前回のあらすじ
再来、エヴィルクロー
「た、ただいまもどりまし―――」
「メグルさん!」
私が生徒会のみんなに送られて戻ってきた『シリウス』のトレーナー室。入った途端に、マックイーンさんが抱き着いてきて…アワアワしつつ私にペタペタと触り始める。
「け、怪我は怪我はその頭以外ありませんこと!?き、切り傷とかありませんこと!?あぁ、とにかく応急処置をっ!!」
「お、落ち着いてくださいマックイーンさん。」
マックイーンさんを落ち着かせつつ、トレーナー室を見渡すと…ゴルシと酉川トレーナー以外のみんなの姿は見えなかった。
ゴルシは、いつも通りの雰囲気でニュース番組を見ているけれど…酉川トレーナーは無事だったという安堵と今にも りつけたい怒りが混ざった表情で私たちを見ていた。
「まずは、記者会見・・・ご苦労だった。怪我は大丈夫か?」
「…あ、はい。私、走らなくとも頑丈なので…この通り、大丈夫ですよ!あ、ゴルシ…応急箱を取ってくれない?」
「しょうがないな~メグメグ君は~(ドラ〇もん風)」
「ゴールドシップ!ふざけてる場合ですかッ!!」
「無事に終わってメグメグが戻ってきただけでいいじゃねぇか~、なんでそんなカリカリしてんだよマックちゃんは。」
いつも通りの笑顔を浮かべて、ピースサインを浮かべてみんなのソファーに座る。
うぅん、送られてる途中でティッシュでふき取ったけど…まだベタベタする。ぶつかったのはおでこだけど、乙女の髪に卵を投げつけるだなんてなんて奴だ。
・・・少しだけやりづらいなぁ。
「…貸してくれ。自分だとやりずらいだろ。」
「あっ、ありがとうございます。」
酉川トレーナーが自分の机から移動してきて私の隣に座ってそういうので、応急処置セットを渡すと正確で的確な手順で応急処置が始まった。
つける消毒液も少しだけ沁みる量で、手慣れた手つきで私のおでこにガーゼを当てて固定してくれる。
「…どうして、一人だけで記者会見をしたんだ?あそこは本来、俺が立つべき場所だろ?」
「そう、ですね。でも、あそこには私が立つべきだったんです。関係者の一人として…そして『シリウス』のサポートウマ娘として。だって、酉川トレーナーは負傷と疲労でお休み中でしたもの」
「それが、
江渡山トレーナーは、このトレセン学園におけるトレーナーたちの総括のトレーナーさんでトレーナー歴50年の大ベテランの人だ。そして真崎トレーナーは、
江渡山トレーナーには、たづなさんの紹介で何とか説得し…真崎トレーナーもベルノライト先輩の伝手で何とか説得して…酉川トレーナーがあの記者会見に現れないように止めてもらったのだ。
「…残された、俺とマックイーンの気持ちを考えたことがあるか?」
「……ごめんなさい。」
「わたくしが…わたくしが悪いのですわ!けしてメグルさんが悪いというわけではっ!」
「落ち着け、マックイーン。……俺には大人としての責任もトレーナーとしての責務だってあるが、それ以上に…子供であるメグルに守られるほどヤワな奴にはなったつもりはなかった。」
「私は、もう高等部です…きちんと自分の頭で考えられますし…自分できちんと選ぶことだって―――」
「あぁ、そうだな。メグルはもう高等部だ。自分で考えて自分で選ぶことをしなくちゃならない。だが、危険なことに足を突っ込んでいいってことじゃない。それとこれとは、何もかもが違うんだ。」
手当が終わったのだろう、酉川トレーナーはそそくさと応急箱に使ったものをしまい、じっとテレビを見始めた。
あの時の記者会見でいろいろと思うところがあったのだろう、しばらくして彼は横目に私を見て
「…それに、メグルはもう『シリウス』の仲間だ。違うか?」
「!」
ただ、そういった。
…そうだ、このループでは私は『シリウス』なんだ。
「…痛かった。」
「メグルさん?」
「とっても怖かったし、とても…冷たかった。でも、酉川トレーナーやマックイーンさんの為って言い聞かせて…私……わたしっ」
「無理に言わなくていい、ゴールドシップ。彼女を頼めるか?」
「…いいけど、酉川トレーナーはどうするんだ?」
「……俺は、缶コーヒーでも買ってくるさ。ついでにマックイーン、おしるこ買ってやるから行くか?」
「わ、わたくしは…………っ。行きますわ。」
そう言って、酉川トレーナーとマックイーンさんは『シリウス』のトレーナー室から出ていこうとする。
…あの言葉を、伝えないと。
「マックイーンさん」
「…はい、なんですか?メグルさん。」
「『今度は、追い抜かされない。』だそうです。」
「ッ!……そう、ですか。」
その後、私は…涙が枯れるほど泣いていた。
一人が好きでも、仲間はずれがつらかったとゴルシに伝えれば、ゴールドシップは何も言わずに私を抱きしめてくれた。
レースに出るのはまだ怖い、けれど…一緒の目標を目指す仲間が欲しかったんだ。一度、気付いてしまえばボロボロと本音がこぼれていく。
ゴールドシップも、途中から泣いていた…。
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side:メジロマックイーン
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久方ぶりの外は夕日が差し込んでいるとはいえ、もう秋も深まり冬が近いのだろう。いくら長袖の制服を着ていても少しだけ寒さを感じてしまう。
わたくしはトレーナーさんの陰に隠れながら、目的地である自販機の前にたどり着く。
「…熱いぞ、気をつけろよ。」
「ありがとうございます。」
トレーナーさんが小銭をいれておしるこを先に買ってくれて、わたくしに手渡してくれる。
そのあと、小銭を再び入れて…今度は暖かい缶コーヒーを買っていた。
「これから、忙しくなるぞ。」
「…?」
「ブラストたちのジュニアG1に向けたトレーニングに、カフェやタキオンにデジタルの本格化に向けた緻密なトレーニング。それに、マックイーンのメンタル回復。ボーナスがでりゃぁ良いんだが。」
苦笑いを浮かべつつ、コーヒーのプルタブを立ち上げすぐさま口に含む酉川トレーナー。
けれども、にっが。という一言共にむせ始める。慌てて背中をさすろうとするが酉川トレーナーが手で制する。
あの言葉は、間違いなく…アイツの言葉なのだろう。メグルさんを陥れようとした、エヴィルクローの言葉。その言葉を思い出すと、どうしてもわたくし自身の心が再び熱を帯び始める。
「酉川トレーナー。わたくしは、有馬記念に出たいです。」
「…バカを言うな、いったい何日休んでたと思ってる。今のお前はトレーニングを休んでいたブランクを持っていて、さらに培ったレースの勘が衰えている状態なんだぞ?そんな状態で、有馬記念を走れるわけが―――」
「…もう、俯くのは止めにしたいのです。」
「……危険だぞ。」
「覚悟はできています。」
「下手すりゃ、一生…車いすかベットの上、運が悪ければ”それよりも先”だ。」
「それでも、走りたいんです。」
「メグルの為か?」
「…いいえ、『
いまの
けれど、けれども。
「もう、メグルさんを泣かせたくありません。それは、
「……マックイーンの覚悟は分かった。」
グイっと缶コーヒーを飲み干し、資源ごみ用のごみ箱に投げ捨てる酉川トレーナー。
「かなりの荒治療で行く…その間の弱音や恨み言は一切聞かねぇし、怪我をしようが心が病もうが俺は責任を取らねぇ。だが、『死にそうだ』だと判断したらすぐさま止める。それでどうだ?」
「それで構いません。」
諦めたとなれば、
ならば
「
メグメグとマックイーンの契約ってどっちかが裏切ったりつぶれたりすると両方とも傷がつくよね。つまりそういうことよ(?)