前回のあらすじ
遊園地と二人の約束
「ようこそ、中央トレセン学園へ。キミの噂はかねがね聞いているよ。なんでも才色兼備、神色自若。京都トレセン学園においては、常に注目と憧れの存在であるとも。」
「ふふっ。意味は深く受け取らず、素直に受け取ろう。急ぎの都合とはいえ、早急の転校手続きの受理、いたく感謝する。そして、かの皇帝であるシンボリルドルフ殿との対談・・・妹たちによい土産話ができる、というモノだ。」
そう言い、黒鹿毛のウマ娘は制服姿のルドルフと握手を交わす。
メグリメグルが通い慣れている生徒会室は今はルドルフとその客人を除き、エアグルーヴしかいない。
そのエアグルーヴも、ルドルフが握手している一人のウマ娘を相手に魅入られている。今、エアグルーヴが感じて、考えていることはただ一つ。
(こ・・・こいつは、一体、なにを、どう生きれば・・・このような
だが、エアグルーヴも生徒会のメンバー。それも、すでに学生としてはレースから退いたモノのかつては並々ならぬ強敵を相手に走り続けた”女帝”だ。決して、黒鹿毛のウマ娘の威圧には押し負けず引きつりそうな表情をポーカーフェイスで抑え込む。
が―――
「ご姉妹がいるのかい?良ければ、エアグルーヴの
真の敵は内側から。エアグルーヴのやる気が下がった。
思わずポーカーフェイスが崩れ、顔を青くして下唇を噛む。だが幸にもシンボリルドルフと黒鹿毛のウマ娘には見られずに表情を戻すことができた・・・・・・のだが、内心はメグリメグルとサイレンススズカに助けを求めていた。
(メグル、スズカ!どうか私にこの場を耐えられる力を・・・・・・)
「おお、それはありがたい。私の従姉妹の1人に、エアグルーヴ殿の大ファンがいるものでな。」
「だ、そうだ。私の分の色紙も頼むよ、エアグルーヴ。」
その言葉を好機とし、一言かけて頭を下げてから、生徒会室から脱出する。
(私は乗り切った!スズカー!!見てくれたかー!!)
すまし顔だが、心の声でスズカに勝ったことを伝える。
若干、動作が普段のエアグルーヴとかけ離れているが、夏期休暇・・・・・・夏休み中の校舎にそれを指摘する人物はいなかった。
場所を変えて、エアグルーヴが去った生徒会室。
「・・・・・・やれやれ、随分と嫌われたものだ、向けたのは私のみだろうが、しかし彼女は勘づいていたぞ?咄嗟に気づき、彼女を退出させたが、なんのつもりだ?スケアリーハンター君?」
「フフッ、貴公は
相対する黒鹿毛のウマ娘・・・スケアリーハンターとシンボリルドルフ。先程までの和気藹々の空気は在らず、歴戦の狩人と絶対の皇帝が睨み合う、一触即発の空気。
だが、スケアリーハンターが放っている気配を唐突に抜き、シンボリルドルフの目を見る。
「しかし今回、貴公は私の獲物ではない。誠に残念だが、
「
レースを走っていた全盛期と比べ、幾分か丸くなったシンボリルドルフだが、その”強者の雰囲気”は衰えず。必要ないから閉まっていたものを、スケアリーハンター1人のために再び引き出し叩きつける。
その表情はいつかオグリキャップに見せた、王者の表情。中央と地方では実力差があり、地方からやってきたウマ娘では簡単に腰を抜かして泣いてしまうことだろう。
だが、スケアリーハンターは
「クハハッ・・・いい殺気だ、脚がうずめくじゃないか。貴公の勝負服と恐怖でズタズタになった表情には、どのような狩猟が似合うか・・・あぁ、想像しただけで狩りたくなるじゃないか。」
「恐怖では私を挫けさせることなど、実に荒唐無稽だ。だが、その程度の挑発に乗るほど・・・私の首は安くはない。精々、君の言う『今回の狩り』が上手くいかないことを願っておこう。」
売り言葉に買い言葉。二人の中での印象は互いにもっとも最悪な評価となり、一触即発の空気は、ルドルフの放つ”王者の威圧”と、スケアリーハンターが放つ”禍々しい威圧”の二つが漂う、絶対零度の空間となっていた。そして―――
(ど、どうしてこうなっているんだぁ・・・)
色紙を見つけて戻ってきたエアグルーヴは胃が痛くなり、生徒会室のドアノブに手をかけたまま顔を青くし、下唇を噛んで、やる気が下がっていた。
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side:メグリメグル
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「青い海!」
「白い砂浜!!」
「輝く太陽!!!」
「「「バカンスだー!!」」」
「わぁ~、これが本当の南の島なんだね~!ライス、初めてだよ!」
「いよっしゃー!去年は制覇できなかったこの島のゴルシ様マップを完成させるぞー!!まずは分度器を持ってー、測定器を持ってー・・・」
「やっとついたねぇ・・・うっぷ。荒波を進む船の中で論文なんて書くんじゃなかった・・・」
「大丈夫ですか、タキオンさん。アナタが船酔いするだなんて珍しいですね。」
「やっぱりメジロ家スゲーなおい。」
「今年もこの島に来ちゃいましたよー!うへへぇ~、ここは天国?ヴァルハラ?なんでもいいや、堪能するぞー!!」
「も、もう!またこのパターンなんですの!?」
「ねえ、今年も私たち同伴でよかったのかな。相変わらずチームメンバーじゃないのに・・・」
「ドーベルお姉さま、それを言うならば、私なんてもっと関係ないですわよ~?」
「い、いいんじゃないかな。おばあさまも乗り気で浮き輪とシュノーケル用意してたし・・・」
「しゅこー・・・しゅこー・・・(※特別翻訳 良いも悪いもありません、彼女たちとの合同練習はアナタたちの為にもなるために今年も
「って、いってますね~。」
「おばあさま、良いこと言ってドヤ顔するのはいいけれど・・・まずはシュノーケル外そう?」
「さすがライアン姉さま、鋭いツッコミです~。」
「「「「あわわわわわ・・・」」」」
6月も無事に終え、やってきた夏休みの間この島で行われる
「ふぅ~・・・ナラクさん、たまにはこういうのもいいですよね~。」
「はい~・・・日頃の疲れが飛んでいくようです~。」
「「「あ、あの私たちまでいいんですか!?」」」
私とナラクさんはいち早く砂浜にビーチパラソルとビーチベッドを並べて、休みを堪能する。ちなみにライアンさんたちのチームのサポートウマ娘さんたちも、私たちが強引に休ませている。多分、サポートウマ娘なのに休んでいいのかと言う困惑があるのだろう、クルーザーの方を見るように促すと、酉川トレーナーを含む複数人のトレーナーが張り切ってトレーニングのミーティングやグッズの点検や調整を行っているのを見て、本当に休んでいいと分かり、それぞれ恐る恐るながらも羽を伸ばし始めた。気持ちはわかる、あのメジロ家の私有地だもん・・・仕方ないよね。
ふと、私はどんなミーティングをしているのか気になり、トレーナーたちの会話を聞くために耳を向けて集中してみる。
「やっぱり、マックイーンが一番だが・・・ふふっ、ライスもいい笑顔だ。」
「酉川先輩、今の発言・・・取り消してもらいましょう。一番はうちのデジたんですから。」
「小鳥遊トレーナー、担当贔屓はやめてもらおう。俺のライアンの方が輝いてますが?」
「筋肉メガネは黙っててくれません?アタシのドーベルちゃんの方が可愛いです~!」
「それを言うなら、私のブライトちゃんが!」
「いいや、うちの子だね!!」
「うちの子の方が・・・」
「ミーの担当の方がキュートデース!」
「指導者ゆえの性か、よかろう。このワシが審査員を務める、存分に語り合おうではないか。」
「「「「「「よろしくお願いしますッ!!!」」」」」」
あれ、おかしいな。聞き間違いかな?ミーティングかと思ったら、担当自慢しているような気がするな。一度だけ集中力を解除し、手元にあるドリンクを飲む。海で遊んでいるマックイーンさん達や、ライアンさんのチームのウマ娘さんたちの楽しそうな声が、夏と言うことを実感させてくれて、うれしい気持ちで胸がいっぱいになる。
・・・よし。
「マックイーンの魅力だが、間違いなくそのギャップだろう。普段はお嬢様だが、どこか天然で抜けている部分があるのが一つのポイントだが、ここまではまだ序の口だ。マックイーンの最大の魅力は―――」
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
[
「どうしたんですか?メグ、ル、さん?」
「ナラクさん。私、ちょーっと、OHANASI、してくるね?」
「ア、ハイ。ドウゾオモウゾンブンニ。」
~~~~~
「故にマックイーンの魅力はギャップもさることながら優雅たるその走り[メグリメグルが酉川の背後に立った音]スゥーーーーーッ・・・。」
「ア"ッ・・・」「オワッタ・・・」
「ドーベル、タスケテ・・・」「ゴメン、ブライト・・・」
「(青い顔で天を仰ぐ)」「(両手を合わせて震えている)」「オーマイガー・・・」
「(冷や汗を大量に流しながら関係ないふりをしている)」
酉川トレーナーは現行犯、小鳥遊トレーナーも共犯・・・その他トレーナーも共犯、マックイーンさんのおじいさまは関係ない振りしましたけれどしっかり聞いていますからね?
「何をしていらっしゃるんですか?」
ニッコリと笑顔を浮かべながら、酉川トレーナーたちに尋ねる。
「アッ、イヤッ、ソノ・・・合同トレーニングのミーティングと打ち合わせを、だな?」
酉川トレーナーがごまかすと、他トレーナーが赤べこのように全力で首を縦に振る。
どうやら、まだ罪を重ねるつもりの様ですね?
「何をしていらっしゃるんですか?」
ちょっとだけ声を大きくして再び尋ねる。
「ト、トレーナー同士の親睦を深めるためにちょっと雑談を・・・」
白々しい嘘をまだ重ねる。酉川トレーナー、たまには素直に白状することも大切なんですよ?
「何を、していらっしゃるんですか?」
「「「「「「「「すいませんでしたァッ!」」」」」」」」
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「いいですか?時にはトレーナーさん方にも、お休みや親睦を深めることは大切なのは理解しています。ですが、今、この時に、やることですか?私の記憶に間違いがなければ、あと30分後に合同で軽めの並走トレーニングを始めるはずでしたよね?あなた方は、何をどうすればその打ち合わせが担当自慢に変わるんですか?なんです、トレーナーが複数人集まると担当自慢しないといけないというルールでもあるんですか?あのクルーザーに乗る前も同じようなことしましたよね?」
「あれ?メグルさ―――」
「―――まて、ライス。」
「ふぇ?ご、ゴルシさん?」
「ライス、今は、あれを気にしない方がいい。」
「え?え??ど、どうして?」
「時には、知らないこともいいことがあるってだけだ・・・それよりも向こうでメロン割りしようぜー!いいメロンが釣れたんだよー!!マックイーンたちもいるからきっと楽しいぞ~?」
「?????」
複数人(少なくとも8人)のトレーナーが集まってすることと言えば担当(推し)自慢でしょう。
おまけの酉川トレーナーと小鳥遊トレーナー以外の簡潔な紹介をば
ライアンのトレーナー
筋肉メガネ。マックイーン編以外ではここしか出番がない。
ドーベルのトレーナー
ちょっとチャラい女性トレーナー。口調が軽いが、他トレーナーとは仲がいいムードメーカー。
ドーベルの男性恐怖症克服のため男装することがあり、ドーベルのハートを見事に射止めた。
ブライトのトレーナー
フチなしメガネ系のウマ娘トレーナー。レース科からトレーナーになったウマ娘。
対抗意識◎な性格で、ドーベルのトレーナーと仲良くケンカしている。現役時代はヤンチャしてた。
トレーナーA
男性モブトレーナー。最近、ロイヤルビタージュースなるモノを飲んで意外といける口だった人。
最近、担当ウマ娘が肉じゃがをお裾分けしてくれるようになり、それが楽しみになっている。
トレーナーB
女性モブトレーナー。実は全年齢対象のウマ娘マンガを書いており、デジたんに愛読されている。
ペンネームは「我百合好」副業はしていない。が、漫画家としてもやっていける。
トレーナーC
ウマ娘モブトレーナー。ルー語を使い、紅茶をたしなみ、イギリス生まれ日本育ちのトレーナー。
妹が3人おり、従妹に1人いる。現在ではトレーナー業の傍ら、配信業をしているとか。
おじいさま
元トレーナー、当時は最年少トレーナーとして名を馳せていた。担当のウマ娘とは高等部の時に恋愛関係をはじめ、卒業した1年後に結婚式を開いた。真崎トレーナーとは知り合い。