とあるモブウマ娘が、ループするお話。   作:ライドウ

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前回のあらすじ

天才二人とお嬢様一人、それと聞き耳たてる影が一つ。


Re:ライスシャワー 4R

 

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side:メグリメグル

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今日は、私がライスさんの面倒を見る日だ。あのレースの日以来、ライスさんはレース恐怖症に対人恐怖症を患ってしまい、最初は目も当てられない状態だった。何せ、同室で最も仲がいいはずのロブロイさんですら近寄れない状態なのだ。

数少なく、ライスさんに近づけて・・・なおかつ、発狂したライスさんを大人しくできるのは私と、ゴルシ、そしてマックイーンさんの三人。それも、誰か一人が付きっ切りとはいかないので交代しつつ様子を見ているのだが・・・。

 

「な”ぁ~。」

「ライスさん、ご気分はどうですか?」

「・・・・・・平気、です。

 

部屋の隅でかがみもちを撫でながら、小さな声で言葉を返してくれる。これでも、ずいぶんと回復した方だ。最初のころは、返事をしないどころかかがみもちが近づいてもおびえてタンスの中に隠れて震えていた。その時と比べると、今の状態はかなり良くなったの一言だろう。けれど、私たちの言うかなり良くなったも、大同小異と言ったところなのだが・・・。

(ちなみに、かがみもちがこの寮室にいる理由はアニマルセラピーを理由に、フジキセキ先輩を通してたづなさんと秋川理事長に許可をもらい、無事に認可したからこの寮室にいるのだ。)

 

「・・・・・・ごめんなさい、ライスなんかの為に、大切な時間を使わせて、しまって。

「ううん、全然問題ないよ?むしろ、ゴルシのお目付け役とかゴルシのお目付け役やゴルシのお目付け役から逃げれてうれしいぐらい。」

「な”ぁ~(呆れ)」

 

ライスさんの下がり切った口角が少しだけ上がる。多分、私が”ゴルシのお目付け役”としか言っていないのが効果があったのだろう。少しだけ、緊張がほぐれた。

しばらく、他愛ない会話を続けていると、ライスさんのお腹が可愛らしく鳴り、私が持ち込んだサンドイッチを美味しそうに食べてくれる。そのあとは、ライスさんと一緒にお風呂に入ったり、かがみもちと遊んでいるのを見守ったり、ライスさんを抱擁しながら一緒にライスさんのお気に入りの本を読んでいると・・・

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

「・・・おやすみなさい、ライスさん。」

「な”ぁ~。」

 

・・・。昨日、発狂していたこともあったのだろう、絵本を読み始めてしばらくして、ライスさんは眠りについてしまった。すべての体重を私に預けて、小さい子供のように抱き着いた手だけは放そうとせず、むしろ密着する勢いで抱き寄せるぐらいだ。

私は、ライスさんを起こさないようにそのまま、ベットにライスさんごと横になり、抱きしめて頭をやさしくなでる。そして、少しだけ安らかに眠れるように、カフェ姉さんが私に歌ってくれた子守唄を、小さな鼻歌で奏でる。

 

「~♪」

 

~~~~~

 

私が子守唄を鼻歌で奏でていると、ライスさんは少しだけ安らかな寝顔を浮かべて熟睡している。今のライスさんのこの状態なら、ライスさんは悪夢にうなされることも、悪夢によってあの恐怖を再び味わうことはないだろう。

私は、ライスさんを起こさないように・・・そっとライスさんの抱擁から抜け出し・・・扉の横で部屋の中の様子を伺っていた一人のウマ娘に声をかける。

 

「・・・お見舞いですか、ブルボンさん。」

「っ・・・メグリメグルさん。」

 

・・・そこに居たのは、無表情ながらも悲しげな雰囲気を浮かべるミホノブルボンさんだった。ブルボンさんが古い寮棟のここに居るのは・・・多分だけど、自力で調べたり、縦ロールのアイツ(エヴィルクロー)に聞いたりして、ここまでたどり着いたのだろう。そんな彼女に静かにするように右手の人差し指を口元にあてて伝える。ブルボンさんもその意図に気付いたのか、コクリと頷いてあの部屋とはそこまで遠くはない机と椅子が置いてあるスペースへと移動した。

 

「申し訳ありません、どうしても・・・彼女の、ライスシャワーさんの様子を見たくて・・・」

「・・・本来なら、お見舞いをさせてあげたいのですが、今のライスさんに会わせることは難しいです。」

「・・・・・・そう、ですか。」

 

悲しげな無表情のままだけれど、ブルボンさんの耳がせわしなく左右別々に動いている。そういうときのウマ娘は、不安で落ち着いていない時の動かし方だ。ブルボンさんは無表情な分、それだけ耳と尻尾がせわしなく動く・・・世間ではサイボーグとは言われている物の、中身はあまり私たちと変わらないお年頃な少女のままだ。

 

「・・・私の。」

「ブルボンさん?」

「私のせい、なのでしょうか。」

「・・・・・・。」

 

・・・。ブルボンさんも、精神的に追い詰められてしまっているみたいだ。

すこし、ほんの少しだけ考えれば、すぐに思いつくことであった。あの日、あの時の大乱闘を見たのは、なにもライスさんだけではなく、ブルボンさんも隣で見てたじゃないか。

 

「私が、私の夢を目指さずに、マスター(猿山トレーナー)とバクシンオーさんに師事を乞わなければ、ライスさんはこうならなかったのではと・・・毎晩、毎晩・・・考えてしまうんです。」

 

ポロリと、ブルボンさんの目からから一粒の涙がこぼれ・・・段々と無表情のブルボンさんの顔が崩れだしてゆく。

 

「私は・・・これから、どうすればいいのでしょう。わかりません、ゆめが、もう・・・わからないのです。」

 

俯いて、自らの手の甲にポタポタと涙を流すブルボンさん。

きっと、今まで耐えてきたのだろう。一度あふれ出した涙は止まることを知らない、ブルボンさんが何度も何度もハンカチを使って拭うけれど・・・それでも涙は止まらない。

私は、何も言わずに席を立ち、ブルボンさんに近寄って優しく抱きしめる。

・・・やがて、誰もいない栗東寮で、一人のウマ娘の嗚咽(おえつ)が響いていた。

 

~~~~~

 

やがて、ブルボンさんが泣き疲れてしまい、そのまま眠ってしまった。

幸いにも、心配で探しに来てくれたであろうニシノフラワーさんに任せて、私はライスさんが今いる部屋に戻る。

・・・部屋に戻ると、未だにライスさんはスヤスヤと安らかな寝息のまま深い眠りについている。かがみもちが見張っていてくれたのだけれど、かがみもちが毛づくろいをしているということは、特にうなされたりも無かったみたいだ。

 

「ありがとう、かがみもち。今度、ちゅーる買ってきてあげるからね。」

「な”ぁ~。(マグロ味を要望する鳴き声)」

「はいはい、マグロ味ね。」

 

そんな会話をかがみもちとした後、私もライスさんの隣で横になり・・・少しだけ仮眠をとることにした。

 

(・・・こんなイレギュラー、どうすればいいの?)

 

このループになってから、目まぐるしい変化ばかり・・・一歩ずつ進み始めた、と言っても・・・やはり変化の不安と恐怖はかき消せない。

でも、私は未来に生きると決めたんだ。ゴルシたちと一緒に卒業して、進学だったり就職だったり・・・そんな世界を求めるって、決めたんだ。

 

(立ち止まってちゃ、ダメだよね。)

 

よし、ブルボンさんの事は明日にでもトレーナたちに話そう。酉川トレーナーが自分に向けて怒り狂うだろうけれど、酉川トレーナーだっていっぱいいっぱいだったんだ。

少しでも、少しでも今の現状を直していこう。

私には、それができるはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

side:スケアリーハンター

~~~~~

 

中央トレセン学園には、ウマ娘が近寄らず・・・人目のつかない場所がいくつかある。

その特に人気のない場所に、エヴィルクロー嬢に案内してもらい・・・今はとある人物に連絡をしている。

 

「ライスシャワーは精神崩壊、マスメディアによる派閥対立の明白化、ミホノブルボンは情緒不安定、か・・・やり過ぎだな妹君。」

『よく言う・・・誰が種火を大火にしろと言ったのか。』

 

電話の相手は、妹君。エヴィルクローからは、()()()とも呼ばれているウマ娘だ。

そんな妹君は、私の言葉に不満げにそう言い返してきた。本来なら、もう少し後に起きるはずのこの大火を、あの時点で広めるよう妹君に上申したのはこの私だ。

妹君の手腕とエヴィルクローの伝手もあり、マスメディアは簡単に妹君とエヴィルクローにより踊らされた。

 

「すまない、だが・・・いずれ大火になっていたものだ。」

『まあいい、これでやっとゲートが開かれたのだ。時が来た、あの計画を始めよう。』

 

・・・あの計画、か。妹君の血は繋がっていない従姉妹関係の私ですら、全貌を聞かされていない不気味な計画。

妹君は、ウマ娘の為のウマ娘によるウマ娘の為のレース社会を作り上げるとは言っていたが、長年・・・妹君の姉との付き合いのおかげで、それはほんの上澄み、いうなれば、真実を隠すための巧妙な嘘だろう。少なくとも、妹君が目指している本当の目的は、日本を・・・いや、世界をひっくり返してしまうような壮大なものではないだろう。

だが、私にはそれが見当がつかない・・・見当がつかないが、止めた方がいいと私の本能は伝えてくれる。

・・・ちょうどいい、私用があるのだ。それを存分に利用させてもらおう。

 

「そのことについてだが、少しだけ待てないか?」

『・・・獲物、か?』

「ああ、あそこまでの気迫と根性を持っているのだ。あそこから立ち直った獣を狩ってみたい。まあ、あの精神状態から立ち直れるとも思わないが、だが窮鼠猫を噛むという言葉もある。ここまで仕立てたのだ、少し我が儘(わがまま)を言ってもいいだろう?」

『・・・・・・。』

 

妹君のため息のような息遣いが聞こえてくる。

ダメか?ダメならダメで、私の方でエヴィルクローに頼み妨害工作をかけることにしよう。幸い、彼女は私を選んだ。彼女の力を使えば、多少なりとも妹君の計画を遅らせることはできるだろう・・・まあ、私の我が儘(わがまま)が通ってくれた方が、妨害工作にはなりそうなのだが。

 

『いいだろう。どうやらゲートが開くにはまだ早いらしい。』

「・・・感謝する。」

『だが、努々(ゆめゆめ)忘れるな。そこの情報良家(じょうほうりょうけ)より、山風組の方が手足は長いぞ?』

「忘れてはいないさ。むしろ、良く知っているとも。」

 

そう言った後に、ブツリ。と電話が切られる。

”これは、失敗したらケジメかな。”と思いつつも、エヴィルクローに目を向ける。

 

「もうよろしいの?スケアリーハンター様。」

「様付けはやめてくれ、私はしがないウマ娘だ。対等に行こうじゃないか、ん?」

 

壁際にいるエヴィルクローは、私の言葉に呆れつつこの場を立ち去り始める。

冷たいものだ、少しぐらいあの友人たち(ゴルシ世代)のようにはっちゃけて欲しいものだが、まあ・・・それを求めるわけにもいかないか。

・・・さて、私も彼女の後を追い・・・今回の獲物がどういう風に立ち上がり、成長するのか・・・

 

 

「嗚呼、本当に楽しみだよ・・・君たちがどうあがいて、どう立ち上がるのか。ミホノブルボン・・・そして、ライスシャワー。ククッ・・・クハハハハッ・・・!!」

 

 





ライスちゃんがあの現場を見て発狂したなら、ブルボンも情緒不安定になるよね☆
あと、スケアリーハンターさんが本格的に介入開始した模様。
ん?エヴィルクロー??いたら便利なキャラは使いまわさなきゃ☆
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