前回のあらすじ
カフェお姉ちゃんと黄金一族
アンケートのご協力ありがとうございます!
競走馬メグリメグル号の詳細はこのお話と、次のお話”7R”が終わり次第書かせていただきます!それまで気長にお待ちください。
お昼休みも終わり、午後の授業も緩やかに終わった後・・・私は生徒会室を訪ねていた。
「こんにちはー」
ノックして入室すると、そこには忙しそうにするルドルフさんとグルーヴさんがいた。どうやら今日は、ブライアンさんは逃走したみたいだ。
私がどうしてこの生徒会室に来たのか…それは別に私が生徒会に呼び出されるようなことをしたわけではなく、生徒会に”雑務”として所属しているからだ。
雑務といってもやることは生徒会の書類を整頓したり、みんなにお茶やクッキーを出すだけだ。
「あぁ、こんにちはメグメグ。おっと、もうそんな時間だったのか……エアグルーヴ、一度休憩にしよう。」
「そうですね、会長。」
ルドルフさんとグルーヴさんが書類を書く手を一度やめて背を伸ばす。
私はそれを横目に、生徒会室の隅に置いてあるポットのスイッチを入れて、お茶の準備を始める。その間に、ゴルシたちにもふるまったクッキーをバックから取り出しお皿に並べていく。並べ終わると、ちょうど沸騰が終わったのでティーポットにお湯を入れて、特製のハーブティーのパックを浸して持っていく。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうメグメグ。おぉ、甘くてまるで疲れが抜けていくようだ。」
「…ふむ、このクッキーの味ははちみつレモンか。さすがだな、メグリメグル。」
「ちょっと、調理実習で作りすぎてしまいまして……お口にあったようで何よりです!」
私がハーブティーを淹れ始めると、生徒会のドアが勢いよく開かれる。
勢いよく開いた犯人と、その犯人を即座に抱え上げたウマ娘がそこにいた。
「なになに、ハチミー!?」
「…気が向いたから、来てやったぞ。」
抱え上げられながらもクッキーに目が釘付けなウマ娘・・・テイオーさんと、テイオーさんを抱えているウマ娘、ブライアンさんが『クッキーを目当てに来ました!』と言わんばかりの表情で、そこにいた。
「やあ、ブライアン。見回り、ご苦労様。」
「あぁ、ゴールドシップとナカヤマフェスタがまたデュエルしている以外は問題なかった。」
「テイオー…いつも言っているが生徒会室はお前がそう簡単に来ていい場所ではないぞ?」
「ぶぅ~、硬いこと言わないでよエアグルーヴ!カイチョーが来ていいって言ってたから来てるだけだよ~!」
生徒会室が騒がしくなり、厳格な雰囲気はどこへやら。あ、そろそろハーブティーを淹れなきゃ。ティーカップを用意しながら、みんなが集まってる机へと向かう。
「テイオーさん、ブライアンさん。こんにちは~、クッキーはまだまだあるのでどんどん食べてしまっても大丈夫ですよ!」
「おっ、メグちゃんは分かってるね!もっと、ワガハイを敬うとよいぞ~!」
「そうさせてもらう。」
テイオーさんはむふーと満足げな表情で胸を張る。ブライアンさんもそっけない返答だけど、嬉しそうに耳が動いているので感謝しているのだろう。
実際二人のクッキーを食べる速度はルドルフさんとグルーヴさんと比べてかなりペースが速い、どうやらかかってしまっているようです。冷静さを取り戻せるといいのですが…
「ん~!この味、すっごいハチミー!おいしいよ!」
「だが、甘ったるいわけではなくしつこく無い……しかし、確かにあるはちみつの甘さと風味がレモンのさわやかさと共に駆け抜けていく。これはいけるな。」
「まったく、この二人は…あぁ、すまないメグリメグル。」
「大丈夫ですよ~。」
語彙力が低下したテイオーさんと、グルメ漫画みたいな食レポをしてくれたブライアンさんの前にもハーブティーを置き、ルドルフさんとグルーヴさんには手渡しで渡す。眼精疲労によく効くハーブティなのでルドルフさんとグルーヴさんにはちょうどいいハーブティーだろう。
口がぱさぱさになったからか、テイオーさんがハーブティーに口をつけると頭を傾げた。
「あれ、これ…紅茶と思ったけど…そうじゃないよね?」
「はい、ルドルフさんとグルーヴさんが書類でお疲れと思って、ブレンドしたハーブティですね。」
「うーん、この味は…ハイビスカスと、アイブライト、ビルベリーにローズマリー、ステビアのブレンド…であってるかな?」
「さすがテイオーさん、大正解です!今度はちみつデザートを作るんですけど…よかったら味見に来ませんか?」
「いいの!?やったー!!」
「…すまない、いつも助かるよ。メグメグ」
「気にしないでくださいルドルフさん、私は好きでやってるんですし」
ハーブティーを配り終えたので私はルドルフさんの隣に座り、自分用のハーブティーに口をつける。
うん、レシピ通りの甘酸っぱい味で、クッキーとよく合っている。
「ふふっ、生徒”会長”として”快調”な仕事ができるのは他ならぬ君のおかげさ、メグメグ。」
「くすっ・・・ならば私も、会長さんが快調な仕事をできるように、”快適”な提案を”書いてき”ますね♪」
「……?」
「「…」」(左手で目を覆い隠す)
私とルドルフさんはしばらくダジャレ合戦を行っていた……。
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「ふぅ~…今日も書類整理大変だったなぁ……。」
生徒会のお仕事が終わり、私はジャージに着替えるために更衣室へと向かっていた。いくら、レースで走らない。と言えど、私とてウマ娘……走らないと気が済まない乙女だ。
体調管理や体重管理は完璧だから、どっちかと言うとリフレッシュのために走るのが近い。
私がジャージに着替えていると、更衣室に制服姿のウマ娘がやってくる。
「……おや、メグルさんですか。貴女もこれから?」
「あっ、イクノさん!こんにちは、はい。ちょっと体を動かそうと思って。」
やってきたウマ娘は、イクノディクタスさん。
イクノさんの後ろからは、チーム”カノープス”の面々がぞろぞろと入ってきた。
「おっ、メグメグちゃんじゃん。」
「おぉ、メグメグ!こんにちは!!」
「メグちゃーん!お元気してますか?」
「ネイチャさんに、ターボちゃん。タンホイザさんもこんにちわ。」
ぞろぞろと入り、それぞれのロッカーからジャージを取り出して着替えだす。
一度、リボンと髪留めを外してブルマを履いてからスカートを外す。
上の制服を脱ぐと、ネイチャさんとタンホイザさんに見られていることに気づく。
「おぉ~、さすがメグメグちゃん抜群のプロポーション。何を食べたらああなるんだろう…」
「見てくださいネイチャ、あのお肌すべすべしてそうです。お手入れとか大変そうですね~…」
「…?ネイチャとマチタンはなんでメグメグのことをじっと見てんだ?」
「ターボさん、あのお二人のようにはならないように…」
と、私の着替えをジーっと見つめて目を瞬きさせず釘づけにしている。
正直、見られて困る体型をしているわけではないのだが…こう見られているとなにか恥ずかしいことをしている気分になる。
「み、見ないでくださいよぉ~…もぉ」
「照れる姿もかわいい…これが天然清楚系美少女か。」
「しかも見てください、本人の顔まんざらでもないね~?」
「はい、そこまでですお二人とも。早く着替えないと南坂トレーナーに怒られてしまいますよ?」
「「はーい」」
二人の目が若干怪しくなったところで、すでに着替え終わったイクノさんがネイチャさんとタンホイザさんを止めてくれる。二人もそこで冷静になったのか、すぐに着替えだした。
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…ジャージに着替えた後、カノープスのみんなと別れて旧校舎の練習コースへと向かう。…そこには誰もいなく、遠くで聞こえる練習の音だけが聞こえる。
「はぁ~……」
…そこで、ようやく私はため込んでいたため息を吐き出せた。
みんな、いい人なのだ。フェスタさんも、秘密基地に来たみんなも、生徒会のみんなもカノープスのみんなも。だけど、わかっていても……”あれ”を思い出してしまう。
でも、いつかはそれと向き合わなくちゃならない。いつか、このループの日々は終わる時が来るのだ…その時は、ゴルシと…ゴールドシップと全力でぶつかると約束しているんだ。
「すぅー…はぁー……」
深呼吸と十分な準備運動をしてから、ゲートのイメージを起こし…精神を集中する。思い出すレースは、トラウマのオークスではなく、そのあとの秋華賞…距離2000m、良バ場、晴。
すべてのウマ娘が、ゲートに収まり――――――
ガッコン!!
―――開いた。
最初の直線で
(あの娘はあの時、私の三つ前にいた。差しに近い先行で、余裕そうに観察していたッ)
第1コーナーから第2コーナーに差し掛かり、
イメージのあの娘も私と同じように、加速し息を整え…逃げていたウマ娘を追い抜かし先頭に躍り出る。
(まだ、まだ焦らない…勝負は第3コーナーを曲がり始めたらッ!!)
先頭のあの娘が第三コーナーに差し掛かるが…あの娘はまだ加速を始めない。
私が二番手に代わり、第3コーナーに差し掛かったところで、
最後の直線に入るが、ここまでしてもイメージのあの娘の背中は遠くなる。
(まだ…まだっ!!)
あの娘の背が近づいてきたけど、あと少しが届かない。
(あと、数センチ!私は、貴女を超える!!」
浮かんでいたイメージたちは消えてゆき、私はペースをだんだんと落とし息を整える。
「はぁ…はぁ……届かなかった。」
わずか、3センチ。ハナ差と呼ばれる、絶妙で私たちウマ娘にとっての絶望の壁。
タイムは図っていないけど、きっと…ワールドレコードだろう。
「…1分53秒25。この前より早くなってるぜ、メグメグ。」
「…ゴルシ」
どうやら、いつの間にかいたゴルシがタイムを取ってくれていたようだ。
「…どんなルールで走ったんだ?」
「……あのトラウマの、秋華賞2000m、良バ場、晴。」
「…なるほど、アイツか。結果は?」
「…ハナ差3センチ。」
「……今のメグメグで、ハナ差か。やっぱり、とんでもない化け物だな。『エーペックスエイジ』は」
エーペックスエイジ。
オークスで”1分53秒31”を出した私とは別に、あの日あの時”1分52秒53”をたたき出したウマ娘。
変則無敗3冠。いや、クラシック級変則無敗6冠…安田記念、NHKマイルカップ、秋華賞、マイルチャンピオンシップ、ジャパンカップ…そして有馬記念。
その後、シニア級ではただ一度の敗北もなく春シニア三冠、天シニア秋三冠だけでなく、シニア級のマイルG1をも総なめした…文字通りの規格外。
一つ上のゴルシとは確かにライバルであり大切な人だけど…同年代のライバル……いや、”敵”はエーペックスエイジだ。そこは比べてはいけない。
「…まあ、ともかく軽く体を動かすんだろ?付き合うよ。」
「……ありがとう、ゴルシ。」
本気で体を動かすのはそれで終わり…私は、ゴルシとゆっくりと並走を始めるのであった。
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「……メグル、ゴルシさん。あなたたちは、いったい…」
そんな彼女たちを見ている、青鹿毛の少女は、ぽつりとつぶやいた。
シリアスの雰囲気は出ていますが、本格的なシリアスになるのはかなり後です。
果たしてメグメグたちを見ていた青鹿毛の少女とはだれなのか、またどうしてその少女がそこにいるのか。もうわかったって人も、まだわからないという人も続きを楽しみに待っていてください。
ちなみにエーペックスエイジというオリウマ娘は、元の名前が9文字を超えてしまったためそういう名前になりました。プロットでの名前は、ジェネレーショントップ(11文字)という名前でした。