コバヤシさん家のカツだって一生懸命生きてるんだよ!! 作:社畜だったきなこ餅
そのおかげで、しっかり考証して調整しなくてもノリと勢いで書けていたりします。
青く眠る水の星にそっと愛を囁いたり囁かなかったりする宇宙世紀0087年。
俺ことカツ・コバヤシが所属するアーガマ隊はヤザン隊に襲われたりなんやかんやあったりした末に、ブレックス准将が暗殺された事を知り。
士気やらなんやらがえらいこっちゃしてる中、とりあえず宇宙に戻ってきたクワトロ大尉と合流して取り合えずティターンズをしばくという方向で意思統一が無事完了したりした。
そんな中、いつも通りネモ・ハイマニューバの手入れを終えてお気に入りのハンバーガーを齧ってた時の話である。
「久しぶりだな、カツ・コバヤシ君」
「あ、どうもクワトロ大尉。地球で顔合わせて以来ですかね」
いつものようにファとカミーユの痴話喧嘩じみたやり取りを眺めていた俺に近寄り、声をかけてきたのはグラサンノースリーブことクワトロ大尉。
見た所色々と草臥れた様子だ、まぁ後々どでかい事やらかすとはいえまだ若いしそんな中でエゥーゴ背負って立てとか言われりゃ草臥れるわな。
「君の戦闘記録は目を通させてもらった、地球で顔を合わせた時はここまでやるとは正直思っていなかったよ」
「クワトロ大尉ほどの人にそう言ってもらえるなら、何よりですよ……ところで大尉」
気取った物言いをしながら素直に褒めてくるシャア、じゃなくてクワトロ大尉の様子にこそばゆいモノを感じながら俺はハンバーガーを完食すると。
サングラスの奥に隠している瞳を真っすぐ見据えて口を開く。
「地球で会う前に俺、大尉とどこかで会いませんでした? 具体的に言うと一年戦争中とか」
「…………いや、会ってはいないな。気のせいじゃないか?」
周囲に聞き耳を立てている人物がいないか軽く確認しつつ問いかけてみるも、わずかに目を逸らしてクワトロ大尉は応える。
その態度が全てを物語ってる気がしないでもないが、まぁあまり聞いたりするのもさすがに失礼か。
「コレは独り言なんですけどね大尉。皆が大尉を頼って縋るのは大尉の出自がどうとかじゃなくて……」
俺が突如放った言葉に、クワトロ大尉から放たれるプレッシャーの圧が半端なく膨れ上がる。
ぶっちゃけちびりそうなくらい怖いが、そこで引き下がる空気が読めないカツ・コバヤシではないのだ……!
「戦争が続いて未来に不安しかないこの状況下で、エゥーゴで実績を積んで信頼を得た貴方なら上手い事舵取りしてくれるっていう希望なんじゃないですかね」
「……君は随分と、悟った物言いをする」
俺の言葉に放つプレッシャーの圧をやわらげ、サングラス越しでもわかるぐらい不思議なナマモノを見る目付きで俺を見てくるクワトロ大尉。
同時に何か探るような意思を感じるが、いつものように受け流し敵意も何もないという意思をのんべんだらりと俺が示すと、大尉は口元に柔らかな笑みを浮かべた。
「そう言う性分なもんで……あ、でも女関係はもうちょいしっかりケアした方がいいっすよ大尉。男が思ってる以上に女性って分り易い言葉かけてもらわないと不安に思うもんです」
「まるで経験してきたかのような物言いだな、カツ」
「そりゃそうですよ、見てきた大人達の誰もが言葉足らずなせいで不必要な衝突ばかりしてるんですから」
チラリと遠目に見えたレコアさんへ視線を送り、クワトロ大尉の視線を誘導しつつ告げれば不快な気配を隠すことなく返答するクワトロ大尉である。アンタそう言うとこやぞ。
こちとらホワイトベース時代から言葉足らずの結果起きた衝突を何度も見てきてるんじゃい。
「だが、君の助言は素直に受け取るとしよう。そうだ、最後に一つだけいいかね?」
「そりゃ良かったこっちもレコアさんの愚痴を聞き続けた甲斐があるってもんです。……なんです?」
気障な笑みを口元に浮かべるクワトロ大尉、くっそイケメンはやっぱりどんな仕草しても絵になるなぁ。
そしてレコアさんの方へ向かおうとするクワトロ大尉であったが、途中で足を止めてこちらへ振り向くことなく何かを問いかけようとしてくる。
「かつてホワイトベースでアムロ・レイを身近に見てきた君にとって、ニュータイプとは一体何だ?」
「え? ちょっと勘が良い程度の人間じゃないですかね。むしろ勘が良すぎるせいで言葉足らずだから生きるのに難儀しそうだなぁ、なんて思ってます」
あ、俺の言葉に背中越しでもわかるぐらいクワトロ大尉呆気に取られてる、かと思ったら何か愉快そうに無言で肩を鳴らすと振り向く事なくレコアさんの方へ向かっていった。
いやぁ、なんか上手い事やれた感じがして我ながら良い仕事した感満載である。
「カツ!ちょっとカミーユにも言ってよ!」
「ファ!カツは関係ないだろ!?」
「藪からスティックにどうしたんだよ君らは」
そんな風に感慨に耽っていたら、痴話喧嘩の飛び火がこっちに延焼してきたでござる。
まぁこんな具合にドンパチやりながらもそれなりに日常を送っていたわけであるが……。
アクシズの先遣艦隊に接触するとか言う事で、フォン・ブラウンに補給のために寄港した際にクワトロ大尉が地球から連れてきたという子供二人が居なくなったという事で。
ファとカミーユと俺の3人で街に探しに出る事となった、ちなみに俺は二人とは別に一人で捜索する事となった。
痴話喧嘩は巻き込まれる方も疲れるんだよ、いやマジで。
「とは言うモノの、どこから探したモノか……」
街行く人にシンタとクムが映った写真を見せながら、目撃情報を必死こいて探す俺ことカツ・コバヤシ。
生意気極まりない二人だけど、一年戦争時のレツとキッカ思い出させるから放っておけねーんだよなぁ。
「あら……もしかして、カツなの?」
「え?」
そうやってフォン・ブラウン市の名物ドリンクを手に捜索活動する事小一時間、自分が担当したエリアでは目撃情報も得られない為とりあえずカミーユ達に無線連絡を入れようとしたところ。
ティターンズの若き女性士官ことサラ・ザビアロフさんがそこに居りましたわ。
ちなみにこの前投降してきた時は、俺は彼女の逃走に手を一切貸していなかったが、上手い事若いアーガマクルーを誑かして逃走成功したらしい。
カミーユと一緒に戦場から帰還して伝えられた報告に、思わずマジか……とか呟いたからね俺。
「久しぶりだねザビアロフさんや、君の逃走を幇助したクルーはあの後営倉入りさせられて半べそかいてたぞ?」
「それは悪い事したわね、少し伝えたい事があるのだけど良いかしら?」
「いやな予感するし今は別件で立て込んでて……と、ちょいまち」
警戒心を隠そうとしない俺の懐にするりと潜り込もうとするサラを警戒しつつやり取りをしていたら、懐の通信機から呼び出し音がなった為出てみると。
どうやらファとカミーユが行方不明の迷子2名を確保する事に成功したらしい、よかったよかった。
「その様子だと用事も片付いたようね」
「そうなる……」
まぁ情報収集のために御誘いに乗るとするか、と半ばあきらめの境地に至った俺。
しかしその時、遠くから地球で割とお世話になった声が響いてくる。
「見つけたぞこのバカ弟子がぁぁぁぁぁ!!!!」」
酒焼けしたそのダミ声、恐る恐る声がした方へ顔を向ければ。
俺にMS操縦をがっつり仕込んでくれた鬼師匠、ベルナルド・モンシアがこちらに鬼の形相で向かってきていた。
「ぎゃーーーー!? 師匠なんでここにぃぃぃぃーーーーーー!?」
「てめぇをギッタギタにする為に宇宙まで上がったんだよこっちはぁ! ベイト!アデル!回り込んであのクソガキとっ捕まえろ!」
MSで上がる戦場とはまた別の種類の迫りくる恐怖に一瞬足が竦む俺、そんな俺と迫りくるモンシアをサラは見比べると何を思ったのか俺の手を取り。
「こっちよカツ!」
「てめぇぇぇぇ!俺様を裏切った上に女同伴で逃避行たぁ良い度胸してやがんなぁコラァァァァァァァ!!」
「許してぇぇぇ!師匠ぉぉぉぉぉぉ!!」
逃げる俺とサラ、鬼の形相で追いかけてくる師匠にやれやれと言わんばかりの勢いで追走するベイトさんとアデルさん。
余談だが師匠の戦友であるお二人とも、通信画面越しであるが面識があったりする。二人とも師匠の弟子自慢が凄いと良く苦笑いしていた。
ともあれサラの案内でフォン・ブラウン市の路地裏を駆け巡る俺達。
しかし鍛えている俺や現役軍人の師匠達と異なり、さすがに少女であるサラの息が切れ始め……俺はなりふり構わず彼女を横抱きにして抱え上げ、更なる全速力でサラの案内の下路地裏を駆け抜け……。
俺の息が上がる頃には、なんとか師匠達3人を撒く事に成功するのであった。
「ぜぇ……ぜぇ……ゴメン、さっきは無理矢理担ぎ上げて」
「……気にしてないわ」
そっぽをむくサラ、うん、その、申し訳ない。
アレ、でもなんか悪い気がしてるわけでもない気配を感じない事もない、とか考えたらキッとこちらを睨みつけられたので慌てて俺は目を逸らす。
「……まぁいいわ、丁度話もし易い場所だし。手短に言うわね」
「ふぅ……はぁ……うっし、よろしく頼む」
暫く俺の息を整える声だけが響く中、サラは溜息を吐くとこちらの息が整ったタイミングで話を始める。
なんでもサラの話によると、ティターンズもまた戦力確保を目的としてアクシズの先遣艦隊に接触しようとしているらしい。
まぁティターンズ上層部の思惑はともかくとして、現場の反スペースノイド思想が強い兵士達とかは納得してんのかなぁソレ。
「それと、貴方の事は私の主人であるシロッコ様にも伝えたのだけど……単刀直入に言うわカツ」
「お、おう?」
何か嫌な予感がビンビンするぞい。
「貴方、こちらに来ない? 貴方の家族や友人の事も心配ないようにするって、シロッコ様も言ってたわ」
「うっそだろオイ」
あの木星帰りな天才肌の感性のどこに、俺が引っ掛かったのか皆目見当つかないでござる。
「自分で言うのもなんだが、俺はぶっちぎりの凡人かつ俗物だぞ?」
「凡人や俗物は自分をそう評しないわ、ともあれ私は伝えたわよ」
呆気にとられる俺を他所に、スタスタと歩き始めるサラ。
そんな彼女の背中に向かって俺は、思わず声をかける。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「何?」
「……ここからスペースポートに戻る道だけでも教えてくれ」
「……ほんっと、前の時もそうだったけど締まらないわね貴方は」
帰り道がわからないと懇願する俺に、苦笑いを浮かべるサラ。
悔しいが、その姿は絵になる蠱惑的な美しさを持っていた。
ちなみにカツが珍しくサラに塩対応なのは、原作カツのアレを知ってるからです。
まぁソレはソレとして美少女なので、魅力に転ぶ時はあっけなく転びます。だってカツですもの。
ちょっと説明不足だったので捕捉。
モンシア達こと3人が宇宙に居る理由は、地上のティターンズ部隊が宇宙へ増援として派遣されるという際、内部の報告書等でカツが宇宙に居ると知ったモンシアが。
声をかけやすい戦友2人に声をかけ、宇宙に増援として上がったという経緯があります。
ちなみに月に居るのは、フォン・ブラウン市の酒を飲むために街に繰り出したら偶然カツを発見したという感じです。