前回のあらすじ
ストームの罪、ロードの後悔
ついに始まりましたチケゾー編。
個人的に、ここの章が一番書きたかった。
ウイニングチケット 1R
『日本ダービー』
日本ウマ娘中央レース会において、歴史と伝統・・・栄誉のあるレースと言われ、一生に一度しか走れないG1のレースの中でも、最高峰で残酷なレース。実際、歴史ある日本ダービーの勝利者の影で名立たるウマ娘が敗れて行った。現代でも有数の実力者が競い合い、すべてのウマ娘の夢の頂点に立つといわれる『日本ダービー』。
今年もまた、『日本ダービー』の日が、一歩・・・また一歩と近づいていた。
=====
ライスさんの春の天皇賞の挑戦も終わり、風でさえ熱風になるような暑い日も徐々に少なくなってきた今日この頃・・・、中央トレセン学園では年に一度のイベント『聖蹄祭』が2年間の開催中止を経て、再び開催されようとして・・・いたのですが。
「ウェエエエエッ?!『セイテイサイ』ガコトシモ”チュウシ”ィイイイイッ!?ナンデナンデェ!?」
生徒会室に、偶然遊びにきたであろうテイオーさんが私たち生徒会の会話を聞いてしまい、印象に残る声を上げながら扉を乱暴に開け放ちました。
・・・でも、テイオーさんは一つ勘違いをしているようだ。
「中止、ではないですよテイオーさん。中止ではなく、縮小です。」
「えっ・・・縮小?」
そう、中止ではなく縮小だ。
もう3年前にはなるのだが、野外やトレーニングコースを使用したあれほどの規模でやるには
「も・・・もしかして、今年の猛暑が原因?」
「テイオーもよく知っているじゃないか、まさにその通りだ。」
「うぅ・・・さすがに40℃の気温じゃ仕方ないかぁ。」
と、テイオーさんはウマミミをしならせ来客用のソファーに座り込む。
まあ、何という偶然なのか今年の夏は記録的な猛暑が日本に到来している。東京でさえ、夏の最高気温の記憶を塗り替えているぐらいで、所によっては43℃という地獄が広がっているとか・・・。
「まあまあ、テイオー。暑い日に負けずに、暑熱順化で頑張ろうじゃないか。」
「むぅ~・・・」
「・・・まあ、縮小は猛暑だけじゃないがな。」
と、ブライアンさんがそう言うと会長もグルーヴさんも小さなため息をつく。
その様子を見たテイオーさんが頭にハテナマークを浮かべながらこちらを見つめている。
「実のところ、
「エェェェェッ!?ド、ドウシテェェェエエエッ!?」
「テイオー、去年と一昨年は何が起きた?」
「えっ・・・えーっと、マックイーンの不正疑惑騒動に、ライスのファン暴走事件・・・・・・そういうこと?」
「遺憾千万、そう言うことだ・・・。」
・・・まあ、誰だって去年と一昨年、ただでさえ物騒な事件が発生しており例年通りの規模で『聖蹄祭』と開催するのには不安視をするものである。
最近、シリウスに加入したネットサバイバーちゃんにSNSやインターネットで調べてもらったら、そもそも『聖蹄祭』を生徒の安全を優先して中止にしろ。という
けれど、さすがにこれ以上『聖蹄祭』を中止すれば、在学生の不満も爆発する。
縮小は、理事長代理と生徒会・・・ルドルフ会長が話し合い、お互いに納得した妥協点だ。これ以上はこちらとしても引き下がれないし、広げることもできない。
「さて、『聖蹄祭』の議題はこれぐらいにしよう。」
「はい、会長。」
「ああ・・・。」
「はい!」
私たちが会長さんの言葉に頷くと、またテイオーさんの頭にハテナマークが浮かぶ。
「次の議題は、『アオハル杯の再開』についてだ。」
「えっ、アオハル杯復活するの!?」
ガバリと、テイオーさんがソファーから立ち上がり目を輝かせる。
アオハル杯は、トレセン学園に存在したチーム対抗戦のレースであり、トゥインクルシリーズと並行して開催されていた一種の伝統でした。しかし、残念なことに時代が進むにつれて参加人数は減少・・・やがて、アオハル杯は人数不足の観点から続けられることのなくなった伝統でもあります。
「ふふっ、テイオー・・・少し落ち着こう、その為の話し合いなのだから。」
「うっ・・・ごめんなさいカイチョー。」
「・・・よし。こほん、アオハル杯についてはすでにみんな知っているだろうから省こう。まず、多数決で決めたい・・・どうかな?」
親子のようなやり取りを会長さんとテイオーさんがした後に、私たちに再開することの賛成か反対を聞いてくる。
会長さんとテイオーさんのやり取りに、一瞬だけほっこりした雰囲気になったけれどすぐさま気持ちを切り替える。
会長さんの問いかけに真っ先に答えたのはグルーヴさんだった。
「私は賛成です。」
「私も賛成だ。」
「はいはーい、ボクも賛成!」
「私も賛成ですよ。」
アオハル杯の再開について生徒会の皆さんとテイオーさんは賛成みたいだ。
「ふむ、では―――」
「ハウディー!生徒会のみなサーン!!」
詳細な話し合いをしようとした途端、テイオーさんと同じように扉をあけ放ってタイキシャトルさんが入室してきた。
あまりの唐突な訪問に全員が驚いていたが、タイキさんは自信満々に胸を張っていた。
「た、タイキシャトル君?ど、どうかしたのかい?」
「ひどーいデスよ、会長さん!ワタシを差し置いて、ミーティングをしないでくだサーイ!!」
「いや・・・タイキは生徒会ではないのだから別に・・・」
「仲間外れは寂しいデース!それに、アオハル杯を会長さんにサジェスチョンしたのはワタシデース!!こういうのを、当事者の法則って言うんデスよね?」
「いや、タイキさん。当事者・・・じゃなくて、言い出しっぺですよ?」
「oh...ソーリーデース!」
・・・まあ、タイキさんが言い出しっぺなら確かに会議に参加するのも間違ってはいない。会長さんもそれはそうだが・・・という表情を浮かべていて、少しだけ不安そうにしている。
その後、タイキさんとテイオーさんを含めた生徒会でアオハル杯の詳細な決め事をしたのだが・・・
「デスからアオハル杯にコネクションして、ベネフィッツを用意するのはどうデスか。」
「なるほど・・・特典、か。」
「妙案ではありますが・・・特典の価値が低くては参加するモチベーションにはつながりませんね。」
「だが、あまり高すぎてもダメだろう。それではアオハル杯に集中して、トゥインクルシリーズとの両立は難しい。」
「なら、トレーニングコースの優待予約券などはいかがでしょうか?」
「うーん、それで喜ぶのは相当なトレーニング好きじゃないとな~・・・」
割とスムーズに会議は進んだのであった。
というわけで、チケゾー編では”アオハル杯”が復活します。
楽しみですね!