ダブルクロス3rd the Edition~City~   作:Kotatu

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シーンプレイヤー
PC1 東川 卓朗

侵食値
+1D
29+3→32



オープニングフェイズ1『日常の終わり』

 

「ストレスを解消するにはカラオケが一番ってな!」

 

木曜午後11時、誠也が最後の曲が歌い終わり、高校生二人は手足を投げ出している。明日も登校する生徒の行動とは言いがたい。

今日は早く帰ると両親に言ってしまった卓郎としては、一分でも早く家に帰らなくてはならない

 

「ったく…。憂さ晴らしもいいけど、程々にしとけよ。帰りが遅いと親父達に悪いからな。先行くぞ」

 

「おいおい、そう急ぐなって。そういやお前、近頃噂になってるこの町の都市伝説を聞いたことあるか?」

 

「ああ、この町に化け物が出没する話だろ?おまけにその化け物から市民を守る警官がいる。アニメや漫画じゃあるまいしそんなのデマだろ?」

 

「じゃあさ、化け物ってどんな奴だと思う?」

 

「………。」

 

卓郎は思わず言葉が詰まる。

幼い頃から自分は黒い球体のような物体を念じるだけできてしまう。果たして自分は目の前の友人と同じ人間と言っていいのだろうか?巷で騒がしてる化け物も実は、自分のように周囲から言わせれば超能力染みた力の持ち主ではないだろうか…。

 

(こんなふざけた力がそこらじゅうに溢れてたら、今頃世紀末みたいになってるっての)

 

現実離れした妄想を頭から追い出し、偽りの解答を答える。

 

「そりゃ、化け物っていうぐらいなんだから人間離れした外見してるんじゃないか?鉤爪や異常な量の筋肉とかそんなとこだろ」

 

「化け物は結局化け物ってことかぁ。俺も都市伝説のヒーローみたいな力があったらなぁ…。

悪いな引き止めちまって、じゃあな」

 

誠也はそう言い残して、自宅へ行ってしまった。

 

 

「お、おう…。俺も急がないとな」

 

少しでも早く家に着くためにも路地裏を通る。普段もよく利用する道で最短距離も頭に完全に入っている。

 

だが…今回に限って何かが違った

 

(なんだこの匂い…?しかも気持ち悪いし、寒気がする…)

 

卓郎は、違和感の正体に疑問を抱きながらも家路を急ぐ。曲がり角に差し掛かった所で横目に何者かが走ってくる姿が視認できた。

(早く家に帰らないと…)

 

注意を少しでも向けていればわかっていたかもしれない。

 

 

 

こちらに向かってくる『それ』の異常な速度と形質に

 

「がふっ!?」

 

『それ』から目を離した時点で卓郎の体は地面から離れ、サッカーボールのように容易く突き飛ばされた。

ノーバンウンドで建物の壁に叩きつけられ、身体中から嫌な音がなる。

 

(一体何が起きて…)

 

恐る恐る顔を上げると『それ』は卓郎の目の前にそびえ立っていた。

 

目測で2mほどの身長。ここだけなら人間の範疇と言えるだろう。

全身は剛毛に覆われ、地面に付くほど長い左腕。人間のものとは思えない鉤爪を持つ右腕。裂けた口からは犬歯だらけの口内が見え隠れしている。

 

都市伝説とばかりと思っていた化物がこうして自分の前に存在する。卓郎は壁に背を預け、化物の姿を見ることしか出来ない。

「う……あ……」

 

「ガ………ッテ」

 

対する化物は右手の鉤爪を突き出しながら卓郎に歩みを進める。

 

「来るな…」

 

化物の歩みは止まらない

 

「来るなよ…!」

 

化物の肩が微かに震える。それでもなお、右腕を卓郎に近づける。

 

「来るな!来るな!!来るな!!!」

目に涙を浮かべ、卓郎は差し出された腕を振り払う。

 

「お前みたいな化物なんて…」

 

卓郎の言葉に呼応し、背後に漆黒の扉が出現する。

扉が開くと隙間からは黒い球体が放出し、化物の右腕の周りに漂う。

 

「消えちまえよ……!!」

 

化物の右腕の周りに浮いていた球体は、共鳴するように振動し始める。

次の瞬間、化物の右腕は内部から引き裂かれるように崩壊した。

 

「ア、ガァァァァ!?」

 

化物は、右腕を抑えるが出血の量は収まることなく余計に酷くなるだけだった。

「……ア……ダ…」

化物は立つ力も無くなったのか膝を地に付ける。卓郎は、先ほどの力をもう一度行使すれば化物を絶命させることも出来るだろう。しかし、まだ高校生である卓郎はその一歩を踏み出すことは出来なかった。

 

「……………イ」

 

《知覚判定 達成値8》

2D+2→6 失敗

 

「?」

化物が何か言ったような気がしたが、声が掠れてよく聞こえなかった。

化物は立ち上がるとおぼつかない足取りで、卓郎から離れていった。

 

 

 

 

ズドン!!

 

まるでタイミングを見計らったかのように銃声が響き、卓郎の視界には頭部が吹き飛んでその場に崩れ落ちる化物の姿があった。

「えっ?」

 

化物のいた場所には大型拳銃を持つ一人の男性がいた。

「おやおやぁ、こんな時間に一人でいたら危ないって親さんに言われなかったかい?まぁ大事には至らなくてよかったよ」

 

「貴方は一体…?」

 

「足立 透。しがない一刑事だよ」




解説コーナー

シンドローム:バロール
主に魔眼を生成し、魔眼から発生する重力で相手を攻撃する。エンゲージから移動するエフェクト、射撃エフェクト、RCエフェクトもあり、白兵、射撃、RC特化のPCを作ることができ、扱いやすいシンドロームと言える。侵食率次第で時間を操るエフェクトも使用可能になる。

例 ブラゴ(金色のガッシュベル)

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