ナザリックの支援者   作:ムササビ

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出会い

「あ、もう無理だ」

 

 ギルド維持きっつい。

 異業種、人間種問わず所属しており、75人という大規模ギルド『デイモン・ソウル』最後のメンバー、『ミシャンドラ・アイ』はギルド維持を諦めた。

 ワールドアイテムを用いてワザワザ『ルシフェル・ゴンサブロー』(天使族)からギルド長の座を引き継いだというのに、これだ。

 まあ一人で維持できるものでもない。規模を大きくしすぎたのだ。設定中の『グラシャラボラス・フルーツポンチ』(蟲人)が一人一部屋のスペースが! などと言い出したのが悪い。わざわざネームにソロモン72柱+1と地獄の三大支配者の名前を付け足そう、というのも彼女の発案だった。

 維持費のためにPOPモンスターをアンデット系にしようと『シトリー・AAAA(エーフォース)』(森妖精)発案を第二の設定中『レラジュ・巌窟王(エドモンダンテス)』の言葉を皮切りに、維持費のかかるモンスターも配備された。

 まあ、楽しかった。皆でユグドラシルを駆け回り、金を集め、NPCを作り皆で盛り上がったり趣味の詰め込みに引いたり。

 

「でも、もう無理かな…………」

 

 今の稼ぎと現在の貯蓄を考えても、一年も持たない。

 一度ランキング一位を取ってからは皆満足し、趣味に走ったのだから仕方ない。

 

「んにゃ〜! どうしようもない!」

 

 ここでギルドを捨て金やアイテムを回収するか、ギリギリまで維持し続けるか。選択肢は2つ。さあ、どちらを選ぶ………数日は考えて、ある日ある言葉を思い出した。

 

『俺達は悪魔の魂を受け継ぐ転生体(という設定)なんですから、アイちゃんはユグドラシルをやめる時は『それしかない』じゃなくて『もう満足だ』、にしてくださいね』

 

「…………解ってるよ、ゴンちゃん。うん、私は私のやりたいようにやる! 今までありがとう、『ソロモン神殿』! 私は明日を生きるぜ!」

 

 ギルドの貯蓄と各部屋のアイテム、宝物庫のアイテム回収。ご丁寧に個室には『好きに使え』とメッセージがあった。『世界樹の種』とかから、『人化の腕輪・極』とか言う人間種の自分にどう扱えというのか、と突っ込みたいアイテムもあったが。いや、こんなレアアイテム正直かなり嬉しいのだが…………。

 

「さて、皆にもメールで確認したし…………」

 

 後は『Yes』を押すだけ。それで、全部終わり。

 

「……………ばいばい。またね、皆」

 

 過疎化が進み始めたユグドラシル。その日、またギルドが減った。よくある出来事だ、誰も気にしない。

 

 

 

 

 

 

「くそ、くそくそ!」

 

 モモンガは一人森の中をかける。

 今日は最悪だ。

 何時ものように資金集めに奔走し、そこで偶然カンストプレイヤーの集団に出くわしてしまった。

 元々敵の多いギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のギルド長であるモモンガ。ウィキにも乗るほどの有名人。PKして名を上げようというのだろう。

 

「ぐっ!?」

 

 ゲーム故に痛みはない。ないが、視界に広がる炎のエフェクト。ダメージを受けている。更に連続する攻撃。物理エンジンで倒れるモモンガ。

 

「へっへー! やりぃ!」

「俺達ラスボス倒しちゃったよ〜!」

「くっ!」

 

 何時かの光景が蘇る。だが、あの時助けてくれた人はもう居ない。このままでは………

 

「ピー! ケー! ケー!」

 

 と、謎の叫び声とともに新たに現れた影がカンストプレイヤー達に斬りかかる。モモンガとの戦闘で少なくないダメージを負っていた数名がHPが0になる。

 

「な、なんだてめぇは!?」

「なんだかんだと聞かれたら、答えてあげよう!」

 

 ゲームのアバター故に固定された表情は勝ち誇ったような笑みを浮かべた黒髪の美女。神話(ゴッズ)級と思われる刀を持った美女はやたら派手な動きを見せる。

 

「悪魔の魂引き継ぐ聖職者! 可憐な裏には棘を隠す、ミシャンドラ・アイとは私のこと!」

「ミ、ミシャンドラ!?」

 

 その名を知っている。()()()()()()()()1()0()()()()()()()()()()()()()()()()を持つプレイヤー。つまり()()()1()1()0()()、個人最強のプレイヤーの名前。

 

「さあさ我が剣、我が祈り! その真髄特と御覧じろ!」

 

 

 

 

「大丈夫?」

「は、はい…………」

 

 モモンガは困惑していた。眼の前の『最強プレイヤーは誰か?』というスレで必ず名の上がるアイが自分を助けてくれ理由がわからない。彼女と繋がりなど、自分にはない。『聖騎士』、『聖戦士』などを持つカルマ値善よりが条件の彼女がそれを下げかねない行為をする理由は何だ?

 

「どうして俺を、助けてくれたんですか?」

「? 困ってたから」

「………え」

「困ってる人を助けるのは、当たり前。今の『アインズ・ウール・ゴウン』に対異業種PKプレイヤー用ロールの『悪』を演じる余裕なんてないでしょ? なのにラスボスだの悪の総大将だの、なんかムカつくし」

 

 確かに今のモモンガ達にPKKをする余力など残っていない。だが、恨みを買っているのは確かだ。

 

「まあ嘘だけど。あの状況じゃ、貴方が誰かは解らなかったし」

「じゃあ本当に、俺が困ってたから?」

「そうだよ。それがまさかウル君や茶釜ちゃんのところのギルド長とはね」

「それって、ウルベルトさんとぶくぶく茶釜さん?」

「うん。他にも『るし★ふぁー』さんはうちの元団長………ギルド長とも仲が良かったしね」

 

 そういえば、そんな話を聞いたような。

 

「ね、モモちゃん」

「も、モモちゃん?」

「私さ、ギルドが無くなって暇なの。でね、モモちゃんがギルドを維持したいって気持ちはわかるから………お手伝いしていい?」

「え、それ………は………い、いいんですか?」

「ゴンちゃん………団長の言葉でね、ギルドに縛られず好きなようにやれって……私はずっと縛られてたけど、何度計算してももう無理なところに来ちゃったから」

 

 悲しそうな声色に、モモンガは自分もそうなる可能性があるだけに他人事とは思えなかった。

 

「縛られないためにギルドを畳んだけど、じゃあ何がしたいかって言われるとね、何にもないの。そしたらさ、私には出来なかったことをやろうとしてるモモちゃんを見つけた」

 

 ギルトの規模はナザリックの方が小さく、POPモンスターにもアンデット系が至り種類が少なかったりと、維持費は文字通り桁が違うレベルで少ない。

 元々モモンガだけでも一年以上は持つだろう。そこにアイの支援も加わるのなら、確かに助かる。

 

(俺もこの人みたいに、なるかもしれないんだよなあ………)

 

 リアルが今よりも忙しくなるとか、来れなくなる理由はいくらでも考えられる。そうなれば金を稼ぐのも難しくなるだろう。

 でももし、手伝ってくれる人が居るなら……………

 

「よろしく、お願いします」

「ん、よろしく」

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