大惨事スーパーロボット大戦α   作:猫者

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えがおはゆるせねぇよ……


SIN

 バリアを揺らす衝撃波は伝わる。

 宮殿に貼られた次元バリアも冷却の限界を越えれば侵入されるだろう。

 

 そう、限界がある。

 基本的に対象者と接触していなければ全力を発揮できないため、

 揚陸城もその軌道を保つ事しかできない。だからこそ、前線基地として

 攻撃時は基本的には同時降下していた。

 コックピット内部やブリッジに搭載される為、

 アルドノアドライブは放射冷却を行えず、内部冷却システム便りになる。

 そう、デメリットがなければ次元バリアでの突撃だけですべてが済んでいる。

 

 だが、それ以外にも次元バリアには内部と外を隔絶する為、搭載機は攻撃時、

 それを外さなければいけないことや、次元を指定した場所と繋げられないため、

 接触したものを問答無用で消し飛ばすなどの各種の問題があるのだ。

 そう、アルドノアは完全な兵器ではない。必ず穴が存在した。

 それは、まるで生み出したものが……。

 プロトカルチャーが完全であることを認めなかった様に。

 

 

「さぁ、いきましょう。急いで」

 

 護衛に急かされる。エルデリッゾは準備をした。

 MS相手に銃など無意味だが一応は準備をしておく。

 だが、安全装置を外すのは自分の今からすることは危ないと思った。

 彼女はそれをそっと、

 お守りの様に目の前の男性のを懐にしまうと自分は役目に専念しようと決めた。

 

 

「さぁ、座ってください」

 

 焦点の合わない眼の男性、日野真。シン。

 シンは背が伸びて、女性らしさの出てきた少女、エルデリッゾの指示に従った。

 動きに人らしさはない、どこかぎこちなくロボット様に。

 1年前、急行したデューカリオンによって

 コックピットから助け出されて蘇生処置の末に息を吹き返した後もずっとこうだった。

 命令されれば排泄もする、食事もする。ただ、決まった動きをしてくれるだけで、

 運動のような複雑な動きはしてくれない。

 まるで何かが彼を生かしているだけで、その心は戻ってくる様子がなかった。

 エルデリッゾも、アセイラムもこの状態を快くは思っていない。

 火星と地球を結んだ男として、半ば、英雄の様に祭り上げられて生かされている。

 そんな気すらする。終わらせてやるべきという意見すらあった。

 

 2人もそんな事を一度は考えた。だが、できなかった。

 いつか戻ってきてくれるのではと淡い思いがあった。

 だが、1年経って何か変わることはなく、2年、3年とこのままなら……。

 

 

「駄目です、ダメですよ……ほら。しっかり椅子に自分を固定してくださいね」

 

 手を椅子に握らせながら、悲しみがこみあげてくる。

 止まっている。頭髪の成長も、爪も。呼吸も鼓動も最低限で、

 体温も低めで冷たさすら感じる。

 

 車いすを動かす。庭園から指揮所までは時間がかかる。

 急がねばならないだろう。足に力をこめた。

 

 

 しかし、その時乾いた発砲音が響いて護衛が崩れ落ちた。

 それを行ったのはもう一人の護衛。仲間だった存在。

 

 

「動かないでください」

 

 額に押し当てられる冷たいものに死をエルデリッゾは感じた。

 

 

「そ、そんなどうして……」

 

 

「一辺倒ではないという事です。ティータンズに従うヴァースの民もいる。

 手荒な事はしたくありません。貴方と彼を確保できれば彼女は降伏する」

 

 

「ひめ……王女様はそんな!」

 

 

「弱さは誰にもある。この1年、見ていてそれはわかりました。

 あの人の弱みとはまさに、貴方と彼です。これで無駄な争いは終わる」

 

 

「隷属するのが正しいことなのですか!」

 

 

「考えることは人は恐れる。従う事が心地いいからです。

 それが隷属と聞こえるならそうなるでしょう。私は共生と感じますがね……」

 

「そうですか……」

 

 エルデリッゾは銃をつかんで左胸にに強く押し付ける。

 そして、もう片方の手で相手の手をつかんで引き金を引こうとする。

 

 

「なら撃ちなさい。私が死ねばすぐに伝わります! なぜなら……

 このブロックは私のアルドノアドライブで管理されている! 死ねば閉鎖されます!」

 

 

「や、やめなさい! 」

 

「姫様を利用なんてさせません! この距離なら貫通してこの人も無事ではすみませんよ!」

 

「大事な人間ではないのですか!!!」

 

 

「だからこそ……だからこそ、利用なんてさせない!!!

 この人の生き方を知っている、私も、姫様も! あなたはどうですか! 

 知らない癖に! 彼と私たちの間に割り込まないでください!」

 

 

『涙の理由は一つだよ』

 

 

 ぴくっとシンの腕が動く。

 

 

『消えることに涙したなら、消えたくないって言っている。魂が……さぁ、起きて』

 

 

「さぁ、やりなさい! そして、無意味に死ぬといいのですよ!」

 

 

「くっ! そうですね、なら祈りましょう。彼に傷があまりつかず利用できることを!」

 

 

 エルデリッゾは目を見開いた。かつての自分なら祈り閉じていただろう。

 だが、強く見開いた。生きる事、それを魂に刻み付けるように。

 しかし、衝撃と共にその視界が落ちシンの腕の中に倒れ込んだ。

 

 

 パァン……パァン……バギィ!

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「もがぁ!」

 

 自分の状態が分からないかの様に男の眼が視界を彷徨わせる。

 肩がうまく動かず、銃を落としたようだと気づいたのだろう。

 だが、なぜ今。自分はこんなに呼吸ができないのだと考えている。

 そんな所じゃないだろうか。叩き込まれた拳で割れた歯の痛みにもやがて気づく筈。

 

 

「腕をしゃぶるのは楽しいか。少し前から聞こえてたぜぇ……。

 いいか……裏切者はヴェイガンだぁ……わかるかぁ。

 だが裏切者ヴェイガンは情報を吐いてから死ななければならない」

 

 

 エデルリッゾを車いすに代わりに座らせ立ち上がる。

 その勢いのまま、ヴェイガン(裏切者)を床にたたきつけると、

 銃を投げ捨て、シンはその手で絞るように鼻を握った。

 

「もーーー!」

 

「呼吸ができない、そうか。知ったことじゃあない。

 大丈夫、失神するだけ。コロサナイー……殺さないよぉ! 

 でもそのあとは死よりも辛い、拷問だねぇ……あぁ!?」」

 

 

「もげげげえーーーー!!」

 

 

 ビククンと激しい痙攣の後に気を失ったヴェイガンを離し近くの銃を蹴り飛ばす。

 太ももにしまっていた相手のナイフで服をべりべりとはいで全裸にし服の切れ端で

 椅子に結びつける。一応、歯の破片をざらざらと吐かせ気道確保だけを行った。

 一仕事を終えて満足した様に額の汗をぬぐう。

 

「いい気分だぁ……起きて早々ヴェイガン殲滅とはなぁ……最高だぜ。

 おっと、いけね。自決用に奥歯に毒入れてるかも……ベキィ。 あ、やっぱね」

 

「あ、あっ……」

 

「おはよう。よくわからんが火星? とりあえずこいつはこのまま連れていけ。

 下っ端の警備にはまだ裏切者がいるかもしれんからな」

 

 

「あぁあああああああああ!!!」

 

 

 ひしっと伝わるぬくもりと、

 服にしみこんでいく涙と鼻水の染み。

 やや、困惑した顔を浮かべつつ肩を押して引きはがす……剝がれない。

 

 

「ぁああああああ!」

 

 

「泣くな、泣くな! ほら、しゃきっとしろ!

 俺も俺でやることがあるから! ここからすぐ外に出られる場所はどこだ?」

 

 

「ずぴー……ここから2、3分です……」

 

 

「……いいよ。いいよ。なんか俺が悪い気がするし洗濯も自分でやるわ。俺が悪い。

 お前はよくやってくれた、多分。とりあえず、服預かっててな……さて、いくか」

 

 

 制服を脱いで、エルデリッゾの肩にかけると体を動かす。

 おそらくかなり長い間、寝て起きたわりには好調だったとシンは感じた。不思議な事に。

 

「ノーマルスーツは?」

 

 

「出口の傍に。ストレージは網膜認証式ですが貴方の……シンさんのも登録されています。

 ただ、どこにいくんですか? 逃げるとは思っていませんが現在は宮殿は次元バリアの」

 

 

「俺が通るスペースだけ解除するように連絡してくれ。もう、到着してる筈だ」

 

 

 ■■■■■

 

 

「カタクラフト、ステイギスの損耗率66%!

 特にガンダムタイプに凄まじい勢いで撃墜されています!」

 

 

「アステリオスの配備が間に合っていなかったのが効いてきていますね……」

 

 アセイラムは苦々しい言葉と共に唇を噛んだ。

 火星の作業用カタフラクトを改造し、

 武装ユニットを装着した。量産型カタフラクトであるステイギス。

 そもそもヴァース帝国にとって、カタクラフトは貴族の力の象徴でもある。

 だからこそ、ワンオフ機の性能は強大だが前線基地である揚陸城を必要とする様に、

 継続的戦闘能力が低かった。つまり、攻めは強いが周りは弱い状態であった。

 

 それを危惧したアセイラムは反乱を企てた妹を調べ上げる中で

 この機体のデータを発見し製造した。アルドノアドライブ製造時、

 出力の高さと固有能力を持つ当たりより遥かに多くできてしまう低出力のハズレ。

 これを搭載し、量産機として製造されたこの機体は

 アセイラム・ヴァース・アリューシアによる一括の起動が行われている為、

 起動権限の必要なく操縦ができる。まさしく、ヴァースの終わりと共に死ぬ、

 ヴァースと命を共にする機体ともいえ、貴族ではない一般階級の兵士が操縦をする。

 武器は四門の機関砲とミサイルランチャー。

 有人機1機を母体とし、自動操縦の無人機4機による5機1編成。

 長距離移動時、機体の四隅にあるジョイントに連結しブースターとする事もできる。

 これは、拠点防衛用の『数』の兵器である。

 

 しかし、操縦者の習熟度と元は作業用であるが故の戦闘能力の低さは否めない。

 だからこそ、アステリオスの搬入を急いだがティターンズの決起が起こり今に至る。

 

(指揮の学習が終わったのも少ない。せめて、特機が数台なければ……)

 

 その時、扉が開かれた。

 アセイラムとオペレータが振り返るとそこには車いすに縛られた全裸の男と、

 エデルリッゾの姿があった。よほど急いだのか息を切らしている。

 

 

「ひ、姫様! 宮殿の緊急時避難用通路の近くの次元バリアを解除してください!」

 

 次元バリアは弱点を補うために、何十枚とつなぎ合わせるように展開されている。

 

 

「分かりました、急いで!」

 

 

「了解しました、部分的に開閉します!」

 

 

 理由なく、そんな事を言い出す訳がない。

 何より、アセイラムには予感があった。

 

(あの子がかけている制服、きっと……!)

 

 ■■■■■

 

 

「よう、相棒……お互いしぶといな。

 いや、なんとなくわかる。きっとお前が俺を生かしてくれたんだな」

 

 

 シャトルの中で寝そべる機体を見上げた。

 

「真っ赤とはまた、ずいぶん悪党なような機体になりやがって……。

 見た目も随分、かわってるじゃねぇか。なぁ? まだ、そこにいるのか?」

 

 アイカメラが明滅した。

 

 

「……よし!」

 

 

 推進剤で接近し、コックピットを開閉する。

 見た目のわりに構造自体はさほど変わっていない。

 登場し、閉鎖する。ヘルメットだけを外し操作装置である水晶に手を触れる。

 

(感覚が軽い。他の補助動力がついたのか?

 周囲から負念を吸い取っている感覚はあるが、バックファイアがない。

 頭部にGストーンは確認できたが、いろいろと改造されたのか?)

 

 シャトルの屋根が開き、それにあわせてライブレードが起き上る。

 

「まいったな……」

 

 本当にまいったとシンは思った。

 なんか違和感がある。歯にものどころかつまようじが挟まったような感覚。

 

 

「駄目だ、ライブレードが完全に見た目と違い勇者ロボとか正義の味方寄りに改造されてて

 力の使い方がいまいちわからねぇよぉ~~~! 

 暗黒戦士みたいなパワーアップルートばっかの俺に正当派に戦えって死刑宣告でしょ!」

 

 視線を下ろせば、両手の上にGストーンなようなものがはまったガントレットのような

 装置まで降りてきた。GSライドの補助装置なのだろうが……。

 

 

『操作をレクチャーします。併せてください』

 

 

「おわぁあああ!! なんか画面に出てきたぁ!」

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「味方の撃墜率が多い。でも限界は近い筈なんだ……」

 

 

 AGEシステムが導き出す次元バリアの限界時間はあとわずか。

 そして、それが正しかったのをしめすかのようにわずかに次元バリアが開く。

 

 

「よし、今だ!!」

 

 

 キオ・アスノは賭けと思い撃墜されパイロットの死亡したオルタエイジを数機呼び寄せる。

 パイロット死亡の後もラウンダーの共感能力によってビットとして使える機能が搭載され、

 まさしく、キオ・アスノの親衛隊ともいうべきその機体たちを盾にし突撃を開始した。

 

 ステイギスの一斉攻撃の盾としながら推力を上げていくAGE-FX。

 

「ごめん、皆! でも、僕はやるよ!!」

 

 

 その時、眼前のシャトルから何かが飛び出した。

 赤いボディに緑のラインが走る謎のロボットだった。

 

 

「! でも今は止まる訳にはいかない!」

 

 

 彼は彼なりの使命を果たすために眼前の敵を倒す。それだけだった。

 

 

「キオ・アスノ……死にたくなければ避けろ」

 

 

「何!?」

 

―――テトラ・グラマトン!

 

 オープン回線で語り掛けてきたその言葉と共に機体が腕を左胸に突き立て、開いた。

 そこにはただ闇がある。光すら消え失せる闇の中で何かがそこに”いる”

 鳴動する黒白の機械の心臓の様なものイメージがキオの脳内に浮かび鼓動が

 耳の傍で聞こえるように錯覚するほど激しく鳴り響いた。

 

 

 

「!?」

 

 

 それは血に流れる、英雄フリットアスノから受け継いだ才能。

 強大なラウンダー能力の反射。ただの回避行動ではなく、

 全力で離脱しなければならない。という直感だった。

 

 

「コスモ・ブラスタぁああああ!!!」

 

 

 

 闇から生まれる光の束が周囲を飲み込む。

 無数のオルタエイジを破壊する中で、

 ステイギスを破壊せず光芒を引きながら、しばらく広がっていった。

 

 

「敵味方識別ありのMAP兵器とは恐れいった……

 ティターンズ……いや、キオ・アスノ退け!!!」

 

「なっ……」

 

 

「退かなければお前とお前の家族も殺す。血の果てまでも追い詰める……」

 

 

 その言葉と共に背中に浮かぶべたつく汗と冷たい死の気配。

 キオは操縦桿を震えさせ、息を荒くする。恐怖を抑えきれない。

 そんな感覚は初めてだった。

 

 

『火星騎士が防衛網を抜けました!』

 

 その報告が後押しになった。AGE-FXは機体を翻し、その場を去る。

 

 

「撤退する!」

 

 

 遠ざかるその背を見ながら、シンは安堵の言葉を漏らした。

 

 

「あぶねぇ、もう限界だった……」

 

 

『まだやれます』

 

 

「やれねぇよ!! 寝起きだぞ! 動力全稼働ってなんだお前!

 俺は今、何したのかすらわかってないぞ! 精神の残量は2割ぐらいだからね」

 

 

 まぁ、それでも余裕はある方だけどとは思うがと力を抜きシートに体を預ける。

 

 

『私はライブレードです』

 

 

「ライブレードはこれだろ、これ」

 

 

『厳密にはサブパイロット接続システムに接続されたもの。

 副動力になっていたものの内で”育てられていた”人工的な精霊』

 

 

「精霊か……」

 

 

 サイバスターはなんとかという名前の大精霊の加護を受けている、

 という説明があったのがなんとなく記憶に残っていたのを思い出す。

 ライブレードがそれを基にしたなら、機体の能力を引き出すために、

 人工的な精霊の創造に行きつくのは納得が行く。

 つまり、自分はこれが食い損ねた余りをエネルギーとして使っていたし

 そもそも、それをエネルギーとするのもおそらく、土壇場の改造だった。

 だからこそのあのダメージだったのかもと、独りで結論付けた。

 

 

「まぁ、今度教えてくれ。んで、この機体は?」

 

『ネオ・ライブレードです』

 

「え、いや。だっさ。なんかもう少しいい奴にしよう。俺もセンスはないけど」

 

 

『……では、どうぞ』

 

 

 空間に投影されたモニターらしきものに入力欄が表示される。

 シンはしばらく悩んで『ネオ』をBS連打で消した後に文字を書き加えた。

 

 

『由来は』

 

 

「お前と俺は一つみたいなもんだろ。ここまでくれば一蓮托生だ」

 

 

『……了解しました。これより本機は』

 

 

 ―――ライブレード・SIN(シン)と呼称します。

 

 

 ■■■■■

 

 

 機体を格納庫におろして、腕を回す。

 

 

「うーん……やっぱ調子がいい」

 

 

 精神的なものではなく、肉体的な意味だ。

 最後は自爆同然で流石に機体の保護機能がキャパオーバーしたのか

 コックピットでバウンドした覚えがある。

 なのでぶっちゃけ、病院で介護よろしくな状況だと思っていた。

 だが、”万全な所まで回復した状況で肉体が維持されていた”

 と表現するしかない。まるでよく寝て起きた後である。

 

 

(……ユリンか)

 

 

 見捨てられてなかったことに驚きすら感じるが、彼女の気配を感じた。

 もう、ここにはないがおそらく、最低限の事だけはしてくれたのだろうと。

 悲しい様な、気恥ずかしい様な。だが、うれしくもあった。

 

 続々と帰還するカタクラフトに視線を向ける。

 量産機と思わしきものの他にしらないものも多い。

 対峙した相手もそうだが、早急に事態を確認する必要があると確信した。

 歩を進めると、黒いドレスの女性がいた。

 

 

「…………あっ!! アセイラム姫……

 いや、もしかしたら王女……なんですかねぇ? へへぇ」

 

 

「なんでそんな他人行儀なんですか……もう」

 

 

 楽しそうに笑っているがどこか気品もある。

 可愛さが美しさに変わったというか。眼を嫌でも惹かれる。

 自分の意識を戻すためにぺちっ、と一度ほほを叩くと向かい合う。

 色々話すことはあるのだろうけど、とりあえず言う言葉がある。

 

 

「ただいま」

 

 

「おかえりなさい」

 

 

 彼女は、晴れやかにそう言って破顔して涙をあふれさせた。

 焦りながら、近づいて涙を拭おうとした手に両手を重ねてくる。

 

 

「おかえりなさい……」

 

 

 待ってくれている人間はいた。

 戻ってきてよかったのかもしれない。

 

 この使命のない世界に。

 あるいは今、生まれたのかもしれない。不思議と涙が止まらない。

 

 

「……ただいま!」

 

 

 世界にも届くような大きな声。地球にも届けと願った。




誤字修正は明日とか、明後日とかまでには
他の話も3回ぐらい確認したいなぁ……

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