾは永遠に苦しむぞ」
「だから、止めるのですか!!!」
「俺が、お前の平和の祈りを信じているからだ」
「祈りだけじゃ、言葉だけじゃ何もできなかった!!!」
バァン!と弾がシンをかすめる。
感情的に発砲してしまったのか、カタカタと手が震えている。
「だから、歯車になるしかないと思った!
ヴァース帝国を動かす大きな歯車に、皇帝に!
覚悟をしてきたのに、貴方はそんな自分の気持ちだけで止めると!?」
「そうだ」
過去に置き忘れたものは取り返せないと知っているから、
過去に”する”訳にはいかないとここにきた。
「ベターな選択だがベストじゃないだろ。これさ」
「この状況で、完璧なんて。笑顔で笑える平和など求めていられない!」
「そりゃそうだ。でもなんで、今、平和を求める。
あんたの声で止まった奴だっている。そいつらが何か行動するかもしれない。
クルーテオさんだっけ? 彼もなんかやってるだろ。信じてやらないのか?」
「じゃあ、座して笑っていろと!?」
「……なんで自分で全部しょい込んでるんだお前は!
そいつらに荷物を分けろっていってるんだろ!!」
事実、アセイラム姫の死が懐疑的な状況で降下占領したものの戦いを止めているたちは多い。あの会見で生存を確信し軌道に戻った者もいた。
「どうして信じてやらない!!」
「彼らは私を見捨てた!!」
「本気で言ってるのか!! 言ってねぇだろ!!!」
「……っ!」
そう、裏切られてもなお、平和を築き上げることを信じていた。
分かり合えるものだけではないと理解してもなお、
時には戦いになるとしても、それでも話は続けようとしていた。
憎しみだけじゃ、平和は手に入れられないから。
平和の祈りを、シンは知っている。シンだけではない。
きっと、彼女を関わり合ったロンド・ベルの人間たちも。
「話し合え、手を取り合おうと努力をしろ。
時にはわかり得ないかもしれない、殺し合うだろう。
でも、あんたの傍に立ってくれる人たちはいる。いるだろう」
ヴァースに属するもの、アキトの様に火星人を自称し属さないもの。
火星だけでいろんな人間がいた。ならば、可能性は広く残っている。
「手を汚すなとはいわない。俺も人殺しだ。自分と自分の周りを護るために
敵を殺した。関係ない人も、巻き込んだ。それは俺の過去だ。変えられない」
―――でも、お前はまだだよ。
「平和の種を撒け、アセイラム。
レイレガリア・ヴァース・レイヴァースが望み、叶わなかった。
地球と、火星と、ヴァースとの明日の平和の種をお前が告げ!」
「わ、私は……」
「種か……そうか、そうだな。私はそれを懐で温めるだけで、
植えようとしなかったのかもしれない。必死だったというのは言い訳か?」
自嘲気味にそういうと、シンは首を振った。
「レイレガリアさん、あんたは地球との争いの当事者だ。
苦しみと憎しみのはてて、それを捨てなかっただけで立派だ。
問題があるとすれば……あんたのその種をアセイラム姫だけに渡した事。
もっと、多くのものにそれを根付かせていくべきだったんだ」
「難しい事を言う……」
「ごめん、俺もそう思う」
「構わない。確かに無理だと諦めていた部分はあった……アセイラム。セラム」
「お、おじいさま……」
「彼のいう事を、試してみるとしよう。
銃を下ろし、来るのだ。呼びかけよう……その祈りを」
いつか芽吹くと信じて、種を植えるのだ。我が愛しき姫……
「…………はい!」
なるはやでざっと確認して下もあげます
流石に疲れたので1日ぐらいは休むかもしれない