大惨事スーパーロボット大戦α 作:猫者
スイコウデキテナ。キットゴジタクサン
デモ、ダイブヨユウガデキタノデ。
ジカイハケッコウハヤイ。ハヤイ
誰よりも自由でありたいと感じていた、だからこそそれを奪われかけて激怒した。
誰にも、何にも縛られる事を嫌い、自由に生きてきた。それが、シュウ・シラカワだ。
しかし、その彼自身が不自由の中で生きていたと言うことを悟った。
そして、それを教えてくれた少年こそ、この世界の中でたった1人。
誰よりも自由な存在であったと理解した。その時、シュウは真になすべきことを感じた。
だからこそ無限力の束縛を世界から消し去ることで、今度こそ真の自由を得るのだ。
今、こうして彼を助けるのも自分の為である。
「ご主人様はいつも変な人に入り込みますね。あぁ、いえ。
もともと変人なのは理解していますよ。でも、マサキといい、
破嵐万丈といい、シンとかいう少年といいその対象が極端というかですね」
「黙ってなさい、チカ」
その言葉を聞いて、小鳥は静かに口を結んだ。
シュウ・シラカワのファミリアとして生まれた青い小鳥、チカ。
いわゆる、使い魔という部類の人工生命であるが、深層心理を体現した存在、
というわりには自分の性格とは真逆な口と脳が一つになった存在の様によく喋る。
あるいは、それが自分の心の奥底に押し込めた自分自身なのかもしれないが、
シュウはそれを認めることはないのだろう。
(心の崩壊をこえてなお、彼は戻ってきた。
そして、私に天啓の如き言葉を与え自覚させた、不自由さを……
普通の人間なら、仕方ないとその不自由さを受け入れるのでしょうね)
―――ですが、私は受け入れない
「すべてを利用してでも、真の自由を手に入れる。
そのためにも彼には生きていてもらわねばならない」
「ご主人様の追っかけは多いですが、まさか追っかけになってしまわれるとは。
おいたわしいと申しますか、新たな側面を見つけたと言いますか。
あ、もしやこれがギャップ萌えという奴でしょうかね。いやぁ、わかっちゃいますね」
■■■■■
(前回は足止めしただけで倒したのはベターマン。
こいつと足止めして他の奴がきたとしても勝てるのか……?)
前回も再生の為にエネルギーが消費するようなそぶりはなかった。
ほぼ無限に近い再生能力ならば、前回の様に粉みじんにでもするしかない。
隙をついた一撃で腕部の破壊までしかいかなかったのなら、
巨大ながらライブレードに迫る運動性を持つ機体と正面対決するのは無茶というもの。
しかし、街の安全を考えて逃げるという選択肢をつぶしかない以上、
これから先は戦いを続ける以外の選択肢はない、であるならば”どう戦うか”という
事を考える状況だという事だ。
「おい、一気にやっちまおうぜ!
と言いたいところだがそうもいかねぇだろうな」
「理解してくれて助かる。援軍を要請したいが生憎、潜伏中なんだ」
「なんだ、まさかアンタら。連邦が指名手配してるロンド・ベルか!?」
「その一派って感じだな。今やお仲間はほとんど連邦を牛耳ってる
ティターンズに捕まってる。悪いが、援軍は期待できない。なんとかするぞ!」
コンパチブルカイザーに手を振る。
ライブレードが背中の翼を肩部にマウントし、砲台として使う、
ゼイフォニック・ブラドラーと背中に背負っていたグラヴィトンキャノンを
同時に肩へ移動し、掃射する。
しかし、それは敵に届く前に目の前の空間で消滅する。
「次元制御システムか……! 最初から使えよ」
「プロトンノヴァドライブ、中々だろう。
レギュレイトがたまにぐずって仕事をしなくてね。
何、さっきの一発でまた眠ってくれたよ」
距離をとって着地すると、手の動きを見てすぐに下がっていた、
コンパチブルカイザーが隣に並んだ。
「おい!! なんかよくわかんねぇが相手強くしちゃったんじゃねぇか!?」
「俺もそう思う。まずったなぁ~~」
「おい!」
「ま、まぁ、最初の一発で倒せませんでしたし!」
「そうそう。うん、その通り。ありがとう!」
エデルリッゾのフォローに感謝しつつも、
シンは別のものを見つめている。自分の視界の端に浮かぶ、ホログラム。
ライブレード自身であり、それに宿る精霊。キャロル。
どこか納得のいかない顔をしている。
「キャロル、出力調整を手伝ってやれ
俺は戦闘に集中する。いいな?」
『冗談言わないで。まだまだこんなんじゃないわ……』
「自分の世界に絶賛、突入中ですかねぇ……
(本気でやる気になったら多分、制御を奪われる。癇癪はやめろよ)」
全開で戦っている以上、自分の限界も刻一刻と迫る。
操縦者二人のシンクロにより上昇したエネルギー効率といっても、
限界があるのにはかわらず、心の中に広がり染みていく疲労を感じる。
それは、エデルリッゾも感じているのだろう。
大丈夫か?と聞けば大丈夫という言葉しか返ってこない強がりは、
彼女も姫も同じなのだ。最も、それは彼女たちが話からすればシンも同じなのだが。
ともかく、それを理解した上で最速の決着を目指す。
しかし、シンは勝ち筋の見えないその状況に思考の空回りを続けている。
「遠距離武装はあるか! 同時攻撃を試してみる!
なければ、俺の武器は使うけどゴリゴリ俺の精神力を削る!」
『ある。コウタ、胸の水晶にエネルギを集中させるんだ!』
「よし! うおおおおお! カイザァアアアー! バァアアストッ!」
緑の水晶から放たれるエネルギがBFの形を作り、敵に凄まじい速度で向かっていく。
ライブレードはそれを追うようにスピードをあげ、すぐに並行して並んだ。
そして、空間から実体剣であるダイフォゾンを取り出し、振りかぶる!
「ブラン・ダイ・ガード!!!」
ダイフォゾンを介して自機周囲に攻性エネルギーフィールドを発生させる。
剣に纏わせるのような戦い方もあるが、今回のこれはいわゆる体当たりに近い。
カイザーバーストが敵のフィールドに降り注ぎ、そこにライブレードが追撃する様に、
敵のフィールドにぶつかった。
「シンさん!」
「くそっ!!」
ランプが黄色に光を放つ。処理能力の限界がすぐ間近にある。
攻撃のたびにこれが続くなら、どちらにしろ時間はない。
しかし、相手はひるむ様子すらない。そして。
バキィーン
「あぁ! おれたぁ!? うっそだぁああ!
もうなんかすごい剣の様なイメージだったじゃん!!!」
「シンさん! そうはいっても絶対超合金Zとかの方が凄いですよ!」
「やめろぉ! そんな気はしてた。そんな気はしてたけど!」
エデルリッゾの反射的行動により、逆方向へ噴射された翼に内蔵された
複合スラスターが機体を遠ざける。
去り際にこれでもかというほどやけくそでライフルを連射するが変化はない。
「逃げるのか。逃げるなら、こうするしかねぇなぁ! エクサノヴァシュート!!」
オメガヴァルザカードから発進したアルムアルクスを巨大化、弓状に変化させ、
敵陣めがけてプロトンエネルギーを結晶化させ、弓として放つ。
機体の大きさと武器の形状からしてその威力の絶大さを2人は感じた。
「させるか、カイザァアアアア!!」
すでに動き始めていたコンパチブルガイザーがエネルギーフィールドを展開させて、
攻撃に割り込む。しかし、すぐに皹が入り始めたその光景はパイロット、
コウタの脳裏に絶望を感じさせた。
「くそ!!」
「プロテクト、シェーーード!」
エネルギーフィールドが砕ける瞬間、なんとか間に合ったライブレードが
プロテクト・シェードを展開する。脚部に集中されたエルゴフォームにより、
ブレーキをかけてその場にとどまるが道路は陥没し、機体を沈めてゆく。
反発的防御空間を展開するといっても、それをこえる力に耐えきれる訳ではない。
完全無欠なバリアではない以上、限界はある。
しかし、光学兵器ではなく一種の実体兵装であったことと、
コンパチブルカイザーが威力を削いだことが今回はライブレードに味方した。
推力を失った結晶は地面に落下し、砕ける。
「よ、よし!」
『今よ!!』
「!? 機体制御が!」
ライブレードの胸部が開き、内部見える闇の中で何かが鳴動する。
黒白の機械の心臓の様なものが、耳の傍で聞こえるように錯覚する。
激しく鳴り響き、コックピットを揺るがした。
『さぁ、聖なる言葉と共に滅びなさい……テトラ・グラマトン!』
全身から力が吸われる脱力感。
しかし、シンの視線は一か所に向いた。
けたたましい音をならしながら赤く光るそれに。
「やめろぉ、キャロルぅううう!!」
『コスモ・ブラスタァアアア!!』
闇から生まれる光の束が周囲を飲み込み、
光芒を引きながら、広がっていく。それがオメガヴァルザカードへ向かう。
「わるくねぇ技だ。だが……」
オメガヴァルザカードが拳を構える。
「出力が違けぇ!!!!」
プロトンノヴァドライブのエネルギを纏った拳により破壊された前方の空間が、
繋がった別次元の宇宙へとその攻撃を吹き飛ばして消滅させる。
『そんな!? えっ!』
同時にライブレードのアイカメラから光が消え、膝を折る。
「ハロの強制シャットダウンか!?」
「いえ! ハロはキャロルにより動きを止められていたみたいです。
完全に機体自体のオーバーヒートです! 起動回復時間不明! 不明!」
「く、くそ!」
「オーバーヒートとは、なさけねぇなぁ!」
オメガヴァルザカードにより蹴り飛ばされ、ライブレードが弾き飛ばされる。
「よく飛んだなぁ。シン、お前は俺がこいつから動力を取り出した後に
直々に殺してやる。寝てな! いくぞ、コンパチブルカイザー!」
「くそ! やってやらぁ!」
やけくそに拳を繰り出すが、それを巨大な片手で全て受け止める。
むしろ、今なら機体全てを握りつぶすこともできるのだろう。だが、それはしない。
彼の傷つけられたプライドがまだそれを良しとはしないのだ。
「おらおら、どうした! そのざまかよぉ!」
「うるせぇ、まだまだ力、八分でぇぃ!」
『とっくに10割を超えてると思うが、事実力は上がっているし置いておく。
コウタ、どうする。明確な決め手はもうないぞ!」
「愛と勇気のコンパチなんとかなんだろ、なんとかしろ!」
『ムチャな……! だが、できるだけなんとかしよう
バーナゥ・ファー・ドラグ……! ファイアー、ドラゴン!!!!」
ロアの言葉と共に放たれた炎の龍がアスファルトを裂いて潜り、
地下からオメガヴァルザカードの足を縛り付けた。
「ほぼゼロ距離でぇい! カイザァアア! バーーースト!」
放たれるカイザー・バースト。しかし、その攻撃は
オメガヴァルザカードの前に現れた空間の裂け目に吸い込まれていく。
「無駄っていってるのがわかんねぇのか!」
『しかし、無限ではないはずだ!
空間制御能力に制限がないならそれを利用して動力炉を奪えばいい!』
「って、ことらしいぜ。よくわかんねぇけどなぁあああ!」
「そう思うなら、やってみろよ!!」
不動のまま攻撃を受け続けるオメガヴァルザカード。
そこには限界など見えてこない。ただ、王者の風格をまとい直立している。
「……いや、底なしか!?」
「……ぷっ! ハハハハハハハッ!
あぁ、そうだ。艦載機に処理を割り振ってんだよ! まだまだいけるぜ」
『何!? いや、そうかこの巨体にさっきの武器の時に発進した機体。
戦艦なのか、まさか!? そんな機体があるのか、この世界は!」
「いや、確かにマクロスとかあるけどよ。
でもこの巨体でこいつ以上の機動力。
しんじらんねぇ……! く、くそ……!」
『オーバーゲートエンジンはともかく、このままではカイザーが持たない……!』
「おらおら、気合い入れろ! ハハハハハハッ!!」
■■■■■
「くそぉ、やりたい放題かぁ……」
「し、シンさん! 血が!」
「男が女をまもらねぇでどうすんだ。
こんくれぇなんてこたぁねぇ……
まぁ、真後ろだったから咄嗟に飛び乗れたのはよかったな」
「な、なぜか凄く死にそうなセリフなのでやめてください! うぅ!」
泣きそうな顔をしながら、割れた額をスカートとの布を破いて縛る、エデルリッゾ。
咄嗟にシンが後方の席に向かって抱き留めたおかげで彼女は無事だったが、
激しくシェイクされた機体で体や頭を激しく打ち付けられたシンはぼろぼろだった。
「俺はボロボロでも動けるからな……あー、いてぇ。再起動までは?」
「モニターも消えてますし、ホログラムも。どこまで機能が生きているのか」
「機体は生きてる、間違いない」
シンの視界の端ではホログラム。ではなく、電子的な投影装置を失い、
霊的な姿でのみ存在する精霊が浮かんでいる。
しかし、その表情はどこか唖然とした様子でこの状況が理解できないような顔だ。
それでも精霊が見えるならば、機体自体は生きている筈だ。
「ただ、ハロを掌握されて強制シャットダウンができなかったのなら、
復帰までどれだけかかるかわからねぇ……でもこのままじゃアイツが負ける」
ふらつきながら、前方の席に戻るとSOS信号を出す。
負けの可能性が出てきた以上、もう救援を求めるしかない。
街が破壊されても生き残る人はいるかもしれないのだから……
「一応、言う。逃げてくれると嬉しい」
「嫌です」
「そういうと思ってた。なら勝つしかない」
「あの、こういっておいてなんですが……方法は?」
「ない。だから、なんとかする。運込みだけど」
「なら信じてます。だから一緒に戦います!」
「あいよ! といってもさて、どうするか……時間はそんなねぇぞ」
(……とりあえずは勝利を確信して嬲る筈だ。バリとしたロボみたいな乗り手には悪いが、
この可能性もあったから死ぬほどキレさせた。それでどれだけ時間が稼げるか。
これに関してはあのでかいロボットの耐久力次第。でもスーパー系だしかちかちだろ)
「……あ、シンさん。アルドノアドライブはおそらく動きます。
各動力系は独立していますから……制御系がこっちにくっついてるGストーンの
GSライドは怪しいですが、アルドノアドライブは停止、破壊するまでは稼働します」
「念じて動いたら推力は確保できるか。逆にいえば、それ以外は動かない」
「アルドノアドライブは近くのシンさんを今も認識している筈です。
だから、きっと大丈夫です! とりあえず冷却して機体を復旧させないと……」
逃げるだけはできる、という思考が浮かぶがそれをすぐに払う。
明日の勝利のために逃げる、みたいな王道路線は死ぬほどにあわない。
どちらかというと、ぶざまな敗北者となってもこの場に立ち続ける。
それが自分という人間だという事はよく理解している。
戦闘続行をするなら、考えられるのは水源による強制冷却。
だが、その先まで考えないと勝利はない。
『……非常用コンソールで私を削除しなさい』
「なぁにぃ?」
『ライブレードの不調はきっと、私が原因よ。
意識が弱く、ライブレードを通してしか外と繋がられなかった初期の私ならともかく、
はっきりとした存在としてある私が処理系に負担をかけてるのよ。
おそらく、知らず知らずのうちに……無理もないわね。ある意味、完璧な人工知能よ』
「だから、お前を消せば動くと?」
『そうよ、だから』
「断る……」
『ちょっと、聞いてたの! 今のままじゃ……』
「俺は今、一つ確信した事がある。お前はな、ライブレードじゃない」
シンはキャロルをじっと見つめる。キャロルはそれに反論するかの様に、
口を開こうとしたが、その真剣なまなざしに口をきゅっと結んだ。
「お前がライブレードの状況を把握してなかったのもそうだけど、
一番は今、お前が自分を殺せっていったことだ。俺は、こいつと戦ってきた。
確かにこいつは俺を何度も殺しかけた。でも戦う力も護る力もくれた。
あの時、全部出し切って死んだと思ったのに生きてた。きっと護ってくれた……」
『だ、だから……』
「お前がライブレードならわかってる筈だ。そこまでしてくれたこいつを、
俺が見捨てるわけないと。だから、お前はライブレードじゃない……でも
でも、ライブレードにお前は必要だった。じゃなきゃライブレードは動かなかった」
―――だから、俺はお前を殺さない
「ライブレードを動かしていたのがお前なら本来のライブレードは
意思も何もない金属の塊なのかもしれない。でも、俺はこいつを信じるぜ。
いや、こいつと……こいつを形作る全てを、地球と火星を俺は信じる。
グラボがあっちちってなら機体ごと冷やして再起動でリターンマッチだ」
リーゼロッテが静かに頷く。それだけで全てが伝わった。
シンが自分の操縦席に戻って水晶に手を触れる。
アルドノアドライブは確かに自分を認識しているようだと感じる。
カメラもない状態で隅田川に運ぶのは中々難しそうだが、大体の位置は分かる。
やってみるさ、と自分の心に火を入れた。燻ぶる炎に放り込むのは、
珍しく憎しみではなく闘志と、背中に背負うものが与えてくれる―――生きる意志。
「行くぞ、行くぞ、ライブレード……もうひと踏ん張りだ。
なぁ、やってやれねぇ事はないだろ! 俺たちなら!! 信じてるぜ!!」
■■■■■
「うわぁあああ!」
カイザーバーストが限界をむかえ、胸部のクリスタルに皹が入る。
小規模な伝達系の爆発でカイザがふらつき、膝を折る。
「初陣にしては中々だがそろそろ限界だなぁ!機体が爆発するぜ!」
「なら、てめぇを道連れにしたらぁ!」
「できるわけないって、わからねえのかなぁ……馬鹿かぁ!」
感情のまま、オメガヴァルザカードがコンパチブルカイザーを殴りつける。
瞬間的に展開されたバリアフィールドで全壊こそ避けられたが、
浮き上がるように弾き飛ばされ、地面に激突した後に見た機体の損傷は、
重篤なものであるのは見て取れる。しかし、それでもカイザーは立ち上がった。
「中々いいパンチしてるじゃねぇか……」
『コウタ、もう限界だ!」
「うるせぇ、ここで退けばアイツらは一帯を塵にするぜ。
それぐらい俺でもわかんだよ! 逃げるのはなしだぜ」
「逃げなくても、やるけどな!
お前の動力炉を頂いたあとに一気に灰にしてやるぜ」
「てめぇ!」
「当たり前だろ。ここまで俺を馬鹿にしたんだからよぉ! おら、くたばりやがれ!」
臍の発射口が開き、プロトンキャノンを発射する。
カイザーはそれを対抗しようとするが、最早、立っているだけで限界だった。
「まだだ、まだ……あきらめねぇええ!」
「全く持って、その通りだな!」
緑の光がプロトンキャノンを殴りつけて消し飛ばす。
「て、てめぇ……」
インファレンスが青筋を浮かべて、目の前のそれを睨みつける。
「シン!!」
「……よし、いい感じだぜぇ!
なんかしらねぇけど、動いてる!! よし!」
現場猫指さし確認を繰り出しながらコックピットで笑うシン。
緑色に発光しながらライブレードが手を握った。
その光は今、コックピットの中でも輝いている。
命あがくもの、勇気の光。Gストーンが活性化している証明だ。
「処理系統はオーバーヒートしてた筈だ。これはGストーンの光……
馬鹿な、超AIのない機体では「無限情報サーキット」の本領を発揮できるわけが」
Gパワーと呼ばれる高エネルギーの抽出限でもあるためライブレードに搭載された
Gストーンを始めとしたそのシステムだが、本来は超AIを載せることで、
無限情報サーキット……つまり、それ自体が持つ
超高度な情報集積回路・情報処理システムとしての本領を発揮する。
しかし、通常ではそれを発揮することは叶わない。
交戦経験があるインファレンスだからこそ、それを知っていた。
「Gストーンを扱うにはそれと直結しなけりゃいけねぇ。
それを埋め込んでGストーンサイボーグ化するならまだしも、
機械的サポートをうけて間接的なアプローチしかできねえ人間はなぁ
そいつを生かせねぇんだ、分かるか!! てめぇ、何をしやがった!!」
「怖いのか」
「あぁ!?」
「伝わって来るぜ、インファレンス。
お前の恐怖が……お前は恐れているんだ。Gストーンが生みだすGパワーを
機体が纏うトリプルゼロを抑えきるエネルギーと、それを生みだす人間への恐れを!」
「ふざけるな! そんなわけがねぇ!」
オメガヴァルザカードが後ずさる。インファレンスの言葉に
相反するような機体の動きはシンの言葉を確かに肯定するかのようだった。
「お前、ちょっとは人間みたいなところがあるんだな。安心したぜ」
―――人間ならぶっころせるって事だからなぁ!?
「シンさん、なんか完全に悪役のそれですね」
「うるへぇーー! こうなりゃ、やけだ。おい、力を貸してくれ!」
背後のコンパチブルカイザーに声をかけるシン。
「助けてくれたのはありがてぇが、何をすりゃいいんだ
ああいったんはなんだがこっちはろくにうごけねぇ!」
「オーバーゲートエンジンだ!
それも多分、クロスゲートに関わるものなんだろう
それを利用して次元の彼方にアイツを吹き飛ばす! どうだ!」
「わかんねぇ!」
「わかんねぇのか!」
「あぁ!!」
「分かった。じゃあ、試してみるわ! 行くぞ!」
「よっしゃあ! 行くぜ!!」
「え! え!? あの! 今の適当な奴でそ、それでいいんですか!?」
「運だっていったろ。行くぞ!!」
「ロア! ぶちかませ!」
『どちらにせよ、手段はないか!
オーバーゲートエンジン、ドライブ!!
超次元間孔を開けるのはわずかだ。タイミングは任せるぞ!!』
「リッゾちゃん、全副動力を直結してくれ! 制御は……ライブレードがやる!」
「そ、そんな事できるんですか!?」
「できる! 頼む!」
「わ、わかりました」
「いくぞぉ、ライブレード!!」
ちりちりと焦げる様に、髪の色が赤く染まる。
命を薪にして燃え上がる様に。バーストプラーナによって、
ライブレードに力が注ぎ込まれる。最早、退くという選択肢は消え失せた。
「やらせる……なっ!?」
妨害しようと迫ろうとしたオメガヴァルザガードに、
コンパチブルカイザーの2つのロケットパンチ、スパイラルナックル。
「うごけねぇが、手は出るぜ!」
「行くぞ、インファレンス! お前の終焉は此処だ!!」
『超次元間孔、開放!』
希薄関連性近接亜空間、それはこの空間に近い位置関係にあるが
相互干渉することがない別の空間である。しかし、空間的に近いというものは
規模の大きさとしては凄まじいものである。それこそ、一生演算しても
この空間に戻れるかわからない、それほどの遠さだ。
折れたダイフォゾンにエネルギを限界以上に集中させる。
砕けた刀身の先に形成されるそれは、剣というより最早、槍だった。
それを深く握り込む。
「いっけええええ!!」
Gストーン、GSライドは共鳴する。
腕と共に放った。独立したGSライドを持つライブレードの拳ならば
限界を超えたGパワーを放つ、ライブレード自体が衝突したと同じだった。
そして、機体の持つ無限の力。トリプルオメガを抑え込まれたオメガヴァルザカートに
それは深く突き刺さり、少しずつ後退を始める。
「……すぐに戻るぜ。覚悟しな」
「やってみな。次は殺す」
勢いにまけた機体が超次元間孔に吸い込まれる様に消えた。
「ハハハハハハハッ! ざまーーみろ!!」
「うぅ、本当に悪者みたいです!」
■■■■■
「しんどい……」
「私もです……なんかぎゅーとしぼられた感じというか」
「あ、ごめんね。そうか、2人で絞られたから俺の負担がマシなのか。
辛い事は辛いんだけど、なんか徹夜2日目の疲労がピークの当たりのレベル。
3日目は違うな。3日目はもうずーとZONE入った感じで電池切れまで動くから」
「それ、どっちにしろやばいのでは……」
「やばいですね」
「やばいんですね……帰ったら休んでくださいね、本当……」
そんな2人のやり取りを見ながら、精霊のキャロルは考えていた。
『私は……何もしていない。でも、確かに……
敵の言葉が事実なら、Gストーンが力を発揮したのは……でも、どうして?』
理屈で考えれば、ありえない。
自分がいないライブレードはただのロボットの筈だから。
だが、そうとしか考えられないとも感じていた。
「……心のありかなんて誰にもわからねぇよ」
『あなたにも、私にも、ありますよ』
「じゃあ、虫にはないのか? 花には?
当たり前と考えて、人間も機械も見逃してる事はあんだよ、多分な。
俺は信じてるぜ、ライブレードを……あと、お前もな。だからなんとかしろ」
『な、なんとかって……』
「俺が答えを出してもしょうがねぇんだよ、そこは。
心に従う結果は、本人にしかわからねぇよ……なぁ、そうだよな」
そう語り掛ける声に応える様に、シンの手元の水晶がチラついた。
ほんの一瞬だったそれを、誰も見ていなかった。疲労困憊のシンも当然。
だが、なぜか言葉は届いていた様な気がした。
■■■■■
「君は、いかないのかい?」
カヲルは近くのビルでライブレードを見下ろしながら、
隣の少年に語り掛けた。彼は、少し考えた様に間をあけてから口を開く。
「僕の調律は、世界を救えなかったから……真に合わせる顔がないんだ」
「アポカリュプスは「約束の地」すらも砕いた。しょうがないさ。
冥王計画や彼の拙い補完よりはマシだった。僕はそう思うよ。
個人的にだけど、「時の観測者」という使命なき今、舞台に上がるべきだよ。君は」
「そうだね。だから、これは言い訳なんだ。僕はきっと怖いんだ。
誰も僕を知らない世界が、怖いんだ……情けないよね」
「……そうは思わないよ。僕も孤独に負けて、
あの書にシンジ君の名を書き加えてしまった」
静寂を打ち消す様に鼻歌を歌うカヲル。
彼はどこか、機嫌がよさげだった。
「太虚が、迫っている……」
空を見上げながら、少年はそう呟いた
彼の瞳に映る空は、夕焼けを塗りつぶすかの様な果ての無い暗黒を内包していた……