新人助手は今日も最強ヒロインに手を焼いている   作:みそすうぷ

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5話

 

 俺は立っていた。

 体のバランスが崩れ、倒れそうになる。しかしなんとか自分の両足で立ち直した。

 

「や……やっぱり……」

 声のする方を見ると、赤茶髪の男が幽霊でもみるような顔をして、地面にへたり込んでいた。男は怯え、低い声をとぎれとぎれにもらす。

「そうだ……そうだったんだ……」

 俺は無視した。

 両肩のあたりが熱くなっていくのを感じた。鉄板を当てられているようだ。見れば、肉片が盛り上がっていくのがわかった。

 立ち上がろうとする男を見たとき、俺は自分が怒っているのだと気づいた。

 怒りは熱になり、さらに肩の温度を上げる。すると、一気に両腕が生えそろった。その見た目は人間らしいとは言えず、漆黒に反射するガラス片が全体を鱗のように覆っている。

「ひぃ……!」

 慌てて駆け出そうとする男の頭を、俺はガラスで表面の尖った右手でつかむ。

 力の加減がうまくいかず、男の顔にガラスがめり込む。俺は手を離し、男を放り投げた。赤茶髪の男は気絶していた。

 男が地面に落ちる音に反応したのか、金髪の若い男が部屋に走ってくる。

「なんだよ……これ…………」

 俺は間髪入れずに金髪の男の腹を殴り、壁に叩きつけた。

 どうしてやろうかと思った。俺をこんな目に合わせてくれた仕返しをどんな形でしてやろうかと思った。

 怯える男の首を掴み、目を覗き込む。男は情けない声を低くもらしてますます怯える。

 そのとき、背中に何かが刺さるような痛みを感じた。体の中に液体が流れ込んでくる。

 冷静さを失っていた。とっさに後ろを振り返るがもう遅い。

 俺は後ろに忍び寄る青髪の女の存在に気づいていなかった。

 両腕の皮膚のみを硬化させていた俺は、背中の生身の部分に得体のしれない注射器を刺されていた。

 全身から力が抜けていくのを感じた。腕の皮膚の硬化が消え、もとの腕に戻っていく。 

 女は注射器を抜くと、俺の背中を足でおさえつける。

 

「何かあったのか?」

 米村と呼ばれていたスキンヘッドの男の声がした。

「遅いと思ったら、暴れてました。どうやら本当に例のトカゲ野郎だったみたいです」

「そうか、なら昨夜あの娘をかばったのはこいつだったのか……」

 米村はしゃがんで、俺の顔を横から覗き込む。

「すみません。油断してました」

「いや、私も一度あっていたのに気づいていなかったわけだからな。昨夜は暗くて顔がよく見えなかったからどうしようもなかったが……」

 米村は立ち上がると、安堵したように言った。

「試験薬を取り込んだやつが見つかって何よりだ。本部に連れ帰ってラボの連中に見せるとしよう。移動するぞ」

「わかりました」

「全く……せっかく作った人工黒雷が水の泡になったかと思っていたぞ……幸運だな」

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