大惨事スーパーロボット大戦α 作:猫者
素材はよかった、物語の齟齬は
表面上ではなく、潜在的なキャラクターの真意が別にあるゆえに発生したもので
筋道をたてて補強すれば理解できなくはない。
のような好意的な見方をしているがそう考えるとあの先の世界滅ぶね
が結論でした
現状の状況確認の為に、貰った私室に引きこもって10日。
ある程度は理解したが、同時に問題が発生していた。
(掲示板が閲覧できない……)
転生者掲示板へのアクセス権を失ったのか閲覧不能になっていた。
さんざん、活用した後なので脳内妄想という事はない。
だが、まだまだ必要な知識は多かったしむしろ、これからというタイミング。
そこでこんな足の引っ張り方をされるのかと、シンはため息と共に机に突っ伏した。
「キオ・アスノ……」
フリット・アスノの孫。
ガンエデン強奪計画の時についでに詳しく聞いていた。
スレ住民の話はこうだった。
いろいろな意見はあれど、彼は良くも悪くも少年であり純真だった。
だからこそ、”イゼルカントが自分の思想を受け継がせる”事を選んだ少年なのだと。
個人的には同情はあれど敵として出てくるなら、殲滅するだけだと鼻ほじ案件だ。
しかし、興味はない。興味はないが今後の為に彼はしっかり覚えていた。
ヴェイガン首領、イゼルカントがキオ・アスノだけに、自身の目的……
コロニーを攻撃、破壊し極限状態の中で覚醒を促し、彼が優良種と定めた存在。
Xラウンダーを目覚めさせようとしていた事を話したのも、
同様の事をヴェイガンの側でも表向きは爆発事故として行っていた事も。
そして、市民がマーズレイで苦しんでいる事を彼自身の眼と心で理解させたのも……
息子に似た、彼に自分自身の思想を全てとは言わず刻む為であった。
イゼルカントは理解していた。キオと自分が必ず決別することを、
そして、おそらく。ヴェイガンが負けるという事も理解していた。
だから、別の方法でヴェイガンを救いつつ人類を破滅させることにした。
それは、”EXA-DB”による内乱。
EXA-DBは情報のライブラリだという。歴史の中に埋もれた技術の結晶。
そこからヴェイガンの技術がうまれたとすれば、人類は必ずシド討伐を目指す。
そして、EXA-DBの回収を目指し、その独占を目論み必ずいは起きる。
便利なものを使わないでおけるほど、人類は無欲ではないからだ。
100年程度の平和を経て、キオ・アスノが未来に希望を信じて眠りにつくころに
世界は唐突に地獄の中へと放り込まれるだろうと……。
そして、その果てに生き残るのはおそらく、心を通わせ合えるXラウンダーのみ。
こうして、イゼルカントの目的は果たされるのだ。
キオ・アスノに生まれた平和への思いはイゼルカントに育まれたもの。
AGEの平和は確かに彼の功績だ。しかし、道筋も、その果ても。世界のおわりも。
全てはイゼルカントの掌の上という事になる。
なんとも気に食わない独り勝ちだ。
キオ・アスノは”選ばされてしまった”
そして、本人はそれを選んだと信じている。
といっても、シンも話を聞きながらいろいろ反論したが、納得させられてしまった。
1つ、キオ・アスノはヴェイガンにガンダムごと捕まった。
でも、ヴェイガンはそのガンダムを破壊も解体もしなかった。
データ取りだけして無造作に格納庫においてあった。それはなんでだと思う?
2つ、光学迷彩を間接的に感知するシステムをAGEシステムがあるとはいえ、人類側が
開発しているのに、それを生み出したヴェイガンがシステムを奪われた場合の
セーフティ。あるいは、対抗処置がないのは妙じゃないか?
3つ、光学迷彩技術という自分たちの最大のアドバンテージを奪われ、それが広まり、
自分たちが劣勢になる可能性があり、全力で相手をつぶさなければいけない状況で
「対応は任せる。”被害は最小限にとどめろ”」と言った結果、
おそらく、戦力は大きく投入されずキオ、救出部隊はセカンドムーンに侵入できた。
4つ、キオ・アスノ奪還という目的を理解している。
なら、なんらかの方法でその場所も把握している事、それも間違いなく理解している
なのに何も警備がなかったのは不自然だ。
そう、全てはキオ・アスノに取り返させ、逃がすため。
妙な警備の穴と手心も、それを名目上は奪われたとする為ならば筋が通る。
(恐ろしいと感じた。だから、躊躇なく始末すると決めていた。
じゃなくても始末するし結果的に始末したけど、でも世界にはティターンズがいた)
舞台の上に上がる理由がなければと準備はしたが、この世界に悪役は多すぎる。
バスク・オムか、ジャミトフか、あるいは別の存在か。
キオ・アスノは今も利用され続けている。
最も、最悪の結論として”自分で考えて決めた結論”という最悪の結末もありうる。
確かめる機会があるといいが、残念ながら不殺なんて戦場の中では成立しないのだ。
それこそ、敵が棒立ちでもしない限りは……メインカメラが壊れても、サブカメラがある。
腕や足がもげて武器がないなら、それこそ機体で突っ込んでくる。
皆が皆そうではないが、その程度の覚悟があるものだけが戦場にいる。
でなければ、逃げ出している。どこにいるとしても、パイロットは自分は死なないなんて、
甘い考えを抱いているものはほとんどいないのだ。
訓練を経て、コックピットに乗り込んだ時にパイロットは生まれ、
そして、その生まれた場所で死ぬ。コックピットは鉄の子宮であり棺桶でもある。
(邪魔をするなら、フリットの孫でもヴェイガンには変わりない。
それなら、いっそ諦めがつくから殲滅するつもりだけど……でも、13歳か
小6か中1ぐれぇかぁーーーーー! ちょっと流石になんかくるかもなぁーー!)
嫌な後味の悪さが口の中に残ってしゃりしゃりするような錯覚を感じる。
とりあえず、棚にあげておこうと思った。今度は一応聞いてみて、
こちらでも情報は集めてみる。そのうえでヴェイガンと感じたらためらいなく始末する。
気持ちとしてはそう思っておこう。そう思うしかない。
「駄目だ、堂々巡りだ……ずーと同じ思考でループしてる。棚にあげて落ちてくる。
この案件はあげるんじゃなくて仕舞って忘れておくほかない……他の事を考えよう」
(んで、EXA-DB。この世界ではそれがプロトカルチャーの遺産の一つだとして、
それにアクセスしたというイゼルカントなら、宇宙の秘密に近しい人物だった)
最悪の状況を回避した代償に、窓口をひとつ失った。
掲示板での知識の補給ができない以上、情報は多ければ多いほどいい。
だが、後悔したところで過去には戻れないのだから結局は手札で勝負するしかない。
ならば、今は手札を増やすために情報が必要だ。
「……地球圏に一度いこう」
プリペンターに合流することで何か突破口が見えてくるかもしれない。
ダメだった時はその時にまた考えるとしよう。一先ずの行動方針は決まった。
■■■■■
「従騎士の3割は脱出が間に合わなかったか、
脱出せず特攻の様な形で敵を巻き込んだ様です」
赤髪の少女。オペレータであるクーラルデュッセはそう報告して目を伏せた。
涙を流す訳でもなく、悲しげな表情にも見えない。
しかし、その整った表情の瞼の向こうに悲しみが存在するのをアセイラムは知っていた。
(彼女のおかげで前線の連絡と情報分析が円滑に進み、
迎撃の準備もできた。何より、こちらの意図をすぐに組み込んでくれる所が助かります)
だからこそ、そんな優秀な人間に負担を強いる事が歯がゆいと彼女は思った。
本来ならあと2人は此処にいる筈だった。だが、1人はティターンズの騒動で戻れず、
真っ先に戻ってきていた信頼のおける人物である1人は約束故にある人物に付けていた。
戦術教練が未熟な火星では機器を読み上げる程度はできても
戦術的な分析が本格的にできるものは少ない。彼女は地球に半年間留学し、
超スパルタの教育課程をなんとかクリアできた貴重な人材の一人なのだ。
3人含めてじっくり育てたかったが、
こうなれば彼女には地獄を突き進んで貰う他ない。
最も、もう1人はあの日にお役御免になった以上。2人にはなる。
それでやりくりするしかないとアセイラムはため息を吐いた。
「まず、ティターンズの対策を考えましょう」
「いや、それはない。あいつらはもう来ないはずだ」
当たり前の様に指揮所の扉をあけて入ってきたのはシン。
クーラルデュッセが少し眉をひそめて立ち上がろうとしたが、アセイラムがそれを制す。
「シンさん、何か心当たりが?」
「あー、それはな……」
「すいません! これをど、どうぞ!」
「おう、ありがとう」
乾燥が終わったらしい制服を着るとシンはなつかしさに包まれた感じがした。
ただ、どうもぱりっとした感じがどこか新品の様で違和感はあったが、
時間的に1年はアイロンなどかけた服を着てないのでわかる訳ないかと、疑問は捨てた。
アセイラムはその姿に一瞬、驚いた様な顔をしたが、顔をほころばせた。
「落ち着きます、その姿。ずっとそれでいてください」
「永遠に留年するの!? 服は考えるよ! でも落ち着くの俺の感覚的にまだ学生だから
くそーーー、留年かーーー! 留年だよなぁーー! あーーー! ならんかー!」
「うるさいですわ」
「あ、はい。ごめんなさい」
「クーラルデュッセ、ごめんなさい。少しはしゃいでしまったの」
そういって笑うアセイラムの吸い込まれる様な翠眼は澄んでいて覗き込みたくなる、
そんな衝動にクーラルデュッセは駆られた。しかし、その白い肌と
容貌。それらはまさしく王女と称するに値するほど見目麗しい整っており、
すらっと伸びた手足ですら芸術の域であると彼女は感じ、ぐっとこらえた。
「いえ……(美しすぎて近づいたら死んでしまう)
それで、日野伯爵。先ほどの説明をお願いします」
「今、なんか……いや、いいわ。いいか、ティターンズはそもそも、
スペースノイドを軽視し地球至上主義を掲げた組織だった。それが今、
イージスでコロニーを護るとか、コロニー出身者を旗印にしたり……」
「確かに違和感がありますが……」
「そう思うだろ? でも実際は違う。これ要するに変わったと世論を味方にして
あとあと防衛費だなんだとコロニーから毟る前フリでしかない。そして、
衝撃破から防いで貰って、異星人から守ってもらっているとくればもう何も言えない」
「あっ……やり方が変わっただけ、という事ですか?」
「そう、強圧的なものから段階的隷属化とでもいうものにシフトしただけだ。
んで、こっから……もう攻めてこない根拠だ。ぶっちゃけ……
何かが起きる前に戦力確保をしたかったから攻めてきたのは間違いない」
「妙な確信ですね」
「だって、隊長機1機だったろ。
何なら、戦闘もないって舐めてた可能性すらある。
つまり、”もう地球圏で何かが起きてる” だから来るわけがない」
「で、ですが……」
妙に食い下がるクーラルデュッセにシンは腕を組んで少し考えると、口を開いた。
「それに、本当に完全に勝利を確信した上なら手柄になるから
スペースノイドのアスノ家の血筋を送ってこないよ。
ジャミトフは直下の部下のバスクとの関係悪化を今はさせたくないだろうし」
「そう、ですね……」
諦めて納得したようでがっくりと項垂れた。
シンは自分も意外と弁が立つ、などと鼻を伸ばそうと思ったが
結局、他人の知識を下駄にしているのは間違いないのに気づく。
口に出すのは適度にしよう、とひそかに心の中で決めた。
「ともかく、一度地球へ向かうぞ俺は
悪いけど移動手段を用意してほしい。これは火星の未来の為にもなる筈だがどうだ?」
「ティターンズを倒し、
改めて地球との友好関係を取り戻せば確かに有益ではありますね」
「姫様。ほとんどの特機が接収されたと聞いておりますが、特機のほとんどは
操縦者の意思なく動かすことはできません。脅迫的に戦わされているとして
そのような状況なら、単騎での直接対決での勝利も可能かと」
「待って、その単騎ってもしかして俺ですか?」
「……そうですね。火星の資源も限度があります
まずは今回の戦闘を分析して防衛網の再編を行いますが……」
テラフォーミングにアルドノアの応用は適していない。
マーズレイの克服にこそ一躍は買い、工業発展のためには必須だが、
地磁気が弱く大気の薄い火星。動植物の生育も難しい環境であるのは確かなのだ。
長い間、多くの台所を支えるクロレラやオキアミ。
いまでこそ、それ以外も現地で生産できるものも増えた。
しかし、輸入が途絶えている今の状態は将来的に問題を発生させるのは間違いない。
段階的に継続されているテラフォーミングや緑地化作業も
やはり、地球の支援あってのものだ。独り立ちにはまだ早い。
「そのあとに出発しましょう。デューカリオンを出します」
「すいませーん! 言論の封殺解除お願いします!」
「静かにしてください、伯爵! 腹をくくってください!」
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「どうぞ、シンさん」
デューカリオンの艦橋で渡された身分証。
そこには全く身に覚えのない名前と国籍が記されている。
「マコト・ゼファー・ヒノ……え、火星国籍? な、なんぞこれ……
いや、待て!! 俺の地球国籍くんは!?」
「ヴァースの救国の英雄が地球に居住する必要が……?」
「地球国籍のままこちらにおいておくのができませんでしたので」
「んんぅーーー……これもしやもしや休学になってる処か退学では?」
永遠に学歴コンプレックスで苦しむのかと涙を流す、シン。
「全部終わった後に中卒でどこに就職すれば……
テストパイロットとかなら引き取ってくれるかなぁ……」
「大丈夫です」
「えぇ、そのとおり。大丈夫です」
冷えた笑みを浮かべるアセイラムとエルデリッゾを見つめながら、
首筋に冷えた感覚を感じる。
「伯爵……」
「は、はい」
クーラルデュッセが気の毒そうに肩に手を置く。
「諦めてください」
「ああ逃れられない!(カルマ)」
勤続何年で年金はあるのか。
せめて、お見合いの補助ぐらいはあってほしい。
シンは天井を仰ぎながら、一直線に進む自分の人生のレールの先を見つめた。
誤字確認。余裕があれば……