前回のあらすじ
不穏な終わり方
Re:メジロマックイーン 1R
秋の天皇賞のトライアルレース『京都大賞典』を快勝で制し、そのままの勢いできた『秋の天皇賞』。
曇天が空を覆う中、私たちチーム『シリウス』のメンバーは、ブラストさんたち3人娘…私と、ゴルシとトレーナーで応援しに来ていた。
「…この天気、さすがに雨が降りそうか?」
「そうなると…長距離の不良バ場、マックイーンさんも厳しい戦いになりますね。」
冷静に天気を分析する私と酉川トレーナー。
「そうならないためのトレーニングもしてきた…とは言っても、結局は本番のマックイーン次第だ。それに、目下の危険はないにしろ…何しろ朝から嫌な予感がまとわりついていてなぁ。」
「嫌な予感?」
私は聞き返してみる、レース場をつぶさに見ていたほかのみんなも私の言葉で気付いたのか、酉川トレーナーを眺める。
「何て言えばいいのかはわかんねぇが…良くないことが起きる気がする。」
「ちょっと、トレーナーさん!?マックイーンさんのレースでそんな不吉なこと言ってどうするんですか!?」
「そうなのぉ~、トレーナーさんはちょっと無神経だよぉ~…きっと大丈夫なのぉ~。」
「身構えている時に悪運は来ないものだよ!さあ、マックイーンちゃんを応援しようよ!トレーナーさん!」
「「……」」」
私とゴルシはこの先の結末を知っているため、何とも言えない気持ちになる。
トレーナーさんの嫌な予感は、残念なことに当たっている。このレース…『秋の天皇賞』でマックイーンさんは、負ける。
しかも、進路妨害をした。という最悪な形で…だ。
(ゴルシ、マックイーンさんには…)
(あぁ、後ろはしっかり確認するように忠告しといたぜ。)
ゴルシはそう小声で教えてくれる。
…それならいいのだけれども。
(…それ以上に、何か嫌な予感がする。)
(おいおい、メグメグもかよ……つまり、今回のこの『秋の天皇賞』相当ヤベェな…呪われてんのかよ。)
ゴルシすら冷や汗をかく、マックイーンさんの秋の天皇賞。
…でも、きっと大丈夫だ。
「…きっと、マックイーンさんなら大丈夫ですよ。」
「…?」
「マックイーンさんなら、どんなことが起きても乗り越えられるはずですから。」
私の言葉に、ブラストさんたちが頷く。
ゴルシも何が言いたいのかを理解したのか、準備されるゲートを待っているマックイーンさんたちを眺める。
~~~~~~
やがて、ファンファーレが鳴り響き…秋の天皇賞に出走するウマ娘たちが、それぞれゲートへと入っていく。
残念なことに、ポツポツと雨が降り始めてきてしまった。しかも、一気に雨脚が強くなってしまい良バ場から不良バ場のアナウンスも流れてしまった。
…だけどきっと大丈夫。
「ポツポツと雨が降り秋風が吹いて寒さすら感じるこの天皇賞、18人フルゲートでのレースです。この天皇賞の見どころはどこでしょうか、解説の葉矢車さん」
「そーですねぇ、まずやはり1番人気のメジロマックイーンさんでしょう…彼女の実力であればコースレコードも期待してはいいのかもしれません、しかしそれを待ったをかけようとしている2番人気”タワーサンダー”と3番”リバースハーミット”がどう動くかが見ものでしょうね。」
「はい、ありがとうございます!さあ、寒さに負けず会場の熱気が盛り上がってきたところで、秋の天皇賞……【ガッコン!】今、スタートしました!!」
よかった、マックイーンさんは
だけど、マックイーンさんは大外14番…大外で不利になることはライアンさんとの対決…『宝塚記念』で学習しており…ここから、内側に入り込みたいはずである。
問題は、その時……”進路妨害”になってしまわないかどうかである。
「ここでマックイーン!
「見事なコース取りです!宝塚記念の敗北をキチンと反省しているようですね!!」
「あぁとッ!?大外17番”スニーキートラップ”が転倒!!」
「どうやら、濡れたターフで脚を滑らせてしまったようです!怪我が無いといいですが……。」
…マックイーンさんが内側に入り込んだことで、後方集団が大きく乱れた訳でもない。それに、後ろに走っているウマ娘たちが慌てた様子も見受けられない。
転んでしまった”スニーキートラップ”さんも、マックイーンさんとは関係のない位置だ。彼女には悪いけれども…一安心だ。
「レースは縦長の展開で、メジロマックイーンは現在3番手!不良バ場をもろともしない走りを見せてくれています!!」
序盤、中盤と隙を見せないマックイーンさんは先頭を走るナニヤッテンダヨさんとヨンゴウアンコウさんを追い抜かそうと虎視眈々と狙っている。
ナニヤッテンダヨさんとヨンゴウアンコウさんは、マックイーンさんに負けじと冷静に自分のレースを進めている。
「さあ、レースは終盤へ!大ケヤキを超えて、最終コーナーへ!」
「ここが勝負所、どのウマ娘が飛び出してくるのか目を離さないでください!!」
…マックイーンさんにとっての理想のポジション、そして多分だけど足も十分に残っているはず。
仕掛けるなら…
「マックイーン動いた!外から一気に先頭に躍り出た!!」
「くぅ…」
「むーりー!」
「5番ナニヤッテンダヨと4番ヨンゴウアンコウは差し返せない!後方集団もスパートをかけるがマックイーンは突き放す!!強い、強すぎる!!マックイーンが完全に抜け出したーッ!!」
マックイーンさんがさらに加速したところで、私たち以外の歓声は大きくなる。
「行けっ、マックイーン!!」
「「「いっけー!マックイーンさーん!!」」」
「メグメグ、こいつは!」
「……うん。」
「メジロマックイーン!今ゴールイン!!春に続いて、『秋の天皇賞』もメジロマックイーンが制しました!!」
マックイーンさんたちが私たちに向けて手を振っている。
トレーナーさんたちは勝ったことに嬉しくて、その手を振り返している。
…だけど、私とゴルシは……
『審議』の文字が消えない掲示板を……ただ静かに見つめていた。
「第1位に入線したメジロマックイーンは、他のウマ娘の進路を妨害したため―――」
嗚呼……
「『着外』にさせていただきます。」
「はぁー!?ちょっ、どうなってんだよ!?」
「お、おれに聞くなよ!?マックイーンが進路妨害!?ど、どういうことだよ!?」
「誰がどう見たって、マックイーンは進路妨害してないじゃないか!!」
ダメだった。
ブラストさんたちはうつむき、周りの観客たちはパニックを起こしている。
「…メグメグ、そう気に病むな。」
「……そうだね、ごるs」
「―――貴方、メグリメグルさん…で、よろしいでしょうか。」
と、私たちに黒服を着た人たちが話しかけてくる。
…えっと、誰だろう。どうやら私を探しているみたいだし…ここは素直に答えておこう。
「はい、私がメグリメグルですが。」
「俺が彼女の所属するチームのトレーナーだが…あんたらは?」
「あなたに、
「……えっ?」
「「―――はぁ!?」」
雨は、冷たく私を…濡らしていた。
頼りになる、トレーナーさん。