とあるモブウマ娘が、ループするお話。   作:ライドウ

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前回のあらすじ

()()()()の『対象』




Re:ライスシャワー 3R

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side:ゴールドシップ

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いつも通り・・・と言うわけでもなく、不気味で、不安で、どこかピリピリした空気感がトレセン学園の食堂を包んでいる。

コロッケカレーそばが乗ったプレートを持ったまま、食堂を見渡せば、うつらうつらとヨーグルトを食べながら舟を漕いでいるマックイーンを見つける。

アタシは早速、マックイーンが座っている場所と向かい合う位置に陣取り、まだ舟を漕いでいるマックイーンに声をかける。

 

「おーい、マックイーン。大丈夫かー?」

「・・・・・・あぁ、ゴールドシップ、アナタでしたか。ええ、大丈夫です。アナタの昼食は・・・あぁ、チャーシュー醤油ラーメンですか。美味しそうですわね。」

「これはコロッケカレーそばだぜ、マックイーン。っていうか、重症じゃねーか、昨日はちゃんと休めたのかよー?」

「ライスさんが夜にアレを思い出してしまって、あやすので精一杯でした。幸いにも、理事長さんとルドルフ会長さんのおかげで、私一人ですんでいるようですが・・・」

「・・・そっか、悪い。」

 

あの日以来、ライスはおかしくなっちまった。あの日の、そう・・・ライスがようやくブルボンに勝った”菊花賞”そのゴール直後に起きたイレギュラーな大乱闘。打撲やアザ軽症者は多く、骨折や内臓に傷ができちまった重傷者どころか、頭を殴られてそのまま意識不明の重体の被害者もいるって話だ。今まで見てきたループの中でも、特にひどいイレギュラーだ。それ以前のループで一番ひどかったのは、メグメグが何度も自殺を図ったぐらいの時だろう。あの時は、アタシも湿気ってた事もあって・・・一歩間違えれば、アタシもメグメグもここにはいなかっただろう。

・・・話を戻そう、アタシも気分が悪くなってきた。マックイーンが言ったアレと言うのは間違いなく、その大乱闘を見てしまったときの惨状を思い出して、発狂したのだろう。そう、発狂だ。ライスは元々、精神が強い方じゃない、弱い方だ。アイツの運や考え方もそうなんだろうけれど、とことんまでライスを追い詰めるようなことが、多く起きる。アタシのあの謎の夢と同じように、妙にリアリティのある夢を見てしまったのだろう。

 

「アナタとしてはどう見るんですの?今のライスさんを・・・」

「個人的なゴルシ様としては、早く元気になってもらいたいところだな。ただ・・・”ウマ娘研究科”のゴールドシップとして言わせてみれば、絶望的だろうな。そもそも”レース恐怖症”の治療法なんて、今の今まで研究を続けられたうえで、すべてが”机上の空論”、もしくは()()()()()って結果が出てる。マックイーンは、PTSD・・・”心的外傷後ストレス障害”って知ってるか?」

「ええ、具体的には存じておりませんが、主に強烈なトラウマを受けた方が成りやすい精神疾患・・・と言うことは覚えていますわ。」

「簡単にかみ砕いていうと、その強烈なトラウマを日常のふとした瞬間に思い出すってのがPTSDだ。んで、いまライスが患ってるレース恐怖症っていうのは、そのPTSDによく似ていて、違ってる・・・大同小異ってやつだな。レース恐怖症は、現状だとウマ娘にしか観測されていない精神疾患で、レース中に転倒して脚にケガをしたり、レース後の不幸な事故や事件のせいで、レースその物に対して”怖い”っていう感情を持っちまう。これが、ただのレース恐怖症だったらよかったんだが、ライスの場合はこれに合わせて対人恐怖症だ。幸い、アタシやメグメグにマックイーンはあっても大丈夫だったけれど・・・酉川トレーナーでさえ近寄れないこの現状、精神科医に紹介しようにも、会わせる以上の危険性がある。下手すりゃ、ライスの心が完全に死んじまうこともあり得る。」

 

コロッケカレーそばを食べながら、スラスラとマックイーンにだけに聞こえるように説明する。けれど、アタシらの柱の向こう側の座ったウマ娘も、この話をよく聞いている。マックイーンをチラリとみてみると、マックイーンも柱の向こうに座ったウマ娘に感づいているようでアタシの話を続けさせるようだ。誰だ、と無粋なことを考える必要もないだろう。

 

「つまり、今は慎重に事を進める必要があるのですね?」

「ああ、鉄筋コンクリートの橋を枝で叩く様に慎重にな。だけど、それでもダメだった場合はーーー」

「ーーー彼女は、レース科から除名せざるを得ないねぇ・・・。」

 

と、アタシの隣に20段重ねのパンケーキが乗ったプレートを持ったタキオンが座りながらそういう。

うわ・・・しかもメープルじゃなくてハニーバター砂糖多めのやつじゃねぇか、見てみろよマックイーンを・・・さすがのマックイーンもその量に対しては引いてるぞ。って、マックイーン?なんで、おめーはこの糖質の暴力に対してソワソワしてんだよ、メグメグに言いつけるぞ。

 

「・・・タキオンさん、せめてもうちょっとオブラートに包んではどうですか?」

「こればっかりはオブラートに包み隠す必要はないと私は思うが・・・。」

「それはそうですが、ここは・・・」

「食堂と言うことは分かっているさ、もちろん・・・他のみんなの邪魔にならないように声量は抑えるとも。」

 

どうやらタキオンも乗ってくれるみたいだ。というか、お前その目の下のクマ・・・何回目の徹夜明けだよ。えっ、少なくとも6回?寝ろ!そんな糖質の暴力を食ってないでとっとと寝ろ!お前もメグメグに説教されたいのかよ?!

 

「確か、タキオンさんは精神的な部分をウマ娘研究科で、研究していらしましたよね。アナタから見て、今のライスさんはどう見ているのです?」

「・・・ふぅん。難しい質問だ、と答えておこう。専門的な用語を抜きにして言えば、何かをしても、何かをしなくとも、いずれにしろライス君の精神は長く持つことはないだろう。あぁ、睨まないでおくれ、これでも友人として、仲間として、責任をもって6回徹夜をして治療方法を模索しているんだ・・・まあ結果は、()()()()()と、言っておこう。」

「・・・。」

 

そう言いながら、タキオンはパンケーキの一枚目を頬張る。

マックイーンは、静かに目を閉じながら考え込むが、柱の向こうのウマ娘はそそくさとどこかへ行ってしまった。

 

「一つ可能性があるとしたらーーー

 

ーーーライス君が、自分の力でその恐怖を乗り越える事だろうね。」

 

タキオンは3枚目のパンケーキを飲み込むと、悲しげな表情を浮かべつつ、そういった。

 





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