大惨事スーパーロボット大戦α 作:猫者
いろんな事が重なってしまった。ひと段落しました。
■壱■
『ダナンに帰還したそうだな。浅草での事は聞いている。災難だったな。もっとも、こちらとしては貴重な情報も得ることができたが……それで、確認したか?』
「2日かけて読み終わった瞬間に連絡してくるんだから、その計算はたいしたものだとほめておくよ、シャア・アズナブル」
眼元の隈を擦りながら、嫌味を投げかけるシン。
椅子に深く腰掛けながら、天井を仰いでふぅと一息をついてからシャアに向かい合う。
「でも、秘密裏に救出したアムロさんをわざわざ、危険な交渉に? 命の危険が高すぎるだろ」
『私にできる事はアムロにもできるという事だ。本人の希望もあったしな。それに、私は命については危険だと思っていなかった』
「その高すぎる信用はなんなんだよ。アムラーですか? はぁ……しかし、シャドウミラーね……」
携帯機にいたようないなかったような、そんな気はする。曖昧になってしまうのは、流石に記憶が古すぎるというところがあるのだとシンは思った。
(最も、αの方がナンバリングとしてははるかに古いんだけどな……その辺はインパクトの問題か。ローグラのスーファミからPS oneの時期に乗り換えたからあの時期のゲームは全部俺には衝撃的だったからな……)
なんとか思い出そうと記憶をねじるも中々、思い出せない当時の記憶。アドバンスともなると、そういうものに慣れ切った時期なので印象がどうしても薄くなってしまうのだろうと一人で納得する。
(それにちょうどそのぐらいがロボットものというかゲームを半卒業になった時期だからな……自分でやる時間がなくてプレイ動画とかで見る様になったし……)
『で、どう思う?』
「えぇ?」
『考え込んだ顔をしていたが、やはり聞いていなかった』
「なかった。悪いな。もう1回頼む」
『降魔と降魔皇に勝てる算段はあるか?』
「ないよ。今の所、ほぼ0%だな」
『ふっ、随分と簡単に言ってくれるものだな』
あっさりと言い渡された人類の終わりにモニターの前でシャアは何が面白いのか微笑を浮かべながらくくっと声を出した。
といってもシンも別に簡単に言ったわけではない。交戦した感想とそこから算出した勝率が素直に0%に近いと言っただけなのだ。
1%よりは低く0に限りなく近い。最も、他の人間なら絶望していただろう。
そんな中でシャア・アズナブルが笑ったのは勝てないと思いつつも諦める気はないという意思を示す様に”ほぼ”と言い切った所にあるのだろう。
「俺の装備が不足してる状況とはいえ、不完全な降魔にすらほぼ完敗だった。そんな、降魔の皇……負の念の中心。負の総念とでも言うか。そいつの戦闘力は未知数だ。大体、それが降魔の皇と言いきっていいものかもわかんねぇ」
『なるほどな……別のものであると考えている訳か』
「負の総念と表現したろ。それこそ、こいつがすべての糸を引いてる気すらする。
穴の先にそいつがいる筈なのに気配すら感知できない。
他の気配は穴の向こうに感じたのにだ……
ならそれが強大で異質なもので自身を隠していると考えるのが一番、納得できるんだ俺は」
『君の能力不足だったという可能性は?』
不当な物言いと怒られても良いぐらいストレートな罵倒と取れるそれだが、シンはそれに対して反応はない。信頼はないが、技術と知能の高さは信用はしているし、情報を流すにあたってそういう反論が出てくる当然である。だからこそ、ここでそれを話し合っておく。シャアの政治力の高さが見て取れる。
回答に対する肉付けの時間はあればあるだけいい。事実と虚偽の比率はシェフのおまかせで言いにしても、調理時間だけはさけて通れないのだから。
「可能性は十分ある。だが、親玉が不完全なアレ以下だという可能性は100%ないぜ」
シャアはそうか、と言って。何かを考える様に視界を彷徨わせると、
手に持ったカップの中の飲み物を口にした後、それを静かに置いた。
しばらく、指だけが動いている。
向こう側で空間に投影した資料を確認しているのだろう。5分ほどして、
シャアはふぅ、と重いため息を吐き出し、口を開く。
『正直に言うが……ライブレードはゲッターやマジンガーには大分劣るかもしれんが、
スーパーロボットと冠して問題ない機体。こちらの戦力としては上澄みの部類だ。
それを駆る君の予測がそれなら、直接対決になった場合、勝算はない。ティターンズ込みでもな』
「アムロさんが交渉した相手は?」
『テスラドライブ装備の量産型ゲシュペンストMk-IIが502機と特機がいくつか。悪くはないさ……それで、降魔に対処するのに必要な戦力は?』
「弾薬が万全であることを前提条件として、アレイオンなら10機。
そのゲシュペンストならパイロットの練度によるが3~5機だな。ただ、人の思念が集まる場所で出るだろうし必然的に市街戦だ。そうなると、テストドライブの利点は消えるから70 tの重量のあの機体じゃそもそも市街に出せないか。MSとアレイオンの混成部隊で比率は2:8だな。MSは高いから……」
『と、いうわけで話の流れで悪くはないと評価したわけだ』
「俺と同じ結論なら俺に聞くなよ。俺は戦技はCとかだったぞ。
お前の話の信頼性すら下がるぞ。もう一度言うけど俺の戦技成績はC。ギリギリ可」
すねた顔をしたシンに向けて、シャアは笑いをかみ殺しながらすまない、と一言言うと、
シンの端末にファイルを転送した。シンはそれを流し目で読んだあとに視線をシャアに戻す。
『ふっ……さて、このようにいなほ君はゲシュペンスト1体、MS2体、カタクラフトの4体の混成案を出している。うちカタクラフト2体は自動操作でいいという事で損害も軽微だ』
「いなほが言うならそれでいいと思う」
『おや、いいのかね? 対抗心はないのか?』
「自分得手不手は理解してる。それにアイツは友人で信頼してるし、能力も信用してる。間違いないね」
『ふっ、羨ましいものだ……』
そう思ってるだけでアムロに何も話さないから、仲も深まらないんじゃないかと思ったが言った所で雑な話のそらし方をされるだけな気がしたのでシンは唇をすぼめて言葉を押しとどめた。
代わりに、率直な感想だけが喉からせり上がって抜けていく。
「本当、めんどくさい男だぜ……」
■弐■
「M6は4、5年前は1000万ドルほどあれば買えた。しかし、流通の改善や
技術躍進でパーツも市場で手に入りやすくなった。闇市まで考えるなら
もう少し安くなっている筈だ。状態の悪いものなら数十万から、
修理品で数百万という所だろう。市街戦という意味ならこちらの数をそろえた方が安く済む」
「でも、ASは優秀な兵士であることが大前提な筈だ。
カタクラフトは習熟までが早い。時間的猶予次第では難しいんじゃない」
「肯定だ。だが、M6についてはM9以前にミスリルで長く運用してきた実績がある。
独自のマニュアルもあり、教導プランもある。トラブルシューティングの質もこちらの方が高い」
メリダ島基地会議室では、相良宗介と界塚伊奈帆による方針のすり合わせが行われていた。
厳密にはメリダ島といってもそれは過去の姿。全域を奪還した後、各種の増築工事が行われ、かつてメリダ島があった場所にこの島はない。完全な人工島、メガ・フロートに改造されて別の海域を移動している。といっても突貫工事の為、ECS(電磁迷彩システム)を搭載できるわけもなく、常に計算し衛星の死角を縫うように移動している為、現在は日本に近い位置にある。
同時に反転攻勢の為の準備として、開始されたのが今、この部屋で行われているものだ。
小会議ともいうべきものと、ミスリルの最高司令官を含めて行う作戦会議に分かれている。
一応、判断能力を培うためのものという名目はあるがそれが裏の目的はある気がする。
ある気がするといってもそれが分からないのだから、ひとまず会議に参加している、場に流されている所に日本人らしさをふと、シンは感じた。
「姉さん、姉さん。あっちは中々ヒートアップしてるぜ。こっちもど・う・だ・い?」
「猫なで声を出すんじゃないよ、クルツ。全く、アクリル板1枚の先とはいえ、
一応、私たちはB。あっちはA。別の場所なんだから参加しないの」
メリッサ・マオはそういってクルツ・ウェーバーを窘めると、
それで、と前置きしてから目の前のベルファンガン・クルーゾーに言い放った。
「なんで、ソースケはあっちなのよ?」
「私と君たち、とくにウェーバーとの距離を詰めろという事なのかもしれんな」
「俺はお断りだ」
不快感を隠す事なく言い放ったクルツ。それに同調するようにクルーゾーは微笑を浮かべる。
「同感だ。だが、そんな事は彼女も理解しているだろう。ならば、それはついでで……
実際の理由は向こう側にあると考えるべきではないかな?」
クルーゾはそういってAチームの方を指さす。
マオは怪訝な顔を浮かべるも、その反対にクルツは何か納得がいったようだった。
「戦術的に考えろ」
「軍は集団だ。たとえ、それが反乱軍の様な扱いを受けている集まりだとしてもね。
俯瞰的視点から実現可能かつ確実なプランを取るべきだよ。戦略的にね」
「それでは余裕がない」
「でも確実だ」
「状況は常に動く!」
「予測と修正は可能だ」
「まぁまぁ」
「「お前(君)も何か言えよ(ったら)」
「そ、そうは言われても俺の戦術の成績なんてお前も知ってるだろ」
「そうだね、だからそこは期待してない」
「はっきり言うね、いなほ。お前のそういう所は嫌いじゃないぜ……そうだなぁ」
ぺらぺらと紙をめくりしばらく眺めると、さらさらと記入する。
全長
ファイター:14.30m
ガウォーク:11.30m
バトロイド:4.0m
全幅 主翼展張時:14.80m
主翼後退時:8.25m
バトロイド:7.30m
全高 ファイター:3.84m
ガウォーク8.7m
バトロイド:12.70m
空虚重量 推定13,250kg
「これはバルキリーのデータだ。宗介、アーバレストの全高と重量は? それと比べてM6は?」
「全高8.5m、重量9.8tという所だな。M6は……7.9Mほどか」
「つまり、市街戦をするなら圧倒的にファイター形態のバルキリーって事が分かる。
だが、この大きさならまだなんとかなるレベルだ。そうだなぁ……いなほ、アレイオンは?」
「頭頂高で13.5m。重量は……分からないな。アーバレストよりは軽いけど、
兵器を大量に積載する必要があるカタクラフトは重くなるかもしれない」
「という訳でカタクラフトは市街戦という意味では一見向かない様に見える。だが……
それでも13.5はビルの4階ぐらいだ。つまり、カタクラフトもまだ工夫でなんとかなるんだ」
そういってシンはASとカタクラフトの説明があるページを開いて差し出す。
「ASは細かい人間に近い動きが可能で多種な状況に対応できる。
カタクラフトはそれには劣るが肉薄を全くできないレベルじゃないと思う。
間近で見たいなほのリロードとかすげぇ早かったし。それを誰にも求める訳じゃないけどな」
宗介はカタクラフトのいなほはアームスレイブのデータが記された紙を受け取り注視する。
「少し追記した……んでだ」
「お前らの意見に俺がなんも口をはさんでないのはどっちも正しいからだよ。
一つ言う事があるとすれば極論すぎてないかって事。どっちも導入すればいいだろ。
そうだな、状況を具体的にシミュレートしてみて配備の比率を考えてみろよ。ゲシュペンストと比べりゃ遥かに軽いんだ。クレーン車とか11tとかそんなんだろ。そう考えりゃ街中にいても問題ない」
「訓練の時間はどうする?」
「お前の所はマニュアルができてるんだろ。適性が低い奴は早期に見つけられる筈だ。
そういう人はすぐカタクラフトのシミュレーターに移って貰えばいい」
「でも、そうなると逆に増えすぎないかな?」
「かもな。だが、そこはポジティブにとらえていいと思う。
予備パイロットが多くても無駄って事はない。違うか、宗介?」
「肯定だ。むしろ規定人数ギリギリの方が問題だ」
「肯定頂きました。という事だ、いなほ。
こっから先はどっちを入れるかじゃなくて『どのくらい入れるか』という所をテーマに頼む」
「うん、分かった」
「なるほどねぇ……でも、あれはリーダーというより指揮官とか艦長じゃないの?」
「そうだな、立案された作戦をまとめて膨らませる。
我らの女神とはまた違ったタイプのな」
「つまり、テッサの狙いはここだってのかい?」
「私は……そうだと思っている」
クルーゾーは腕を組み天井を見上げる。
それは、そこをスクリーンに見立て過去の戦いの数々を思い出すかの様だった。
しばらくして、視線を下ろすとクルーゾーはマオに向き直る。
「現状の状況を考えるなら、舞台を二つに分ける事も必要。
そう考えておられるのではないかと私は思っている。そして、目まぐるしく状況が動く戦場を
2つ並行して指揮すればかならずどちらかが傾く……まぁ、人選にはいささか疑問はあるがな」
「あら、そう? 私はそうは思わないけどね」
「ほう、なぜだ?」
マオはニカっと歯をむき出し口角をあげて笑顔を浮かべる。
「私たちの命を背負う、ミスリ三ルの指揮官たるあの子が決めた事だからよ。それで信頼に足るわ」
■参■
「ミッション……スワンプマン。あの思考実験のですか?」
「えぇ……」
厳格な眼つきのメガネの老人。副長、リチャード・ヘンリー・マデューカスの言葉に、
テレサ・テスタロッサ。ある人物にテッサと親し気に呼ばれるその少女は静かに頷いた。
「我らは今、先の見えないゲリラ戦の様な状況です。
支援者はあるとはいえ……出張った瞬間、包囲されるなんて可能性は十分にある。
ならばどうするか……相手の包囲を2つに割らせる。これしかありません」
「そのための指揮官候補を探すためのあの会議ですか。
では、その候補が見つかったためにこのプランを進めると?」
「いえ、厳密には規定値の能力は”見つからなかった”という所です」
自分のポニーテールの先で自分の鼻を擽りながら、そう答える。
「能力的にいえば、いなほさんが一番でしょう。
しかし、彼は戦略的に自分を突出させる傾向がある。これがいけません。だからこそ彼なのです」
「しかし……」
リストを見つめ、マデューカスは表情に不安を浮かべる。
「私は反対と言わざるおえません。戦技能力が足りない」
「そこはいなほさんを始め他の方々に補って貰います。重要なのは、スワンプマン……
つまり、私が複数いるかのように円滑に現場を動かせるかどうか。
そういう意味ではこれほどふさわしい人物はいないでしょう」
「そうですか? 例の巨人像との戦闘の様な単独行動があるのでは?」
「いえ、今は麗しき王女とその従者。彼が命を賭けようとすれば、
それだけの命が同時に失われかねない。彼は自分の命を軽くは見れません。それに……」
「それに?」
「……いえ、ともかく問題はないという事です。
最も、時期を待つ必要もありますので実行はまだ先。ですがその方向で彼にも通達しておいてください」
「Aye, Mom! (アイマム!)」
返答をして立ち去っていくマデューカス。
その背を見送りながら、テッサはキュッと唇を結んだ。
「ウィスパードではないものがウィスパードに共振できる。
そんな彼の力はもしかすれば触れてはいけないパンドラの箱なのでしょうか……」
テッサは思う、神は死んだと。
だが、だからといってすべてが人間の手に収まっている訳ではない。
触れてはいけないものは確かにある。それは間違いないのだ。
「巴武蔵さん、彼の浅間山のドラゴン暴走事件のような事が今、起きれば……
世界は、いえ、人類はこんどこそ滅ぶしかなくなるでしょうから……」
ここからは、触れていいものとそうでないものを勘で仕訳けなければいけない。
ただ、そこに居たというだけで世界の運命を握らされた少女は誰に預けることもできず、
静かに背を席に傾ける。冷たい座席の感触は人肌の恋しさを燻ぶらせた。