前回のあらすじ
聖蹄祭とアオハル杯デース!
無事にアオハル杯の会議も終わり、理事長代理とトレセン学園の上層部に提出する資料をまとめた後、私はシリウスのトレーナー室へと向かっている。
「聖蹄祭だよ聖蹄祭。そこでゴルシちゃんやきそばを売るって物心ついた時からきめてんだよ。」
と、トレーナー室のドアに手をかけると中からゴルシのそんな声が聞こえてくる。ゴルシのやきそばかぁ・・・そう言えば、最近食べてないなぁ。
「当日はマックイーンとトレーナーにも手伝ってもらうから、今のうちから鉄板の扱いに慣れとけよ~。」
どうやらトレーナー室には、マックイーンさんとトレーナーさんが居るみたいだ。それにしても鉄板の扱いか・・・私も最近、お菓子ばっかり作ってるからなぁ・・・。料理の腕、おちていないか心配だよ・・・。
「嫌な予感しかしませんわ・・・。トレーナーさん、もしアレだったら緑に光って教えてくださいまし。」
「俺だって好きに光るわけじゃないからな・・・?」
トレーナーさんの否定するような声が聞こえてくるが、トレーナー室の中から緑色の光が漏れている。どうやら、タキオンさんに一服盛られた跡らしい・・・。大丈夫かなぁ。あのまま人間をやめるとかないよね・・・?
とりあえず、入り口で突っ立っていても仕方ないので、トレーナー室のドアを開けて入る。
「おっ、メグメグ!遅かったな!!」
「ごめんね~、ちょっと資料作りに手間取っちゃって・・・。」
「まあ、生徒会だし忙しいよな!まあ、聖蹄祭でゴルシちゃんのやきそば屋が人気屋台ランキング一位になるのを見ててくれ!!」
「そんなランキングはないよ・・・。」
そんなランキングがあったら聖蹄祭は大変なことになりそうだよ・・・。
なんてことを考えると、さっきの会話で何かに気付いたマックイーンさんが驚愕の表情を浮かべていた。
「ま、待ってくださいまし!も、もしかしてメグルさん・・・聖蹄祭は生徒会のお仕事でご一緒できない・・・?」
「はい・・・そうですけど。」
「がびーん!ですわ!!」
マックイーンさんが面白い表情を浮かべてソファーに倒れこみ、よよよと泣き声が聞こえて来た。
残念なことに、私は聖蹄祭は生徒会のお仕事・・・特に、体調の悪い人の休憩所となる医務室を任されている。当然、生徒会に医学に詳しい人はいないし当日は保健室の先生もいるとはいえ、その日の最高気温は39℃と予報されている。間違いなく熱中症になる人も多いだろう。
本当なら、私も聖蹄祭のパトロールになるかと思ったのだけれど・・・会長さんからの熱烈なお願いに、頷いたというわけです。
すると、シリウスのトレーナー室のドアがノックされる。
酉川トレーナーが入室許可を出すと、見慣れた緑色の服の人が上機嫌に尋ねて着ていた。
「トレーナーさん、こちらでしたか。」
「たづなさん、どうかしましたか?」
「大ニュースですよ! 実は、先代のトレーナーさん・・・真崎トレーナーが、URAから表彰されることに決まったんです!」
表彰・・・あっ、そう言えばもうそんな時期だっけ。
酉川トレーナーの先生である真崎トレーナーさんは、オグリキャップ先輩の専属のトレーナーさんだ。そんな真崎トレーナーさんは、これまでのトレーナー歴・・・そしてオグリキャップ先輩と一緒に作り上げた輝かしい功績が、認められたというわけである。
そんな名誉ある表彰を目標に頑張る人も多く、また表彰されると東京レース場にある『ウマ娘ミュージアム』で、写真やこれまでの経歴や戦績が展示されるとか・・・?私も、詳しくは知らないのだけれど・・・それでも、一度はそのミュージアムに展示されたいなぁ・・・。
「真崎トレーナーが?」
「確かに、真崎トレーナーさんならば、表彰されるにふさわしいトレーナーさんですわね。」
「あのじーさん、流派中央不敗のマスタートレーナーってだけじゃなかったのかよっ。」
ゴルシが何だか的外れなことを言っているような気がするけれど、気にせずに私はキッチンに向かう。
棚から人数分のティーカップを取り出して、お茶の準備を進める。
「表彰式は生中継もされるそうですから、ぜひご覧になってくださいね!それとは別に、酉川トレーナーさんに一つお願いがあるのですけれども・・・。」
(デートのお誘いですわね。)
(デートのお誘いだな。)
(もしかして、あの件かなぁ・・・?)
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「ちぇ~、たづなさんのお願いはデートのお誘いじゃなかったのかよぉ~。」
「・・・早とちりでしたわね」
「あ、あはは・・・。」
「ふぇ?」
たづなさんも酉川トレーナーさんも居なくなったシリウスのトレーナー室。入れ替わりのようにライスさんが来て、そのままお茶会をすることになった。ちなみに今日のお茶とお茶菓子は、ルイボスのお茶に、チョコレートを使ったチョコチップクッキーです。
「そう言えば、ゴールドシップ。最近、ライスさんを連れまわしているそうですが・・・なにか変な事を教えてるんじゃないんでしょうね?」
「ま、マックイーンさん?」
「おーおー・・・みっともないから嫉妬しまえよ。」
「ご、ゴルシさん!?」
マックイーンさんが何気ない質問をゴルシに投げかけると、ゴルシは挑発的に言葉を返し、それを見たライスさんが顔を青くしてオロオロとマックイーンさんとゴルシを交互に見ている。
ライスさんはケンカになりそうになっているのを感じていて慌てているのだろうけれども・・・私から見ると、二人とも本気で言っているわけではないのがよくわかる。
むしろ、二人ともライスさんを困らせようと結託しているみたいだ。
「やーやートレーナー君、温泉開発・・・コホン、実験の時間だよ!!・・・って、なんだい、この空気?」
「喧嘩・・・ではないようですが。」
「みたいだね・・・それにしてもチョコチップの良い匂いが。」
「そうみたいですね・・・(ライスさんがオロオロしていて尊いっ!!)」
そこへ、タキオンさんとカフェ姉さん、デジタルさんがやってきて二人の雰囲気に驚く。
「では、ライスさん・・・最近、ゴールドシップに連れまわされているそうですが・・・なにを?」
「えっ・・・えーっと、えへへ・・・。」
「かわいい笑顔でごまかそうとしないでくださいまし。」
「ぁぅ~・・・」
・・・実は私は、ゴルシとライスさんが何をしているのか知っている。
最近、二人は聖蹄祭の準備として・・・ゴルシは食材の調達、ライスさんは鉄板の扱いを練習しているのだ。
ちなみに、無理やりライスさんに手伝わせているわけではなく・・・ライスさんからゴルシにお願いしたとのことだけれど・・・。なんだか、ちょっとだけモヤッとしちゃうなぁ・・・。
でも、ゴルシは段々と卒業後を目指して、頑張っているみたいだし・・・あんまりモヤッとしないようにしないと!
「最近、アタシらアップルパイにハマってんだよ。それで、ライスと一緒に試行錯誤してるってわけ、な?」
「あっぷるぱい!(返事)」
「最近のアップルパイにはソースを使うのですか?」
「へへっ、じょーだんさ。ライスがどうしてもって言うからさ~、鉄板の扱い方を教えてるわけ~。」
タキオンさんたちのお茶を用意している間に、マックイーンさんとゴルシのライスさんいじりは終わったみたいだ。
ライスさんは、ぷんすかと怒っているみたいだけれど・・・その怒り方がかわいくてマックイーンさんとゴルシは温かな笑みを浮かべている。
聖蹄祭の近いとはいえ・・・穏やかな日常を、今日もまた過ごすのであった。
こういう日常はいつまでも続いてほしい・・・(作者の本音)