新人助手は今日も最強ヒロインに手を焼いている   作:みそすうぷ

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2話 逃亡者

「昨夜、女性を襲った怪物が日本中の注目を集めています。人型の竜とでもいうのでしょうか。街の監視カメラの映像には、まるで映画の中から出てきたような姿のモンスターがはっきりと映っています。ネット上では、人々はその怪物をリザードマンと呼び、様々な憶測や噂が交わしています」

 駅前の街灯テレビから、キャスターの淡々とした声が流れる。その数奇なニュースに足を止めて画面を見つめる人も多い。

俺は興味のない人間のふりをしてまっすぐに歩き続けた。

 

昨夜から歩きっぱなしだった。一晩中街をさまよい、公園の水道水以外何も口にしていない。なぜなら店に入ってこの顔を見られようものなら、俺はたちまち通報され、警察に捕まってしまうであろうからだ。

昨夜から、俺の皮膚ではコントロールできない硬化現象が起きていた。漆黒のガラス片が流動的に体の表面を覆っており、顔も例外ではない。その見た目はニュースが伝える通りまさに怪物だった。牙や爪がとがることもあり、まるで爬虫類のようだ。

自分から警察に行くことも考えた。しかし、俺は人間として扱ってくれるのか疑問だった。もし化け物として扱われたら、どんなひどい目にあうかわからない。

今、俺の体にできる傷はすべて跡形もなく治癒する。おそらくこれも、あの電撃のせいなのだろう。ビルの屋上から落ちても、体を雷に打たれても全身は元通りだった。

俺は死ねない体になっていたのだ。

死にたかったのに死ねない体になっただけでなく、治癒する体で拷問を受けるだなんてまっぴらだ。

でも、もしこの体になってなかったら再び自殺しようとしていたかといえば、それはわからない。

俺を止めてくれたあの少女にもう一度会って、聞きたかった。この世界をあんなにも軽やかな様子で生きていくにはどうしたらよいのか。その答えを聞けるまでは、まだ死ねない気もした。

 

とにかく、今はまだ生きなければならない。

俺は食事をとることを決意した。

顔を隠して食べ物を買うだけなら、なんとかなるかもしれない。俺はフードを深くかぶり直し、人々の視線を感じないか意識してコンビニに入った。

 

「ねえ、カミナリガールって知ってる?」

「なにそれ、アニメ?」

 買うものを選んでいると、女子学生二人が近くに来た。俺は顔をさらにうつむかせる。

 

「違うよ、最近この街に現れるっていう女の子。さっそうと現れては、チンピラを退治して回ってるんだって」

「あー、あんた昔からそういう美少女戦隊もの好きだったもんね」

「もう! そうじゃないってば! 例の電気人間の一人だよ!」

「電気人間?」

「聞いたことない? 黒雷を受けて生き残った人たちの話。黒雷の再構築効果由来の通常の人間ではありえない体の治癒能力に加えて、電撃を思いのままに操る電気能力を持っているんだよ!」

「ふーん」

「全然興味なさそうじゃん!」

「小さい頃はそういう都市伝説みたいなのも好きだったんだけど、この年になるとさすがにね」

「もう! 本気にしてないでしょ!」

「まあ、そういう話があってもいいんじゃない? ていうか、今はリザードマンっしょ。ニュースにもなってるくらいだし、少し気になるな」

「え~? それこそ胡散臭くない? スポンサーの宣伝でどうせドッキリでしたってなるだけだと思うよ。だって、見た目がいかにもモンスターすぎて、CG感がぬぐいきれなくない?」

「いやいやだって、目撃者がたくさんいるんだよ。素顔を見た人もいるって」

「えーほんとか……な…………」

 

 俺は素顔という言葉に反応して、つい学生を見てしまう。

「え……」

「……!」

 俺は慌てて店の外に駆け出した。

「おっと、大丈夫?」

 出入口のすぐ外でぶつかったのは運悪く警察官だった。

「すみません、急いでたので……」

「ちゃんと前見てね……って…………」

「っ……!」

 警察官と目が合う。俺は人の波をすり抜けるようにして再び走り出す。

「君、待ちなさい!」

 

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