大惨事スーパーロボット大戦α   作:猫者

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誤字報告ありがとうございます。

ーとか完全に見逃してましたわ……


クロス・プラーナ

 

 基地の作戦室に全員が集まっている。

 エヴァパイロットは此処から移動すると、軍に狙われる可能性があるため、

 戦力として使う事はできないが、一応、参加していた。

 シンは腕を組み誰と目を合わす事無く目を伏せている。

 今は何も考えたくないとそうやって殻にこもっているようにも見える。

 

 

「当初の予定としてはテスラ=ライヒ研究所で

 プリベンターの部隊と合流する予定だった……でも研究所と連絡が取れないと」

 

 

「ええ。私は正直、経験が少ない。何かのトラブルという事にして降下するか、

 すでに制圧済であると考えルートを変更するか、

 率直に意見をお聞かせください、葛城ミサト一佐」

 

 アセイラム姫がミサトにそう投げかけると、

 ミサトは少し考えた後にモニターに2つの場所を表示した。

 

 

 

「北米コロラドにあるオーバーテクノロジーの総合研究機関。通称は「テスラ研」

 世界有数の研究機関であり特機の製造場所でもあるここですが、最近までは

 その独自性を保っていました。それは、異星人の持つ超技術……

 EOTを深く理解している唯一の機関であることが大きかったのですが……この感じだと」

 

 

「ティターンズに制圧されたと?」

 

 

「あるいは、別の何かかに。異星人か地下勢力か。

 通信が故障したなら代わりにすでの別の手段を取っている筈です。しかしそれもない。

 そうなると、一番安全な場所はオーブ連合首長国だったのですが……」

 

 アナハイムとオーブに×をつけるミサト。

 

 

「オーブ連合首長国は首都の壊滅と同時に解散。

 モルゲンレーテはブルーコスモスの管理下に置かれています。

 そうなると、プリベンターの合流を視野に入れるところですがそれも今は無理でしょう」

 

 バルマー戦役のメンバーがモニターに次々と映し出される。

 その中のメンバーに次々に×マークが張り付く。

 

「コンバトラー、ボルテスメンバーは半数ずつ分けられ、

 各マシンは動力を外された状態で管理。アムロ・レイ大尉、ブライト・ノア大佐

 などの中核メンバーはそれぞれ分けて管理されるなど徹底した監視下にあります」

 

 これはプリベンダーからもたらされた最新の情報です、と前置きしミサトは結論を述べる。

 

「プリベンダーは当初、ロンド・ベルメンバーを解放することで、

 ティータンズに対抗するためにロンド・ベルを再編する事を目指していた筈ですが

 現状ではそれはほぼ100%と言い切っていいほど不可能なはずです。そうなれば……」

 

 

「別の組織を作るしかないと?」

 

 

「そうです。そうなると現状、最適なのは……そうですね。

 例えば、ミスリルとの接触になるでしょう。しかし秘密主義の傭兵組織故に……」

 

 

「なら、俺が行く」

 

 

 すっと手をあげたシンは言い出すか悩んでいるのか、言い淀んだ後に言葉を紡いだ。

 

 

「知り合いが所属している。おそらく、いるだろう場所も分かる。

 ただ、アイツは自分なりに日常を楽しんでもいる。だから単独での行動を希望したい」

 

 

 ■■■■■

 

 

 

『計算上はエルゴフォームの重力操作を応用すれば突入は可能になるわ。

 ただ、ゆっくりと降下する事になるわけだから無論、無防備。降りる場所を考えねば」

 

「軌道エレベータは見張られてるだろうし、さてどうするか……てか、なんだその姿は」

 

 メイド服と巫女服の中間の様なオフショルダーの服。

 瞳は闇を象徴するかのような透き通った紫眼。

 そして、長い髪を巻いたツインテールが腰まで伸びている。

 ライブレード自体であり、ライブレードに宿る人工精霊が考えた自分の姿らしい。

 

「なんで銀髪なんだよ」

 

 

『そこ!? いや、それはあなたがあの金髪のお嬢さんが苦手そうだったから』

 

 

「苦手な訳じゃない……セラムさんも、リッゾちゃんも距離がわからねぇんだよ」

 

 

 ゆらゆらとするホログラムの額を指ではじくと、額にバッテンマークの古めかしい、

 ばんそうこうの様なマークが浮かぶ。個性豊かな精霊だとシンは思った。

 

「名前は? ライブレードでいいのか?」

 

『それでもいいけど、この子にはこの子だけの名前があった方がいいと思うのよね。

 ほら、元は私が入ってた訳じゃないしだからルイス・キャロルからとって

 キャロル、なんてどうかな。って思うの! キャロル・ヴォルクルス』

 

「ヴォルクルス、なんか見た覚えが」

 

 

『サイバスター乗ってる人たちの敵の教団の名前。カッコいいから! はい、登録」

 

 

「あ~~~いけません! いけませんよ! 絶対後で面倒な事になる。悔い改めて†」

 

 

 面倒なロボになってしまったなぁ、と思いながら、

 空間に投影されたモニターの降下予定ポイントを選択する。

 ティターンズの警備の穴をつけるポイントはわりと少ないので選択肢は少ない。

 いずれも予定の都立陣代高校までは距離がある。

 

 

「……すぐ近くに高速道路があるここにするか。

 説明受けたけど確か偽装できるんだろ、車に」

 

 

『Fでもいいかもね。大島の近くに降りるから』

 

 

「んじゃ、CとFで都立陣代高校までの所要時間を教えてくれ……

 って、そんなSiriさんよろしく、みたいなの無理かぁー」

 

 

『それがなんなのか分からないけど流石に簡易シミュレーションぐらいはできるわよ。

 起こりうるトラブルを組み込むとかぐらいならできるわよ。どうする?」

 

 

「え、できるんだ? すげー。んじゃ、その通り頼む」

 

 

『30分になります』

 

 

「なっが……頑張ってね」

 

 

 なう~ろ~どと吹き出しが張り付いた相棒のホログラムをささっと端に動かすと、

 シンは腕を頭の後ろで組んで寝転がった。まぁ、昨日はよくは寝れたのだが。

 でも心的ショックの気絶に近いので体力の回復具合としてはいまいちである。

 

 

 

「……寝るかぁ?」

 

 

「話そうと思ってきたのに、そうされると困るよ」

 

 

「スレインか、久しぶりだな」

 

 

 コックピットによじのぼってきたスレインは、軽く拳を突き出すと、

 シンはそれに応えて拳を突き合わせた。

 

「もっと早く来ようと思ったんだけど、アセイラムちゃんを見てて遅れてしまった。

 火星の鎮圧に失敗してプロバカンダとして二期が始まったんだ。今度はレインくんと

 いって、僕にそっくりなんだ……今度こそは真実を告げてほしい、地球よ!!」

 

 

「立派なアニオタに育ってやがる」

 

 

「リュウセイくんとは定期的に実況をしていたよ」

 

 

「染まったなぁ、スレイン。いや、垢抜けしたなって褒めた方がいいのかぁ」

 

 

 そんな事を言ってる間にコックピットに上がり、複座に座る。

 水晶に触ったり、機器を少し触っているかのようだ。

 

 

「……やはり、動かないか」

 

 

「受け取った情報の整理ぐらいはできるらしいぞ。まぁ、そんぐらい。

 で、どうしたスレイン? 一応、出撃はこれ待ちだからまだ余裕はあるけど」

 

「色々言いたい事がある。なんで起きたのを教えてくれなかったとか、

 皆を助けてくれてありがとうとか、いなほに連絡しないの?とかね。

 でも一番言いたい事は察してくれてると思うんだけど、どうだろう?」

 

 

 シンは険しい顔を浮かべ、振り返るとスレインを睨みつける。

 

 

「……ライブレードに乗せる気はない。

 姫様も侍女も火星の重要人物だろ……あぶねぇってわかるだろ」

 

 

「なら、君が守ればいい。ライブレードの本来の運用を考えるなら、

 ソロで動かしている今の方がおかしいのはわかる筈だ……」

 

 正論が多用されないのは、鋭利で鋭く、それでいて確実に相手に効くものだからだ。

 故に議論の場においてはそれを容易て論破を気取るのはタブーにされているが、

 この場はそんなものが関係ない。

 

 

「もう、仲よくなった奴を失いたくない……」

 

 

「誰もが戦場にいる以上死ぬんだ。

 君はその言葉を殺した相手にも言うのか? いいか……」

 

 

 スレインはシンの肩を掴んだ。

 冷え切ったその体に生気を、熱を吹き込む様に。

 

 

「火星の重要人物だからなんて関係ない。

 本人が望み、戦おうとしている。なら、止めないでくれ

 彼女も、姫様も、後悔をしないで生きたいだけなんだ。君なら分かるだろう?」

 

 

「……そう、だな」

 

 

 分かる。自分もそれだけを胸に抱いて生きてきた。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 道路を走るトラックが1台ある。

 通行スピードを護りながら動くが、それに違和感があるのはブレーキと

 コーナリングの素早さだ。重量があるトラックと思えないその違和感は

 注視すれば一目瞭然だが街中でそんなことを気にする人間はいないだろう。

 そう考えると、ホログラムの激しい動きに追従しきれないというハンデは、

 機動ロボット戦闘以外ではさほどデメリットにはならないのかもしれない。

 

 

「……妙だな」

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 シンの呟きに隣のアセイラムが反応する。

 

 現在、シンたちは分離した下半身部分が変形したもの。

 R・アタッカーで道路を走行している。変形の都合でコックピットが変形し、

 前後方の2か所だったコックピットが隣り合う形になっている。

 

 ホログラムにより大型トラックにみえている筈のそれは、

 実際、直上部にある砲門が見えるので明らかに普通の車ではない。

 ないのだが、火星のホログラム技術は有能だ。砲塔が火を吹かない限りは、

 しっかりとカモフラージュしてくれる事であろう。 

 

 シンはトントンと手を置いている機体操作用の水晶を叩きながら、考える。

 そして、広域電波でラジオを聴こうと手を伸ばしてそれが自分の場所からできない事を、

 思い出し、隣のアセイラムにそのまま声をかけた。

 

「電波の受信感度をあげてくれ。タッチモニターの左の……」

 

 

「マニュアルは読んでいます。これですね」

 

 

「(読み込んでるのか……準備してたな)少しずつ上にあげていってくれ

  それで受信できなきゃ、そういう事でいいと思う…………さて、どうなる」

  

「上げました」

 

 

「どこまで?」

 

 

「えっと、一番上です」

 

 シンは眉を顰める。ラジオ電波が入っていないからだ。

 

 

「R・ディフェンダーに連絡。ECMの状態も確認してくれ」

 

 

「駄目ですね。返答がないというか不通で通信が切れます。

 ECMセンサーによる反応はありません。妨害電波は検出されていませんが……」

 

「……教官のマニュアルを思い出せ……

 ECMじゃない、おそらく、機器の故障ではない。

 他の電波が入ってきてないから電波干渉でもない……太陽フレアか。まずいな」

 

 

 シンは立ち上がって、上部についた機器のトグルスイッチを入れて、すぐに着席する。

 

 

「今のは?」

 

「こっちは独立した装置。アナログメインで詰め込んで貰った。避難信号用ライトとかな。

 スモークは左から今の奴、注意、安全確保。接触式振動感知に、

 設備類はここからここまで。ここからがライトで……まぁ、いいか。全部入れとこ。

 赤・黄のスモークを飛ばした。古典的だし、少し時間はかかるが空のアイツには伝わる筈」

 

「で、ですが太陽フレアによる電波障害なのでしょう?」

 

「X28 3B等級。この辺で広域的な障害が出るし実例があるこれはマニュアルにもあって、

 あるいはそれ以上の状態と考えるなら衛星通信系はしばらくどうにもならない。

 流石に機動兵器やジャマーがあるASなんかは対応してるけど電話中絶対通じない」

 

「格好の機会、であると?」

 

「これを俺はピンチと捉えるがチャンスと捉える奴もいると思う。今の地球ならな……

 セラムさん。ノーマルスーツを着たままでいてくれ。

 このレベルだと健康的な問題が出てくる可能性がある」

 

 

 シンはスピードを上げた。

 少しでも被害が少ない状況ならばいいが無理かもしれない。

 

 

 ■■■■■

 

 

「宗介、ずっと上をバンバン叩いてるけどどうなの?」

 

「問題ない。学校の地下施設は軍管轄の施設だ。

 確かに後付けの施設ではあるが設計思想自体はしっかりしたものだ。

 俺がかつて校舎を覆った装甲より強固だ。

 籠城ならあと1時間……いや、最低でも30分は持つ。いなほ、どうだ?」

 

「ECM反応はない。天体観測部の観測記録から考えた結論だけど……

 太陽フレアだろうね。前の学校なら海底ケーブルで直通回線があったんだけど

 とりあえず、カタクラフトのホットスタートの準備をするよ。2機とも」

 

 そういってコックピットに乗り込んでいくいなほ。

 

「それって、最終手段じゃんいなほ~!」

 

 

 その要素を見ながら、ショットカットの網文韻子(あみふみいんこ)は涙目で絶叫した。

 

「くそ~、戻ってきてそうそうこれかよぉーーー!」

 

 

「そうはいって1年ぐらいは平和だったけどね……」

 

 

作業着を着たカーム・クラフトマンのボヤキに

箕国起助(みくにおきすけ)が苦笑いを浮かべながらそういった。

 

 

「ぼやくな、ぼやくな……祭陽、詰城、どうだ!」

 

 

「通信はダメですが、非常灯でSOSサインを出してます。

 ただ、日中ですし援軍が来てくれること前提ですね……くそぉ、アナログだなぁ」

 

 教官である鞠戸孝一郎にそう返答すると、

 祭陽希咲(まつりびきさき)は茶髪を苛立たし気に掻いた。

 

「集音の結果、ぐるっと囲まれてますね。どうします?」

 

 

 諦観混じりの詰城祐太朗はメガネを拭きながらそう問いかける。

 

「相手は人型のASだ。どうするもこうするも逃げ場がねぇよ。

 とりあえず、武装とチョッキぐらいは着とけ。どうなるかわからんけどな」

 

「でも可愛くないし……」

 

「余裕ですねぇ!?」

 

 

 ニーナ・クラインのそんな言葉に思わず声を荒げて驚く鞠戸。

 だが、余裕があるものが多いのは助かると彼は思った。

 一度、戦火を間接的に経験した事がその切っ掛けになっているのなら、

 あの戦争も無駄ではなかった、そう信じたい。

 

「教官、セントールユニットに脚部を換装しましょう。

 多重車輪の馬力で人員運搬用のソールユニットで一気にここにいる人たちを運ぶ。

 これしかないと思います……どのくらいかかる?」

 

 

「いなほ、お前……俺しかここの機材を使える整備士がいねぇ。

 30……いや、20分くれ。それでなんとかする!」

 

「……わかった、それでいくぞ! カーム、急げ!」

 

 

「ねぇ、でも……狙われてるのって千鳥さんだったよね。彼女を差し出せば」

 

 誰かが呟いたその言葉に、一斉に視線が集まった。

 

「馬鹿野郎! 奴らが集めてるサンプルってのはこいつ能力だけじゃねぇ。

 一人の為だけに街中にあんなものばらまくわけねぇだろ! 

 何より、避難中にこの街を平らにしようとしてた奴がいるっての忘れてねぇよな!」

 

 鞠戸の一喝で静寂を取り戻す生徒たち。

 だが、それはある意味。助かる方法があるかもしれないという希望を打ち砕いた。

 それは鞠戸にもわかっている。最後の心の防衛線が崩れた以上に、早急な対処が必要だ。

 

「……全員、ソールユニットへ移動開始。

 シートベルトなんて上等なもんはない。それこそ難民を詰め込んだコンテナに近い。

 だが、安心しろ! 緩衝構造だからトランポリンとでも思え。 相良!」

 

「はっ、大尉殿」

 

「カタクラフトはもう1機あるがケガ人のお前は乗せられない」

 

「だが、かすり傷です! AS以外もカタクラフトの操縦も今は理解して……」

 

「治療の終わったお前のクラスメイトは先に寝かしてある。そいつらを護れ。命令だ」

 

 

「なっ……いえ、了解」

 

 

 増設避難用耐衝運搬コンテナ、『ソールユニット』

 トラックとは違い、丸みを帯びた巨大なコンテナは馬車を想起させる。

 しかし、入口の先はハニカム構造になっており、一つの区画ごとに5名ずつ収容する。

 全大戦、街中での戦いになることも多かった所から、

 多くの避難民を一度に陸上から別の場所に移動するために制作された。

 

 

(何人入るんだったかな……まぁ、こっちの学校に復帰した奴は全員ではないし足りるか)

 

 そこに続々と乗り込んでいく生徒を見下ろしながら、鞠戸は悩んでいた。

 逃亡がうまくいったとして逃げる場所がない。

 最寄りの基地は県境を越える必要が出てくるが、援護もなくたどり着ける可能性は低い。

 フォールド通信が使えればよかったのだが、

 学校に急遽増築された仮設の地下倉庫兼実習室にそんな上等なものはない。

 

「教官、アレイオンの方のホットスタートは終わってます」

 

「あぁ、わるいな。いなほ、お前は避難を優先しろ。

 戦闘は全て俺が行う……姉貴の事があるからって俺が倒れても助けにくるなよ」

 

 

「……わかりました。でも弱気にならず女神の加護を信じてみてはどうですか?」

 

 

「怠惰でも女神は女神ってか。悪くないね、そうしよう」

 

 

 アレイオン乗り込み、操縦桿を握る。

 

「リフト起動! 第2搬入口から出るぞ! 

 あいつらは校庭の第1に釘付けだ! それで時間を少し稼げる」

 

「了解、リフト起動。アレイオンを先頭にして稼働」

 

 

 いなほの操作により、機体が出口へ向かっていく。

 前回の襲撃の後、ソールユニットや機材を運び込むために増設された出口。

 その場所を知るのは受け取りを行っていたいなほと教官だけ。

 してやったりとわずかな優越感を感じながらも鞠戸はそれ以上の焦燥感か、あるいは勘に

 突き動かされるかの様に反射的にアレイオンの携帯する武器の安全装置を外した。

 先行し上昇していくリフト。開いた扉の先には青い空が広がっている。

 

「あぁ……」

 

 鞠戸は安心した。

 そして、リフトが上がり切り機体が外に出た。

 

 

「あっ……?」

 

 安心してしまった。

 だからこそ、自分の周りに広がる光景に硬直してしまった。

 アラストル、アマルガムの小型機動兵器。対人用に作られたASであるが

 電波不通の状況では設定されたプログラムによって動作している。

 だからこそ、鞠戸は安心していた。”機械など欺けると”

 

(まさか……)

 

 先ほどのあれは攻撃ではなく、反響より基地の規模と通路の有無を確認していたのでは。

 

(まさか……)

 

 そして、それによって逃げ場所を想定して待機していた。

 校庭を覆っていたものより数は少ないがそれでも20機以上だ。

 

 限界状況で加速される思考の中で鞠戸は悟った。

 高等な判断は不可能だとしてもデータリンク機能を有していたとしたらどうだ。

 長距離は不可能でもなんらかの短距離なら通信は可能な筈。それにより、

 学習である程度の作戦の方向転換も可能だとすれば、あの一体、一体、

 どれもが指揮官となりうる。だとすれば……この展開は可能だ。

 

「悪いな、覚悟は決めなきゃならねぇ」

 

 首から下げた指輪を握って、鞠戸は独りごちた。

 とびかかってこようとするアラストルに銃を向ける。

 1体でも道ずれにするために。しかし……敵はいつまでたっても自分に向かってこない。

 

 否、とびかかってきたすべてが引っかかる様に空中で静止していた。

 注視すると機体の周囲を覆う様に、波紋を発する壁がある。

 それは、自分の上にいる戦闘機が発するものだった。

 

「これは……!?」

 

 

『簡易プロテクトフィールドはそんなに長持ちしないのでさっさと排除をお願いします』

 

 

「いや、そんなこといったって! あの小型ASの機動力はばか高い!」

 

 

『あー、いえいえ。教官殿ではなくて、うちの人に言ってるんです』

 

 瞬間、紫の光芒が敵に向かって降り注ぐ。

 光の先にはトラックが一台。いや、攻撃と共に揺れ動くその姿の先には

 2門の砲塔を担いだ鉄の壁を思わせるような強固な姿の何かがいる。

 

 

『よーし、good。ぐっぼーい!

 さてさて、後続が控えてるんですし早く降りたらどうです?』

 

「お、おう」

 

 せかされる様に降りるとリフトが下降をはじめ、すぐに後続のいなほの機体、

 ソールユニットを装着したアレイオンが上昇してくる。

 

『でわでわ、状況の説明を手短にお願いできますか?』

 

 

「うちの学校の千鳥が狙われ、対抗した相良が負けてアーバレストは大破。

 地下に逃げ込み、逃げ出したが分散してある出口の一つを包囲されてこのざまだ。

 データリンクが生きてるなら相良を負かしたやつもすぐに駆け付ける筈だ……どうする?」

 

 

『……ふむ、了解しました。こちらで対処します

 貴方たちは私たちが足止めしている間に川崎方面へ向かってください』

 

 

「襲撃が限定的なものなのか、限定的なものであるなら情報を拡散し

 すぐにその情報を共有するために、だね?」

 

『そうです。なので急いでください、いなほくん。もう来ました』

 

 

「? なんで僕の名前を……」

 

 

『行きなさい、早く!!』

 

 

 2機の脇をすり抜けるように放たれる砲撃。

 それが数百メートル先で銀色の機体にはじかれる。

 同時に偽装を解除してR・アタッカーが飛び込んでくる。

 

 

「合体して、突撃する! エルゴフォーム展開!」

 

『了解!』

 

 

 ホバーで浮き上がったG・アタッカーが展開した重力フィールドに、

 G・ディフェンダーが飛び込む。推力の補助とバリアフィールドの形成に使われていた、

 ステルスガオーのエンジンが格納されていた腕部に押し出される。

 エンジン部から回転しながら拳が突き出てくると同時に、

 ボディに収まっていた頭部が持ち上がり、上半身が完成する。

 そこにG・アタッカーがドッキングし、砲塔が背中の線を通って移動し、

 担ぐように装着。同時にドッキング部の前方が開いた後に1回転し、脚部が完成する。

 

 コックピットがG・ディフェンダーの内部に移動。

 通常の前方、後方の形に変形した。

 

『全動力、稼働確認』

 

 

 

 アイカメラが光り輝き、体に走る緑のラインが走ると共に白いボディが深紅に染まる。

 その姿は血に染まった呪われた機体にこそ見えるがまさしく……

 

 

「ライ、ブレード……」

 

 

 いなほが絞り出すような声で呟く。

 

 

「いくぞぉおおおお!! レナードォオオオ!」

 

 

 深紅と銀の機体が衝突した。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「共振!? マサキ・ヒノ!! お前もまたウィスパードだというのか!」

 

 

「悪いが俺はただの盗人みたいなもんだ。お前の能力を劣化して写しとった」

 

 

「……! 驚異的だな。そうはいうがその範囲がすべてに及ぶなら、

 頂点的な能力ともいえる! オムニ・スフィアにそこまでの力があるのか……」

 

 

「あるいは、その外かもな……」

 

 

 

「そこまでの力があるならば、やはりかなめを確保したい」

 

 

 さらに力を強くなる推力に一瞬押し負けるライブレード。

 

 

「くそ、体格はこっちが上なのに押し負けてるぞ。化け物か!

 このままじゃ押し切られるぞ! まだ時間稼ぎにもなってねえのに!」

 

 

『化け物よ! 実際、まだ底が見えてないのよ!

 プラーナコンバータの出力を上げなさい!!」

 

 

 ライブレードのスペックを十全に発揮するならば、それしかない。

 そうすれば、補助動力で機体の力を補うのではなく、機体のスペックに上乗せできる。

 だが、それは危険を伴う事をシンは理解している。

 

 

「……ハーフ、ハーフ。25%でいくぞ!」

 

「いえ、最大で行きましょう。開始します」

 

 

 アセイラム姫が動力調整を開始する。

 

 

『ばっ、馬鹿なの!?』

 

「やめろ、セラムさん! 危険だぞ!」

 

 

「覚悟をして、ここに乗っています。

 それが王族として無責任だと思われようとも、

 玉座に胡坐をかき無味乾燥な感情で地球が荒廃するのを放置するつもりはありません」

 

 

「だが!」

 

 

「シンさん。1度だけ聞きます」

 

 

 振り返ったシンに向かってアセイラムは真剣にそれを見つめ返した。

 

 

「私はあなたを信じています。貴方は……私を信じてくれますか?」

 

 

 それは少し控えめな言い方だった。本人に自信がなかったのかもしれない。

 事実、瞳が不安で揺れている。どうすればいいか、考える時間はない。

 いや……決断というのはいつだってそうなのだ。

 ただ、心の中にあるものに従う。それだけの時間しか残されない。

 だから、いつだってその時は正しい……

 

 

「出力全開!」

 

 

「了解、出力全開!」

 

 

『馬鹿が2人ぃーーー!』

 

 

「いいから、お前はなんとかアイツを少しでいいから弾き飛ばせキャロル!!」

 

 

『あぁあーーー! もう、砲塔を最大出力で使うわよ。壊れても文句言わないでよね!』

 

 

 相手の足止めに使われていた前方に展開されたエルゴフォームを解除。

 グラヴィトンライフルが最大出力で射出される。

 当然、ラムダドライバによって防がれ続けているし、

 その中でベリアルは進行を続けている。

 

 

「俺ら2人を繋ぐものがあるとしたら、それはなんだろうなセラムさん。

 あの時、3人で感じたのはなんだったんだろう……」

 

 

「分かりません。でも、特別な繋がりがあると私たちは信じていた。

 衝動的な行動で危険を冒してしまいましたけどね。でも、私たちは自分の心を信じた」

 

 

「そうか、なら……俺もしたがおう!」

 

 

 心が折り重なり、幾重にも強固になっていくのを感じた。

 そして、何をすればいいのかも理解する前に分かる。

  

 背中の1対の翼が外れ、両腕部に装着される。

 膨大なエネルギーがそこに流れ込み、真っ赤に輝いた。解放の時を求める様に。

 ライブレードがベリアルに向けて両腕を突き出す。

 

 

「「真ゼイフォニック・ヴァース・レイ」」

 

 極大のビームが放たれる。

 ベリアルを巻き込みながら、空に浮かぶ雲すら消し飛ばし尽くして突き進んでいく。

 やがて、エネルギーの放出が収まると蒼天だけが彼らを見下ろしていた。

 

 

「……驚いた、精神の消費は3分の1って所だ……嘘だろ」

 

 

『私の力を十全に使えればこんなものよ!(震え声)】

 

 

「お前、絶対だめだと思ってたろ……」

 

 

『いや、だって心をリンクさせるには……ねぇ?』

 

 

 ホログラムがアセイラムを見つめるが、金髪の少女は少し恥ずかしそうに、

 口元に指をあてている。それを見てキャロルは頭を……

 ホログラムなので映像なのだが、掻いた後に頷いた。

 

 

「……ラムダドライバ―を十全に発揮できてるなら生きてる。

 精々、一時的なオーバーヒートに持ち込んだぐらいだ、俺らも逃げるぞ……セラムさん」

 

「はい?」

 

 

「悪い、助かった……

 もう言わないよ、乗るなって。セラムさんにも、リッゾちゃんにも。

 あるんだな、どんなに頑張っても一人じゃできないことってさ……」

 

 無力を痛感したかのように、神妙な顔つきのシンの顔を見て、アセイラムは笑う。

 

 

「私は、貴方がそれを心から理解できたのが今回の収穫です」

 

「え、なんで?」

 

「これなら、もう一人で出て行って。死ぬなんて事はなさそうですからね」

 

 

 その言葉に、シンはバツが悪そうに眼をそらした。

 

 





OGの時間軸を外伝として進行して
一区切りすると思います。ちょこちょこやって終わらせるつもりですが
エターしたら申し訳ありません。
努力はしますが完結するという明言はできません。

ただ、OGのあたりで一先ずのオチはつけたいなとも考えています
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