とあるモブウマ娘が、ループするお話。   作:ライドウ

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前回のあらすじ

ずっこけゴルシ


ライスシャワー 2R

私が言った言葉を酉川トレーナーが補足し始める。

ライスさんはステイヤーで、距離があればあるほどその能力が発揮されるとライスさんに説明し、そしてライスさんに長い距離のレースに出ることをオススメする。

そして、その説明の次に

 

「んで、直近に2400mのレースがある。出走相手は選び抜かれた精鋭ぞろいだがな」

 

酉川トレーナーがそういうだけでライスさんを除く全員の表情が変わる。

 

「…『日本ダービー』」

「に、『日本ダービー』!?」

 

誰かがそう呟けば、ライスさんは耳をへにゃらせて驚く。日本ダービーと言えば、中央トレセンを走るウマ娘たちが一生に一度走れるかもしれないその世代における頂点を決めるレースだ。『シリウス』としては、引退したオグリキャップ先輩を含めて誰も挑戦したことのない…誰もが憧れる三つの王冠のうち一つを手にすることのできる格式の高いG1レースだ。

 

「だが…別の問題も出てきやがった。」

「問題?まーたなんかどっからか恨まれたり擦り付けられたのかよ。」

「いや違う。ただ…二代目の『努力王』が日本ダービーに出走するって問題さ。」

 

その言葉で、私とゴルシ…そしてライスさん以外が驚く。努力王という聞き慣れない言葉にゴルシに目を向けてみればみんなにバレないように首を横に振る。どうやら、いままでのループの中でも聞いたこともない事らしい。

 

「ちょっと待ってくださいまし!もうすでに努力王…いえ、バクシンオーさんはすでにクラシックではなくシニア級のはずです…それに、二代目とは?」

「今言っただろ?バクシンオーの後継者が現れた。ただそれだけの話さ、距離関係なしに一番前を突っ走るやべー奴の弟子。」

「「…っ!」」

「ば、バクシンオーさんのレース…すごかったよね。ライスもあんな風に走れたらなぁ~…」

 

…話を聞いていてスルッと納得できてしまう。なにせ、エリートなゴルシをもって『努力であそこまでできるのホントわけわからねぇ』と言わしめたバクシンオーさん。あるループでは酉川トレーナーがバクシンオーさんのトレーナーとなり…最終的には『凱旋門賞』や、世界一長い競争ウマ娘レース(本来なら複数人で1組で行われるレース)のトロフィーをたった一人で取ったこともある。だが、それを本人に確認したところでその記憶を持っているわけではない。しかし、今回のループのバクシンオーさんはその時の酉川トレーナーに匹敵するほどのトレーナーにスカウトされたようだ。

 

「じゃ、じゃあ誰なんですか!?あの理不尽の二代目のウマ娘って!!」

 

ブラストさんが取り乱しながら酉川トレーナーに詰め寄る。

酉川トレーナーはブラストさんを落ち着かせると、メモ帳を開き私たちに見せつけるように突き出す。

そして、私は知っている…と言うより思い出した。バクシンオーさんと同じ、長距離を目指し…ただひたすらに努力する一人のウマ娘を。

 

 

 

 

「そいつの名は、『ミホノブルボン』。皐月賞で大逃げして見せたアイツさ。」

 

 

 

~~~~~

 

ブルボンさんの話題からほんの3時間。空模様はすっかりオレンジ色に染まっており、遠くの方でカラスが鳴いていて帰る時間だと教えてくれている。すでに、『シリウス』の練習も終わっており、私とナラクさん…そしてトレーナー陣と一緒に器具の片付けや練習後のウマ娘のみんなをマッサージしている。しかし、マックイーンさんだけは一人だけターフに立ち目を瞑って瞑想をしていた。

 

「あ、あの…メグル、さん。」

「あっはい!どうかしましたか、ライスさん。」

 

瞑想しているマックイーンさんを眺めているとライスさんに声を掛けられる。

意識をマックイーンさんから外し、ライスさんと視線を合わせる。すると、おどおどした様子でマックイーンさんを指さした。

 

「マックイーンさん、何をしてるんですか?」

「…あー、そういえばライスさんは初めて見るんでしたね。」

 

私は自分も反復するようにマックイーンさんが現在している瞑想を説明しだす。

今、マックイーンさんはボロボロになってまで習得した『極限の境地』を鈍らせないために、『極限の境地』を利用して小さな疑似的領域(ゾーン)を展開しているのだ。あの後日、タキオンさんが調べつくし仮説として私たちに説明してくれたことはとても簡単、『極限の境地』というモノはいわばウマ娘が元来持つ闘争心を反映したもので使わなければ鈍ってしまうし、だからと言って使いすぎるとマックイーンさんの身体が壊れてしまうものだ。それを聞かされた時、マックイーンさん以外のウマ娘とその保護者とトレーナーさんたちが目を見開き、マックイーンさんは納得し、酉川トレーナーは床にひびが入りそうなぐらいまで土下座をし続けていた。(そのあと、マックイーンさんが許したこともあり問題は解決したけどね)

タキオンさんとゴルシいわく、マックイーンさんの身体は一度限界を超えてボロボロになり、そのままぶっつけ本番の有記念で『極限の境地』を発動したせいで半ば壊れる寸前らしい。

 

「えぇっ!?え、じゃ、じゃあ…ライスたちとの並走トレーニングの時のマックイーンさんって」

「アレでも結構セーブしていた方だと思いますね。」

「あ、あれより早いんだ……ライスもあれぐらいになれれば…

 

…まあ、それで走らないほどマックイーンさんは大人しくなかった。一度大幅なブランクを作ったこともあるマックイーンさんは酉川トレーナー、タキオンさん、ゴルシ、そして保護者の両親と慎重に話し合った結果…二度目の秋の天皇賞まで()()()()()()()()()を条件にトレーニングを続けることにしたのだ。正直言って、限界ギリギリまでトレーニングしなければそのトレーニングの効果は表れにくいのだが…まあ、「リハビリと考えることにした」とマックイーンさん自体が言っていたので大丈夫だろう。

話を戻し、二度目の秋の天皇賞まで()()()()()()()()()になったマックイーンさん、しかし『極限の境地』は使わなければ鈍ってしまうのだ。そこで新しく酉川トレーナーが考えたトレーニング方法が…

 

「あの”瞑想”と言うわけなんです。」

「ほへぇ~……ら、ライスも『極限の境地』を学べる…のかな」

「ダメです!」「ダメですわ!!」

「ウヒャァ!?」

 

ライスさんの言った言葉に私も瞑想していたはずのマックイーンさんも即答で否定する。

当然だ。『極限の境地』は使用しているウマ娘の体を壊しかねない刃だ。マックイーンさんの場合、体の柔らかさは平均的であったためにまだ”全力で走らなければ大丈夫”程度に収まっているのだ。それはタキオンさんもゴルシも口を揃えて危険視していることでもある。

しかし、体の柔らかさが平均的なマックイーンさんに対して…ライスさんの体は硬い、とにかく硬いのだ。そんな体で限界以上の力を引き出す『極限の境地』なんて発動してしまえば…

 

「いやですわよ!せっかくできたステイヤー仲間がスプラッタ映像のようにパァン!となるのを見るなんてごめんですわ!!」

「そうです!ただでさえマックイーンさんが危ない状態なのに自分から危険に飛び込まないでください!アクション映画のスタントマンか、自殺志願者ですか!?」

「ご、ごごごごっ、ごめんなしゃぃ~!!!」

 

私とマックイーンさんは、しばらく二人でライスさんをお説教しました。

その後酉川トレーナーも話を聞いて駆け付けて、三人で『極限の境地』の危険性をライスさんに教え込むのでした。




お説教方法
メグメグ
お説教は真顔で淡々と行うためとても圧があり怖い。
マックイーン
最初は冷静にお説教するけど最後には泣いてしまう。
酉川
メグメグの時と同じ、優しく諭して教えてくれる。
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