とあるモブウマ娘が、ループするお話。   作:ライドウ

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前回のあらすじ

上手くいかない勧誘とめじろのおじょうさま




メジロマックイーン 2R

 

マックイーンは今は自販機から買ってきた飲み物を飲んで落ち着いている。しばらくスイーツを我慢していたからなのかその反動で作ったカップケーキのほとんどを食べ尽くしてしまっている。

幸い太り気味にはなって居ないようで、もちもちとしたほっぺたが目立っている。あれ?ほんとに太り気味になってないよね?

 

「はぁ……幸せでしたわ。」

「あんなに幸せそうに食べてもらって……作った甲斐もあるものです!」

「もう貴方のスイーツしか勝ちませんわ。よろしかったらこのままわたくし専属のパティシエにならなくて?」

「あっ、ごめんなさい。そちらは御遠慮させていただきます。」

「ガーンデスワ!!」

 

やはりマックイーンさんは天然芸人だと思う。

あの一瞬のやり取りで、また耳をしょんぼりとさせて落ち込んでいる。何なら口でよよよ~…と言っているし、なんだろうこの小動物をからかってる感覚は…

 

「ぁぅ…わたくしとしたことが、少しはしゃいでしまいましたわ。こほん、冗談はここまでにして…ありがとうございます、メグルさん。おかげで、少しだけ気が楽になりましたわ。」

「お力になれたようなら幸いです。」

「ところで、一つお聞きしたいのですが…メグルさんはどうして私に声をかけてくださったのです?それに、サポート科…なのですか?」

 

…マックイーンさんがそう言うと、私が考えていた答えが真っ白になってしまう。

普通ならそうだ、いくらサポート科のウマ娘といえど”チーム付き”や”個人契約”を交わしていない限りレース科のウマ娘と関わることはないのだ…普通なら。

そもそもサポート科というのが、あのオグリ先輩の縁の下の力持ち”ベルノライト先輩”が初めて注目されたぐらいマイナーな存在である。

ウマ娘のほとんどは、レース科…レースを主軸とした授業科目を選択しており、私のようにサポート科や他のウマ娘教科を専門にしているウマ娘は少なく、いて兼任しているウマ娘がほとんどだ。

最近だと、デザイン科にキングヘイローさんが所属したのが少しだけ話題になったぐらいで、あとはほとんどベルノライト先輩の話題ぐらいだ。

 

「ええ、まぁ…心配だったっていうのと…それと、私は確かにサポート科のウマ娘ですよ?レースは…出てみたいけどなぁって感じですね。」

「…なるほど、何か深い事情があるのですね。不躾に聞いてしまい申し訳ないですわ……」

「あー…まあ、そういうことにしておいてください。」

 

マックイーンさんには悪いけど、そういうことにしておこう。

小動物みたいなマックイーンさんに嘘を吹き込むことに少しだけ罪悪感を感じるけど…目を背けることにしよう。

 

「それでは…サポート科ではどんなことを習っているんですの?」

「そう、ですねぇ…ベルノライト先輩みたいに契約したウマ娘にあったシューズを選んだり調整したり…それに契約したウマ娘の体重管理をしたり、レース中にけがをした時の対処法とか…とにかく、レース科のウマ娘の活動をサポートする感じですね!その中でも私が所属している体重管理のサポート科は、生徒一人で栄養食品の研究をしなくちゃいけないんですが…」

「…そうなのですか?あ、もしかして先ほどのスイーツは!」

「はい、それが私の成果なんです!低カロリーかつ高い栄養バランスを保ちつつ、ほとんどのウマ娘が大好きな甘いスイーツ作りをしてるんです。」

「そうなのですのね…あれほどのスイーツを作れるのであれば、おそらくメグルさんはサポート科の中でも優秀なのでしょう。」

「いえ、実はそうでもないんです。今日作って、先ほどマックイーンさんが食べてくださったスイーツも失格で…しかも赤点でしたし……」

「えぇ!?そうなのですか?!」

「はい…やはり、どんなに低カロリーにしても『スイーツ』という名目だけでバツをもらってしまって……」

「もしもし爺や?今すぐ学園の上層部に連絡をして、サポート科体重管理の講師の変更を…わたくしの口座でお願いいたしますわ。」

「ま、マックイーンさん?」

 

急にスマホを取り出して、どこかに電話するマックイーンさんを止める。

 

「大丈夫ですわよ、ちょっとこの学園の先生がおひとりほど交換になるだけです。」

「い、いやそういうことじゃないんです。落ち着いてください、カップケーキありますから。」

「スイーツ!(返事)」

 

とりあえずスマホを没収し、電話の相手にも事情を話してやろうとしていたことを阻止する。

冷凍バックからまた低カロリーカップケーキを取り出し、マックイーンさんに渡すと…一つしかないからなのか一口ずつ味わいながら食べ始めている。

笑顔で食べるマックイーンさんを見ていると先ほどまでの苦労もどこへやら…(まあ、ほとんどマックイーンさんのせいだけど)

 

「んぐ…はぁ~、やっぱり幸せですわぁ~。もしメグルさんがわたくしの専属パティシエだったの…なら。」

 

そこまでマックイーンさんは声に出し、口元に手を当てて考える。その表情は真剣で、どこかレース中の覇気すら感じるぐらいだ。…もしかして、美味しくないカップケーキを渡してしまったのだろうか…だとしたら相当まずい、早く謝らないt―――

 

「メグルさん!わたくしにも貴方にも利益のある話があるのですけれども!!」

「へっ?」

 

目を輝かせ私の手を包むマックイーンさん、私の手より少し大きいけどすべすべ…なんて考えてる暇はなかった。

どういうこと?というか急に何の話なの!?

 

「貴方のスイーツをわたくしが食べて、そのスイーツを食べたわたくしがレースで勝てばきっとその先生もあなたのスイーツをお認めになるはずですわよ!!」

「ちょっと、マックイーンさん落ち着いてください!とりあえず、ゆっくり説明してくださーいー!!」

 

――――(マックイーン説明中)――――

 

「えーと、つまり…私がマックイーンさんにスイーツをお出しして、マックイーンさんはそれでスイーツも食べれて体重も調整できて一石二鳥。私も、低カロリースイーツ研究の成果が確認できて…なおかつそのスイーツの実績を得ることができる。」

「はい、わたくしとてメジロ家のウマ娘。そんな良家のウマ娘が、貴方のスイーツを食べて…G1を、例えば『春の天皇賞』を勝ったとしたら…いやでも実績が付きますわよ?」

 

…マックイーンさんの表情は真剣、そしてその考えもとてもよく理解できた。やっぱりマックイーンさんは、天然芸人が発動していないなら頭がよく回るお嬢様なんだろうけどなぁ…。

まあともかく、マックイーンさんの話は私にとって悪い話ではない。けれど、私はレースで走りたくない…だからこそサポート科に所属しているのだ。

一応、聞いてみよう。

 

「あの、もし所属するとしても…”走る”ことにはなりませんか?」

「貴方の事情は深く理解しておりますわ、ですので私もトレーナーさんに掛け合い貴方を…

 

『チームシリウスのサポートウマ娘』として迎え入れますわ。」

 

 

 

「…なら、マックイーンさん――――…」

 

 

~~~~~~~~

side:酉川トレーナー

~~~~~~~~

 

「酉川トレーナー!チームの所属についてお話があるのですが!!」

「わっ、マックイーン!?」

 

…どや顔で耳をパタパタさせているマックイーンが、シリウスのチーム室のドアを乱雑に開け葦毛のウマ娘を連れてきた。

朝の続きで話に来ていたライアンも驚き、自信満々のマックイーンを丸い目で眺めている。

かくいう俺も、そのマックイーンの初めて見る表情に驚きを隠せない。

 

「(えぇーっ!?あの絶対詐欺っぽいあの勧誘でー?!!)おめでとうマックイーン!さすがだね!!」

「(あの胡散臭い勧誘でよく…)そうか、ありがとうマックイーン。その子がレースに走るのならあとふた…」

「あぁ、いえ…この人はレースには出ませんわ。」

「「えっ??」」

「この人は、あくまでこのチームシリウスのサポートウマ娘として所属するのですわ。」

「「??????????」」

 

どうしよう、これまで付き添ってきたマックイーンの言っている言葉がわからない。

いや、ウマ娘の学科の中にサポートがあるのも分かる、というか、先生が教えていたオグリキャップのサポート役にベルノライトというウマ娘がいたことをよく覚えている。えっ、あれって個人契約限定じゃないの?チーム契約とかできんの!?

 

「えっ…えっと、サポート科のウマ娘は確か、個人契約でしk…」

「あ、それ最近ルールが変わってチーム契約もできるようになったんです。」

「oh......えっといつぐらい?」

「えっと、あれが変わったのは2月ですね。」

「あ、それ知ってます!でも結局どこのチームもサポート科のウマ娘をスカウトしていなかったような…」

 

ライアンがそう言うが…葦毛のウマ娘にそう言われて頭を抱える。そうか、俺の研修中にそんなルールになっていたのか。

そうか、サポートウマ娘か…正直、所属してくれることはうれしいが…チームシリウス存亡の危機は免れていない、チームが存続する条件は”レースに出走できるウマ娘が3人以上”というルールがあるのだ。

仮に葦毛のウマ娘がチームに加盟したところで、チーム存亡の危機はいまだに瀕している。

 

「…とりあえず、その子がチームを所属するのは分かった。それで、君は何ができるのかな?」

「えっと…掃除と洗濯、炊事に書類整理と作成、練習道具の確認や修理、あとトレーニンググッズの管理と調整に体重管理にスケジュール管理、勝負服のデザインや縫い直しに…あ、英語にフランス語にドイツ語、それとイタリア語と中国語の難しい方も簡単な方も翻訳できますよ!」

待ってくれマックイーン!こんなすごい子をどこから誘拐してきたんだ!?

「ゆっ、誘拐なんてしていませんわー!!い、言いがかりはよしてくださいまし!!」

「待ってマックイーン!今、自首すればたづなさんのお説教だけで済むから!!ね!?自首しよう!?」

「警察ドラマでよく見る事件を起こした妹を説得する姉のシーンを再現するのはやめてくださいましライアン!!わたくしは何も悪いことはしていませんわ!!」

「「いやあの天然芸人なマックイーンがこんな有能な子を連れてくること自体が事件なんだよ!!

わたくしがなぁんですってぇ~!?

 

~~~~~

side:メグリメグル

~~~~~

 

…なんというか、ゴルシといる時よりもカオスだなぁ。

酉川トレーナーと、マックイーンさん、ライアンさんがノリ突っ込みをしている間に私は加入書類に名前を書く。

まあ酉川トレーナーに名前がばれたところで何ともないから、加入書類に『メグリメグル』と記入し、サポートウマ娘として所属、と記入しておく。

 

…そういえばゴルシより先に加入したけど大丈夫かなぁ。

 





ちなみに、帰った後にそこのことをゴルシに話したら、ゴルシが宇宙の真理を知った猫のような顔をした。
そして酉川がたづなさんに、メグリメグルがマックイーンの勧誘でシリウスにサポートウマ娘として所属したと言ったらたづなさんまでも宇宙の真理を知った猫のような顔をした。
さらにマックイーンがイクノディクタスにメグリメグルが勧誘でシリウスにサポートウマ娘として所属したと言ったら最後の砦のイクノディクタスすら宇宙の真理を知った猫のような顔をした。
そしてそれらを偶然聞いていたアグネスデジタルも宇宙の真理を知った猫のような顔をし、デジタルがつぶやいていた言葉を聞いたモブウマ娘によりそれがうわさとして広がり…

次の日、ゴルシのテンションがお嬢様となり金色一族に気味悪がられ、たづなさんが秋川理事長に慰められて上層が困惑したり、イクノディクタスの体重が微増してチームカノープスがパニックになったり、デジタルが変態ではなく勇者となり、大勢のモブウマ娘が知恵熱でそのまま休んだらしい。


隠しED①:マックイーンの勧誘が走りではなく普通に成功した場合


マックイーン「なんなんですの!?」
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