前回のあらすじ
まだまだ子供なメグメグ、マックイーンの覚醒の兆し
あれから一週間ほど。
私はシリウスのメンバーだけでなく、両親やライアンさんドーベルさんに怒られて…カフェ姉さんに泣かれてしまったとき、一番心苦しかった。
だけれど、今の私たちは立ち止まることはできないのだ
「はぁ……はぁ……ぐぅっ」
「どうした、その程度か?」
「い…いえ、まだ……まだ、いけますわ。」
倒れていたズタボロのマックイーンさんが酉川トレーナーの冷たい一言で再びトレーニングを再開する。
ブラストさんたちはボロボロのマックイーンさんを心配していたが、酉川トレーナーの説得により足早にかえっており…カフェ姉さんとデジタルさんは心なしか酉川トレーナーに怒りを抱いてすらいた。
…そして残った私とゴールドシップ、そしてタキオンさんとトレーナーさんだけがいまだに走り続けるマックイーンさんを見守っていた。
「…まだ、なんですか?」
「あぁ、本来ならマックイーンは感情豊かな女の子だ。だからこそ、どんなに走ってボロボロになっても未だ雑念が残っちまってるんだろうな。」
…トレーナーさんがやっていることはただひたすらにシンプル。
今までのギリギリのトレーニングではなく、本人の限界を超えた過酷なトレーニングをマックイーンさんに課している。わざわざ秋川理事長に辞表届を出したうえでマックイーンさんの覚悟を力に変えるために旧トレーニングコースで日が沈んでも走り続けさせている。
「…なあ、本当に『極限の境地』なんてもんがあるのかよ。」
「所詮、
「……確かに効率的なトレーニングをすれば、マックイーンは有馬記念で
「…エヴィルクロー。ですね。」
私がその名前を出せば、二人は顔をしかめて耳を後ろに向ける。そして酉川トレーナは目を閉じてうなづいた。
あの記者会見の時、エヴィルクローは春の天皇賞に比べて随分と変わっていた。それをどんな言葉で言い表せばいいのか分からないが、強いて言うならば『気高い美しさ』ともいえる…そんな輝きを私にのぞかせていたのだ。
それを、酉川トレーナーは画面越しとはいえ…私より早く察知したのだろう。腐ってもエリートトレーナーでもある酉川トレーナーが気付かないわけがない。
「…普通に、効率よくトレーニングをしたとしても、勝てる確率はとにかく低い。マックイーンに対抗するためのトレーニングをとにかく積んでいやがる。」
「つまり…マックイーンが有馬記念で、エヴィルクローに負けるっていうのか?」
「…どういうことだい?」
「どうもこうも、ゴールドシップの言ったとおりだ。」
酉川トレーナーはそういうと、再び倒れたマックイーンさんに視線を向ける。
ゴールドシップもタキオンさんもそれに気づき、駆け寄ろうとするが…すぐさまマックイーンさんは震えながらも立ち上がり、再び走り始めた。
もう、随分と目が虚ろだ。葦毛の髪色も随分とくすんでいて…頬には泥や切り傷をいくつも作っている。
「…あの時の
酉川トレーナーは、そう言って…力強くこぶしを握った。……その内側から、血があふれようとも。
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side:マックイーン
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はしる。はしって、ただはしりつづける。
なにもかんがえずに、ただ…ぼやけるしかいでまえをみて、ただまえにすすみつづける。
(…まだ、とどかない。)
とれーなーさんがおっしゃった、『きょくげんのきょうち』、『りょういきのにだんかそく』…どちらもいまのわたくしにひつようなもの。
だけれど、はるのてんのうしょうのときのように…なにかがかわるけはいがない。
(ひかりは、みえているのに。)
つかめそうなのだ。あとすこしで、それをてにいれられそうなのだ。
だけれども、とどかない。とおざかってゆく。
(わたくしは…かたないといけないの。)
いしきが、またとおくなる。
だけど、まだつかめていない。こんなところでやすんでいられない。もう、ありまきねんまで、もうすこし、だから。
とおくなりそうないしきのまま、ただまえにはしる。けれども、わたくしは…またたーふのうえに、たおれてしまう。
(まだ……まだ……まだ……)
おちてゆく。ふかい、ふかい、くらやみのなかに。
あしが、いたい。あたまが、ぼーってする。こころが、つめたい。
『ここで、諦めてしまうのですの?』
ふと、わたくしとおなじこえがひびく。
『ここで諦めてしまったら、アナタには何が残りますの?』
かすむしかいとぼろぼろのからだをうごかして、こえをだしているうまむすめをみる。
…あのときの、しろいしょうぶふくをきた、わたくしがそこにいた。
『何より、メグルさんのカップケーキをまた食べられなくなりますよ?』
…わたくしは、もううごけない。
なにものこせないのが、とてもくやしい。ここでおわってしまうのが、とてもかなしい。
じぶんのためでなく、めぐるさんのためだといいきかせてきたけれど…それも、ここまでなのですのね。
『…一つ、訂正してあげましょう。アナタ、自分の為に走ることを恐れていますわね。』
わたくしには、もう・・・なにものこっていないのだ。
じぶんのゆめも、じぶんのぎむも、じぶんのせきむも…だから、たにんのゆめを、たにんのぎむを、たにんのせきむをせおった。
でもそれが、わたくしを・・・そしてめぐるさんをきずつけることになった。
それが、こわい・・・とても、こわい。
『他人の夢も義務も責務も、すべては他者のものです。それを、自分で背負ってどうするんですの?』
………。
『そんなもので走るくらいならば、ここで死になさい。」
しろい、わたくしが・・・つめたいめでわたくしにそういう。
つめたいことばが、わたくしにかんがえるためのゆうよをくれる。
・・・めぐるさんは、なんのために・・・わたくしをたすけてくれる?
ぶらすとさんは、わたくしの”なに”をもくひょうに、しりうすにきた?
りりすさんは、わたくしの”なに”にかんどうして、しりうすにきた?
ぱんぷきんさんは、わたくしの”なに”にきょうかんして、しりうすにきた?
『ようやく、気付いたんですね?』
しろいわたくしが、てをさしのべる。
『手をお取りになって、アナタに…”運命を変える力”を』
わたくしは、まよわず。
……立ち上がる。ボロボロになった体で、フラフラの頭で、ぼやける視界を抑えながら前を向く。
「…っ!マックイーンッ!!中山レース場、晴、2500m右回りッ!!序盤と中盤はキープしつつ、最後の直線でぶち抜け!!」
酉川トレーナーが指示を出す。
走り出すために、脚に力を入れ…前を向く、途端に
「
たった一言、それだけで黒い影は霧散する。
ゲートの空いた音が聞こえ、すぐさま飛び出す。
(体がとても軽い、動かしやすい。頭も冴えて、何もかもが見えやすい!)
まるで、生まれ変わったかのよう。まるで、何度も経験してきたかのよう。
まだ、まだ早くなれる。まだ、走れる。けれど、けれども
あぁ、もったいない。まだ走りたい。けれど、トレーナーさんの指示だ。
(終わらせましょう。)
あぁ、でも…せっかくなら、皆様に
心安らぐ、
『いいえ、見せるのは…』
(そうですわね…せっかくならば。)
『(すべてを!)』
私の寄る辺である庭園に、あの島での思い出を重ね掛けする。
「…これが、わたくしのシリウスですわッ!!」
【『導きの
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「よお、マックイーン。気分はどうだ?」
ターフに上向きの大の字で倒れているわたくしに、酉川トレーナーが声をかけている。
その表情はどこか悲しそうだけど、わたくしが成し遂げたことを喜んでいるようにも見える。
「清々しいですけれど…とても疲れました。」
「おう、しばらくは休養だ。だが、もう有馬記念はすぐそこだ。」
「…上等ですわ。」
私がそう言うと、酉川トレーナーは手を差し伸べる。
その手を掴み、立ち上がり…酉川トレーナーの肩を借りて歩き出す。
「勝つぞ、メジロマックイーン。」
「もちろんですわ!」
マックイーンが覚醒しましたね。
ちなみに『導きの
ちなみに簡単に『導きの
『導きの
最終コーナーを抜けると、自身の思いの丈をすべてぶつけ、スタミナを回復させすごく速度を上昇させる。また、サポートウマ娘との絆が深いほどその速度はさらに上昇する。