【完結】都立西方浄土高校女子だらだら部部長にして華麗なるお嬢様崋山危懼子ならびにその他女子部員らの活動記録、あるいはなぜだらだらの日常はあっけなく崩壊したかということに関する簡潔な報告 作:ほいれんで・くー
「いやちょっと待ってくださいまし」と危懼子が言った。彼女の目は怪しく輝いていた。それは別段敵意だとか邪気の表れではない。危懼子はだいたいいつも何か心に強く思ったことを口に出そうとする時に目が輝くのである。それは彼女の天性のカリスマを意味した。だいたい目の輝きは言葉に力を付与する。その言葉を聞く者は目の輝きを見て「あ、これは今から大事なことを言うな」と思うからである。
この法則を知っていた古代ローマの弁論家たちは、演説の前には目薬を用いて目をテカテカに輝かせたものであった。大プリニウスによると、古代ローマの目薬は炭酸亜鉛、
嘘である。前段に書かれたローマ云々の話はすべて嘘である。特にキケロとクインティリアヌスについては嘘である。信じてはならない。しかし目の輝きが言葉の力を幾分か増すというのは経験的に理解できる法則である。これは確かなことである。生きているのか死んでいるのか分からないおばあちゃんが悪戯を咎める時にくわっと目を見開いて「そんなんしたらアカン!」と叫ぶ。子どもは即座に悪戯をやめる。言葉が怖いのではなく、目が怖いのである。そういうことがままある。
目に見えぬなにごとかに突然言葉を中断されたような気がしていた危懼子であったが、彼女はもう一度気を取り直して「いやちょっと待ってくださいまし」と言った。目の前では今まさに黄金のカタツムリと漆黒のマイマイカブリによる金と黒の決闘が(いや、あるいはそれは決闘ではなく一方的な虐殺に終わるかもしれないが)開始されようとしていたが、彼女としては口を挟まずにいられなかったのである。
「こんなに大きいマイマイカブリ様がいるわけがないでしょう、常識的に考えて」と危懼子は言った。「Wikipediaによるとマイマイカブリの体長はだいたい3センチから7センチと書いてあります。でもこのマイマイカブリ様はどう見たって15センチはあるではありませんか。こんなにデカいマイマイカブリがいるのはおかしいでしょう」
危懼子はスマホを見ていた。つい先ほど黄金のカタツムリがマイマイカブリについて話した時、彼女はスマホでマイマイカブリについて調べていたのである。なんでもスマホに頼るという点で危懼子はまごうことなき現代っ子であった。昔の若者は何か気になることがあった場合、図書館に行って図鑑や百科事典を開いたものである。そして別に面白い記事を見つけて読み耽ってしまい、当初の疑問はほったらかしのまま図書館を去ったものであった。それでけっこう知識は蓄えられたのだった。「あるいはWikipediaを参照する私が愚かなのかもしれませんが……」と危懼子は付け加えた。おそらくその言葉は正しかった。
「それ、その虫の大きさについて、今更言うべきことかしら?」とマルタが呆れたように言った。彼女はマイマイカブリから目を逸らしていた。やはり日本はヤバい国である。こんなに大きくて黒くて怪異な見た目をした虫がいるとは、この国は神様から見放されているとしか思えない。ポーランドの虫はここまでおぞましくはない。祖国ポーランドにおいては虫ですら愛らしい。昨日コンビニで新発売のケーキを買って「こんなに美味しいものが簡単に手に入るなんてこの国は神様に祝福されているに違いない」と思ったのをその時の彼女はすっかり忘れていた。
「シスター・マルタ、それはどういう意味かしら?」 そのように危懼子が反問すると、マルタは淀みなく答えた。「だって、今まで誰もツッコまなかったけど、そもそもからして神と自称し人間の言語を自在に操る黄金のカタツムリがいること自体がおかしいじゃない」マルタの言葉に命賭が頷いた。「そうだよねぇ。まあ百歩譲って神と自称し人間の言語を自在に操る黄金のカタツムリがいることは別に不思議ではないとして」「その百歩はきっとロバート・ワドローなみに背が高い人の百歩でしょうね」とマルタが口を挟んだ。ロバート・ワドローは1918年から1940年まで生きたアメリカ人男性である。身長は272センチあった。彼は
命賭はマルタの言葉を受け流して話を続けた。「それに危懼子ちゃんがツッコむべきなのはマイマイカブリの大きさではなくて、そもそもどうしてマイマイカブリが人間の言葉を操れるのかということだよねぇ。それに虫の体長に関してはその生息域によってかなり誤差が出るから、Wikipediaに3センチから7センチって書いてあってもあまり気にしなくて良いよ。特にこの子が他のマイマイカブリよりたくさん食べて大きく育ったというだけかもしれないし。ほら、都会のアゲハチョウより田舎のアゲハチョウの方が大きいってことはよくあるよ」
「ぐぬぬ……」危懼子はしばらく唸った。自分なりに得心がいくまで彼女は唸った。それにはあまり時間はかからなかった。彼女はお嬢様らしく鷹揚で単純だった。「分かりましたわ、シスター・マルタ、命賭様。私のツッコミが野暮であったことを認めましょう。考えてみればこの世は不可解なことばかりです。地震が起きたり、雷が起きたり、不況になったり、食べたらお腹が減ったり、生まれたのに死ななければならないことはすべて不可解なことです。私はこの目の前にいるマイマイカブリ様を不可解なものであると感じつつも、その存在そのものは信じることにいたしましょう」
「地震発生のメカニズムは地学によって説明可能」と桜子が言った。「雷も気象学によって」と薫子が続いた。「不況になるのは景気循環論から一応説明できる」「食べたらお腹が減るのは生理学と消化器学」 そこまで言ってから、二人は抱き合って同時に嘆きの声を上げた。「でも、生まれたのに死ななければならないのはやっぱり不可解」 その言葉は慄きの感情に満ちていた。
「決して不可解ではない、同一の遺伝子情報を有する二つのヒトの個体共よ!」と、マイマイカブリが突然声をはり上げた。彼は虫らしい忍耐強さで女子高校生たちのだらだらした
「あらゆる生命体は生まれたら必ず死ななければならぬ。いや、我々がすべて生とみなしているものは死の一局面の無数の連続に過ぎない。生まれたのに死ななければならぬと考えてしまうのは、我々の言語と思考力という本質的な制約から死を連続体として認識できないゆえにそう感じるに過ぎないだけだ。実のところは何も疑問でもないし不可解でもない。物を食い、糞を垂れ、生殖活動に耽るのはすべて死の一局面である。この世に生まれるというのもまた死の一局面である。私が今からこの黄金のカタツムリを食するのも、これは生の一局面であると共に死の一局面である。私は食うことによって同時に死んでいるのだ。であるからして黄金のカタツムリは『自分は死ぬのに相手は腹いっぱいになるのは不公平だ』と感じてはならぬ。それは全知全能を自称する存在にはいかにもふさわしくない思考である。しかして私はこれからこの黄金のカタツムリを食べる。人間の小娘たちよ、私を邪魔するでない。はい、おしまい。もう全部おしまいでーす!」
マイマイカブリの口調は尊大であった。自分の考えを絶対のものであると確信しているようだった。双子はマイマイカブリの話を聞いて怒ったような、不満そうな色をその無表情の上に薄っすらと浮かべた。何か理屈は通っているようではあるが、言いくるめられたような気もする。双子は言いくるめられるのが嫌いであった。「あなたたちは双子なんだから」とこれまでの人生で何度言いくるめられてきたことか。しかし双子はマイマイカブリに反論しなかった。虫相手にムキになるのもどうかと思われたからである。
「なんていうか、その……なんですの? なんだか……」「そうだよねぇ、なんていうかねぇ……」「そんなに理屈をひねくり回さないで、『食物連鎖』だって言えば一言で片付くんじゃないの?」 双子以外の危懼子、命賭、マルタにしてもマイマイカブリの話は長い上に多少迂遠に感じられた。それはマイマイカブリが虫であるがゆえに、同じ言語を用いていても人間の思考と本質的な差異が生じてしまうからかもしれなかった。しかしマイマイカブリが黄金のカタツムリをこれから食するというのは明らかであった。マイマイカブリは黄金のカタツムリににじり寄った。黄金のカタツムリは悲鳴を上げた。
「ひええっ! はい、おしまい。もう全部おしまいでーす!」 黄金のカタツムリは岩の上を逃げ惑った。やはり気色悪い動きだった。カタツムリであるのにも拘わらずそのスピードはハツカネズミのそれにも匹敵した。あるいは、それはカタツムリが神であるがゆえに可能なスピードであるかもしれなかった。マイマイカブリはそれをじっくりと観察していた。これまでに何匹ものカタツムリを食してきたという経験と、それによって生じる自信が彼に絶対的な余裕をもたらしているようだった。「そう、おしまい。もう全部おしまいでーす!」 なぶるようにマイマイカブリは言い放った。
ここで危懼子が問いを発した。訊かずにはいられない問いだった。「ねえ、黄金のカタツムリ様。あなたは神にして全知全能なのでしょう? それでしたら、その力を用いてこの苦境を脱すればよろしいではありませんの。ほら、色々と手は考えられますでしょう?」
命賭が言葉を引き継いだ。「たとえばさ、巨大化するとか。そう、ゴジラなみに。そうすればマイマイカブリなんて踏み潰してイチコロだよ」
マルタが続けて発言した。「他には……そうね、ゴジラなみにならなくても良いから、人間に変身するというのはどうかしら。人間の言葉を喋っているのだから、今更人間の姿形になったとしても何も問題はないと思うし」
マルタのその提案に対して命賭が首を振った。「駄目だよぉ、それは。それじゃ出来の悪い小説みたいじゃない。人外キャラがすぐに人間化するのは安直に過ぎるよ。せっかく人外キャラとして登場したのにすぐに人間になったら、そもそもなんで人外キャラとしてそのキャラを作品に出したのかという作劇的な問題が生じるし、それに人間キャラでは担えない人外キャラならではの役割がないがしろに……」
マルタは怒ったように言った。「今、目の前で展開されているのは
黄金のカタツムリはカタツムリらしくしばらくむっつりと沈黙した。目まぐるしく思考力を働かせているようだった。思考するためにカタツムリは動きを止めていた。襲い掛かるのに絶好のタイミングであったが、マイマイカブリは動かなかった。「私も思考力を持つ生き物であるから」とマイマイカブリは言った。「同じく思考力を持つ生き物の思考を奪うような真似はしない。その肉は奪うが霊を奪うことはできない。なぜなら霊は尊いものであるから」
マルタが言った。「『神よ、私のために清い心をつくり、私のうちに新しい、正しい霊を与えてください。私をみ前から捨てないでください。あなたの聖なる霊を私から取らないでください。あなたの救の喜びをわたしに返し、自由の霊をもって、私をささえてください』」 双子が補足した。今度は薫子が先に言った。「『詩篇』」 桜子が続けた。「第51篇10節から12節」
カタツムリはようやく言葉を発した。「色々とご提案をいただきましたが、私としては巨大化することも正体不明の病原体になることもできません。その『できない』というのは能力的な意味での『できない』ではありません。なぜなら私は全知全能なので、やろうと思えばそれらすべての提案を実行に移すことは可能なのです。私がここで『できない』というのは、私がそう望まないという意味での『できない』です。私がなぜ望まないのかと言えば、それは単純に、私がそのようなことをすれば世界の法則と秩序が乱れるからです。カタツムリはマイマイカブリに食べられ、マイマイカブリはカタツムリを食べる。それがこの世の仕組みであり、犯すべからざる秩序です。神であるがゆえに私は神が作ったこの世界の法則を乱すことを望みません」
「いえ、それは
危懼子の考えていることをマルタが代弁した。「それはやっぱり意志としての『できない』ではなく、能力としての『できない』ということになるのではないかしら。長くなるけど、まとめるとこうよ。神は全知全能である。神はその全知全能を以てこの世を創造し、この世の秩序をも作った。ゆえに秩序は神そのものである。しかして、ここに神を食そうとする存在がいる。その存在もまた神が作ったものであり、食すという行為も神の秩序の中に位置づけられるものである。神は全知全能であるがゆえにその存在を排除することが可能であるが、それは秩序を犯すことになり、ひいては自己そのものを否定することになるので、神はそれを排除することができない。ここにおいてパラドックスが生じる。神は全知全能であるが、全知全能であるがゆえにその全知全能性を
命賭がうんざりしたような声をあげた。「なんか面倒になってきたなぁ。もう少し簡単にまとめられないの?」 マルタはじっとりとした眼差しを命賭に向けた。「ポーランド人である私が日本語で思考して日本語で話しているのですからそれくらい我慢してよ。私、ポーランド語だったらもっと上手く言える自信があるわ」「ご、ごめんね。軽率な発言だったわ……」 命賭は謝った。命賭は日本語の難しさをその身に沁みて知っていた。彼女の苦手科目は国語であった。
「つまり黄金のカタツムリ様、あなたは知らず知らずのうちに自分で自分を騙しているのですわ。あなたは能力的な意味でマイマイカブリから逃れられないのにもかかわらず、それを意志の問題にすりかえている。どうしてそのような
危懼子がそのように問うと、カタツムリはまたねっとりと思考を開始した。触角を激しく出したり引っ込めたりしていた。遠くから運動部の活動する音が響いてきた。「セッツ、ハット、ダウン!」という掛け声が聞こえてきた。運動部はどうやらアメフト部であるようだった。ボールが蹴られる音がした。
触角の出し入れがいっそう激しくなり、また弱まり、そして止まった。黄金のカタツムリは諦めたような口調で言った。「ではこの場合どうするのが良いのでしょうか。私は……私は神である。全知全能である。この世もまた全知全能の神によって作られたものであり、目の前で私を食べようとしているマイマイカブリもまた全知全能の神が創り出した存在である。私はこのような存在を創り出した記憶はありませんが、神が創った存在であるのは間違いないでしょう。なぜなら神が創り出さなかったものはこの世に存在しないからです」
双子が口を開いた。「世界は神が創ったが」と桜子。「スマホゲーは人間が創った」と薫子。二人は先ほどの全知全能のパラドックスの話が退屈だったので、途中からスマホゲーをしていた。二人はデイリー任務をこなしていた。半裸に近い美少女たちが調理器具と戦うゲームだった。それは野菜の擬人化ゲームだった。
危懼子が叫ぶように言った。「スマホゲーをおやめなさい、双子! こういう時は真摯に話を聞くのがあらまほしきお嬢様……ではない、あらまほしき『女子だらだら部』部員の姿ですわ!」 双子はいかにも
カタツムリは苦渋に満ちた声で言った。「神が神として矛盾しないように存在するためには、神の創り出した秩序を侵害しないことが必要となる。それはこの場合、つまり、やはり、いえ、考えたくないことですが……」 カタツムリは一瞬だけ黙った。そして大きな声で言った。「私がこの世の秩序を維持するためには、私はここでマイマイカブリに食べられなければならない! ほらやっぱり、こんなことは最初から分かりきっていた!」 黄金のカタツムリはその内心の激しい
「懊悩?」と桜子が言った。「Oh no.」と薫子が付け足した。
マイマイカブリは勝ち誇ったように言った。「ようやく得心がいったようだな。ではこれで私も遠慮なくお前を食することができるというわけだ。安心するが良い、私はお前を食することでお前の創り出したこの世の秩序を維持する。お前は私に食されることによってお前の全知全能性を証明するのだ。では、さっそく……はい、おしまい。もう全部おしまいでーす!」
ついにマイマイカブリは動いた。彼は黄金のカタツムリをその発達した前脚で捕まえ、絹のように滑らかなその軟体部に大顎で噛みついた。「ガブリ」音を立てて大顎が黄金のカタツムリに突き立てられた。「ガブられました」黄金のカタツムリが言った。
「随分とまあ、無抵抗に」とあきれたような声で危懼子が言った。「食べられますこと」 黄金のカタツムリが答えた。「一応粘液を出して抵抗しています。現状それが唯一の抵抗手段です」「そうですか」 危懼子は同情した。
「マイマイカブリはねぇ」と、貴重な神殺しの現場を見ながら命賭が言った。「肉を
マルタが顔を蒼ざめさせた。「それはいかにも残酷な……」 しかし彼女はすぐに言葉を訂正した。「……いえ、本当に残酷かしら? 生きたまま体を溶かされて食べられるのは人間としての感性からすれば確かに残酷なように感じられるけど、マイマイカブリとしてはそのような食べ方しかできないのだし、まったくそれが一番合理的な、それこそ世界の秩序に適うような食べ方なのだから、人間である私があれこれと横から言うのはまったくお門違いというものじゃないかしら」 彼女は意識して「お門違い」という言葉を使った。それは彼女が日本語を学習し始めて二ヶ月経った頃に覚えた懐かしい言葉であった。
「でもやっぱり見ていて良い気持ちはしませんわね」と危懼子が言った。「仕方ないね、私たちは人間だからね」と命賭。「そうね、人間だから残酷だと感じてしまうのは仕方ないわね」とマルタ。「それに人間だって残酷な食べ方をする」と桜子。「どじょう豆腐とか」と薫子。「どじょう豆腐、本当は伝説の類らしいよ。湯が熱くなってもどじょうは豆腐にもぐり込まないで、そのまま死んじゃうんだって」 命賭がそのように言うと、双子は顔を見合わせた。「知らなかった」「また一つ賢くなった」
その時、その瞬間にも生きたまま食べられている黄金のカタツムリが言葉を発した。「見ていて良い気持ちがしないのなら、どうか助けてはいただけませんか。私は私のため、そして世界のためにマイマイカブリに対して抵抗することができませんが、あなた方が私を助けるというのは、これはべつだん世界の法則に抵触するわけではないと思います。ほら、人間はよく絶滅危惧種の動物を保護するではありませんか。あれと同じような感じで助けていただけると良いのですが」
「ここでまた理屈を持ち出すと」と危懼子が言った。「またやっかいなことになりそうですので、理屈は抜きにして助けることにいたしましょう。だいいち、さっきまで言葉を交わし合っていた存在が食べられるのは悲しいですし」 危懼子はマイマイカブリを取り除けようとして手を伸ばした。するとマイマイカブリは言った。「良いのか、そのような軽率なことをして。私には武器がある。痛い目を見るぞ」 危懼子は鼻で笑った。「あら、強がりをおっしゃいますこと。たかが虫の分際で万物の霊長たる人間を脅迫するとは、身のほど知らずにもほどがありますわ、マイマイカブリ様」
しかし命賭が、伸ばされかけた危懼子の手を抑えた。「駄目だよ危懼子ちゃん、この子が言っていることは本当だよ。マイマイカブリはメタクリル酸(C4H6O2)を主成分にする毒液をお尻から噴射することができるの。浴びせられたら皮膚がボロボロに
いつの間にか食事は終盤に差し掛かっていた。黄金のカタツムリが言った。「もう四分の三は食べられてしまいました」 マイマイカブリが言った。「もう四分の三は食べました」 いまだにカタツムリが声を出せるのは奇跡的であったが、しかし彼は神であるから当然とも言えるかもしれない。
カタツムリは自分の生を締めくくるように叫んだ。「はい、おしまい。もう全部おしまいでーす!」
その次の瞬間だった。
どこかから何かが勢い良く飛来した。それはアメフトのボールだった。
(つづく)
次回もお楽しみに!(文字数が増えてきて困っている)