ナザリックの支援者   作:ムササビ

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終わりの始まり

 北原愛はその名の通り両親に愛されて育った。

 家は決して裕福とは言えない。父は死ねば骨が回収されることすら稀の現場で命を落とし、案の定骨は戻らず。

 母はせめて小学校を卒業するまでと仕事に加え、バイトを増やし過労死した。

 ()()()()()()()()()()愛は何度もやめるように言った。愛しているなら、生活が苦しくても側に居てほしいと。

 5()()()()()()()()()()の可愛い我儘で己を曲げる人間などいなかったが。

 引き取る親戚もおらず、天涯孤独となった愛に目をつけたのは母の会社の社長だ。元々母の美貌を絶対に使えると思っていたが、既婚者を使ったという風聞を気にしていた彼は容姿が似ている愛を育てることにした。

 事実愛は母以上の美貌に、聡明な頭を持っていた為かなりの商品価値を持っていた。

 どこに売るか考える養父に愛は己の価値を上げた。

 仕事を手伝い、会社を大きくしていった。

 娘として愛されるよう、演じてみせた。

 会社の格が上がれば娘を渡す価値のある会社が減る。娘として愛されれば、養父の中で己の価値がさらに釣り上がる。

 少し私怨がまじり取引先の会社の一つの役員が全員首を釣ったが養父は気にしなくていいと慰めてくれた。本当にこちらを気遣ってのその態度に、ちょっとだけ罪悪感を覚えた。

 その後養父から進められたのはVRゲーム。

 現実を忘れて遊んだらいい、とのことだ。

 そこで愛はアイになった。

 事実ゲームの世界は、レベルがなければしたいことも出来ない世界はアイに始めて『苦労』を味合わせ、しばしリアルを忘れて楽しんだ。

 運営の気まぐれで変わるドロップ率の変動、妙なイベント、情報がないため予想も不可能なワールドアイテムによる変化。目まぐるしく変わるそれは、愛にとって新鮮で、誰かに頼るのもその頃覚えた。

 友達も出来た。なんと声優だ。

 現実では不可能な事が可能なフィクションは愛の好むところ。ユグドラシルにハマった要因の一つになる程度には。故にその仕事に関わる彼女は間違いなく親友だ。まあエロゲーもやってたけど…………一応プレイした。

 でも、幸せな時間は何時か終わる。永遠などないのだ。

 ギルドメンバーも、フレンドもゲームから離れた。

 モモンガにはああいったが、まやかしの世界に幸福を求めたのはアイも同じ。ただ彼と違い最初から手に入らないと解っているから、八つ当たりしてしまっただけ。

 そんな自分を誘ってくれた彼は………自分に親愛を向けている。

 慰めると同時に、これ以上友人との繋がりを消えないように必死だ。現実でのみの関係を信じきれない様は、なんて惨め。でも、少しだけ可愛いと思った。

 

 

 

 

 

 

「いやいや、北原さんにこんな美人な娘さんがいたとはねえ」

「どこに出しても恥ずかしくない自慢の娘です。ええ、血は繋がらずとも本当の娘だと思っています」

「はい、お義父様。私も同じ気持ちです」

 

 この家に入れるのも後少しだな。

 今よりもっと贅沢ができるが、親としてではなく男として自分に性愛を向けてくる男はきっと妻となった自分を縛ろうとするだろう。これはそういう類だ、気持ち悪い。

 向けられる愛は愛でも、この手の欲望に塗れた愛はどうにも好きになれない。

 

「ふふ。どうだね、今夜は二人で飲み明かし未来を語るというのは」

「え、あ………し、しかし愛とは今日があったばかりで」

「愛さんの自慢は君から聞いてる。初めてあった気がしないぐらいな………愛さんもそうだろう?」

「ええ………恥ずかしながら、私もお話したいと思っていました」

 

 もちろん嘘だ。だが養父の顔を立てなくては。

 

「そ、そうか…………愛、その………」

「大丈夫ですよ、お義父様………この婚約は幸せになれると、そういったのはお義父様でしょう?」

 

 

 

 

 

 

「ああ、もう! 余計な時間使わせてあの豚め! うう、こっちのアバターにも感触が残ってる気がする!」

 

 苛立ち混じりに暴れまわるアイ。

 ゲームの演技(ロール)に戻りモンスター共をバッタバッタと倒していく。タイミグ悪く接敵したプレイヤー達も犠牲になった。

 

「ふう、すっきり! さて、モモちゃんのとこ行きますか!」

 

 『連絡来ました』とメールを送ってきたモモンガ。彼から聞いた話からギルドメンバーの人物像を予測すると、まあ所属は可能だろう。彼等もギルドホームを維持しているモモンガに罪悪感を覚えている。だから、規則なんて無視して『ギルメンを増やしたい』という彼の要望は必ず通る。

 

「アイさんアイさん! やりました! 許可がおりましたよ!!」

 

 ほらね。

 嬉しそうに報告してくる骸骨が、映像で見たことがある棒を拾ってくる犬によく似ていると思ったのは内緒だ。

 

 

 

 

 

「これがペロロンちゃんの作ったNPCねえ…………え、パット? あれ、これもしかして」

「ええ、貧乳にするために設定に付け足したんです」

 

 

 

「ウル君の悪魔かぁ。おお、悪としての価値観がずらりと………あれ、でもこれ弱者相手にやったらそれこそウル君が嫌いな富裕層になっちゃうんじゃ」

「まあ、そこもちゃんと解って行動するのでは?」

「あはは、そう行動してくれると良いね」

 

 

「さっすが茶釜ちゃん! かわいい双子! メールでは知ってたけど実際見ると、うん………茶釜ちゃんの好きなタイプだ。でも男の子と女の子別なんだね」

 

 

「ヘロちゃん、ホワブリちゃん、本当メイド好きだなあ」

 

 

「お、やまちゃんが作ったNPC? やっぱりいい子だね。あんこちゃんの作ったメイドは、犬で………ん、何このペンギン? 反逆?」

 

 

「守護者統括…………ビッチなのか」

 

 階層を回りながら、格NPCの設定を読んだりしながらナザリックを知っていく。自分達の嘗ての栄華を誇るようで、モモンガは楽しそうに語っていく。

 大浴場に入ったり(温度は感じない)カジノで遊んだり(アイの圧勝)しながらまた資金集め。

 そうこうしている内に、時間は近づく。

 

 

 

「いよいよ明日、ですか…………」

「早いもんだねえ。私はどうしよっか、昔馴染みを呼んだんでしょう?」

「紹介したいですから、来てくださいよ」

 

 と、円卓で話し合う二人。

 ユグドラシルもいよいよ明日で終わる。そして、アイもその次の日に結婚式を上げるそうだ。

 養父が最後の思い出づくりに、と時間を作ってくれた。自分を愛してくれるように接してきた結果とはいえ、親として愛してくれたことに感謝している。

 

「…………ありがとうございました、アイさん」

「ん?」

「貴方のおかげで、俺は明日、これなかったとしても皆を恨まずにすみそうです」

「………良いってことよ。モモちゃんが私を幸せにしてくれようと頑張ったから、おあいこだよ」

「…………俺は、あなたを幸せにできましたか?」

「…………………楽しかったよ」

「…………幸せとは、行ってくれないんですね」

「モモちゃんには、嘘つきたくないなあ」

 

 それが答えだ。ここは、所詮泡沫の夢。ましてや、結局ほとんど素材集め。その合間に遊んだ程度なのだ。

 

「また明日ね、モモちゃん」

「…………はい」

 

 

 

 

 

 本当はモモンガを出迎えてやりたかった。

 だけど、エロ豚が食事に誘ってきたせいで遅れた。会社の人心掌握したら事故死させてやろうかあの豚。

 などと内心悪態を付きながらモモンガに『今から行きます』とメールを送りログインする。

 残り一分もない。

 

「転移転移!」

 

 指輪起動させ転移先一覧を開く。玉座の間に近いのは………!?

 

「…………え」

 

 グニャリと、視界が歪む。

 目眩? 違う、これは………何が?

 次の瞬間には世界が真っ黒に染まり……………気が付くとアイは草原に立っていた。




主人公はリアルワールドに生まれたラナーみたいなもんです。
容姿も頭脳もずば抜けていて同種を持たないけどラナーより諦観していて、周りに期待せず理解されることを放棄している。
もし幼い彼女がクライムと出会う前のラナーと出会った場合、ナザリックが来る頃に王国は滅び二人は帝国領となった辺境で百合の花畑とキマシの塔を生み出す。
逆に互いに成長した状態だと相性が良くない。
元から理解されない前提の愛は人間に対しても愛情を注いでいるので、余程の屑でもない限り命を奪うとかはしない。
因みにもし人の命を価値なしとするフレーバーテキストがアンデットや悪魔等の異業種アバターで転移してしまった場合、人を愛するために人を玩具にする。
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