皆さんこんにちは、”メグリメグル”っていうどこにでもいる普通のモブウマ娘です。
クラスメイトからは、メグメグ~とか、リルちゃん~とかいろいろ呼ばれています。
けれど、私には皆には言えない『秘密』があるのです!
……まあ、できればこんな悲しいことはやりたくないんですけど。
「ね、ねえリルちゃん!トレーナーちゃん知らない!?」
ベンチで休憩していた私に、私のクラスメイトであるマヤノトップガンちゃんが血相変えて聞いてくる。残念ながら、私もマヤノちゃんのトレーナーさんを見てないので首を横に振る。
「トレーナー室とか、職員室とか、理事長室とか見に行った?」
「行った!でもでも、どこにもいないの!マヤ、わかんないよ~!!」
勘の鋭いマヤノちゃんでも、マヤノちゃんのトレーナーの場所が分からないみたいだ。
……どうやら、今回もダメだったみたい。
「うーん、それじゃぁ私も分からないかなぁ。とにかく、友達に連絡して探すの手伝うよ。」
「ありがとうリルちゃん!見つかったら、教えて!!」
マヤノちゃんはそれだけ言うと、どこかに走り去ってしまう。
……マヤノちゃんが見えない位置まで走り去ると、見計らったように葦毛のできれば関わりたくないウマ娘が林から出てくる。
「ゴールドシップさん、今回はどうでした?」
「あ~、ワリィ。確かに追いかけてたんだが、角を曲がられた瞬間に消えちまってた。」
「むぅ…前は、トレーナー室に入ったら消えたのに……でも、今さらか。」
私の”秘密”の協力者、この学園でも奇人?奇ウマ娘としても有名な”ゴールドシップ”・・・こと、ゴルシ。
彼女も私と同じ『3年間のループ』を解決しようと奮起しているウマ娘だ。
私はスマホを取り出し、SNSのグループチャットに「マヤノちゃんのトレーナーさんがいなくなったから探すのを手伝って」と入力して送信しておく。すぐさま既読が48人分つき、驚きながらも探し始めるらしい。
「しっかし、ループするタイミングもバラバラ。どんな担当を持ってもURAを勝ったり途中で負けてもループ。このゴルシ様でも発生するタイミングの予測は困難だぜェ~・・・」
「今回なんて、カフェさんのオトモダチの力を借りて、恋仲にまでしたのに起きましたからね。」
パタンと本を閉じて使い古された手帳を取り出す。
そこに記してある、”マヤノトップガンとトレーナーを恋仲にするプラン”と書かれた文字を赤い一本線で消す。
「でも、メグメグちゃんのおかげで大体の要所は把握できたのはでかいぜ。」
「恋愛関係、またはそれに似た状態に仕立て上げると最低3日、最長はアイルランドに連れてかれたときの3週間でしたね。」
「あの時は、ようやく脱出できたと思ったんだけどな~」
米食いてー顔で愚痴りながらゴルシが私の頭に顎を乗せる。
重いので抵抗で、ゴルシの頬を耳でぺちぺちし始める。
なんだか、アブノーマル行為をしているみたいで少しだけ妙な視線を感じる。
あ、今アグネスデジタルの歓喜に似た悲鳴が聞こえた。
「んで、次はどうするんだ?」
「ん~、恋仲がだめならもういっそのことうまぴょいしかないなぁ。」
「お前冷静そうなキャラだけどアタシに負けず劣らずぶっ飛んでるときあるよな。」
「だまらっしゃい。」
パタンと古びたメモ帳を閉じ、座っていたベンチから立ち上がる。
ゴルシも立ち上がり、私の歩幅に合わせて歩き出す。相変わらずどんなご飯食べたらこんなスタイルになるんだ。ちょっとわけろ。
「なあ、今度はどんなシナリオで、どんなルートになるか賭けようぜ。」
「いいけど、当たったらどうするの?」
誰もいない裏口から学園を抜け出し、河川敷を歩く。
―――夕飯時の夕方だというのに、町は静寂に包まれている。子供の声どころか、カラスの声さえ聞こえない。
「そうだなぁ、駅前のジャンボパフェを食べねぇか!?」
「あぁ、良いね…って、あれ確か、カップル限定の奴じゃなかった?」
「そうだぜ?はっ、ま、まさかメグリメグル?!わ、私とは遊びだったのですね!!」
「急なお嬢様はやめて、風邪ひきそうだから。」
「にひひ、ワリィ♪」
河川敷を抜けて、ゲームセンターの前を歩く。
―――歩行者はおらず、車も通らない。ゲームセンターの中にも、人もウマ娘もいない。
「アタシはこう予測するぜ!”クライマックス”でナリタタイシンじゃねぇかな?」
「うーん、それなら私は”アオハル杯”で黄金世代…メインはスぺちゃんかなぁ。」
誰もいない町を抜けて、夏合宿で使っていた砂浜を歩く。
―――静かな波の音だけが聞こえており、太陽と月が同時に顔を出している。
「にしても、今回ばかりは上手くいくと思ったんだがなぁ~」
「まあ、いろいろ手回しと準備をしたからね。消えてなかったら、マヤノちゃんとトレーナー…卒業後に結婚してたんじゃないかってぐらいラブラブだったし。」
「冷静に考えたら、中等部に手を出してる成人男性だからアタシらが黙ってなかったら社会的死だったけどな。」
「…私の心の中のグッピーが死んじゃった。」
「なんだって!?じゃあ、その水槽にネオンテトラ入れておくぜ!!」
砂浜を抜けて、静かな森を進む。
―――寒い冬風が、段々と暖かな春風へと変わりゆく。
「…さて、今回もがんばろう。」
「……あぁ、そうだな。」
私たちは桜が散る中央トレセン学園の校門にたどり着く。
もう、何度見たかもわからない『第○○回 中央トレセン学園入学式』の看板。
受付では、たづなさんが忙しなく来客者…今回入学する生徒たちの保護者の対応をしている。
「今度のループは、成功するか?」
「さあ、やってみないと分からないよ。」
…今回も、また3年間。
この学園で過ごし始める。
メグリメグル
本作主人公。
いつの間にか3年間のループに巻き込まれていた系モブウマ娘。
ステータスは、3年間のループを繰り返していたことによりすべてMAX。
しかし、それを自覚し手加減が苦手なのでゴルシのサポートに回っている。
ゴールドシップ
ゴルシ。
主人公より先に3年間のループを回っていたウマ娘。
メグリメグルがループできると分かった途端、湿ってしまいしばらくの間メグリメグルに対するヤンデレになっていたが、メグリメグルとループを過ごしているうちに元に戻った。
ループするトレーナー
元凶。
なぜかループするトレーナー。このトレーナーがループをしなくなれば二人もループが止まる・・・はずである。実はループするたびに記憶がリセットされる。