前回のあらすじ
順調なシリウスと謎の二段加速
今日のゴルシのキャラは大崩壊です。
耐性のある方だけご覧ください。フリではないです。
「ふぅん……。この二段加速、どう見てもおかしいねぇ…」
…昨日、ゴルシが連れてくるといっていた相手が、私の姉…カフェ姉さんの頭痛の元、”アグネスタキオン”さんだった件について。そんな事だろうとは思っていたよ?と言うか誰でも予測はできてただろうけど、やっぱりあなたですよね!?
とりあえず、それはそれ。これはこれと考え直し、マックイーンさんが勝った春の天皇賞のレース映像を見返しているゴルシとタキオンさん。専門用語も飛び交いながら、もうすでに二段目の加速のシーンを3回も見返している。
「やっぱり、そうだよな?すでにマックイーンは、第4コーナーを抜けたところで一度
「ああ、ゴルシ。その仮説で間違いない、間違いないのだが……その仮説を仮定にしようとしてもどうしても矛盾が発生するんだ…これほど、興味深くて恐ろしいと思ったことはないよ。まるで、深淵を覗いている気分さ」
「”深淵を覗いているとき、深淵もまたお前を覗いている”……まさにそんな感じだよな。」
「……タキオンさんですら、恐れるんですね。」
「カフェさんでも、あの表情のタキオンさんを見たことないんですか?」
「…まあ、はい。」
ちなみにタキオンさんの監視役としてついてきているカフェ姉さん。
そんなカフェ姉さんは、私とマックイーンさんたちと一緒に私の作ったお菓子を食べて、二人が答えを導き出すのを見守っている。ブラストさんたちは怖い噂が流れているタキオンさんとカフェ姉さんに最初はびっくりしていたが、いつの間にか打ち解けているようだ。
話を戻すと、
「酉川トレーナー君、しつこいようで悪いのだが…本当にマックイーン君はレース前は完璧な状態で、レース後も不調は見受けられなかった…そうだね?」
「ああ、何回も言うがその通りだ。あの二段加速だ、いやがるマックイーンを無理やりCTやらレントゲンやらやったがどれも問題なしだ。まあ、ナースの態度が悪くて怒鳴り散らしちまったけどな……。」
「…やはり、その診断結果は見せてもらうことはできないのかい?」
「そればかりは、マックイーンの個人情報だ。どうしてもっていうなら、メジロ家本家にいらっしゃるマックイーンの保護者に頼むことだな。」
「むぅ、そう言われてしまえば私も引き下がるほかないな」
ゴルシとタキオンさんが考えるのをやめて、たくさんあるクッキーを手に取り食べ始める。
「…タキオンさんでも、わからないことがあるんですね」
「カフェ~?私にだってわからないことはたくさんあるさ、全知全能ではないのだからね。ふぅ…それにしてもこのクッキーと紅茶はとても美味しい。毎日食べたいぐらいだよ」
「ふふ、ありがとうございます。」
「よかったら、私の専属に―――」
「メグメグさんはわたくしたちの専属サポートウマ娘ですわ。せめて、わたくしたちのいないところでスカウトをしてくださらない?」
「……ふぅん?」
「……メグルも大変だね。」
「あはは…もう慣れたよ、カフェ姉さん。」
「「!?」」
タキオンさんとマックイーンさんが驚いた表情でこちらを見るが無視してカフェ姉さんのコーヒーを空っぽのコーヒーカップにそそぐ。
そういえばこの二人は、私とカフェ姉さんが義理の姉妹ってことを知らないんだっけ……
「はいはーい!質問いいですか?」
と、ブラストさんが手をあげてタキオンさんに質問しようとする。
タキオンさんはクッキーを食べながら頷いた。どうやら質問に答えてくれるようだ。
とりあえず私は、クッキーのおかわりを持ってくることにしよう…あ、おともだちさん、手伝ってくれるんですか?
「そもそも
「ふぅん…そうだねぇ。そういったもの……とは少し違うかもしれないねぇ。どちらかといえば、ウマ娘がもともと持っているものだから、超能力に近いものかもしれないねぇ…」
「つまりそれって、ブラストちゃんやリリスちゃんや私でも使えるかもしれないってこと!?」
「そういうことになるかな、ただ…本当に使えるかどうかは、この私でもわからないけどね」
話を聞きつつ、オーブンからクッキーを取り出しお皿に並べる。
おともだちさんは、クッキーの生地が入った絞り袋を取り紙をしいたオーブン皿に出してくれている。
あ、120℃で12分に設定してくれると一番おいしくできますよ。
「まあ、ウマ娘の研究者やウマ娘研究科の生徒でも半ばオカルトみてぇな扱いだからなぁ。」
「シャカール君のポカーンとした表情を思い出すだけで笑えてしまうからねぇ…ぷくくっ……」
「…あのシャカールさんが、そんな表情を?」
「…ところで、酉川トレーナーさん、そんな表情をしてどうしたのです?」
「エッ!?いや、だっ……メグルの周りでポルターガイストがっ…!!」
あ、どうやら酉川トレーナーにおともだちさんがお手伝いしてくれているところを見られていたらしい。私の制服のポケットに隠れていてくださいおともだちさん。
えっ、それは遠慮する?私のポケットに入ってしまうとウマだっちする?変なこと言ってないでとりあえず入ってください。
おともだちさんが渋々ポケットに隠れたタイミングで酉川トレーナー以外の全員が私の方を見る。カフェ姉さんは何かを察したらしくコーヒーを飲んでいるけど、タキオンさんまでもが私を見ている。
「……?どうかしたんですか?クッキーならまた焼けましたけど。」
「何もないじゃないですの。働きすぎで幻覚でも見たのでは?」
「ふぅん…一度、休暇を取った方がいいんじゃないかな?」
「メグメグが可愛いのは認めるが、トレーナー…頭大丈夫か?」
「ゴルシにだけは言われたくない言葉第一位ッ…そうか、疲れてるのかな……俺。」
…はい、もう大丈夫ですよおともだちさん。えっ、なんか安心するからもう少しいさせてくれ?カフェ姉さんがすごい目線で見てますけど…あ、出ます?よかった。
「はぁ…とりあえず、アグネスタキオン。仮説でいいから聞かせてくれ…マックイーンは、
「そうだよ、ただ…どうして二回発動したのか、そしてどうやって発動できたのか、なぜあのタイミングだったのか…それらの矛盾が発生してしまうけれどね。」
タキオンさんは肩をすくめながらそういう。
そもそもループしている私たちですら
ループをしていないタキオンさんがそこまでたどり着けているだけでも本当にすごいことなのだろう。
「そのため、私はこのチームに入ることにした。もちろん、レース科のウマ娘としてもだ。」
と、酉川トレーナーにチーム申請書を突き付けるタキオンさん。
カフェ姉さんはため息をつきながら目を手で覆う。
正直、酉川トレーナーも私たちも驚きを隠せていない、何せタキオンさんは研究を主にしていてレースなんてしないとまで公言しているぐらいだ。
「最近大人しかった理由はそれですか…タキオンさん。」
「もちろんだとも、一番の理由は自分が
むふー。と耳をパタパタさせながら胸を張るタキオンさん。
カフェ姉さんもため息をつくと、立ち上がって私の机の上にあるチーム加入申請書に名前を書きそっと酉川トレーナーに差し出した。
「この人が、メグルになにかしでかさないか心配なので、私も入ります。」
「お、おう……とりあえず、受諾しよう。」
…その光景に、マックイーンさんは少しだけ落ち込んでいた。
「わたくしの、わたくしのがんばりはいったい……」
「あー、まあ…あの二人もマックイーンの頑張りで入ったと思うから落ち込むなマックちゃん。」
そしてそんなマックイーンさんをゴルシは優しく慰めていた。
~~~~~~
タキオンさんとカフェ姉さんの歓迎会もその後の掃除も終わり、私は久々にカフェ姉さんと一緒に帰り路を歩くことになった。
「えへへ…なんだかうれしいね、カフェ姉さん。」
「そうですね…こうして一緒に歩くのも小学生の時以来ですから…」
久々に一緒に帰る…といっても、私もカフェ姉さんもそれぞれ別々の寮だ。
途中で別れてしまうけれど、少しだけでも私は十分にうれしい。
「…そういえば、メグル。本格化は…来たんですか?」
と、カフェ姉さんが唐突にそんな話題を振ってくる。
…そういえば、私が本格化したのはループ前の高等部春。つまり、今頃の時期だ。
ふと思い返せば、懐かしい思い出がよみがえるが…顔には出さずにそっと心の奥底にしまい込む。
「ううん、来てないかな。どうかしたの?」
「そうですか…メグルとレースを走るのを楽しみにしてたので…すこし、残念です。」
「うぅ…ごめんね姉さん。」
「いいえ、大丈夫……メグルの分まで、頑張りますので。」
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side:マンハッタンカフェ
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…メグルが、嘘をついている。
私は、あの時……見たのだ、見たことのない速さで走る…メグリメグルを。
おともだちも驚いていた、あのメグルが…あんな速さで走ったことに。
そしてメグルの表情は、もうしわけなさが出ているが。
その耳はいたって普通…、本格化の話題を振ったときだけ少し動いたぐらいだ。
(メグル…どうして?)
きっと、メグルは本格化を迎えている。
そしてそれは、私ですら追い抜かせないぐらいの強さなのだろう。
つまり、メグルは…遠慮しているのだ。自分が早いことを知っているから、私に
(なら、私は…早くなって見せます。メグルが思うより、そしておともだちすら追い抜かせるように…)
「メグル。」
「どうしたの?カフェ姉さん」
「…転びますよ?」
「へっ?って、うわわ!?」
転びそうになるメグルの手をとっさにつかんで引き寄せる。
相変わらず小さくて、それでも暖かい。
「あ、ありがとう。カフェ姉さん」
「…気を付けてくださいね?」
「うん。気を付ける!」
今は、おともだちにすら追いつけない私だけど…
(いつか、メグルの前を走って見せる。)
血のつながっていないけれど、それでもそれが…姉としての私の目標だ。
なお、その様子を偶然見てしまった一般下校中デジタルは尊さで意識がやられて、就寝時間になるまで気が付かなかったらしい。
次回はおまけパートです。