前回のあらすじ
ミホライと裏切り
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side:ゴールドシップ
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ブルボンとライスの祝勝会。
シリウスのトレーナー室で行われているそこから、アタシとスケちゃんことスケアリーハンターは抜け出してくる。
スケちゃんが、どうしても話したい。と小さな声で訴えかけたので、ばれないようにこっそりと抜け出して、前を歩くスケちゃんについて行っているところだ。
「・・・なー、スケちゃーん。どこまで行くんだー?」
「もう少しだけだ、なに。たまには美人な同期と、散歩デートでも・・・と考えただけだ。」
(・・・んー?)
スケアリーハンターが冗談を言った。
珍しいこともあるもんだとは思いつつも、同期のよしみだからなのかスケアリーハンターが複雑そうな気持ちを持っていることに気付く、けれどそれを指摘するほどアタシは空気が読めねぇ訳じゃねぇし、スケちゃんに限って・・・そう言ったことは絶対に相談する。だから、もうちょっと、スケちゃんの言う通り同期との散歩デートでも楽しむとする。
「・・・、ゴールドシップ。」
「んぁ?なーんだよスケちゃん。いつもみたいにゴルちゃんって呼んでくれたっていいんだぜぇ?」
「真面目な話だ、聞いてくれ。」
やがて、スケちゃん・・・スケアリーハンターは足を止める。
辿り着いた場所は、三女神像の広間。夕日が差し込んで、噴水の水がオレンジ色に変色している。
・・・正直に言って、アタシはここが好きじゃない。ここに来ると、どうしても・・・あの湿気っていた時期を思い出すからだ。
「それで、話って何だよ?愛の告白なら間に合ってるぜぇ、アタシにはメグメグが―――」
「―――その彼女とのループは、どうだった。」
その言葉を聞いて、スケアリーハンターをにらみつける。
コイツは、何かを知っている。アタシとメグメグのループ現象を知っている。
「・・・その反応、やはり黒幕は知らなかったわけだな。」
「どういうことだよ。黒幕も何も、アタシとメグメグのループ現象を引き起こしているのは、あの酉川トレーナーじゃないのか?」
「あたらずといえども遠からず、だな。確かに酉川トレーナーはループ現象を
スケアリーハンターが三女神像の噴水の淵に座る。やがて、隣に座るように視線で催促され・・・アタシは大人しくそれに従う。
「不思議に思わなかったのか?どうして、禁断の恋愛をしていても順風満帆のはずなのにループ現象が引き起こされているのか。」
「・・・アタシとメグメグは、それが分からずに何度もループしてんだ。尾行だって何度もした・・・けど、いつの間にか消えてるんだ。」
「なるほど。では、こう思わなかったか?なぜ、
「・・・・・・まさかっ、酉川トレーナーはループ現象の
スケアリーハンターの提示したヒントのおかげで、そこまで紐解けなかった謎がつながり・・・スケアリーハンターは小さく頷く。
アタシとメグメグは、酉川トレーナーがループ現象の主犯だとは思っていた。けれど、実行する理由も動機も、今の今まで訳が分からなかった。けれど、ループ現象が酉川トレーナーの意志ではないとしたら、その原因不明に理由が付く。ただ利用されていただけという理由が・・・。
つまり、アタシらは今の今まで・・・意味のない事を、繰り返してきていたのか?
メグメグと一緒に必死に考えた作戦や、今までアタシがやってきた色々なことは・・・全然、ループ現象を止めるのに関係がなかったことなのか?
「そう落ち込むな、少なくともゴルシたちがやってきたことは意味があった。むしろ、酉川トレーナーを引き留めようとしたことに意味がある。」
「っ・・・お前、まるで犯人みたいなことを言うじゃねぇかよ・・・。」
「・・・その片棒を担ってい―――」
[大きな水しぶきの音]
バチン!乾いた音共に、スケアリーハンターが噴水に落ちる。気が付けば、アタシは平手を振り切っていた。
スケアリーハンターも、そうされることが分かっていたのか、表情を変えず・・・いや、茶化すように笑顔を浮かべて濡れたままアタシを見上げた。
「いいビンタだ。さすがは、水星ビンタ大会ベスト100の―――」
「お前・・・今まで、騙してたのか?」
「・・・・・・。」
くぐもった声が聞こえて目線を逸らされる。
仲間だと思っていた奴の中に、アタシらを3年間のループの中に閉じ込めていた犯人の一人が居たことに、アタシは冷静でいられなくなる。
噴水の淵を跨いで、靴と靴下が濡れようがお構いなしにスケアリーハンターに近づき、胸ぐらをつかむ。
「アタシを、メグメグをお前が苦しめていたのかッ!?」
「・・・ああ。」
「メグメグが・・・メグリメグルがどれだけ悲しんだと思ってるッ!どれだけメグリメグルが泣いたと思ってるッ!?」
「・・・すまない。」
「謝ってすむかよっ!アタシ一人なら、アタシもこれだけ怒らなかっただろうよ・・・でもなぁ、メグリメグルを巻き込むことは違うじゃねぇかよッ!!」
「・・・・・・そうだな。」
怒りという激情の中、ループ現象を引き起こしていた奴らの仲間だったということよりも、コイツが・・・こいつらがメグメグを巻き込んだという怒りの方が先に来る。
・・・いや、本当ならアタシもメグメグの為に怒る資格なんてないんだ。アタシだって、メグメグがループ現象に巻き込まれたことを喜んでいたし・・・ループ現象が永遠に続けばイイなんて思っている。分かっていても・・・怒らなければいけなかった。
アタシに怒鳴られているスケアリーハンターは、目を閉じ・・・悲壮の表情を浮かべて、俯いている。
後悔に苛まれているようで、それでいて・・・罪悪感に押しつぶされている。小さく震える肩が、それを十分に伝えている。
「ゴールドシップ、キミの怒りはもっともだ。だが、遅かれ早かれ、メグル嬢はループ現象に巻き込まれていたさ。」
「・・・どういうことだよ。」
「彼女は・・・とある人物の計画の中心人物だ。」
「・・・誰だよ、ソイツ。」
アタシが低い声で聴き返すと、スケアリーハンターは覚悟を決めたのか、悲しげな表情を変えて・・・真剣な眼差しでアタシを見上げる。
「・・・ソイツの名は、ストームドラグーン。ストームロードの、血のつながった妹だ。」
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ストームドラグーン。その名前は、アタシは深く覚えのある名前だった。
いわく、【立てば厄災、座れば混沌、歩く姿は
シンボリルドルフが皇帝、トウカイテイオーが帝王・・・そして、ストームロードが君主であるのなら、ドラグーンは『竜王』・・・もしくは『魔王』の呼び名がふさわしいとも言われている。
「・・・どうして、どうしてドラグーンが、メグメグを?」
「・・・・・・それを、」
「言えよ・・・言えよ、スケアリーハンター!」
「それを知ることはメグリメグルの秘密を知ることになる!!」
怒鳴ったアタシを怒鳴り返すスケアリーハンター。
・・・どうして、そうなる?
「いいか、ゴールドシップ。もし、このループ現象を止めたくないという気持ちがあるのなら、今すぐ私を掴む手を離して去れ。」
「なんでそうなる・・・」
「覚悟がないのならループ現象を止めることも、メグル嬢の秘密を知る資格はないからだ。」
「・・・わけ、分かんねぇよ。」
「だろうな、だが・・・どうする?」
アタシは・・・
スケアリーハンターから、手を離す。
ヨロヨロと立ち上がって・・・三女神像の広場から立ち去るために、歩を進める。
「・・・心変わりしたのなら、また私に声をかけろ。」
最後の言葉も、訳が分からなかった。