前回のあらすじ
『代償』
最初は第三者視点から始まります
[ウマ娘用スマホ(電話機能)の呼び出し音]
「ふむ、でない。出ると思ったのだがな…」
二人のウマ娘がどこかわからない暗い場所…いや、大自然と青々とした空が見える部屋で、ウマ娘用のスマホを見ていた。
「それはそうだよ、あの人はいま―――[呼び出し音の途切れる音]」
『―――もしもし?どうかしたのか妹君。』
「…ほんとにでちゃった。」
スマホの画面が切り替わり、呼び出しに応じ声を発する。
凛とした紳士的ながらもどこか荒々しい獣のような恐ろしさを持つ声。その声が言葉を紡ぐ。
『もし、私をからかうために電話したのであるのならば。申し訳ないが他をあたってくれないか。あいにく私は―――』
「あの計画を、少し進める。」
『……ククッ。』
小さな…ほんの小さな笑い声が、スマホのスピーカーで再生された。ただそれだけのことなのに、スマホが置かれている部屋の空気が変わる。
黒鹿毛のウマ娘は不敵に笑うが、葦毛のウマ娘はまるで銃口を突き付けられたかのような冷たい感覚と…逃げなければ死ぬという恐怖に支配される。
やがて小さな笑い声が、狂ったような嗤い声へと変わる。
『嗚呼、やっとですか。つまり…”狩れ”ばいいのですね?』
「そうだ、アナタはこれから中央トレセン学園に転校してもらう。私立女子校からのレース推薦だが、秋川やよいとシンボリルドルフは受け入れるだろうさ。」
『ええ、ええ!分かりました妹君…ですが、狩る対象は私が選ばせていただく。それでよろしいか?』
「ああ。好きにしてくれて構わないさ、『狩人』。」
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side:メグリメグル
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「ほーらどうしたどうした!まだまだ足音ちいせぇぞぉ!」
「ひゃ、ひゃい!」
…結局、マックイーンさんが酉川トレーナーによってトドメを刺されたのちゴルシが丁寧な説明の元に、結局”プレッシャーを与えるのには大きな足音を立てるのが一番”という理由の元、ライスさんがゴルシとゆっくりめなスピードで大きな足音を立てるトレーニングを始めている。残念なことに1時間ほどトレーニングしているが…いまだ”トストス”という軽い音すら聞こえない。ゴルシの声量も無駄に暑くて大きいっていうのもあるけど。ちなみにこのトレーニングはフォーム確認の練習にもなるため酉川トレーナーの鶴の一声で行われている。
「モグモグ…あれ、本当に効果があるんですの?」
「少なくとも、大きな足音は…一番効果がある。私は、そう思います。」
「あ、カフェ姉さん。アレとっ―――」
「―――はちみつレモンの入った水筒、ですね。」
「ありがとう!うん、今回のは自信作なんだ~…マックイーンさんのだけれど…カフェ姉さんもどう?」
「私も飲みたいなぁ~…丑三つ時に飲もうかなぁ~?」
「はい…いただきます。(あと、オトモダチ?そんな時間に飲むと太りますよ。)」
対してこちらでは、カフェ姉さんの気が済んだのか私の隣に立つ程度まで元に戻った(?)ので、とりあえずカフェ姉さんと一緒にちょっとしたスイーツタイムを楽しむことになった。ちなみに、ゴルシとライスさんたちがトレーニングを続けている中、ブラストさんたちも休憩し始めている。もちろん、みんなにはマックイーンさん用のスイーツ…ではなく、普通に作ったスイーツを手渡ししてあるので安心だ。
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「ダメだ!もっと腰から脚に力を流すような感じで…おっ、そうそう!そういう感じだぜ!!」
「フゥッ…フゥッ……ッ!」
マックイーンさんたちのトレーニングが再開してもゴルシが指導しているトレーニングはまだ続いている。だけど、ゴルシのうれしそうな声を聞く限りでは着々とライスさんが大きな足音を立てつつ、スピードを維持できる走り方を付けているようだ。
「腰から…流れるように、脚へ……やぁ~ッ!」
間の抜けた掛け声だが、ライスさんが一歩踏み出した瞬間―――
[ドスッ]
ゾワッ
「「「「ッ!?」」」」
「…ッ!!」【貴顕の使命を果たすべくLv.7】
「ふぇ!?きゅ~……」
「あー!?ら、ライス!?だ、大丈夫かー!?」
「ばっ、マックイーン!!」
「あら、きのせ―――あー!?やってしまいましたわー!?」
…今の一瞬、私を含む全員が、嫌な感触を感知した。その同時に、マックイーンさんが反射的に『極限の境地』を使ってない
私もループの最中で何度か経験したことがあるのだが、ただでさえ緊張状態で集中しているときに
「きゅ、救護~っ!!」
「救急でーす!通してくださーい!!」
「通りますよ。」
私とナラクさん(あとついでにカフェ姉さん)は、昨日とは違いストレッチャーを持ってライスさんに駆け寄るのであった…
「あぅ~……」
「ふぅ、怪我が膝の擦り傷だけで済んでよかったです…マックイーンさん!レース中じゃないんですから、次は気を付けてくださいね!!」
「よよよ~…もうしわけありません~……」
その後、ライスさんは無事に目を覚ましたが…涙目でベンチに座り、膝に大きな絆創膏を付けたライスさん。応急箱を閉じた私と…ひんひんと泣きつつ、耳をしょんぼりさせて正座するマックイーンさんというカオスな現場が出来上がっていた。さらに、その隣では酉川トレーナーが目頭をおさえつつなにか考え事を行っていて、ゴルシはゴルシでライスさんの事が心配なのかオロオロしているが、私が大丈夫だと伝えると一安心したのか胸をなでおろした。
「…なぁ、酉川トレーナー。どうだった?」
ゴルシが、考え続ける酉川トレーナーに聞くと、酉川トレーナーは口をにやけさせ目頭から手を離した。
「極めれば、ミホノブルボンに勝てるかもしれないな。」
「えぇ!?ら、ライスが…ブルボンさんに?ほんとに?!」
勝算を見つけ出したのか酉川トレーナーは悪い顔を浮かべ、小鳥遊トレーナーはちょっと引き気味に急に動かなくなったデジタルさんの方へ逃げて行った。
「これは、俺もとんだ拾いものをした。光るものはあると思ったが…まさか二つもあるなんて。クククッ…」
「酉川トレーナー…顔、顔。良い子にお見せできない顔になってますよ?」
「んぐっ先生に注意されてたの忘れてた……まあともかく、勝算を見つけることができた。ゴールドシップ…明日の練習日からライスシャワーと共にこのトレーニングを実施。暇があるなら書類にして俺とウマ娘研究科の先生に提出するように。」
「うへぇ~…書類作成とか苦手なんだよなぁ~……。」
…って、あっ。
「ライスさん、ストッキングがあちこち伝線してるので…私の予備をお貸しします。」
耳元でそう伝えると、ライスさんも気づいたのか顔を真っ赤にして俯いてしまう。
ナラクさんに頼んで私のバックから予備のストッキングを持ってきてもらい、何やら企んでいる酉川トレーナーにばれないようにこっそりと渡すのであった。
それにしても、あの時の感覚…
(まるで、ナイフを胸元に突き付けられたかのような……?)
…まさか、ライスさんにも
(確実にタキオンさんが狂喜乱舞しますよね…)
頭の中でちょっと怖い高笑いをするアグネスタキオンが思い浮かぶのであった。
ライスに毎朝できたてのパンを食べさせてあげたいお兄様です…
次にお前は、「お労しや兄上」と言う!