新人助手は今日も最強ヒロインに手を焼いている   作:みそすうぷ

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4話 罪

 

 ドサッと地面に投げられるその感覚で、俺は目を覚ました。

明かりの少ない暗い部屋。窓の外に広がる景色からして、マンションかアパートの一室だろうか。

脳が冷えていくのを感じる。

俺が意識を失っている間に状況が好転することはなかったようだ。俺は連中に捕まっていた。

このあとどんな目にあうのか、様々な憶測が湧き上がってくる。仕返しに拷問でもされるのだろうか。殺されてもおかしくない。

 最悪の目覚めだった。

 

「おい、お前らがこいつはトカゲ野郎だってしつこく言うから連れてきたのに、全然普通のガキじゃねえか」

「す、すみません! でも俺たちが見たときには、こいつの顔は例の化け物みたいだったんですよ! あれは見間違いじゃないと思うんすよ!」

「そうなんです! 腕をバールで受け止めやがって、バールが曲がったんです!」

 

 女は俺が一度倒した二人の若い男をギロリとにらむ。

「どうみても普通の人間の皮膚だろうが! ったく、私の面目も考えろよ」

 

 女は部屋の奥に顔を向けると、へりくだって謝罪する。

「すみません、米村さん。違うやつだったみたいです……」

「別に構わん、そう簡単に見つかるとは思っていない」

 

「こいつ、どうしますか?」

 赤茶髪の男がそう言うと、奥から男が歩いてきた。

 俺は思わず声が出そうになるが、口はふさがれていて喉が言葉にならない音を出すだけだった。昨夜、少女と対峙していたスキンヘッドの男だった。

 スキンヘッドの男は俺に一瞥をくれると吐き捨てるように言った。

「奥の部屋にチェーンソーがある。バラバラにしてケースに詰めとけ」

「わかりました」

 赤茶髪の男の手が、荒く俺の服の襟をつかむ。呼吸は荒くなるが、やはり声は出なかった。

 俺は全身を縛られたまま、別の部屋へと引きずられていく。服が首元を圧迫して、息が詰まる。むせるが、口はふさがれているので、喉が焼けるように痛む一方だった。

 

 そこはコンクリートの壁に囲まれた無機質な部屋だった。何のものかわからない赤黒いシミが部屋のところどころを染めている。

 部屋には俺と赤茶髪の男の二人きりだった。しかし男は別段焦ったり何かを心配する素振りも見せず、慣れた様子でチェーンソーの電源を入れる。

 俺は縛られたままだった。男が俺を捕まえた鹿でも見るように観察してつぶやく。

「やっぱり皮膚は人間のままか……俺たちの勘違いだったのか……? まあどちらにせよ、殺すだけだな……」

 チェーンソーがふかされ、唸り声を上げる。

 心拍数は上がり、呼吸もますます乱れていく。

 男は無言で、いきなり俺の右肩にチェーンソーの刃を当てた。

 

 俺は腹から叫ぶようにうなり、もがいた。だが手足は拘束されており、逃げることも抵抗することもできない。

 右腕が落ちた。肩から先の感覚がない。上半身の左右のバランスは崩れ、体重がやや左に傾く。

 無意識にこぼれていく涙が視界をぼやかす。口の中は、ひんやりと冷たく、少し酸っぱいような気がした。

 今度は左肩に刃が当てられる。もがく俺を男は足でおさえつけて、作業を続ける。

 左腕は根元を十センチほど残して、切り落とされた。

 

 ふと冷静になり、思考が鮮明になる。

 ひたすらに後悔した。路地裏で男の声を聴いたとき、すぐに大通りに戻るべきだった。あるいは、男たちがスーツの男を殴っているのに気づいたとき、走って逃げるべきだった。

 もっと言えば、昨夜あのビルの屋上で、変に少女に感化されることなく、飛び降りるべきだった。あそこで死んでいれば、こんなに苦しい思いはしないで済んだのに。

 そもそも家族が黒雷に打たれたりなんかしなければ、俺は今ごろみんなと日常に浸っていたはずなのに。

 まあ、どれもこれも今さら考えたって遅いか。

 男が俺の右足の付け根をチェーンソーで切り込み出したとき、俺は意識を失った。

 

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