前回のあらすじ
あの日・・・旧校舎の一件からライスさんは人が変わったかのように元気になったけれど、まだちょっとだけ私とゴルシ、マックイーンさん以外の人は怖いみたい。だけど、ライスさんは少しづつリハビリをしており、レース恐怖症も克服しようと調子が復活した酉川トレーナーの指導の元、少しづつターフを走っている。
そして、ブルボンさんは幸いにも軽いねんざだったためにすぐさま治し、少しづつレース恐怖症を克服しているライスさんの並走トレーニング(ランニングのような形だけど)を買って出てくれた。
二人のトレーニングの様子は、少しづつながらもトレセン学園にうずまいていた不穏な空気をやわらげ始めていた。ピリピリしていた学園の空気が、元の雰囲気に戻ってきたのだ。
そんなこんなで10月が終わり、11月・・・12月が終わり年が明けるころ、ライスさんはついに対人恐怖症を克服し、レース恐怖症も比較的抑えれるようになった。
ブルボンさんの方も、張り詰めていた精神に余裕が出てきたみたいで少しだけ表情が柔らかくなってきている。
そんなお二人は、今現在進行形で、シリウスとベテルギウスのレース科ウマ娘総出の模擬レースを行っている。二人のレースに対するリハビリのために、私は生徒会・・・ルドルフ会長、マックイーンさんはヒシアマゾンさん、ゴルシはフジキセキさんにお願いして、それなりに多い数のウマ娘に観客として来てもらっている。でも―――
[ホイッスルの音]
「ファンファーレ代わりに、小鳥遊トレーナーさんが鳴らすホイッスルが鳴り響きました。本模擬レースに出走するシリウスとベテルギウスから選ばれた9名のウマ娘が、ゲート代わりのスタートラインに横並びで待機しました。レース進行は、デザイン科の放送部所属のバージンボイドこと、愛称”BBちゃん”が、」
「きゃー!BBちゃーん、サインくださーい!」「ちょっと、私が先にサイン貰うの!」「わたしのことを先輩って呼んでー!!」
「そして、解説は同じくデザイン科放送部所属のウマ娘、ディスタントスロープがしていくわ!」
「うっかりちゃん!」「roter Teufel!」「担当トレーナーとはやくくっつけー!!」
「ちょっ、誰よアタシの事バカにしてんの!あと、トレーナーとくっつくなんてありえないから!!」
―――いくら何でも話が大きくなり過ぎです!!
と言うか、間違いなくここまで大きくしたのゴルシのせいだよね!?あのエンジョイハジケリストはどこに行ったの!?
「へーらっしゃいらっしゃい、ゴルシちゃん特性やきそば1パック300円だよ~!オプションで、ウィンナー2本とか目玉焼きもつけれるよー!さぁ買った買ったぁ!!」
「ウィンナー2本付き1個ですね、ハイ。・・・お代ぴったしです!まいどありです!!お次の方ー!!ッ!アシゲ!!」
「ちょ、ちょっと・・・いきなりポンコツにならないでほしいっす。あ、めっ、目玉焼きの方が2つっすね。ろ、600円になるっす。」
「た、大変だフェスタ!そろそろやきそばの麺が無くなるぞ!!」
「はっ・・・んなもんとっくの昔に想定済み!お嬢二人に買い出しさせてる!!二人が来るまで持つかの大博打だ!!」
「冗談も対外にしろよ博打脳?!あのお嬢様気質の二人が監督もなしに買い出しに行かせて寄り道しないわけないだろうがッ!!」
「それは同感だなッ!!というかなぜ、私まで手伝わねばならんのだッ!?」
「悪いなスケアリー。アンタしか包丁を安心して持たせられないんだ。」
「くっ、何も言い返せない・・・せめてもう一人ぐらい包丁を安心して持たせられる同期がいてほしかった!!」
やきそばを売りさばいてたよ。しかも同期(一部を除いて)を巻き込んでやってるよ。と言うかスケアリーハンターさんも巻き込まれてるよ。
ま、まあ・・・やきそばを売りさばいているだけで特に問題はなさそうだし、放置でもいいかな?その内、風紀委員のバンブーさんかエアグルーヴさんが飛んでくると思うし・・・
そう考えつつ、私は屋台から離れて酉川トレーナーと猿山トレーナーのもとに向かう。
「ここまで大きくなっちまったが、まあ身内だからこそカメラやメンツをあまり気にしないで済むな。おっ、このウィンナー中々旨いな。」
「ああ、本番のレースだとマスゴ・・・マスコミもいるから、体裁を整えんのが大変だよな~。ん~、ソースが濃厚で飽きねぇなこれ。」
って、アンタらすでに買って食ってるんかい。そして会話内容は理解できるけど、もうちょっと体裁は整えましょうよ・・・。それに小鳥遊トレーナーがやきそば食べれなくてすごい目でこっち見てますよ?
「・・・スタートラインに最後の一人が並びまして、小鳥遊トレーナーさんがいまスタートの合図を出しました。まず最初に飛び出しましたのは5番1番人気ミホノブルボンさん。」
「2か月半の休養明けとはいえ中々の好スタートね。サイボーグの名に恥じないほどの精密さと反射神経だわ。」
「続きまして、7番7番人気ブルードッグスピアさん、9番5番人気トゥエルブライフさん、3番2番人気ライスシャワーさんココにいらっしゃいました。」
「ミホノブルボンと同じく、2か月半の休養明けね。それでもレース感が衰えているとは思えないほどの綺麗な位置取りだわ。この位置取りなら、後方集団を警戒しつつ先頭集団の様子を伺える絶好の位置よ。」
「第1コーナーをカーブしました。先頭は変わらず、中団を見ていきましょう。1番3番人気ムゲンノケンさん、2番9番人気オウゴンヨロイさん、8番6番人気ブラックアサシンさん、4番8番人気テンプルキャスターさん、6番4番人気、ハラペコキングさんの順番。向こう正面に入りましたが、やや縦長の展開でレースは進んでいます。」
「差し、追い込みにとって勝負どころが難しい展開だわ。下手に勝負を仕掛ければ間違いなく自滅する・・・冷静さと度胸が試されるわね。」
実況のバージンボイドさんと解説のディスタントスロープさんは、レース全体を見ているため気付いていないがすでにライスさんが一手仕掛けている。
私も注視しなければ気付かないほど自然で目立たずに仕掛けているため、ライスさんの一つ前を走るトゥエルブライフさんも気づいていない。ゴルシとのトレーニングでつかんだあのプレッシャー術がここまで驚異的なものになるだなんて想像できなかったけれど、これもライスさんが持つ強さの一つなのだろう。
「と、ここでミホノブルボンさんがペースを上げましたね。」
「いい判断ね、後方集団からの突き放しは前からやっていたことでしょうけれど、休む前より仕掛けるタイミングが鋭い気がするわ。」
ディスタントスロープさんはそう言っているけれど、残念ながら違う。
今あそこでブルボンさんがペースを上げたのは、わずかながらにライスさんが仕掛けたことに感づいたからだろう。実際、その判断は正しい。なにせ、
「さてここで再確認しましょう。先頭は変わらずミホノブルボンさん。二番にブルードッグスピアさんとライス・・・ライスシャワーさんがここに居ます!?」
「うっそ、まったく気付かなかったわ?!」
「こ、ここでライスシャワーさんがブルードッグスピアさんを交わして二番手になります、ブルードッグスピアさんは3番手です。続いてムゲンノケンさん、トゥエルブライフさん、テンプルキャスターさん、ハラペコキングさん、ブラックアサシンさん、オウゴンヨロイさんの順番で第4コーナーを曲がります。」
「そろそろ勝負所ね!仮想レース場は中山レース場だから、最後の直線は短いわ!!」
ディスタントスロープさんがそうマイクに向かって叫ぶと、真っ先に仕掛けたのはブルボンさんでもライスさんでもないブルードッグスピアさんだった。
「ミホノブルボンさんが速い!ですが負けじとブルードッグスピアさんが追い付いてきます!!ライスシャワーさんも虎視眈々と狙っていますが、間に合うのでしょうか?」
・・・あのスピードであの距離なら、ブルボンさんですらライスさんの射程圏内だ。
しかし、ブルボンさんはライスさんをさらに突き放すようにスピードを上げる。あの様子だと・・・
ブルードッグスピアさんも必死にライスさんから逃れようとするけれど、ライスさんが追い抜かして―――
【ブルーローズチェイサー Lv.3】
―――この感覚は、
どうやら、ライスさんはあの日をきっかけに何かを掴んで
ブルードッグスピアさんを追い抜かすと、ブルボンさんですら追い抜かしそうなスピードで最後の直線を駆け抜けてゆく。
「ら、ライスシャワーさんがものすごい勢いで上がってきました!先頭はミホノブルボンさ―――いや、ライスシャワーさんが並んだ!?」
「あ、あの距離を詰めるなんてなんてスピード!」
「必死に逃げるミホノブルボンさん!しかしライスシャワーさんは逃がさない!!お二人とも並んだままゴールラインを越えました!」
「す、すごいわね・・・。」
「1着はゴールライン担当のライカフィルムさんとトレーナーさん方の協議の元判断するみたいです。3着はハラペコキングさん、四着はムゲンノケンさん、五着はブルードッグスピアさんの順番です。」
・・・ライスさんは、トラウマを乗り越えることが、できたんだね。
私は、少しだけ羨ましさを感じながら、サポート科のウマ娘としてのやることに取り掛かるのであった。
バージンボイド
バージンの綴りはvirginだから、愛称はVBなのでは?とはよく聞かれるが、笑顔でしか返答しない。実は隠れ配信者で、結構人気らしい。
ディスタントスロープ
ウマ娘にも関わらず10文字な名前のウマ娘。
本人曰く、父親のうっかりらしいが本人は割とこの名前を気に入っている。
実は、とある土地のオーナーらしいが・・・?
ブルードッグスピア
ベテルギウスに所属するレース科のモブ娘。
タイツよりスパッツ派。
トゥエルブライフ
ベテルギウスに所属するレース科のモブ娘。
G1はなかなか勝てないけれどG2では勝ち星を挙げやすい。
ムゲンノケン
ベテルギウスに所属するレース科のモブ娘。
浅黒い肌なのは遺伝。
オウゴンヨロイ
ベテルギウスに所属するレース科のモブ娘。
慢心しやすく、よく足元をすくわれる。口癖は「オノレー!」
ブラックアサシン
ベテルギウスに所属するレース科のモブ娘。
ダートウマ娘なのだが、人数合わせで参加。オウゴンヨロイとテンプルキャスターには負けなかった。
テンプルキャスター
ベテルギウスに所属するレース科のモブ娘。
オープン戦では敵なしだが重賞だとよく負ける。デザイン科と掛け持ち。
ハラペコキング
ベテルギウスに所属するレース科のモブ娘。
食いしん坊なウマ娘。オグリには劣るが、食べ放題に行くと出禁になる。
ライカフィルム
ベテルギウスに所属するサポート科のモブ娘。
目がかなりいいウマ娘で、視力8.2と診断されたことがある。