転生したらリコリスでした、長生きしたいです。   作:花餅ふわり

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■プロローグ的な物。


00:花一匁。

『ーーー……り!…く……!』

 

グラグラとした振動と、必死に何かを叫ぶ様な声。

 

『……く………、め…っさ……し…っ!!…こ……ば…!』

 

泡の様に薄い膜を一枚隔て、ゆらゆらと海を漂う様にふわふわとした意識、実にこの場所は居心地が良い。

このままずっとこの不可視の海で微睡んでいたいと、再び意識を深く深く落とそうとした。ーーその瞬間。

 

「~~~こんのっ!ばっかやろう!!はやくめをさませ!おおばかくくりっ!!」

 

何か分からないがひたすら馬鹿を繰り返す耳障りな罵声(声自体は可愛らしいめっちゃ良い声だけど内容があまりにも幼稚で酷い)と、"バチンッ"と頭の中で破裂音がした、気がする。

薄い膜が破れる様な、包んでいた泡が割れる様な、不思議な感覚がした後、其れは急速に現実味を帯びて襲い来る。

 

身体が重い、動かない、全身が耐え難い程に痛む。ーー浅く呼吸をする度に主張する痛みに無意識に顔をしかめる。

特に痛むのは足と背中だ。一定の間隔で焼ける様にジュクジュクと痛む足と背中。ーー痛むのは何故?私は何をしていたの?何でこんなにも違和感があるの?…嗚呼、駄目だ。考えようとすればする程、痛みに邪魔され何も分からない。

 

痛みをこらえながら薄っすらと目を開けると、忙しなく動く赤い影と黒い影が目に入る。目蓋が痙攣しているのだろうか、中々焦点が合わない。

必死に此方に呼び掛ける2つの影をぼんやりと眺め、漸くやっとそれが"赤い服を着た白い髪の少女"と"黒い服を着た黒い髪の少女"であると知る。

 

「くくり!?せんせー!!くくりが起きた!!せんせーってば!!」

「やくわさん、大丈夫ですか?ーー駄目です、動かないで下さい、傷に障ります。」

 

何がどうなっているのか。

自分の置かれた状況を知りたくて身体を起こそうと身動くと、先程よりも強い痛みに身体が跳ねる。それに気付いた黒い髪の女の子にやんわりと肩を押され、現状維持に逆戻りとなる。

 

「…ぁ、……なに、……が………。」

 

せめて何があったか知りたくて声を絞り出せば、黒い髪の子(今は仮に"黒ちゃん"とする)が教えてくれた。

 

『警察からの依頼で連続放火魔を追っていた所、マンションに爆弾を仕掛けた犯人の自爆に巻き込まれ、2階から爆風に呑まれ駐車場まで飛ばされた』と言う。

 

この荒唐無稽な話を聞き、まず最初に浮かんだのは『何で生きてるの?』の一言。

まるで何かの物語の様に出来すぎた嘘みたいな話。

ドラマやアニメ、漫画と言う、自分とはかけ離れた場所の出来事の様で全く現実味が無い。ーーそもそも、どうして私の様な何処にでも居るアラサーOLの一般人にそんな話を持ち掛けたのだ。意味が分からない。勘弁してくれ。

 

身体中の痛みに呻きながらも、言い様の無いモヤモヤとした違和感がずっとある。

視界が鮮明になる事がなく、相手の姿はちゃんとは見えない。それでも黒ちゃんと話している時に、少しの既視感を感じるのだ。ーーあ、声?何かこの声聞いた事がある様な気がする。

 

後少しで分かりそうな、喉に何かがつっかえている様な気持ちの悪い違和感にグッと黙りこむ。

暫く纏まらない思考をグルグル巡らせていると、白い髪の少女(仮に"白ちゃん"とする)が、此方を向いた。

 

「くくり!もう直ぐミズキと先生が来て病院に連れて行ってくれるから。それまで我慢して!分かった?」

「………死ぬほど、痛い………。」

「生きてる証拠!!ーー…死んだら、許さないからね。」

「………ん、がんばる……。」

 

助かると分かったら何となく余裕が出て来た。

何をするでもなく、ボケーッと宙を眺めていると、じわじわと睡魔がやってくる。こういう時に寝ちゃいけないのは雪山だったか。

睡魔を少しでも誤魔化す為に、先程から彼女が口にしている"くくり"や"先生"とは何を考える。まあ、恐らく"先生"は先生で分かる。ーーなら、"くくり"とは何だ?くくり…『括り』?え?私は今から括られるのか?そんな悪い事したのか?

 

「…………あ…。」

 

否、それよりもっと、重大な事があるじゃないか。

眠気で下がる目蓋に抗いながら、ずっと隣りで私や周りを見張る彼女達を見上げ、そっと問い掛ける。

 

「ーーーーあなたたち、だれ?」

 

どちらのかは分からない。分からないけど、ハッと息を飲む気配と、小さな呟きを最後に、私の意識はプツリと途切れた。

 

 




■自爆した犯人めっちゃ迷惑。
■爆弾がそんな都合良くある訳ない?いいえ、あります。理由は『米花町だから』。
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