とあるモブウマ娘が、ループするお話。   作:ライドウ

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前回のあらすじ

ゴールドシップは分からない。


ライスシャワー編のラストです。
失意のゴルシに・・・?


Re:ライスシャワー 12R

 

トレセン学園のターフをしゃがんで眺めている。

アタシは・・・スケアリーハンターの言葉を聞いて、何もかもが分からなくなってしまった。

親友だと思っていたスケアリーハンターが、実は黒幕の一人で・・・?

メグメグは遅かれ早かれ、ループには巻き込まれて・・・?

魔王って呼ばれてる奴が、メグメグを不気味な計画の中心にしていて・・・?

・・・何もかもが、分からない。こんがらがって外れなくなってしまった知恵の輪みたいに、どこを引っ張ってもねじっても、びくともしない。

 

でも、でもそれ以上に・・・

 

「アタシは・・・前を向いて歩くことなんてできない。」

 

居心地のいい学園生活、同期たちとするバカ騒ぎ、シリウスメンバーとの協力の日々・・・そして、メグメグとの幸せな日々。

そのどれもこれも、失いたくない。大人になって、それを思い出にしたくはない。

いつか、この学園も・・・アタシたちじゃないウマ娘たちの青春の場所になる。いつか、同期たちでさえ大人になってバカ騒ぎなんてできなくなる、シリウスメンバーたちもそれぞれの道を歩む、メグメグも・・・アタシから離れて行ってしまう。

 

きっと、それはそれで幸せなのだろう。

雛鳥がいつまでも雛鳥というわけでもない、いつか巣から旅立って、自分ひとりで生きる必要がある。

大人になって、仕事をして、恋をして、結婚をして、子供が生まれて・・・その子供に、夢を託して・・・。

 

ああ、でもいやだ。

 

「メグメグが、誰かのモノになるのが・・・イヤだ。」

 

本当なら許されない、アタシのメグメグに対する恋心。

3年間のループから抜け出しそうになっている今、抑えていたその恋心が再び燃え上がっている。

このループから抜け出せば、メグメグはアタシと離ればなれになる。違うところで生きて、マンハッタンカフェの両親と一緒に実家の仕事をして、いつか恋をして、アタシの知らない男と恋を・・・

 

「ッ!!」

 

そこまで考えて、アタシは()()()()()()()()()()()()()。途中で硬い石でもあったのか、手の甲から血が流れてしまっている。けれど、痛みすら今のアタシには、少しの冷静さを取り戻すきっかけにはなっていた。荒げた息を整えつつ、怒り狂う心を落ち着ける。

 

(―――気持ちがわりぃ。)

 

落ち着けた心が、脳にその言葉を響かせる。

なにをやってるんだ、アタシは。それが、()()じゃないか。

いつかこの学園を卒業して、大人になって仕事をして、恋をして結婚をして、子供を作って夢を託す。なんって素晴らしい()()()()()だ!

 

「ああ、そうだ・・・ハハハッ。そうだよな、それが()()・・・だもんな。それが・・・メグメグが欲しい未来、だもんな。」

 

彼女はアタシの親友だ。元々アタシに、彼女を縛る理由なんてないじゃないか。

自分勝手な恋心でしばりつけて、彼女が本当に笑顔になるのか?本当にそれで幸せなのか?アタシの無茶に付き合わせて、いつも苦労を掛けてばかりじゃないか。

むしろ―――

 

(アタシが居ない方が、メグメグは幸せになれる・・・?)

 

・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()

アタシがメグメグの邪魔になるって言うんなら、アタシの方からメグメグのもとから去ればいいんだ。そうすれば、メグメグはアタシに気を遣わずに3年間のループから脱出できる。

頭がよくてとても強いメグメグなら、きっと黒幕の・・・あの”魔王”にすら負けないだろう。メグメグは一人でもやっていける。だから、アタシが居なくともメグメグは生きていける。

そう考えて、立ち上がる。幸い、財布は持っている。携帯は・・・ここに置いて行こう。位置情報で探されるのも厄介だし、もう・・・必要はない。

もう、この学園の景色も見ることはないだろう。そう思い、一歩を踏み―――

 

「ダメだよ。」

 

・・・ライスに腕を掴まれて、止められた。

どうして、ここに?祝勝パーティーがあったはずなのに、どうして・・・ここに?

 

「ダメだよ、ゴルシさん。行ったら、ダメ。」

「・・・離してくれよ。」

「離さないよ、離したら・・・ゴルシさんが行っちゃうから。」

「離してくれっ」

「ダメ。」

「離せよッ!!」

「絶対離さないから。」

 

ライスの腕を振り払おうと、一生懸命に腕を振る。

けれども、びくともしなくて・・・強い眼差しでそれでいて優しい目が、ライスはアタシを見続けている。

やめろ・・・やめてくれ、アタシはそんな目で見られる資格はないんだ。アタシは・・・メグメグの不幸を望んでいた最低な奴なんだぞ?やめて・・・やめてよ。

 

「アタシに・・・構うなよ。」

「・・・。」

「アタシが、アタシが居て・・・なんになるんだ?」

「ゴルシさん・・・。」

「アタシは・・・もう、いやなんだよ。これ以上、メグメグを悲しませたくない。これ以上、メグメグにつらい思いをさせたくない。全部、アタシが悪いんだ。」

 

本音を・・・何も知らないライスに本音を吐露してしまう。

永遠と続いている3年間のループの出来事を、湿気っていた時期にメグメグを監禁して・・・アタシの都合のいいように洗脳しようとしたこと、メグメグに本気で恋をしていること・・・そして、3年間のループを終わらせたくないと願っていることを。

・・・そんなことを言っても、ライスには分からない。分かるわけがない。アタシがそう思っていると

 

「・・・うん。()()()()。」

 

はにかむように、その言葉を言った。

聞き間違いかと思ったが、ライスの目は嘘をついている目ではなかった。懐かしんでいるような・・・遠いところを見る目、優しくて・・・少しだけ厳しい目。

 

「ライスはね・・・今までのループの中のライスから()()を引き継いだの。」

「記憶の・・・引継ぎ?」

「うん。」

 

ポツポツと、ライスはアタシとメグメグしか覚えていないはずの記憶を語りだす。

その一つ一つは、確かに酉川トレーナーがライスシャワーの専属担当だったすべてのループで起きた事だ。何一つ、間違いなく・・・。

けれど・・・

 

「それが、それが何だって言うんだよッ!!」

「・・・ッ」

 

アタシは・・・感情のみで言葉を返してしまう。

 

「今更・・・今更今までのループの記憶を引き継いだからって、一体何が変わるってんだよ!?それでメグメグが喜ぶのか?アタシの苦しみが軽くなるのかッ?!

 

なんで今なんだよッ!!もうアタシらが戻れなくなった今になって、どうしてライスはそんなものを引き継いだッ!!これ以上、これ以上やめてくれ・・・アタシらに、過去を突き付けないでくれよ・・・ッ」

 

今まで、数えきれないほどのループを経験して・・・いくつもの出会いがあって、それ以上の別れがあって。

キラキラとまぶしい青春を見ないようにしてきた、ポカポカと温かな場所に関わらないようにしてきた、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、何度もッ!!

 

「どうして今頃、手を伸ばすんだよぉーッ!!」

 

かつてアタシは、始めてループをしたき・・・親しい同期にループに巻き込まれてしまったことを話した・・・けれど、誰も信じてくれなかった。手当たり次第に助けてくれる人を探した。

だが、誰も彼もがアタシがループをすれば、記憶も経験も・・・あの日に戻される。何度も何度も話して、信じてもらえず、またループして・・・ついにアタシは、頭を空っぽにした。

そうすれば、ループする苦しみを・・・忘れ去られる苦しみから目を背けることができたから。

 

「ライスだって、分からないよ。」

「ならアタシにかかわるなッ、アタシは・・・もうループに疲れたんだよ。」

「でも、分からなくても・・・これだけは言えるよ。」

 

ライスがアタシの腕を引っ張り・・・アタシを抱きしめる。

 

「これからは、もう・・・一人じゃないよ。」

 

・・・じんわりと、その言葉が心に染み渡る。

アタシが・・・アタシがずっとほしかった言葉・・・メグメグが、絶対に言わない言葉・・・・・・。

 

「ううぅっ・・・・・・うわぁあ~~~~~~っ!!」

 

アタシは・・・涙をこらえる事なんて、もうできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====

 

 

泣いて、泣いて・・・ついに涙が枯れて、アタシはライスから離れる。

 

「悪い・・・アタシ、どうかしてた。」

「大丈夫だよ?ライスだって落ち込んでたら、変な事を言うし・・・」

「・・・ハハッ。」

 

久しぶりに、心の奥底から笑うことができた。

泣いて・・・心に溜まった物が吐き出されたからだろうか、頭がスッキリとしていて・・・心は青空のように清々しいものだ。

 

「・・・止めるか、ループを。」

「いいの?」

「離ればなれになったとしても、追いかければ問題ねーよな!」

「・・・くすっ、ゴルシさんらしいね。」

「だーろぉ? って、訳で・・・聞かせろ。スケアリーハンター。」

 

アタシが声をかければ、どこからともなくスケアリーハンターが現れる。

ライスは驚いてアタシの後ろに・・・隠れずに、そのままスケアリーハンターを見つめている。

 

「いい顔つきになったな。あの時以来の顔だ。」

「うるせー、ゴルシ様の顔はプリチーフェイスだってぇの」

「そうだな、ゴルゴル星一のゴリラ顔だな。」

「んだとぉ!?だったらアタシは5メガネだッ!」

「かかったな・・・私のハンカチコンビネーションを味わえ!!」

 

「二人とも! ふざけないでくださいっ!!」

 

「「ごめんなさい。」」

 

アタシとスケちゃんがそろってライスに怒られる。

どちらともなく笑い出し、スケアリーハンターは真剣な眼差しをアタシに向ける。

 

「いいだろう。私の知るすべてを話す。さて・・・どこから話したものか―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて・・・アタシとライスは、目を見開くどころか言葉すら出せなくなった。

スケアリーハンターが淡々と・・・しかし、感情のこもった言葉の数々が、一つ一つ・・・澄み切ったはずの心に、ドロッとしたものとして積もってゆく。

 

「・・・以上だ。」

「・・・なるほど、な。」

「メグルさんに、そんな秘密が。」

「無論だが、本人には・・・」

「言わねぇ。これは、本人は知らない方が幸せだ。」

「うん・・・」

 

奇跡とも、悲劇とも・・・どうとでもとれる、メグメグの秘密。

でも、アタシは・・・

 

「それでも、このループを止めなくちゃな。」

「・・・そう、だね。」

 

前に進む。

それで、そのうえで・・・メグメグを手に入れる。

―――そう決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そう決めた。はずだった。





次回からしばらくは幕間となります!
ちょっとした掲示板回とロードとドラグーンの姉妹の会話を予定しているのでお待ちください!
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