転生したらリコリスでした、長生きしたいです。 作:花餅ふわり
目が覚めるまで一週間。
怪我の完治まで二週間。
退院して日常に戻るまで一週間。
約一か月…本当に沢山の事があった、めっちゃ大変だった。
でもそこの詳しくは割愛させて頂きます。(いや、だって説明が面倒くsゲフンゲフン。)
取り敢えず、重要な事を二点だけ。
現代でアラサーOLをしていた私は、何の因果か《八桑菊理》と言ういう超絶美少女に成っていた。
正直、一ヶ月経った今でも寝惚けている時に鏡を見ると自分…自分?…の顔に吃驚してしまう。まあ、これに関してはきっと時間が解決してくれると信じている。段々と慣れてきたのがその証拠、叫ばないだけマシになった。最初の頃は鏡を見て『ぎゃあああ!』とか悲鳴を上げていた。それが今では少し肩が揺れる程度の反応になったのだから随分と成長したものだ。偉いぞ自分、もう少しだ自分、頑張れ自分。ーー…よし、自己暗示完了。
そしてもう一つは、この超絶美少女、喫茶リコリコに属する『リコリス』だったのだ。しかも驚く事に立ち位置は《赤服》。
気付いた時には思わずベットの中で頭を抱えてしまった。
平和な日本で生きて来たアラサーOLの私が、平和(笑)な世界を守る側としてこの世界に来てしまった。自分でさえも守れるか怪しいのに、とてもじゃないが日本の平和なんて守れる気がしない。平和の為にと人を殺すんでしょ?説得も何もしないでそのまま頭パンッ、でしょ?無理、無理無理無理。……あ、でもリコリコでは例え悪人でも殺しちゃ駄目なんだった。あ、少し出来る気が………しないわ。と言う押し問答を入院中から永遠と繰り返している。ーーうん、無理。これに関しては保留で!
一先ず、現実逃避もそこそこに、目下一番の問題は"これ"だわ。
目の前にはリコリコの店内で退院してから永遠と同じ議題で話し合っている二人の女の子。…うーむ、今日はいつもよりちょっと長いな。普段ならそろそろ終わる頃なのに。早く終わってくれないとちょっと困る。今日は卵の特売だから買って帰りたいんだけど…。ーーまあ、その話の中心にいるのは"私"なんだけども。
「菊理さんは確かに記憶喪失です!でも彼女は日常生活を何の問題もなく送っています!出来る事まで世話をやいてしまったら、思い出せる物も思い出せなくなってしまいます!」
そう言って私の左手を握るのは、リコリコの仕事着である青い和服にツインテールが似合う美少女の《井ノ上たきな》ちゃん。
元々クールな子らしく、あまり積極的に関わっては来ないけれど、それでも困っている時はさりげなーく手を貸してくれる真面目で優しい女の子。…あ、めっちゃこっちをチラ見してる。お、目が合った。…ふへへ、可愛い、好き。
「菊理が一人の時に襲われたらどうするの?記憶喪失だから咄嗟に対応出来るか分からないじゃない!…ね?菊理?」
そう言って私の右手を握るのは、リコリコの仕事着の赤い和服に生成り色の髪を左側だけ結んだ美少女の《錦木千束》ちゃん。
入院中もよくお見舞いに来て、沢山色んな話をしてくれて世話もやいてくれた陽キャの女の子。陰キャにはない輝きを持っている、眩しい…後光が射してるのでは?あ、こっち見てウィンクしてくれた。…あかん、可愛い、好き。
退院してからずっと『記憶喪失の菊理を一人にして置けない、記憶が戻るまで一緒に暮らす!』派の千束ちゃんと、『記憶喪失だけど一人でも生活出来てるんだからここは見守ろう!』派のたきなちゃんが議論を交わしている。
因みに退院当初はもっと激しかったし賑やかだった。それをのらりくらりと躱していたら日に日に議論が長くなっていた。…あれ?これ私の所為じゃない?
『やめて!私の為に争わないで!』とか言う頭の沸いた巫山戯たセリフが浮かんだけれど、そんな事を言えばリコリコでの私の立場が失墜しそうなので沈黙を選ぶ。沈黙は金、多弁は銀。ってね。
事の成り行きを見守っていると、ガラリと障子の空く音がする。
そしてこの三つ巴を見た彼女の一言。
「なんだお前達、またその話をしていたのか?」
クルミちゃん!ナイスタイミングだよ!
■たきなが菊理をチラ見してたのは『嫌っていると勘違いしてないか心配だった』から。本人は全くそんな事思ってないし、むしろ目が合った、たきなちゃん可愛い~♡位の気持ち。