大惨事スーパーロボット大戦α   作:猫者

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とりいそぎ。余裕のある時に


誤字確認は3回したけどまだあると思うので後日


幕間 インターミッション8 先立つものはなにもなく

 

 

 

 ■序■

 

 

 

「劇団、帝国歌劇団に偽装した対魔特化部隊である帝国華撃団。

 人型の霊子兵器である霊子甲冑。その発展型、霊子戦闘機。それを開発した世界華撃団連盟(WLOF)。

 いずれも歴史の記録にはない。だが、地下に残る資料と合致する部分も多い……この設計図も興味深い」

 

 

「魂の力である霊力を起動キーと動力にする蒸気併用動力機関、そのコアパーツがこの霊子水晶か。天然のが効率がいいって書いてあるがこんなもんみたことねぇぞ……」

 

 

 設計図やその関連資料を眺めて唸る2人の横で断片的な歴史資料を眺める、エデルリッゾもまた眉をひそめていた。

 

 

蒸気革命(スチームレボリューション)なんて技術躍進、地球のどこの歴史の記録にもありませんよ」

 

 

「侵略の為にめっちゃ調べてただろうから、ヴァースの人間は歴史にもくっそ詳しいな……

 こっちは日本以外ノータッチだよ。コロニーも少しはわかるけどさぁ。あとヴェイガンの歴史」

 

 

「俺はそもそもなぁ……なぁ、ロアはどうだ?」

 

 

『こちらの世界に該当するものはないな。そもそも、俺たちの世界は生身の人間がほぼいないんだ』

 

 

 買い物組が戻ってきた所で始まった資料の閲覧だが、そこにフェルナンドはいない。

 最低限の協力以外はしない、という事かもしれない。仲間への義理もあるのだろう。

 

 

「しかし、あの化け物も迷惑な奴だったぜ。近くにいるとうるせぇのなんの」

 

 

「歪な音をずっと発していましたね。影の近くにいた人たちは急に暴動を始めましたし」

 

 

 シンはうーんと、考え込む。当時の記憶を思い出しても自分は音のようなものを聞いた覚えがない。必死だからだったのかと思ったが、それでも視覚以上に音というのは記憶に残るものだ。特に、歪で不快な音だというならなおさらであった。

 

 

 

「それがおそらく、人を暴走させ時には姿すら変えてしまうという この魔音(デノン)じゃろう。

 そして、それを発するという事は即ち……あれは旧暦で人を苦しめた……降魔という事になる」

 

 

「理屈は通る。でも俺がその音を聞かなかった理由は?」

 

 

「気合いの違いだろ」

 

「理屈と理論で語れない脳筋はよぉ」

 

「理屈で卑屈で過去の事を割り切れなくてずっと悩んでそうだな。あほみたいに」

 

「やるか!?」

 

「いいぜ、表でな」

 

「「あぁ!?」」

 

 

「まぁ、まぁまぁ……」

 

 

 エデルリッゾがコウタ・アズマとシンの2人の間にさっと入り、

 二人の下っ腹の部分を必死に押して距離を取らせる。

 

 アズマ博士はその様子にため息を吐きつつも数件しか残っていないが、華撃団の戦闘ログを見ながら少し思案してから口を開いた。

 

 

「……いや、あながち間違いでもないかもしれん。

 華撃団は戦闘中、音に苦しめられている様子はない。もしかすると一定の力の持ち主は、

 霊音(れのん)を断続的に発することでその音自体を中和しているのかもしれんぞ」

 

 

「ほら、見ろ!!」

 

 

「く、くそぉ。科学の専門家でスーパーロボット建造できるようなやつを盾に使うとか!

 レスバに有名解説youtuberの動画を持ち込むがごとき暴力を行使しやがってーーー!

 何も言い返せねぇ。くそったれぇーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

「youtuberってなんでしょう……?」

 

 こてんと首を傾けるエデルリッゾを尻目に、少し落ち着いてきたのでなるべく冷静にシンは考える。

 資料によれば、霊音(れのん)は奏組が楽器から霊力を込めて放つ音で華撃団の別動隊、

 霊力の比較的低い奏組はこれを武器として降魔や降魔の卵を倒したり霊障を浄化した。

 霊音は魔を滅すという強い意志の元に発せられるものであるならば、転生によって魂を理解した事により獲得した後天的才能。特異的な霊能力としての素養を持つシンがそれを行っている可能性は高い。

 

 

 だが、それは逆に言えばそれが集団で襲ってくれば全体が敵になる可能性がある。

 ロンド・ベルのスーパーロボット軍団が3分の1でも敵に回れば世界が十分に破滅させられる。

 そんな嫌な想像が頭に浮かぶが、シンは頭を振ってそれを追いだした。

 

 

(可能性はある。でも、いつまでもそんな事考えてたら気が萎える。それこそ、俺が今度は操られるかもしれねぇ……それにしても、世界的規模な技術が消えるレベルの秘匿をほどこし、人の潜在意識に働きかけることで忘却という封印を施したってのは正しいかもしれねえ)

 

 

『しかし、コウタ。これだけの組織だったならばこの基地の基礎。老朽化した施設が浅草のほぼ全体に広がっていた

のも理解はできる。だが、それならなぜ……東京の施設は見つかっていないんだ?』

 

 

「いや、まぁ……そうだな。どうなんだよ、シン?」

 

「んー……大規模な改装工事は繰り返してるからな。見つからない方が可笑しい。組織を解体する時に基地を丸ごと移設したのかもな」

 

 

「うーむ、とりあえず秘匿の回線で現存しているロンド・ベルメンバーとGGGに情報を共有しておくとする」

 

 

「宇宙ならクワトロさんが見つけてるでしょうし、海中では?」

 

 

「んじゃ、ミスリルにも連絡しておくか。それにしても、シミュレーションRPGというより

 なんか戦略シミュレーションみたいな事になってきたな。パイロットだけしててぇよ俺は……」

 

 

 空中に投影された大量の資料を数枚抜き出して目の前に並べて読みながら、愚痴るシンを見ながらコウタは腕を組んでうんうんと頷いた。

 

 

「俺はそれでいいから気楽だぜ」

 

 

『だが、コウタ。いつかは感じるままでなく自分で考えて選ぶ瞬間が来る。

 それだけは覚えておくといい。参考にするものとしてはちょうどいい」

 

 

「人を教科書にするなよ……まぁ、確かに人生って意味なら分厚いかもだけど……」

 

 

 ■壱■

 

 

 

 格納庫の中で並んで鎮座する2体の機体。

 ぼろぼろのコンパチブルカイザーと、ライブレード・SIN。

 フェイスパーツや背格好の似通ったそれは、兄弟が寄り添っているようにも見える。

 その少し外側で、それを眺めていたのはキャロル。ライブレードに宿る精霊である。

 

 

『私は生まれた……でも、生まれた事が操縦者を苦しめている……』

 

 

 

 キャロルは人工精霊。ライブレードがあるからこそ存在を許される。しかし、それと引き換えにライブレードの動作が悪くなっているのは事実だった。

 処理能力不足という問題。しかし、製造者がそれを想定していなかったとは考えづらい。

 ならば……とキャロルは一つの答えにたどり着いた。しかし、それはある意味、自分の存在を否定するものである複雑なものである。

 

 

 

『この状況が、イレギュラー……ということなの?』

 

 

 人工精霊が誕生するまではいい。しかし、人工精霊が存在したままでいるという状況が想定されていなかったと考えるならば筋が通る。

 

 

 そう、自分は存在してなどいけなかったとしたら……

 

 

 

『ガンエデンの戦いでライブレードはほぼ全壊に近い状態だった。もし、それがなんらかのイレギュラーを呼んだのだとしたら……私は……』

 

 

 ライブレード・SINが起動したあとから、だんだんと夢から覚めていく様にはっきりとしていく意識と自我。それ自体が間違い。認めたくなかった。せっかく産まれたのに、消えることを宿命としそれに偶然とはいえ逆らった結果がピンチを招き続けているかもしれないなんて。

 

 

『消えたくない……でも……そう言ってくれる人も私にはいない』

 

 

 暗い闇の中で、キャロルは独り孤独に涙を流す。

 

 皮肉な事にその様は美しすぎた。

 いつのまにか解けた輝くような長い銀の髪も、闇すら飲み込むような透き通った紫眼も、

 赤と白のツートンカラーのエプロンドレスすら、少女と淑女の狭間。もっとも揺れ動き、美しいその様を 表現してるように見えた。

 彼女はまるで、美しさの頂点の瞬間だけを切り取って繋ぎ合わせたコラージュだ。消えたくない、その言葉の重みすらかき消すほどに彼女は人工的だった。

 

 

 

 

 

 ■弐「劇団、帝国歌劇団に偽装した対魔特化部隊である帝国華撃団。

 人型の霊子兵器である霊子甲冑。その発展型、霊子戦闘機。それを開発した世界華撃団連盟(WLOF)。

 いずれも歴史の記録にはない。だが、地下に残る資料と合致する部分も多い……この設計図も興味深い」

 

 

「魂の力である霊力を起動キーと動力にする蒸気併用動力機関、そのコアパーツがこの霊子水晶か。天然のが効率がいいって書いてあるがこんなもんみたことねぇぞ……」

 

 

 設計図やその関連資料を眺めて唸る2人の横で断片的な歴史資料を眺める、エデルリッゾもまた眉をひそめていた。

 

 

蒸気革命(スチームレボリューション)なんて技術躍進、地球のどこの歴史の記録にもありませんよ」

 

 

「侵略の為にめっちゃ調べてただろうから、ヴァースの人間は歴史にもくっそ詳しいな……

 こっちは日本以外ノータッチだよ。コロニーも少しはわかるけどさぁ。あとヴェイガンの歴史」

 

 

「俺はそもそもなぁ……なぁ、ロアはどうだ?」

 

 

『こちらの世界に該当するものはないな。そもそも、俺たちの世界は生身の人間がほぼいないんだ』

 

 

 買い物組が戻ってきた所で始まった資料の閲覧だが、そこにフェルナンドはいない。

 最低限の協力以外はしない、という事かもしれない。仲間への義理もあるのだろう。

 

 

「しかし、あの化け物も迷惑な奴だったぜ。近くにいるとうるせぇのなんの」

 

 

「歪な音をずっと発していましたね。影の近くにいた人たちは急に暴動を始めましたし」

 

 

 シンはうーんと、考え込む。当時の記憶を思い出しても自分は音のようなものを聞いた覚えがない。必死だからだったのかと思ったが、それでも視覚以上に音というのは記憶に残るものだ。特に、歪で不快な音だというならなおさらであった。

 

 

 

「それがおそらく、人を暴走させ時には姿すら変えてしまうという この魔音(デノン)じゃろう。

 そして、それを発するという事は即ち……あれは旧暦で人を苦しめた……降魔という事になる」

 

 

「理屈は通る。でも俺がその音を聞かなかった理由は?」

 

 

「気合いの違いだろ」

 

「理屈と理論で語れない脳筋はよぉ」

 

「理屈で卑屈で過去の事を割り切れなくてずっと悩んでそうだな。あほみたいに」

 

「やるか!?」

 

「いいぜ、表でな」

 

「「あぁ!?」」

 

 

「まぁ、まぁまぁ……」

 

 

 エデルリッゾがコウタ・アズマとシンの2人の間にさっと入り、

 二人の下っ腹の部分を必死に押して距離を取らせる。

 

 アズマ博士はその様子にため息を吐きつつも数件しか残っていないが、華撃団の戦闘ログを見ながら少し思案してから口を開いた。

 

 

「……いや、あながち間違いでもないかもしれん。

 華撃団は戦闘中、音に苦しめられている様子はない。もしかすると一定の力の持ち主は、

 霊音(れのん)を断続的に発することでその音自体を中和しているのかもしれんぞ」

 

 

「ほら、見ろ!!」

 

 

「く、くそぉ。科学の専門家でスーパーロボット建造できるようなやつを盾に使うとか!

 レスバに有名解説youtuberの動画を持ち込むがごとき暴力を行使しやがってーーー!

 何も言い返せねぇ。くそったれぇーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

「youtuberってなんでしょう……?」

 

 こてんと首を傾けるエデルリッゾを尻目に、少し落ち着いてきたのでなるべく冷静にシンは考える。

 資料によれば、霊音(れのん)は奏組が楽器から霊力を込めて放つ音で華撃団の別動隊、

 霊力の比較的低い奏組はこれを武器として降魔や降魔の卵を倒したり霊障を浄化した。

 霊音は魔を滅すという強い意志の元に発せられるものであるならば、転生によって魂を理解した事により獲得した後天的才能。特異的な霊能力としての素養を持つシンがそれを行っている可能性は高い。

 

 

 だが、それは逆に言えばそれが集団で襲ってくれば全体が敵になる可能性がある。

 ロンド・ベルのスーパーロボット軍団が3分の1でも敵に回れば世界が十分に破滅させられる。

 そんな嫌な想像が頭に浮かぶが、シンは頭を振ってそれを追いだした。

 

 

(可能性はある。でも、いつまでもそんな事考えてたら気が萎える。それこそ、俺が今度は操られるかもしれねぇ……それにしても、世界的規模な技術が消えるレベルの秘匿をほどこし、人の潜在意識に働きかけることで忘却という封印を施したってのは正しいかもしれねえ)

 

 

『しかし、コウタ。これだけの組織だったならばこの基地の基礎。老朽化した施設が浅草のほぼ全体に広がっていた

のも理解はできる。だが、それならなぜ……東京の施設は見つかっていないんだ?』

 

 

「いや、まぁ……そうだな。どうなんだよ、シン?」

 

「んー……大規模な改装工事は繰り返してるからな。見つからない方が可笑しい。組織を解体する時に基地を丸ごと移設したのかもな」

 

 

「うーむ、とりあえず秘匿の回線で現存しているロンド・ベルメンバーとGGGに情報を共有しておくとする」

 

 

「宇宙ならクワトロさんが見つけてるでしょうし、海中では?」

 

 

「んじゃ、ミスリルにも連絡しておくか。それにしても、シミュレーションRPGというより

 なんか戦略シミュレーションみたいな事になってきたな。パイロットだけしててぇよ俺は……」

 

 

 空中に投影された大量の資料を数枚抜き出して目の前に並べて読みながら、愚痴るシンを見ながらコウタは腕を組んでうんうんと頷いた。

 

 

「俺はそれでいいから気楽だぜ」

 

 

『だが、コウタ。いつかは感じるままでなく自分で考えて選ぶ瞬間が来る。

 それだけは覚えておくといい。参考にするものとしてはちょうどいい」

 

 

「人を教科書にするなよ……まぁ、確かに人生って意味なら分厚いかもだけど……」

 

 

 ■壱■

 

 

 

 格納庫の中で並んで鎮座する2体の機体。

 ぼろぼろのコンパチブルカイザーと、ライブレード・SIN。

 フェイスパーツや背格好の似通ったそれは、兄弟が寄り添っているようにも見える。

 その少し外側で、それを眺めていたのはキャロル。ライブレードに宿る精霊である。

 

 

『私は生まれた……でも、生まれた事が操縦者を苦しめている……』

 

 

 

 キャロルは人工精霊。ライブレードがあるからこそ存在を許される。しかし、それと引き換えにライブレードの動作が悪くなっているのは事実だった。

 処理能力不足という問題。しかし、製造者がそれを想定していなかったとは考えづらい。

 ならば……とキャロルは一つの答えにたどり着いた。しかし、それはある意味、自分の存在を否定するものである複雑なものである。

 

 

 

『この状況が、イレギュラー……ということなの?』

 

 

 人工精霊が誕生するまではいい。しかし、人工精霊が存在したままでいるという状況が想定されていなかったと考えるならば筋が通る。

 

 

 そう、自分は存在してなどいけなかったとしたら……

 

 

 

『ガンエデンの戦いでライブレードはほぼ全壊に近い状態だった。もし、それがなんらかのイレギュラーを呼んだのだとしたら……私は……』

 

 

 ライブレード・SINが起動したあとから、だんだんと夢から覚めていく様にはっきりとしていく意識と自我。それ自体が間違い。認めたくなかった。せっかく産まれたのに、消えることを宿命としそれに偶然とはいえ逆らった結果がピンチを招き続けているかもしれないなんて。

 

 

『消えたくない……でも……そう言ってくれる人も私にはいない』

 

 

 暗い闇の中で、キャロルは独り孤独に涙を流す。

 

 皮肉な事にその様は美しすぎた。

 いつのまにか解けた輝くような長い銀の髪も、闇すら飲み込むような透き通った紫眼も、

 赤と白のツートンカラーのエプロンドレスすら、少女と淑女の狭間。もっとも揺れ動き、美しいその様を 表現してるように見えた。

 彼女はまるで、美しさの頂点の瞬間だけを切り取って繋ぎ合わせたコラージュだ。消えたくない、その言葉の重みすらかき消すほどに彼女は人工的だった。

 

 

 

 

 

 ■弐■

 

 

 

 

「まさか、お前の様なものが乗り込んでくるとはな……」

 

 

 口を開いた緑髪の男の名は、ヴィンデル・マウザー。

 

 そのキレ眼は対面に座す男の考えを読み取ろうと、鋭く睨みつけている。

 

 

 

「乗っ取られてると気づいて、我らシャドウミラーからテスラ研の解放に来たか?」

 

 

「……いや。それなら、もっと戦力を整えてくるさ。

 最も、君らの望み的にはそちらの方がよかったのかもしれない」

 

 

「見透かしたような言葉はやめろ。お前とて、所詮はその才能を開花できなかったのだ!」

 

 

 いらだちを露わにして、ヴィンデルは男に掴みかかる。男は、笑っていた。

 

 

「その通りだ。だが、今からでも遅くはない。そう感じた。この能力を錆びさせていたのは俺自身だ。

 まだ老いるには早い。後に続くものの礎になろうと思っていた。でも、それこそエゴだと気づいた。俺はまだ当事者だ。当事者として……生きねばならない。だからここにいる」

 

 

「戯言をぬかすな……アムロ・レイ!」

 

 

 ヴィンデルはアムロを床に叩きつけた。こけた頬からは想像もできない力。だが、そこからすら激しい闘争心を感じる。アムロは抵抗せずそれを受け、裂けて溢れた口の中の血だまりを吐き出すと、そのままの姿勢で口を開く。

 

 

「俺たちは闘争を日常としてきた。常に争った……

 それによる進歩もあった。でも失ったことの方が多い」

 

 

「世界という枠組みでものを捉えろ! わからんか!! 闘争は人をより高みに誘う。与えてくれるのだ」

 

 

「世界は人の集まりだ。だからこそ世界は、この闘争の中にある世界は、

 常に失うものの方が多い。自分が戦っていたいだけという本音を晒したらどうだ?」

 

 

 図星を針のような言葉で突かれたヴィンデルは歯ぎしりをした。

 

 

「交渉しよう、ヴィンデル・マウザー」

 

 

「何?」

 

 

「交渉をしよう、そういっている。

 今、状況は悪い。無作為に争いを煽れば逆に人類があっという間に絶滅する。お前たちもな。

 今までの時間でこの世界の状況を把握ぐらいはできた筈だ。俺たちが……状況的にお前たちが異世界の人間であろうという結論に至れたんだからな」

 

 

(腹立たしい……アムロ・レイとはこんな口がうまい男だったか?)

 

 

 ヴィンデルの違和感を他所に、

 アムロは静かに椅子に座りなおすと机の上にホログラムを表示させた。

 

 

 

「……これは?」

 

 

「安定的な次元移動システム、そのひな形だ。

 まず、俺たちが出せるのは兵士たちの『居場所』。要するに戸籍と社会的な保障だ。

 お前はこれを餌に兵士を鼓舞し、遊撃的に動け」

 

 

「……私のメリットはないな」

 

 

 

「完成した次元移動システムを渡す。

 何かしらの理由をつけて、精鋭だけで別の世界を移動して闘争を続ければいい

 それと、言っておくヴィンデル……」

 

 

 

 ―――俺たちは嘘を吐かない。嘘に敏感だから吐けないとも言うがな

 

 

 

 ヴィンデルは銃をアムロに押し付ける。

 アムロはその状況でもなお、落ち着いた表情を崩していない。

 

 

「今、この施設を軌道上からある男がロックオンしている。奴は外さないぞ」

 

 

「き、貴様……!」

 

 

「俺の命が引鉄だ。聞こうか、ヴィンデル・マウザー。お前の返答を」

 

 

 アムロは拳銃を掴み、瞳に押し付けるようにしてヴィンデルに言った。

 

 ぱくぱくと何かを言おうと口を動かしたが、それは言葉にならない。

 どうしたって、状況をひっくり返すものがヴィンデルにある訳がなかった。

 

 

 

 ―――さすがだな、アムロ

 

 

「おだてるなよ、シャア。お前の真似だし、お前がいればもっとスマートに終わったさ……

 照準はそのままにしておいてくれ。すぐに撃ち込むことになるかもしれないしな」

 

 

 ―――ふっ……いいだろう。必要はないだろうがな

 

 

 NT独特の共有領域を伝わり脳に響くシャアの言葉。

 それは正しかった。ヴィンデルは苦虫を噛んだような顔を浮かべるとドカッと椅子に座った。

 

 

「……いいだろう。その約束、決して違えるな」

 

 

「あぁ、そのつもりだ」

 

 

 シャドウミラー。鏡に映る影でしかない彼ら、存在なきものたちはこの日、実体を得た。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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