とあるモブウマ娘が、ループするお話。   作:ライドウ

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前回のあらすじ

人間性の黒い部分


Re:メジロマックイーン 6R

 

ゴルシがマックイーンさんの手をつなぎながら(こうしないとマックイーンさんが眠れなくなってしまったみたい)寝付いたのを見届けて、私はふかふかのソファーに座り考え事を始める。

一人静かに考え事をしていると、いろいろな後悔や不安があふれ出してくるが…その前に物事をまとめてしまう必要がある。

 

(まず、マックイーンさんの事から…)

 

今現在、マックイーンさんは極端なまでに不安定だ。そういった状態を何て言うのかはわからないが、マックイーンさんは自分と親しい人間やウマ娘以外に対し極端な恐怖心を持ってしまっている。

一度、事情を察してくれたイクノさんがマックイーンさんの荷物を届けに来てくれたのだが…そのイクノさんが視線に入った途端…過呼吸になってしまったのである。

その時の様子は、言うまでもないだろう。マックイーンさんが過呼吸になりながらイクノさんから逃げようと距離を取ろうとしていた。それを見たイクノさんもショックを受けていたが…ゴルシにマックイーンさんを任せて私とイクノさんは廊下に飛び出た。

 

(ゴルシの話だと、見えなくなった後しばらくは身を守るように小さくなって震えていたって話だからなぁ)

 

尋常ではないマックイーンの様子に半ばパニックになっていたイクノさんにも事情を説明し、落ち着きを取り戻してもらって荷物を受け取ったが…あの時のイクノさんの悲しそうな表情がどうしても目に焼き付いているのだ。

…とにかく、マックイーンさんはと”人を恐れる”ようになってしまっている。しかし、それには例外が居るのだ。

唯一、マックイーンさんがパニックにならずにいる人物たち…それは夕方を思い返せば簡単に分かるが『シリウスのメンバー』とそのトレーナー、そしてライアンさんとドーベルさんだ。

 

(どうして、私たちが例外なのかは分からないけれど…解決の糸口は少なからずある……そう考えておこう。)

 

そして今現在の状況だ。包み隠さずに言えば、マックイーンさんは社会的に殺される寸前だ。

まず、あの秋の天皇賞の時…私は”マックイーンさんに対して違法薬物を使用した”という冤罪をかけられ逮捕されたが、レシピやトレーナーさんの証言もありその日の夕方には解放された。

しかし、そうなった次の日…つまりは今日のお昼、URAは驚くべき会見を行ったのだ。

 

(…マックイーンさんが自分から”妨害するように賄賂を渡したり、自分が勝つために違法薬物に手を出す”わけがないでしょうが。)

 

URAはマックイーンさんが”悪”であると発表したのだ。つまり、URAはメジロ家を相手に正面から喧嘩を売ったことになる。

もちろん、メジロ家はそれに対して反発、そして反論。URAに対し発言の撤回を求めたが、今現在メジロ家は追い詰められている。

URAの公式な発表を大々的に報じた大手の報道社により、大勢の人間がそれを信じてしまったのだ。

しかし、真実を知る人たちの手によって真実を明るみにしようと…マックイーンさん、ひいてはメジロ家を擁護している人たちもいる。だけど、秋の天皇賞から行方が分かっていないスニーキートラップさん…そして、URAから公表された防犯カメラの映像のせいでその場は混沌に包まれている。

 

(ゴルシがマックイーンさんには知られないように調べものしてくれているけれど、マックイーンさんの前だとできないからか何も進展はないみたいだし……)

 

ともかく、マックイーンさんが本当にやっていないという情報が極端に不足しているせいで…マックイーンさんに対する視線がだんだんと悪いものへと変わっていっているのだ。

なにもマックイーンさんだけの話ではない、ライアンさんやドーベルさん、メジロ家に対する視線や評価が悪いものになって言ってるのだ。

このままでは、メジロ家は潰えてしまうだろうし…マックイーンさんたちの将来が脅かされたままになっている。

 

(私が、私が何とかしなきゃならないんだろうけれど…)

 

なにせ、ここまでの社会問題の原因になってしまっているのはマックイーンさんが悪いというわけではない。おそらく、私が『シリウス』に居ることで起きたバタフライエフェクトだろう。

あの時のマックイーンさんの提案を蹴ればよかった。なんて考えはしないけれど、その災禍をさらに広めたのは間違いなく私だ。…だけど私には、ゴルシのように真実に近づくような重要なことはできないし、だからと言って超常の…それこそご都合主義の力も権力も持ち合わせていない。私はループ現象に巻き込まれているといえども”普通のウマ娘”なのだ。レースを走れば”あのタイム”が叩き出せるとはいえ…今を生きるのに精いっぱいで、未来の事なんて全然わからない普通のウマ娘……特別な力なんて持っていない、ごくごく普通の女の子だ。

 

(…って、暗い考えなんてするな、私!)

 

頬に両手を添えて頭をブンブンと横に振る。ネガティブな思考をすればドンドンと心と思考を黒い感情が支配するのはとっくの昔に経験済みだ!

それにしても、私にできる事……か。

 

「簡単なことだとは、オレは思うぞ。」

「…ッ!?……って、”おともだち”ですか。どうして?」

「今の現在時刻は2時6分34秒だ。そりゃぁ、生霊のオレでも好き勝手出来る時間だぜ?いい子ちゃんならとっくの昔に寝てる時間だな。」

「…もう、そんな時間なんですね。」

 

どうやら、考えていた間そんな時間になっていたようだ。

カフェ姉さんとは違い、口の悪いおともだちさんのおかげで眠気が少しだけやってくる。

というか、いつの間に隣に座ってたんですか?

 

「カフェ姉さんは、大丈夫なんですか?」

「カフェが寝てる間なら、アイツは大人しくしやがる。だからオレは、一番苦い思いをしてるであろうメグちゃんに会いにきたってわけよ。どうだい、ハグでもするか?」

「…では、すこしだけ。」

 

おともだちの言葉に甘えて、体を動かして彼女に抱き着く。

おともだちも抱きしめてくれて、優しく私の頭をなでてくれる。いつも通りの、優しい撫で方。

 

「メグちゃんは頑張ってる。何回も何回もループをしてても…まだ、まだあきらめるなよ?」

「……はい。」

 

…ゴルシには言っていないことだが、おともだちは私とゴルシがループ現象に巻き込まれていることを知っている。

むしろ、私がループした途端に気づかれたぐらいだ。でも、どうやってそれを知ったのかは私でも分からない。

けれど、おともだちは何も言わずに私を慰めて励ましてくれる。湿気っていた時にゴルシから逃げるのに協力してくれたこともあったぐらいだ。

私と彼女は互いに元の位置に戻り、話の続きをすることにする。

 

「…それで、簡単なことって?」

「たった一つのシンプルなことさ、今までメグちゃんがやってきたことを思い返してみろよ?」

「…私の、やってきたこと。」

 

………。

……。

…。

 

「…そういうこと、ですか?」

「あぁ、たった一つのシンプルなことだろ?」

「……ありがとう。」

「いいってことよ、じゃっ。今度は夜更かしすんなよ~。」

 

そう言って、おともだちは消えていく。

でも、あの人のおかげで私にできることが分かったのだ。

 

 

 

…私にしかできない、たった一つのシンプルなこと。

 

 

 





おともだちが実体を持つのはおかしいだろ!?って、丑三つ時に野暮なことを求めるんじゃあない。ちなみにおともだちは誰だって?

誰でしょうね。
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