私が決めていたのは二つ。誰にもライブを止められなかったら、そのままウタの世界で生きる。誰かが──できることならシャンクスが──、ライブを止めさせたら、それでその時ウタが取り返しのつかないところまで進んでしまっていたら、代わりに死ぬ。それだけだった。
私は別に、『Tot Mnsica』に囚われてしまっても構わなかった。ウタが選んだ地獄の業火で、死ねないまま焼かれ続けたって文句はなかった。反対に、あの子が永劫救われない救世主に成り果てても、助けてやろうという気持ちは湧かなかった。
ウタを救ってやりたいと、本心から言い切るためには私は多くのものを失っている。他でもないあの子の咎によって。
ゴードンさんは悪いのはウタではないと言い切るけれど、『Tot Musica』だけが揺るがない悪なのだと叫ぶけれど、だったら海軍にもそう言えばよかったのだ。それが真実、その通りであるならば、ウタに隠し事をしなくたって済んだだろう。けど、過去はそうじゃない。
ゴードンさんは隠したし、ウタは偶然に導かれなければ知らずに生きていていただろうし、赤髪海賊団は素知らぬ顔で汚名を被った。だから、そういうことだ。
悪くないなんて、そんなの嘘だ。そうじゃないと、私はどうやって自分の心と折り合いをつければいいのかわからない。両親を、友達を、故郷を奪った張本人。けれど、私を絶望の淵から救ったいもうとを。奈落の底に突き落とした、私の天使。
憎い。悲しい。つらい。苦しい。けれどウタが大切なのも本心だ。尊敬してる。皆に認められてほしい。その歌で世界を塗り替えてほしい。全てが本物。嘘はない。だから私はどちらも選ぼう。
家族として、あの子を守ろう。
遺族として、あの子を呪おう。
迫り上がってくる汚泥のようなこの感情はきっと、愛と呼べるものではない。
結局、何が悪くて、何が正しくて、ウタは悪かったのか、私は正しかったのか。そんなものは何一つ分かりはしなかった。私にそういうことを教えてくれる人はもうこの世にはいない。そして、私はその人たちと同じところにはいけない。
私は海の底でウタの歌を聴く。あの子が死ぬまで、あの子の歌を聴いて波間を揺蕩う。あの子が空に召されたなら、ようやく私は地獄に落ちる。
可愛い妹を愛せない罰を受ける。
愛する家族を切り捨てた罰を受ける。
肩を並べた同胞たちの無念を晴らさない罰を受ける。
あの日エレジアに居なかった罰を受ける。
あの時エレジアで天使を見た罰を受ける。
私は、正しくなかったかもしれない私の選択にも後悔を抱けない愚かさの罰を受けなくてはいけないから。
だからね、ウタ。私、本当にどっちでもよかったの。あなたの歌を聴けるなら、夢の中でも、業火の中でも、海の底でもどこでだって構わなかった。
けど、そんなことを思ってしまうから、私はあなたを泣かせることしかできないんだね。それを喜んでしまう私のことを、どうかずっと許さないで。
私も、あなたを決して許さないから。