コバヤシさん家のカツだって一生懸命生きてるんだよ!!   作:社畜だったきなこ餅

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前回までのあらすじ
あの世的ニュータイプ空間で麻雀をうってたら、ララァによって現世に速達で送り返されたカツ。
目覚めた彼の目の前にいたのは、グリプス戦役最大のエンジョイ勢パプティマス・シロッコであった。


コバヤシさん家のカツ、木星問答編

 

 ヘルメットが無ければ即死だった、まさかそんな事を自分自身が実践する羽目になるとは的な宇宙世紀0087年。

 ニュータイプ空間で炬燵を挟んでだべったり麻雀したりした果てに、ララァと語り合って目覚めた俺の目の前には。

 

 

「そう畏まる事はない、楽にすると良い」

 

 

 グリプス戦役最大最強のエンジョイ勢、パプティマス・シロッコさんがテーブルを挟んでソファに腰かけ優雅に微笑を浮かべております。

 ちなみに自分が医務室で目覚めてから一週間後となっている、今日まで大変だったわ……。

 

 何でか知らんがシロッコの傘下に収まってた師匠は怒鳴り込んでくるは、自分達に一撃与えたという事でヤザン達は顔見にくるわでマジで生きた心地しなかったよ!

 なんか師匠は盛大に怒鳴り散らかした末に生きててよかったとか咽び泣いてたから、ちょっと気まずかったけど。

 

 

「ほんではお言葉に甘えて」

 

「ちょっとカツ、シロッコ様が言ったからってそんな急にだらけたりしないで」

 

 

 ともあれ楽にしてよいと言われれば全力で力を抜くのが俺、そうカツ・コバヤシだ!

 少し離れたところで控えているサラがジト目で俺を睨んでいる気配を感じるが、意識して聞こえなかったフリをする。

 

 

「サラから話は聞いていたが大分愉快な少年だな君は」

 

「このご時世生きてるだけで丸儲けですからね、その時その時をやりたいように生きてるだけですよ」

 

 

 ニヒルに笑みを浮かべながら探るような視線と共に俺の意識に、シロッコの思念が触れる。

 

 コレは……一番強いのが興味、次に値踏みと嘲笑と言った所かね。

 何はともあれただ探られているだけでは面白くないと感じるのが俺である。

 

 とりあえずいつものように心に踏み込んでくる思念を受け流しながら、意識の中に意図的に隠したいと思うスペースを用意した上で。

 

 

 その中にカボチャを被り全身タイツを纏って全力で踊る俺とカミーユの映像を入れておいた。

 

 

 あ、シロッコが絶句した後激しくせき込んでいる。やったぜ☆

 前はこんな事できなかったんだけど、臨死体験ってすごいね。できそうだなって思ってやってみたら出来たわ。

 

 

「……貴様はニュータイプの力を何だと思っている」

 

 

 そしてサラに気遣われながら復帰したシロッコが、敵意を目に宿しながら俺を睨みつけてくる。

 やっべ、ニュータイプと言う事に強い自負とプライドを持っているシロッコの逆鱗に触れたか?

 

 

「まぁまぁ、そんな怖い顔して睨んだりしないで下さいよ。シロッコさんだって踏み入られたくない所はあるでしょ?」

 

 

 俺は強いプレッシャーにビビりつつ、肩を竦めながら両手を上げて降参の構え。

 ニュータイプ能力がなんか強化されたとはいえ一般通過ガノタが勝てるわけないだろいい加減にしろ!

 

 

「それにシロッコさんだって気が付いてる筈だよ? 俺はニュータイプとしては成り損ないも同然だってね」

 

「ふむ……」

 

 

 ニュータイプの完成形が何か、そして成り損ないは何かって論じ始めるとガノタは止まらなくなるから一旦横に置きつつも。

 恐らくだがシロッコにとってニュータイプと言うのは、言ってみれば全能の支配種族であり既成人類よりも高い次元にある存在だと考えている節が態度や言動から透けて見える。

 

 ……アレ?俺こんなに感覚鋭かったか? まぁいいや。

 

 

「俺は誰かを導いたり出来ないしアムロ・レイのような戦いに特化した存在でもない、精々誰かの隣で適当に話を聞くしか出来ない存在だよ」

 

「なるほど、確かにそうだろうな」

 

 

 テーブルの上に置かれていたカップの中身を一口啜る、うわこのコーヒーめっちゃ美味い。

 ともあれコレでシロッコからの興味を少しでもなくせれば良いが……。

 

 

「だがそうだな、ますます手元に置きたくなった」

 

「なして???」

 

 

 そして放たれたシロッコの言葉に、今度は俺が激しく噎せ返る。

 何処に出しても恥ずかしくない俗物ニュータイプですやん???

 

 

「君は気付いているようだから話すが、人類と言うモノは優れた存在に導かれるべきだと私は常々考えていてね」

 

 

 俺の反応に意趣返しが出来て満足したのか、上機嫌そうにシロッコは語り出す。

 この感情は高揚と自負心、それに……憧憬?

 

 あのパプティマス・シロッコが憧憬を感じる存在だと?

 シャリア・ブル……いや、確かに優れたニュータイプだったが、この憧憬の念は死者に向けるものではない。

 

 シロッコ、木星…………あ゛。

 

 

「……クラックス・ドゥガチ?」

 

「……ますます君に興味が湧いてきたよ、カツ・コバヤシ君」

 

 

 ぽろりと俺の口から出てきた人名、小さな呟きだったはずのそれを思念ごと拾ったのかシロッコは笑みを深くしながら鷹揚に頷いた。

 やっべ、やっちまった。

 

 

「何故地球圏に居た君がドゥガチ総統の事を知っているかは気になるがね」

 

 

 柔らかく微笑みながらも、先ほどのどっきりカボチャダンスを警戒しているのかシロッコは俺の思念を深く探る事はせず表層を撫でるように探るのみだ。

 くっそ、やれそうだからやっちまったがもっと使うべきタイミングがある作戦だったな……!

 

 いや違うそうじゃない、なんであの傍若無人極まりないシロッコが誰かを尊敬するんだ?自分で考えてて失礼極まりない感想であるけども。

 

 ちなみにサラは話の流れについていけず困惑したのが気配で如実に伝わる、そりゃそうだよな。

 

 

「……アンタは地球圏に木星の為の王国を築くつもりなのか?」

 

「まさか、そんなことは考えていないとも。それに私は次の時代を導くのは女性であるべきだと考えていてね」

 

 

 木星の核弾頭ことクラックス・ドゥガチが現時点でどんな人物なのかはわからないが、しかしマジでシロッコの思考と思想が読めない。

 しかし木星を話題に出した時に感じたのは憧憬の中に憐憫の情を感じた、もしかして……。

 

 

「木星の環境はドゥガチ総統、と言う人に全てかかっているのか?」

 

「君は存外察しが良いな」

 

 

 俺の言葉を否定する事無く頷くと共に、シロッコは思念で映像を俺の頭に流し込んでくる。

 もしかしなくてもコレ、俺がかぼちゃダンス映像を流し込んだことでノウハウ得たな??? やっべ、マジでやらかしたかも。

 

 ともあれシロッコが俺に見せてきた木星の映像は、言葉に表すなら悲惨そのものだった。

 人間が最低限生存するために必要な物資すら切り詰め、何か事故が起きても地球圏の貧しいコロニーであっても何とかなるような事案すら致命傷になる魔境。

 その中でシロッコの目を通して冷徹なまでに木星圏をかじ取りする男の姿、ドゥガチの姿を見る。

 

 

「……なるほど、確かにこの人は偉人と呼ばれるべきだ。そしてシロッコさん、アンタが次代を女性が導くべきだという事も理解できたよ」

 

「わかってくれて、こちらも嬉しいよ」

 

 

 こ、こいつ……地獄のブラック労働を強いられているリーダーを見て、ああなりたくねーなー。って感じてやがる……!

 でも舵取りはしたいし良いとこ取りしたいから、女を矢面に立てようとする何処に出しても恥ずかしい人間の屑じゃねえか!!

 

 

「優れたリーダーの言葉は時に劣る存在に素直に受け入れられ難い、しかし君がいてくれればその懸念も消せそうだからな」

 

 

 おいこの牛乳瓶の蓋みたいな髪型の男、いけしゃあしゃあと俺を便利な中間潤滑剤にするって言い切ったぞ。

 

 

「勿論無理にとは言わないとも、しかし君がこちらに来てくれるのならばアーガマのクルー含め君の家族の身柄と安全は保証する事を約束しよう」

 

「……ソレで俺が頷くとでも?」

 

「君は頷くさ、道化を気取っていながら他者の為に心を砕く君ならな」

 

 

 シロッコの顔を直視できず俯く俺に、勝ち誇るような気配を滲ませながらシロッコは言い放つとソファから立ち上がる。

 そしてそのまま仕事があるのでね、などと告げて部屋から出て行った。

 

 

「あ、あのね、カツ……シロッコ様が男性をあそこまで認める事って珍しいわ、それに私もアナタがいてくれると嬉しい」

 

 

 サラの言葉に思わず顔を上げてそちらへ向ければ、恥ずかしそうに頬を赤らめたサラが部屋から退室したシロッコを追って出ていこうとしていた。

 

 

 シン、と静まり返る部屋の中。

 俺はすさまじい疲れを感じながらソファに深く腰掛けて無機質な天井を見上げてぼやく。

 

 

「どないせっちゅーねん……」

 

 




ちなみにシロッコさんがドゥガチさんをリスペクトしてるのは捏造です。
でもシロッコさん、地球絶対滅ぼすマンになる前の木星をやりくりしてたドゥガチさんなら割とリスペクトするんじゃね?という妄想でこうなりました。


なおその結果、シロッコの人間強度が上がってカツが精神的に敗北した模様。
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