前回のあらすじ
覚醒マックイーン
消灯時間も過ぎ、窓から差し込む月明かりがパジャマ姿の私とゴルシを照らしている。
今日、マックイーンさんは酉川トレーナーが言っていた『極限の境地』を手に入れ、私だけでなくゴルシとタキオンさんも驚かせていた。
そのため、私とゴルシは…今回のループについて詳しく話し合うことにしたのだ。
「…なあ、どう思う?」
「そう、だね。正直、『極限の境地』なんて聞いたこともなかったから…それが決め手になるかどうかは分からない、かな。」
「…だよな」
ゴルシは少し不安そうに微笑む。耳が後ろになっていることから、多分怖くなっているのだろう。自分の知るマックイーンさんにあんな力があったのだから。
「あれは、『ウマソウル』ってやつ……なのか?」
「どうだろう…私はタキオンさんみたいにその道に詳しくないからね。タキオンさんはなんて言ってた?」
「……何も、ただマックイーンを随分と嬉しそうな瞳で見つめていたぐらいだ。」
…おそらく『極限の境地』というモノを、そしてそれに至ったマックイーンさんに対して何かを見出したのだろう。タキオンさんの求める『何か』は分からないけれど何が分かっただけでもいいとは思う。
だとすると、あとの懸念といえばマックイーンさんの有馬記念の結果ぐらいだろう。マックイーンさんは確かに強い、けれどそれ以上にエヴィルクローの存在が大きいのだ。
酉川トレーナーもエヴィルクローの変化に気づいてどう出し抜こうかと考えていたみたいで、マックイーンさんがトレーニング中にノートに作戦や情報をまとめていたのを見ていた。
「あれを見て、ループが終わるのかどうか…なんて考えないか?」
「うーん、どうだろう。さすがに
「終わるかも、分からないのに…か?」
「終わるかも分からないから、だよ?もし終われば、私たちが用意してきた計画は無駄になるけれど…私たちは、はれてこの学園から卒業できる。」
「……ああ。」
「ゴルシ?どうしたの?うれしく…ないの?」
私がそう聞くと、ゴルシは何も言わずに膝を抱える。
…なるほどね。
「怖いの?いざ、終わるかもしれないってなると。」
「……怖い。」
ゴルシが…ううん、ゴールドシップがそう小さな声で弱音をこぼす。
「……メグルはどうなんだよ。」
「…私もね、少しだけ怖いよ。」
意外そうな表情で私を見上げるゴールドシップ。
このループが終わる、ということはその先に待ち構えているのは大人の世界だ。
仕事をして、家庭を持って、幸せに生きて、そしてゆっくりと年を取る世界。今の私とゴールドシップを覆う世界のように、ループ現象で年を取らない、すでに知っている現象が起きるわけがない、本当の現実の世界。
「でも、私は…うん。そんな世界でも生きてみたいと思う、ゴルシはどうなの?」
「……わかんない。でも」
ゴルシはそっと立ち上がり、私をそっとベットに押し倒す。
銀色の葦毛が視界いっぱいに広がって月明りに照らされてキラキラと光り、ピンク色の瞳孔は私をとらえて…そして潤んでいた。
「アタシは…もっと、メグリメグルと一緒に居たい。これは、アタシのわがままなのか?」
…私は、何も言わずにただゴールドシップを見上げる。
ポタポタと、私の頬にゴールドシップの涙がこぼれる。
「アタシは、メグリメグルから離れたくない…離したくない。離したら、どっかに行っちまいそうで…怖いんだよ。」
…涙と一緒に、ゴールドシップのか弱い声で、そう言葉が紡がれる。
「どこか行かないって言ってても、いつの間にか消えてそうで……本当は、メグリメグルを一人にするのも……怖いんだよっ。行かないでくれ、アタシを…置いていかないでくれ。」
弱々しくゴールドシップは私に覆いかぶさる。泣いているからなのだろう、ゴールドシップは小さく震えてとてもか弱く見えた。
嗚咽が静かに部屋に響き、私は…何も言えなくなる。だけど…ただそっと、ゴールドシップを抱きしめる。
静かになくゴールドシップをなだめつつ…私は、ゴールドシップの思いに答えられないことを、心苦しいと感じた。
(ごめん…ごめんね、ゴールドシップ。)
ゴルシはメグメグの事しか愛せない。(後方彼女面)
マックイーンはメグメグを仲間として信頼している(後方理解者面)
カフェお姉ちゃんはメグメグのことを家族として愛している。(後方姉面)
おともだちはメグメグのことを(二つの意味で)信頼して愛している。(後方???面)
でもメグメグは、『約束』を大切にする女の子。
つまり……?