とあるモブウマ娘が、ループするお話。   作:ライドウ

70 / 72

前回のあらすじ

メグメグとよく似たフェアリーさん




12R

 

ストームロード

 

私は・・・自分自身を表すこの名前が、私は嫌いだ。

私の家の・・・そして、私自身の過去の話をしよう。

 

私の家、ストーム家は・・日本の()()()()歴史にこそ存在しない物の、300年の歴史を持つ()()・・・言い換えればヤクザ組織だ。

古くは”嵐組”と呼ばれた山風組という、裏の組織。そして”山風複合企業”と呼ばれる表の組織。その二つの頭が・・・私の家、ストーム家というわけだ。

そのストーム家の中で、私は生まれた。私の母はストーム家の実権を握る”本家”で、私も本家の人間・・・中央トレセン学園を卒業すれば、ストーム家を、山風組と山風社を率いる立場になる手はずだった。当時の私は、そのことに何の迷いもなかった。

 

だが、ある時を境に私は自分の名前と、ストーム家が嫌いになった。

母は・・・ある日、敵対組織らしいヤクザの襲撃を受け意識を持たない人・・・植物人間になってしまった。それ自体は、何でもよかった。母は意識はないとはいえ生きていたし、ストーム家のご隠居・・・私の祖母に当たる人も奇跡を信じて母の安楽死を拒否した。

問題は、ストーム家の空いた上段の間だった。意識のない母が、ストーム家を・・・そして、山風組と山風社の舵を切れるわけもなく、権力者争いが勃発したのだ。

ヤクザ組織を取り仕切っていた、”分家”のストーム家。裏をも支配し、日本企業のトップになろうと画策する、同じく”分家”のヤマタニ家。

平気で私の母の子供だと嘘をつく分家の子供、精巧につくられた偽物の血統書、いやになるほどの社交辞令と皮肉に私は嫌気がさしたのだ。

私は、祖母にすべてを話し・・・家を出た。祖母は「がんばれ、こっそり応援している。」という言葉共に、優しく送り出してくれた。

 

そして、今日はそんな祖母に植物状態の母の見舞いも兼ねて呼び出されたのだ。

 

だが―――

 

=====

 

「・・・貴様とは、会いたくなかった。」

「これはこれは、随分なご挨拶ですね。()()?」

「・・・神経が苛立つ。」

 

・・・目の前にいるのは、偽物の血統書上の妹であるストームドラグーン。

顔を見ても、雰囲気も・・・ましてやその流れる血でさえ、私とは違う。こいつが、私の妹だとは断じて認めない。

私の怒りを感じ取ってか、私の従妹であるスケアリーハンターと・・・どうしているのか分からないが私服の”シンボリルドルフ”が間に入っていた。

 

「落ち着けロード、客人の前だ。い・・・ドラグーンも煽るような言葉を言うな!」

「そ、そうとも。それに、姉妹は仲良くするのが―――」

 

「この外道が妹であるものかッ!!」

 

感情的になった私の叫び声が、静かなストーム家の屋敷に響き渡る。

 

「おやおや、姉上はずいぶんと短気なようだ。カルシウムが不足していると見える。」

ドラグーン!!いい加減にしろッ、貴様・・・どれほどヒトデナシなのだッ!?」

 

ハンターがストームドラグーンをにらみつけるが、奴は意にも介さず肩を竦める。

そして、背を向けて私がくぐってきた大扉へと歩み始める。

 

(わたし)の個人的な用事はすでに済んだ。姉上が()()()()()、早々に帰らせてもらおう。」

「・・・私の母に、近寄るな。」

(わたし)の母でもある。見舞いには来るとも・・・それでは、姉上

 

やがて、大扉が閉まり・・・ストームドラグーンの姿は見えなくなった。

だが、私の怒りはおさまらず・・・思わず手に力を入れてしまう。

 

「・・・ロード、怒りは分かる。だが血が出ているぞ。」

「・・・・・・この血、いくら流れても、変わらない。」

「だが痛むだろう。頼む、治療ぐらい受けてくれ。それに、客人の前だ・・・な?」

「・・・・・・。」

「申し訳ない、ルドルフ会長。見苦しいものを見せてしまった。積もる話はロードの手を治しながらでもいいだろうか?」

「あ・・・ああ。」

 

=====

 

ストーム家の屋敷のリビング、そこでロードはハンターに治療してもらいながら・・・ハンターの語るストーム家の過去をルドルフに伝えている。

私の母の悲劇、ストーム家に二つの分家との権力争い、醜い血筋の偽造、その細かな話を私よりもハンターは詳しく語ってくれた。

 

「ストーム家の現状は、想像以上にひどいようだな。」

「まだいい方だ・・・今日は、特にな。どこからかの孤児院から拾ってきたウマ娘の子供が、大根役者のように棒読みで自らが後継者の血筋であると主張していないのだからな。」

「だが、ロードが後継者となれば。」

「いや、それでおさまる確証がないんだ。ロードは確かに正当で正式な後継者ではある。だが・・・」

 

顔を伏せるハンター。間違いなくあのことだろう。

幼い私が犯した罪であり、ストームの名を名乗らないようにした偽善。

結局、私の自己満足であり、おそらくは誰にも拾われず・・・ひっそりと息を引き取ってしまっただろう。

 

「・・・・・・私には、一人だけ妹が居た。()()()()()()()()()()()で、私が捨てた。」

「ロード、その話はッーーー」

「・・・いいんだ、ハンター。植物人間となった母が、いつの間にか生んでいた奇跡の子。もしくは、悪魔の子。眠る前から孕んでいたのか、眠った後に孕んだのかさえ分からない、私のたった一人の正真正銘の妹。それを、幼い私は”ストーム家から逃す”という偽善でどこか遠い場所に捨てた。私が、置き去りにした。私は、その罪に向き合わないといけない。逃げることはできない、逃げようとも・・・思わない。」

「ロード・・・君は」

 

「・・・母に、会ってくる。ハンター、ルドルフを頼む。」

「・・・ああ。」

 

ルドルフの同情の言葉を聞く前に、私はリビングから逃げるように退出する。

そして、母の眠る寝室に・・・ゆっくりと歩みを進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ストームの家など、私など・・・存在しなければよかったのに。」

 

私は、誰もいない廊下で・・・そうつぶやいた。

 





ここで山風およびストーム家の整理をしましょう


ストーム本家
ストームロードの祖母
ストームロード母(植物状態)
ストームロード父(言及されなかったが行方不明)
ストームロード
ストームロードの妹(生死不明、どう考えても死んでいるとしか考えられない。)

ストーム分家
ストームドラグーン
ストームフェアリー
その他ストームの名前を持つウマ娘14名

ヤマタニ分家
ヤマタニの名を持つウマ娘たち31名

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。